Originally written: Jan. 17, 2002(mail版)
Second update: Jan. 19, 2002
Third update: Jan. 31, 2002(mail版)(関連記事)
Fourth update: Feb. 2, 2002(関連記事)
「犯行の動機」は当初、夫婦喧嘩の憂さ晴らしと報じられたが、実はこの男の妻は入院中で、男とは最近会っておらず夫婦喧嘩は不可能であり、さらに男は実は「目撃場所」である江ノ島にも行っていないことが判明。とすると、この男はなんのために狂言通報をしたのだろう。
行ってもいない場所についての目撃談をでっちあげるのは、そう簡単ではない。たとえば筆者がケシカランいたずら小僧で、ニセの爆弾電話をするとしたら、絶対に行ったことのある場所を選んで「あそこで爆弾らしいものを見た」と通報する。そうでなければ、通報したあと警察から詳しい状況を聞かれたときすぐに答えに詰まり、警察官を大勢動かして「世間を騒がす」という愉快犯としての犯行の動機が満たされないからだ。
が、この男はわざわざ行っていない島を「目撃場所」に選んだ。
しかも、そのとき折悪しく(折りよく?)その島の沖合いに北朝鮮の貨物船が停泊中だった。2001年12月に北朝鮮のものであることがほぼ確実な不審船が海上保安庁の艦艇を機関銃からロケット砲まで使って攻撃するという殺人未遂事件(戦闘行為)が起きたばかりだったので、海上保安庁は(通報者に詳細を問い詰める前に)急遽その貨物船を臨検した。
このため、その貨物船は「なんの罪もないのに」日本当局の「不当な」臨検を受けることになり、北朝鮮政府は在日朝鮮人社会に対して、日本の不当性と北朝鮮の「潔白性」を言い募る口実を手に入れた。
●「テロ国家北朝鮮」は灰色でなく真っ黒●
北朝鮮をテロ国家と呼ぶのはべつに民族差別ではないし、米国政府の言い分(北朝鮮を「テロ支援国家」に指定)の鵜呑みでもなく、客観的な事実に基く。
北朝鮮政府は80年代、韓国大統領の暗殺をねらったラングーン爆弾テロ事件や女スパイ金賢姫を使った大韓航空機爆破事件などを起こしたが、いずれの場合も北朝鮮は「身の潔白」を証明することに失敗した。とくに、金賢姫の事件では北朝鮮政府は「韓国当局が捕らえた金賢姫はニセモノで、本物は北朝鮮にいる(から爆破事件は韓国の謀略)」と言い張ったにもかかわらず、北朝鮮はいまだに「本物」を記者会見に出すことすらできていない。
また、1998年8月に北朝鮮が日本列島をまたぐ形でテポドンミサイルの発射実験を行ったあとの同年12月19日、北朝鮮の独裁政党・朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』が「ソウル、ワシントン、東京を攻撃するぞ」と言わんばかりの合成写真を掲載したことから、日本国内での北朝鮮のイメージは最悪となった。
●誰がチマ・チョゴリの女子高生に斬り付けたのか●
このような事件が起き、北朝鮮のイメージが悪化すると「1990年代までは」決まって、朝鮮中・高級学校の女子生徒の制服、チマ・チョゴリが男に刃物で切られるという事件が発生してきたし「朝鮮人に差別的偏見を持つ日本人が弱い者いじめをしている」という報道もされてきた。親北朝鮮派のサイトの記事「各地の朝鮮学校、制服を変更/生徒の安全を最優先」
http://www.korea-np.co.jp/na-edu/seihuku9903.htm
によると、98年のテポドン発射は実は人工衛星打上げであって「ミサイルだという証拠はない」らしい(衛星打上げロケットと弾道ミサイルは技術的には同じものなので、この言い訳は無意味だが)。
が、それなら「チマ・チョゴリ切り魔」が日本人だという証拠もないことにも配慮すべきだろう。
