●1990年代前半、米保守本流人脈の大物政治家、ジョージ・ブッシュ米大統領がシンガポールを訪問。同国に米海軍の基地を置くことに成功。シンガポールはもともとイギリスの植民地だったが、米保守本流人脈(おもに共和党)は、ベアリングス社倒産事件などを契機に同国からイギリス・ユダヤ・ロスチャイルド(おもに民主党、反ロックフェラー)人脈を駆逐することに成功した。
●同じ頃、アメリカはフィリピンの米軍基地を撤収。これによって、日本の沖縄の米軍基地と、シンガポールの基地の戦略的重要性が劇的に高まった。同時に、南シナ海で「力の真空」が発生して、南紗(スプラトリー)諸島の領有権(すなわち南シナ海の制海権)をめぐる争いが深刻化し、とくに中国海軍の横暴な振る舞いが顕著になった(したがって、東南アジア諸国のあいだには、自動的に、南紗諸島問題で中立な日米などがこの地域の「警察官」として海軍力を行使してくれることを望む空気が生まれた。事実、フィリピンには米軍を呼び戻そうという世論があると報道されている)。
●同じ頃、湾岸戦争後の1991年、日本の海上自衛隊の機雷掃海部隊が、日本の左翼の反対を押し切ってペルシャ湾に派遣され、みごとに機雷掃海を行って、その世界一の技術水準を立証し、周辺諸国の称賛を浴びた(これによって「機雷掃海部隊の平和目的の派遣はよいことである」という「実績」が作られた)。
●1990年代後半、日本で7月20日が海の日に制定され、海上自衛隊の隊員募集活動が徐々に活発化しはじめた。この7月20日の「海の日」は戦前にも存在したが、それは海軍の兵員募集活動の支援を目的としたものだった。海上自衛隊(海軍)は陸上自衛隊や航空自衛隊と異なり「艦上勤務」や「外洋公開勤務」があるため、隊員が家族と離れている時間が他の自衛隊より圧倒的に長く、その分隊員の募集が難しいのである。が、これによって「大海軍」を再建するための条件の一つが整った。
●1990年代を通じて、日本では、原発反対の市民運動がさかんになり、その結果日本経済が長期的に石油エネルギーに依存する度合いを下げることが困難になってきた(市民運動のリーダーたちは、政治家や官僚と異なり、外国の企業やスパイ機関から金を受け取っても収賄罪にならないうえ、閣僚や国会議員と違って資産公開の義務もない。そして、彼らの運動が、石油企業を利することは間違いない。日本人のなかには、市民運動家のほうが政治家より信頼できると思い込んでいる者が少なくないようだが、それは単なる偏見でり、まったく根拠のない「神話」である)。
●1990年代半ば、青森県知事選挙において、新進党は原発反対派の候補者を支援して当選させ、原発反対運動の火に油を注いだ(これによって、新進党が原発反対党であることが明白になり、同時に「玄人筋」には同党が国際石油資本の中核、ロックフェラー財閥の影響下にある党であることもはっきりした)。
●1996〜97年、「もんじゅ」「動燃」など科学技術庁傘下の原子力施設で事故や不祥事が相次ぐ(筆者は、これらの事故が大がかりなスパイ工作、すなわち動燃職員への「怠慢奨励」工作などの結果であった可能性を考慮している)。
●97年3月の動燃の火災・放射の洩れ事故の直後、フジテレビの「ニュースジャパン」に、原発反対運動のリーダーが出演した。従来、フジサンケイグループのメディアは、同グループの月刊誌『正論』が直前まで「原発推進」の論調を掲げていたことで明らかなように、原発賛成派であった。が、この夜、ついに同グループもロックフェラー系(石油企業)人脈の影響下にはいったのか、と筆者は驚いた。
