「信玄堤」に学んだ?公安警察の裏ワザ

ガス抜きテロ

〜無害テロ〜

Originally Written: June 13, 1998
Last Update: June 13, 1998

筆者の造語。
安いコストで治安を維持するため、あらかじめ治安当局の手先をテロ集団などの内部に潜入させ、幹部級に育てておき(あるいは過激派集団内の幹部を、あらかじめ「逆マインドコントロール」や「たすきがけ買収」によって「操り人形」にしておいて)その者に秘密裏に命じて、被害がきわめて少ないか、または、まったく出ないような状況でテロを起こさせること。被害がまったくない状況では「無害テロ」と言い換えてもよい。

たとえ無害でも、テロを実行するまでは犯人は多大のエネルギーを消耗し、実行後には緊張感、集中力が抜け、ふたたびテロを起こすのが困難になるため、「ガス抜き」実行後には、治安上きわめて安全な状況が生まれることになる。


●「信玄堤」に学んだ?
●高貴なお方の葬列
●アンダーカバー
●「負け惜しみ」の犯行声明

●「信玄堤」に学んだ?
山梨県(甲斐国)には、江戸時代かその前の戦国時代頃から「信玄堤」と言われるものがあったらしい。なんでも、16世紀に甲斐国を支配した戦国大名の武田信玄が、河川の氾濫を防ぐために考案した堤防のことだという。

河川の洪水でいちばん恐ろしいのは、大雨で水位が上がり水かさが増したあと、堤防のどこかが決壊して、そこから一気に多量の水が流れ出すことだ。そこで信玄は、あらかじめ堤防の何箇所かを切っておき、あまり水位が上がらないうちに、少しずつ水が流れ出すように作ったという。さすれば、流れ出た水が人家や田畑に向かっても、さしたる被害は出ないだろうという計算である。

この「信玄堤」という言い方は、後世、たとえば江戸時代や明治時代以降に武田信玄を過度に英雄視する者がでっちあげたという説もあって、真相はさだかでない。無名の技術者や、江戸時代の統治者らの施策かもしれない。

が、それはともかく、破壊のエネルギーがたまりにたまって危険になる前に、あらかじめその一部を無害な形で解放し、決定的な大惨事を防ごうとする発想は、危機管理のコストを低減する、という意味では、現代にも通じるものがある。

●高貴なお方の葬列
重大な国家的行事が間近に迫っていて、かつ、それを妨害するテロが予想される場合を考えてみよう。いつ暴発するかいつ暴発するかと、毎日おびえて暮らすぐらいなら、スパイ工作で先手を打って、なるべく被害の少ないときに「暴発させて」しまおう、というのがCIAや日本の公安警察の常套手段である。

たとえば、ある国で国民の尊敬を集める高貴なお方がなくなったとしよう。そして、その方の葬儀が国葬として営まれ、遺体(葬列)が首都圏を数十キロ移動して墓地まで進むとしよう。そして、その葬列を、反体制過激派テロリストが襲う計画を持っていたとしよう。

この場合、もっとも安全な対策は、反体制派やその疑いのある者を1人残らず検挙・拘束して完全に制圧すること…………ではない。そんなことは、かつてのソ連や東ドイツのような警察国家ならともかく、日米のような開放的な国では(警察官の数が人口に比して少ないこともあり)不可能だ。

●アンダーカバー
それよりもむしろ、過激派の主力を「たすきがけ買収」し、あらかじめ実害の無いところで爆弾テロなどを行わせるほうが、はるかに安いコストで確実にテロの被害を防止できる。具体的には、上記の「葬列」の護衛方法の例で言えば、過激派のなかに公安警察のまわし者(アメリカの麻薬捜査官の言葉では「アンダーカバー」)を用意しておき、そいつに葬列の通るコースや時刻についてニセ情報を与え、時限爆弾による「テロを実行させる」。人気(ひとけ)のない(ように警察が交通規制した)ところでやるから、もちろん被害は出ない。爆発直後、過激派は犯行声明を出すが、その直後に「葬列」は、犯行現場か、それに近い地点を通過することになる。

●「負け惜しみ」の犯行声明
どんな邪悪なテロリストでも、爆破の直前は緊張し、また爆破の直後は緊張感が解ける。その直後に「実は失敗だったからもう一度」と言われても、急にできるものではない(野球で、スクイズやヒット・エンド・ランのサインを何度も続けては出せないことを想起されたい)。したがって、この「爆破直後」の現場付近は、実はいちばん安全なのだ。もちろん、過激派は独善的な連中だから「失敗しました」とは認めない。なんら被害が出なくても「ワレ奇襲に成功セリ」と「大本営発表」のような犯行声明を出して、テロに参加した「同志」たちの志気を「ガス抜き」せざるをえないのだ(東京で先進国首脳会議のような国際的イベントが開かれる際、しばしば「人気のない在日アメリカ大使館の裏庭」などに、不発弾が撃ち込まれたりすることを想起されたい)

より詳しい具体例を出したほうが、読者の皆様の理解に資することはもちろんだが、あまり詳しいことを書くと、命がいくつあっても足りないので、このへんでご勘弁願いたい。

(敬称略)

未来解読のキーワードの目次に戻る

関連項目印パ核戦争の目次に進む

はじめに戻る