実は、この種の「切り魔」は1人も逮捕されていないので、その国籍は不明だ。仮に「実行犯」が日本国籍だったとしてもその雇い主(教唆犯)が日本国籍だという証拠もなく、北朝鮮の諜報機関が関与していないという証拠もない。
テポドンミサイル発射と、そのあとの「ソウル、ワシントン、東京攻撃」を示唆した労働新聞の記事で、いちばん怒ったのは在日朝鮮人の方々だ。なぜなら労働新聞が「東京をミサイル攻撃する」と言うことは「東京にいる在日朝鮮人を皆殺しにしてもかまわない」という、北朝鮮の最高権力者の意思表示にほかならないからだ。
もちろんこの新聞写真だけではない。80年代、あるいはそれ以前から繰り返される北朝鮮のテロや侵略的行為、日本人拉致事件、覚醒剤密売事件などが浮上するたびに、在日朝鮮人の方々はみな、北朝鮮に対して怒り、悲しみ、呆れ、愛想をつかして「こんな下劣な国の国籍は捨てて日本に帰化しよう」と思ったであろうことは想像に難くない。在日朝鮮人の方々は自身の意志も判断力も持った、れっきとしたにんげんであり、けっして独裁者の奴隷ではない。
ところが、彼らが帰化を考え始めると、不思議とハンで押したように「切り魔」が現れる。そして犯人が逮捕されないうちから早々と、各マスコミで「識者」が「この事件は日本人の朝鮮民族への差別意識の表れ」「同じ日本人として恥ずかしい」などというコメントを発してきた。
そして「在日朝鮮人社会」は、祖国に愛想づかしをして日本への帰化を考えている在日朝鮮人個人に対して、こうしたコメントを背景に「われわれ朝鮮人はこのように日本人から差別される宿命にあるのだ。帰化しても無駄だ」と説くのである。
「切り魔」事件で日本側が得る利益は何もない。ただ、北朝鮮から差別だと非難されるという外交上の損失があるだけだ。ところが北朝鮮側は、この種の事件で在日朝鮮人が帰化を思いとどまってくれることに明らかな利益がある。
●まもなく消滅、在日朝鮮人社会●
北朝鮮は建国以来一貫して社会主義体制を取っている。これは、ソ連の崩壊を見ればわかるとおり、一度もまともな経済がなかったことを意味する。ソ連など一部の社会主義国家は石油などの地下資源に恵まれており、冷戦時代には西側に対抗する社会主義の「兄弟国」として、北朝鮮にもソ連から安く石油を輸入できるなどの「特典」があったため、経済体制がいいかげんでも、北朝鮮はなんとか「食べていく」ことができた。
が、80年代にソ連が左前になり、経済建て直しのため西側との協調をめざして「兄弟国」との関係の清算に乗り出すと、石油輸入などの「兄弟国特典」は廃止され、地下資源のほとんどない北朝鮮の経済は一気に破滅に向かう。
そんな中、北朝鮮政府が多額の収入が見込める財源として目を付けたのが、在日朝鮮人からの送金だった。彼らは経済大国日本の物価水準で稼ぐので、その収入は貧乏国北朝鮮から見ると巨大である。たとえば、主として在日朝鮮・韓国人が経営するパチンコ産業の年間売上げは約22兆円もあって、スウェーデンのGDPに匹敵し、北朝鮮のGDPの8倍だ。そのうち北朝鮮籍の業者の売り上げの、ほんの数パーセントが北朝鮮に流れるだけで、破綻国家・北朝鮮の財政は賄える。北朝鮮にとって、在日朝鮮人という「金づる」はまさに生命線なのだ。
が、在日朝鮮(韓国)人の総人口は年々減少していく。
彼らは日本社会に生きており、その数は日本の総人口の1%にも満たないため、妙齢の男女が結婚相手を探そうとすると「自動的に」9割以上の確率で日本人と結婚することになる。
そして、日本人側は、非婚化、晩婚化の進んだ「結婚難」の時代なので、結婚相手が在日韓国朝鮮人とわかっても、あまり差別はしない。
数年前、さる有名女優Yが、NHKの看板ドラマの主役を途中降板した際、降板の理由は、彼女が韓国籍で、ドラマの脚本に反韓国(朝鮮)的と取れる内容があるからと報じられた。Yが韓国籍であることが初めて暴露されたこのとき、彼女はさる有名タレントKと交際(婚約)中だった。