●97年5月、インドネシアで金鉱詐欺事件発生。ボルネオ島で、世界最大級の金鉱がみつかったと報じられ、いったん、それを発見したとされるカナダの開発会社ブレXミネラルズ社の株がカナダの証券取引所で高騰したが、やがてその金鉱が偽物と判明し、株は暴落。ブレXミネラルズ社関係者は株の売り抜けで莫大な利益をあげて逃走。朝日新聞は、この事件のあとインドネシア国内には、自国の資源は石油であれなんであれ他国に開発させずに自力で開発すべしとする「資源ナショナリズム」の気運が高まったと報じた(1997年5月17日付け朝日新聞夕刊を参照。なお、「資源ナショナリズム」は1973年の第一次石油危機の際、サウジアラビアなどの産油国が好んで用いた言葉である)。
●96年秋、「泉井石油疑惑」なるスキャンダルが突如発覚し、ベトナム沖油断開発を推進していた通算官僚と日本の石油企業(非ロックフェラーの三井系)が非難された(これによって、田中角栄以来、日本の政府と自民党が推進していた、日本経済の中東石油への依存度を下げ、ロックフェラー系国際石油資本の支配から自立する試み、すなわち中東以外の石油の自力開発が、ほぼ絶望的となった。したがって、中東から日本へのオイルロードのどこか、たとえばホルムズ海峡やマラッカ海峡の周辺で政変が起きれば、ただちに日本が第三次石油危機に襲われる可能性が高くなった。ベトナムは日本から見てマラッカ海峡の「手前」にあり、たとえ同海峡が封鎖されても自由に安全に石油を輸入できるところにあった油田であっただけに、惜しい)。
●1990年代後半、現在インドネシアが不法にポルトガルから奪って占領している東チモール(第二次大戦前、インドネシア全体は旧オランダ領だったが、東チモールだけはポルトガル領で、独立が遅れていた)の、反インドネシア運動の指導者がノーベル平和賞を贈られ、国際世論がインドネシアを独裁国家と認識する条件が整った。
●1997年5月、インドネシア総選挙が行われたが、西側メディアはこれを不正の横行する非民主的な選挙と認定。アメリカが民主的政治家と「認定」するメガワティ女史も(彼女が事前にインドネシア政府から活動制限を受けていたこともあって)この選挙を非難。また、選挙前後に、東チモールはじめ、インドネシア各地で反政府暴動が発生。とくに、東チモールでは、大量の死者。
●1997年5月、「世界のメディア王」ルパート・マードックが日本で1998年4月に立ち上げる衛星デジタル多チャンネル放送「JスカイB」の副社長に、フジテレビの重村一編成局長が就任(同局長は、番組の中に臨時ニュースを差し込む「カットイン編成」の推進者として知られ、危機報道を重視した人事と思われる。マードックは東南アジアの衛星放送「スターテレビ」などで元々アジア報道に強かったので、この人事で、インドネシア石油危機報道への「臨戦態勢」にはいったと思われる)。
●1997年4月、マードック(とソフトバンク)によるテレビ朝日株買収問題が、マードックの保有する全株を、朝日新聞に転売する形で決着。この騒動の過程で、テレビ朝日の株主構成が劇的に変化し、朝日新聞の役員などの個人株主がゼロとなり、それらの株は(マードックの一本釣りを防ぐという大義名分のもと)朝日新聞本社に買い集められた(これにより、朝日新聞の論調が必ずしも、進歩的、左翼的、平和主義的でなくなる可能性が高まった、と筆者は推測する。この株主構成の変化について詳しくは「個人情報・極秘情報」のコーナーの奥の「新聞の偏向」についての特集記事を参照されたい)。
●1997年4月、「ペルー日本大使公邸人質事件」が、(米軍とCIA、FBIの訓練を直前まで受けていた)ペルー特殊部隊の強硬突入(人質全員の救出と犯人全員の射殺)によって決着。これにより、日本国内に、(親日国ペルーと違って)反日的な勢力が支配する地域で、もし在留邦人がテロリストの人質になった場合には、自衛隊などのなんらかの武力を派遣すべきではないか、との空気が生まれた可能性が高い。