が、北朝鮮政府や「在日朝鮮人社会」の「期待」に反して、KもKの家族もまったくYを差別せず、そのまま結婚した(そもそもあのような美人が結婚してくれるというのに、国籍を理由に反対するバカ者などいない)。KとYの結婚はかなり大きな「芸能ニュース」としてワイドショーなどで繰り返し取り上げられたため、多くの在日朝鮮・韓国人の若い女性に、日本人との結婚や帰化への安心感を与えたことは言うまでもない。そして、このような「国際結婚」から生まれる子供の国籍は99%の確率で日本になるので、もはや在日朝鮮人社会の消滅は時間の問題なのだ。
もちろん日本国籍を持つ者には、たとえ元北朝鮮籍だったとしても、北朝鮮に送金しなければならない理由は何もない……ということは、いずれ北朝鮮政府の貴重な金づるは消滅することになる。
ほかにまともな財源のない北朝鮮政府にとって、これは深刻な問題だ。本来なら社会主義をやめてまともな経済政策を取らなければいけないが、それをやると韓国との違いがなくなり、体制改革を打ち出して西ドイツと区別がつかなくなって「吸収合併」に追い込まれた東ドイツの二の舞になってしまう。
というわけで、北朝鮮政府とその出先機関である「在日朝鮮人社会」は、朝鮮人が日本人に差別されているという雰囲気を「演出」して「同胞」の帰化を阻止し、貴重な「財源」の消滅をなんとか遅らせたい。
●被害者ほど素敵な商売はない●
もう、おわかりだろう。少なくとも結果論から見れば「チマ・チョゴリ切り魔」は在日朝鮮人個々人の北朝鮮政府への「愛想づかし」への引き止め策として機能してきたのだ。
では、なぜ2001年12月の不審船事件のあと「恒例」の「切り魔」が登場しなかったのだろう?……理由は簡単。チマ・チョゴリを着て街を歩く生徒がいなかったからだ。
上記の親北朝鮮系サイトがによれば、大半の朝鮮学校ではもう通学用制服として校外でチマ・チョゴリを着させないことに99年から決めていた(たとえ、この制服変更がなかったとしても、不審船事件の直後は冬休みなので、どのみち「切り魔」は開店休業だった)。
そこで「41歳の無職の男」の登場である。
彼が「狂言通報の定石」に反して江ノ島での「目撃談」を通報したとき「偶然」江ノ島沖に北朝鮮の貨物船がいた。
彼は「偶然」失業中で組織に属しておらず、妻も入院中だったため「アカの他人」がその男の氏名を名乗って罪を犯しても予め「本人」を拉致して外国に連れて行っておけば、問題は起きない。日本の住民登録には指紋も写真もないから、日本人が外国人のスパイと入れ替わってもわからないのだ。
●貧すれば貪す〜CIAよりきたない北朝鮮●
筆者はけっして「狂言通報をした男こそが北朝鮮工作員だ」とも「狂言男は、出番のなくなった『チマ・チョゴリ切り魔』の『代役』だ」とも断定しない。が、日本の公安当局はこの男を野放しにしてはいけない。
マスコミは「軽犯罪法違反」だからといって、この男の氏名、顔写真を隠すべきでない。彼は無職で、海上保安庁らが被った膨大な損失を賠償する能力はない「はず」だから、急に旅行に行ったりキャバレーで札ビラを切ったりできるはずもない。そんなことをしたら即脱税容疑をかけるべきだ。この男は道義的には、莫大な国費を食い潰した大罪人なのだから、日本は国を挙げてこの男を監視すべきだ。少なくとも彼は「なんの罪もない一市民」ではないから「パトロンの有無」ぐらい疑ってもよかろう。
念のために付け加えるが、こういう税務調査は合法で、なんら人権侵害に当たらない。明日にでもできるはずだ。
AERA(前掲記事)は「北朝鮮工作員」に過剰反応した日本当局の対応を「神経症」とからかったが、そんな鈍感な報道姿勢でよいのだろうか。テロ国家北朝鮮の本質も工作員の実態もわきまえず、軽々しく危機管理担当者を嘲笑うのは、結果的に狂言通報の事後共犯になる恐れはないだろうか。
「北朝鮮」と「在日朝鮮人個々人」は分けるべきだし、北朝鮮の独裁「政府」と気の毒な北朝鮮「国民」も分けるべきだ。そのうえで言えば、北朝鮮政府は、「よど号乗っ取り犯」を英雄扱いして受け入れていることで明らかなように、戦後一貫して日本に対して加害者であり、日本の被害者になったことはないのだから、北朝鮮政府が狂言通報を口実に「日本の北朝鮮非難はすべて謀略」と言わんばかりに「被害者ヅラ」をするのを許してはならない。
それを許すことは「拉致事件」被害者の家族の心情を傷付ける「人権侵害」である。
理由はもちろん、北朝鮮政府には(日本人の犯行を装って)在日朝鮮人を恫喝し、日本への帰化を思いとどまらせる(それによって、自国に献金する貴重な「財源」としての在日朝鮮人社会を維持する)動機があるからだ。極端な話、在日朝鮮人が全員日本に帰化してしまえば、日本から北朝鮮への円建て献金はほとんどゼロになるし、経済の破綻しきった北朝鮮には、その献金のほかには覚醒剤などの薬物の密売ぐらいしか収入源がないから、北朝鮮諜報機関が日本人のならず者を雇って「おまえら在日朝鮮人は日本人からこんなに嫌われてるんだ」「帰化しても無駄だぞ」という「教訓」を与えようとする可能性は否定できない。
が、たとえ「切り魔」事件が、ほんとうに(背後関係のない)差別主義的な日本人の単独犯行だったとしても、そもそも日本国民が国を挙げて「日本人として恥ずかしい」などと考える必要はあるのだろうか。
【この狂言通報に基づく、日本の公安当局の北朝鮮貨物船への臨検について、北朝鮮メディアは2週間にわたって沈黙していた。が、先々週末本誌が上記記事をリリースすると、途端に朝鮮中央通信がこの件での日本政府の対応を批判した……きっと北朝鮮当局者は本誌を愛読してくれているに相違ない。(^_^;)】
●パリ人肉殺人事件の教訓●
1981年、パリの大学に留学していた日本人男子学生Sが心を病み(?)知人のオランダ人女性を殺した猟奇殺人事件、いわゆる「パリ人肉殺人事件」が起き、日欧のマスコミで大きく取り上げられた。
このため、日本の「識者」や政府関係者のなかには「日本人として恥ずかしい」などと考え、政府として事件現場の国フランスや、被害者の国オランダ、あるいは被害者の遺族に謝罪の言葉や見舞金を送るべきだと考える者が出てきた。
とくにオランダは、表向きは第二次大戦中のインドネシアでオランダ兵捕虜が日本兵に虐待されたこと(ホンネでは日本が黄色人種のくせに白人国オランダに勝ち、オランダのほとんど唯一の広大な海外領土であるインドネシアを奪い、独立させ、オランダを元の小国に戻してしまったことから来る「劣等感」)のゆえに反日的な世論が強い、とされる国だけに、かなりの数の「識者」が日本政府がオランダに対してなんらかの責任を取るべきと考えた。
ところが、日本側のこのような動きを知って、欧州側は仰天した。曰く、
「1人の異常者が犯した犯行が、国と国との関係に影響をおよぼすはずはない」
これは、フランスのみならず、元々反日感情が強いはずのオランダでも同様だった。
これは、明らかに欧州人の言うことが正しい。犯人のSはべつに日本政府の意を受けて白人女性を殺すよう命じられた刺客ではない。日本政府はなんの命令も指示もしていないから、政府(内閣)を選挙を通じて選んだ日本国民にもなんの責任もない。
現代中国では反日教育が徹底しているから、日本に不法入国する中国人は「なんの良心の呵責もなく」窃盗、強盗、放火、殺人などの犯罪を起こすのだという説があるが、これが事実なら、一種の「国家ぐるみの犯罪」であり、日本政府は中国政府には対策を求める必要がある(対策を取らないなら、石原慎太郎都知事が言うとおり、被害額や中国人犯人の本国強制送還費用を日本から中国への政府開発援助ODAから差し引く必要がある)。が、それとて、日本人が国を挙げて、なんの罪もない善良で優秀な中国人まで含めて中国人全体を憎む理由にはならない。そんなことで「全体」を憎むなら、ただの「人種差別」になってしまう。