●中国共産党大会と自民党総裁選が重なる1997年秋に、なぜかアメリカの外交方針によって、日米防衛響力の指針「ガイドライン」の見直し(実質的には安保条約の大改定)を行うよう、日程が設定された(しかも、日本のマスメディア、すなわち「寡占性メディア」のあさはかな報道により、「ガイドライン」協議は朝鮮半島や台湾海峡の有事を想定してのものでインドネシア周辺やマラッカ海峡は含まれない、と大部分の日本国民、および中国政府は思い込まされている)。
●1997年夏、それまで自民党の創価学会批判の急先鋒であり、それゆえ同会の支持を受けている新進党と小沢一郎党首を批判し続けていた亀井静香建設大臣が、突如創価学会批判をやめ、代わって現自民党執行部の「自社さ」連立維持派(加藤紘一幹事長)への批判を強めはじめた。
●1997年夏、都議選における新進党候補の惨敗、相次ぐ離党者の発生にもかかわらず、小沢一郎は依然として新進党党首の座にある(選挙結果を見れば「落ち目」であるはずの小沢が、当主の座をおろされずないことは、逆に彼の権力基盤がいかに強固であるかを物語っている。その権力基盤とは、もちろんロックフェラーの支持である)。
●1997年8月10日、梶山静六官房長官(自民党)が辞意を表明し、「自社さ」連立派(加藤紘一自民党幹事長)との対立を鮮明にする。また直後の8月17日、日本周辺有事の「周辺」には「台湾海峡」が含まれるという、中国にとっては内政干渉とも受け取れる発言を行って、中国政府と社民党(旧社会党)の平和主義者を挑発、執行部および加藤幹事長を窮地に追い込もうとする。
●1997年7月、カンボジアで内戦勃発。ラナリット第一首相派と、フン・セン第二首相派の軍同士が衝突し、フン・セン派が勝利。ラナリットは首相の座を追われ、代わってフン・センの支持する人物が第一首相の座に就く。ラナリットはシアヌーク国家元首(元国王)の息子であるが、中国は永年シアヌークと大虐殺で悪名高いポル・ポト派を陰で支援し、カンボジアを通じて東南アジアに影響力を及ぼそうとしてきた。が、このラナリットの失脚と、これに先立つポル・ポトの逮捕により、中国は重要な橋頭堡を失った(また、もしポル・ポトの背後関係、つまりバックが中国ということが明かされれば、中国は国際社会で窮地に立つことになる)。フン・センはかつてはベトナムとソ連、現在はアメリカの支持を得て、中国に敵対しているので、中国は東南アジアで「何もできない」状態になりつつある(当然今回の内戦をフン・センに実行させたのはアメリカのスパイ機関である)。
●1997年夏逮捕され、終身刑を宣告されたポル・ポトが、もし自分の背後関係、つまり中国の支持を暴露すると(より正確には、そういう暴露が日本や欧米のマスメディアによって世界に報じられると)中国は国際世論の非難を浴び、国連などで窮地に立つ可能性がある。中国はかねてから、日本の国連安保理常任理事国入りに反対し、そのような日本の発言力の増大につながる国連改革案が安保理事会に上程されたら拒否権を行使する、との意向を表明していた。他方、日米は、日本が国連の平和維持活動(PKO)などを武力をもって効果的に行うには、日本の常任理事国入りは不可欠と考えている。
●1997年7〜8月、タイをはじめ、東南アジア各国で通貨の暴落が起き、各国経済が危機に瀕したため、日本が収拾に乗り出し、日本をはじめアジア各国がタイに緊急融資を行って支援することとなった。
●1997年5月、日本の国会で外国為替管理法の改正案が可決され、いわゆる「改正外為法」が98年4月から施行されることとなった。