もちろん、日本には「白人は殺して食っていい」と教えている学校は1校もないので、パリ人肉殺人事件は、いかなる意味においても、国家ぐるみの犯行ではない。
そもそも日本国民は1億人以上おり、海外に出かけ、あるいは滞在する者も毎年何百万人もいる。そのなかに1人や2人、頭のおかしいやつがいるのは当たり前であって、そんなやつが何かしでかす度に謝罪だの見舞いだの恐縮するのは、すくなくとも西洋人の目には病気としか映るまい。
実は、この「病気」はこれが初めてではない。1972年、日本赤軍の岡本公三が、アラブゲリラへに連帯して反イスラエルのテロ、有名な「テルアビブ空港乱射事件」を起こしたときも、日本政府はイスラエルの被害者や遺族への賠償や見舞金を検討し、イスラエル政府を驚かせたことがある(イスラエル政府がまともに対応してくれたからよかったものの、もし日本政府が「責任」を感じて、それを先方が認めたら、日本政府は日本赤軍の「事後共犯?」になるところだった)。
●村山首相がオウムで「責任」発言●
しかし、日本政府は、こうしたイスラエル、フランス、オランダの好意的な(当たり前の、悪意のない)対応から何も学ばなかった。
1995年、オウム真理教のテロリストどもがオーストラリアに潜伏し、そこで動物を実験材料にして、サリンの製造、使用等のテストを行っていたことが判明した。
このとき、村山富市首相は「オーストラリア政府に(ウチの若いもんが?)お騒がせしました」と口走ったのである(朝日新聞1995年5月25日付朝刊p.2)。
幸いに、オーストラリアは上記3か国と同様の西洋先進国で、一流国だったから、何も問題は起きなかった。ゼニカネゆすられたり、大多数の国民が「身に覚えのない」ことで罵られることもなかった。
が、相手がアジアの国だったら? とくに、北朝鮮のようなテロ支援国家(「よど号」乗っ取り犯のテロリストを英雄扱いして受け入れた三流国)だったら、どうなるだろう?
●韓国の「こじつけ反日ごっこ」●
1988年、ソウル五輪直前、大韓航空機が爆破され、実行犯テロリストとして、蜂屋真由美なる「日本人」(ほか1名)が中東で爆発墜落前に「途中下車」していたことから身柄拘束された。
このニュースが韓国に流れると、たちまち韓国内の反日感情は沸騰し、韓国のマスコミや政府機関には「日本人に復讐すべきだ」との電話が殺到した。例によって、日本政府は「責任」を感じて恐縮し、おろおろしはじめた。
ところが、やがて蜂屋真由美は偽名でパスポートも偽物で、本当は金賢姫という北朝鮮国籍のスパイの犯行とわかって韓国の反日感情は消え、日本政府はほっと胸を撫でおろした…………ちょっと待て。これは「犯人が日本人じゃなくてよかったね」で済む問題か?
●「ならず者雇い合戦」になってもいいのか●
犯人が日本人と思って「日本人に復讐すべきだ」と主張した韓国人に問いたい。もし、筆者が韓国で育った韓国籍のならず者を雇って日本人をねらった凶悪犯罪をやらせたら、その者が「雇い主」について口を割らない限り、あなたがたは国を挙げて日本に謝罪しなければならなくなるが、それでもいいのか?
また、日本政府に問いたい。蜂屋真由美がほんとうに「日本人蜂屋真由美」だったら、日韓の外交関係をどうするつもりだったのか?
この事件をめぐる日韓両国民の(西洋人から見れば)ばかげた反応、あるいは「テルアビブ乱射事件」以来のとんちんかんな日本政府の「責任の感じ方」を、悪意ある第三国(たとえば北朝鮮、中国)が見れば、いったいどう感じるであろうか?
おそらく日韓のような国に対しては、当該国の国籍を持ったならず者を雇って、自国への乱暴狼藉をやらせる「ならず者雇い作戦」が有効だと考えるだろう。たとえば、筆者が中国の特務(スパイ)機関の者なら、日中で重大な外交交渉(たとえば、中国政府が日本政府から円借款などのODAを引き出す交渉)をする前には、日本人のならず者を雇って「日中友好の記念碑」にペンキをぶちまけさせたり「南京大虐殺は中国政府のでっちあげだ」と落書きさせたりすれば、日本の国民も政府も「勝手に」責任を感じて恐縮し、円借款交渉でも中国の言い分が通りやすくなる、と考える(そして、こういう事件は現実に何度もあり、例によって親中国派の「識者」が「日本人として恥ずかしい」というコメントを出している。毎日新聞1988年3月12日付朝刊p.23、5月14日付朝刊p.1、7月24日付朝刊p.26を参照)。
つまりエライ先生が(日本の過去のアジア侵略の)歴史をごりっぱに反省なさって「日本人として恥ずかしい」などと言えば言うほど、この種の事件は起きやすく(やりやすく)なるのだ。
近年、こうした「歴史認識」を利用した「ゆすりたかり」に関しては、産経新聞や雑誌「SAPIO」や自民党若手議員らが反発を示し、かえって逆効果になる場合が増えてきたので、このような方法はあまり使われなくなった。
が、「テルアビブ事件」から「蜂屋真由美」までの日本政府と国民の非常識な「責任の感じ方」がなければ、90年代の「チマ・チョゴリ切り魔事件」は起きなかったのではあるまいか。
ぜひ、日韓両国政府は首脳会談などで互いの「国益」のために「1人の凶悪犯の問題を国民全体の問題として捕らえない」ことを確認すべきだ。
もしも警視庁が2000年12月末に東京で発生した(迷宮入りかと危惧される)「世田谷一家惨殺事件」の犯人が韓国人だと思うなら(週刊新潮2001年2月15日号の記事
http://www.melma.com/mag/90/m00016390/a00000021.html
等を参照)その容疑者を、躊躇せずに逮捕すべきだ。今年2002年が日韓共催のW杯サッカーの開催年で、日韓友好関係にとって重要な年だからといって「外交的配慮」などする必要はない。
日本人が犠牲に遭った凶悪事件の犯人が韓国人とわかれば、50代以上(第二次大戦でアメリカに負けて白人コンプレックスのかたまりとなり、劣等感のはけ口として韓国人蔑視をする世代)の者は「だから韓国人は…」などと口走るだろうが、そんな少数意見は(もちろん「意見」には法的拘束力はないのだから)日韓両国政府ともに無視してよい。すくなくとも日本の30代以下(第二次大戦の敗戦体験がなく、高度成長期に育ったため、白人への劣等感が薄い世代)の「多数派」の世論には大した影響はない。
もし、韓国人のお年寄りが「韓国人として恥ずかしい」と言っても、日本の若い有名人(たとえば芸能界やスポーツ界のスター)や政治家(たとえば小泉首相)が「いつか逆のケースも起きるだろうから、いちいち恐縮し合うのはやめよう」とひとこと言えば、それでこの種の問題は解決し、未来永劫再発しないだろう。
逆に、警視庁が容疑者とみなして逮捕した韓国人がシロだったとしても、そのことで韓国国民は興奮しないで頂きたい。もちろん証拠不十分で誤認逮捕することはよくないが、それをいちいち民族差別に結び付けられてはかなわない。
とにかく、警視庁は「日韓関係に配慮して」事件の解決を遅らせるのはやめてほしい。そんなことをすれば、「在韓韓国人」のならず者に「日本で凶悪事件を起こしても、W杯終了までは現行犯以外は逮捕されない(から、目撃者は警察に通報する前に皆殺しにしたほうがいい)」というサインを送ることになってしまう。
このような問題に関しては、絶対に西洋人のほうが東洋人より優れている。東洋人は自らの後進性を恥じ、個人と国家を峻別する西洋人の基準を「グローバルスタンダード」として受け入れるべきだ。アジア各国は首脳会談などで「お互いのために個人と国家を区別しよう」と確認せよ。
【こういうのを、ほんとうの外交という。田中真紀子前外相が外国相手にやっていたのは、国益と無関係な「社交」にすぎない。】
この問題に関しては、日韓両国で、国籍、男女、年齢、思想的な左右の区別にかかわらず「超党派」の理解が得られんことを切に願う。