はっきり言って、もう日本の財政を再建する方法は、この荒療治のほかにはほとんどない。しかし、このインフレ利用策は、みなさんの貯金、年金、(生命)保険金の価値を大幅に目減りさせることになるから、年金生活者や失業者には辛い時代になるであろう(したがって、数年後、この小沢政治の「弱者斬り捨て」をただすとの大義名分を掲げて、元厚生大臣の菅直人が首相になるのである。しかし、菅と小沢の政策は、二人の「見た目」とは裏腹に、行政改革にせよ沖縄の米軍基地問題にせよ、実はほとんど変わらない。「雇い主」が同じロックフェラーなのだから、当然か?)。
●沖縄県知事太田昌秀は、1995年秋の米兵による少女暴行事件をきっかけに(より正確には、事件に対する日本の寡占性メディアの不必要に誇大なタレ流し報道をきっかけに)盛り上がった、米軍基地の沖縄県内からの撤去を求める世論を背景に、県内の基地の縮小や本土への移転を求める運動を起こし、日本の中央政府に働きかけ、県民の熱狂的な支持を得た。
●1996年、アメリカの民主党(イギリス・ユダヤ・ロスチャイルド人脈)のクリントン大統領が再選され、民主党政権が継続することになったが、なぜか閣僚のなかで一人だけ、保守本流人脈の共和党からウィリアム・コーエンが国防長官として送り込まれている(国防省はもともと共和党/保守本流の人脈が中心だが、どうも、1997〜2000年のクリントンの二期めの任期中には、保守本流側は、どうしても直接国防省すなわち米軍を直接指揮したいらしい。何かよほど重大な工作を推進するに違いない、と筆者には思われる)。
●1997年夏、クリントン大統領は、州知事時代の元部下の女性ポーラ・ジョーンズからセクハラ訴訟を受けて、法廷に被告として出頭するよう求められていたため、大統領の公務に影響する(より正確には著しいイメージダウンになる)ことを理由に出廷を拒否していたが、連邦最高裁(判事の大半が共和党系)は原告の訴えを支持した。このため、米保守本流筋は原告のジョーンズを使って大統領を「さからったら法廷に呼び出すぞ」と脅すことができるようになった。
●1996〜1997年、創価学会の池田大作名誉会長は、レイプ裁判を起こされ、この話題が比較的小規模ながら、週刊誌で恒常的に報じられるようになった。これは、上記のクリントンのケースと極めてよく似たタイプのスキャンダルで、「ある勢力」が池田大作に対して「さからったら法廷で辱めるぞ」と脅していると見て間違いない。したがって、政治団体「公明」や新進党の旧公明党系の幹部や、タカ派嫌いの創価学会婦人部が、たとえどんなに小沢一郎個人やその政策を嫌いであっても、彼らは池田会長の指示で小沢一郎を支持しなければならないのである(ことほど左様に新進党における小沢一郎の権力基盤は強いのであって、彼は絶対に今世紀中は当主の座を追われないのだ)。
●1997年8月、数か月空席になっていたアメリカの駐日大使に、小沢一郎と親交のあるフォーリー元下院議長が就任した(これは、アメリカが小沢一郎政権の誕生を望んでいるという趣旨の「メッセージ」である可能性が高い)。
●ジョン・D・ロックフェラー4世は、ロックフェラー財閥の「箱入り息子」として育てられたため、あまり外国に行ったことはない。たとえば、ロスチャイルド家の場合は、その財閥の草創期(18世紀)には、ヨーロッパ5か国に息子を送り込んで現地で金融業を起こさせるといった「冒険」ないし「開拓」をさせているが、このロックフェラー家の場合、とくにジョン・D・ロックフェラー4世の場合には異国でそんな冒険をしたことは皆無で、長期滞在した国は2か国しかない。
●1996年、インドネシアのスハルト政権は米・豪海軍に対して「生意気にも」、それまでフリーパスで許していた両国艦船の領海通過を制限すると言って「恫喝」した。地図を見れば明らかなように、インドネシアが「とおせんぼ」をすると、両国の海軍は太平洋-インド洋での活動がほとんどできなくなる。私がアメリカ海軍の幹部なら、当然、スハルト政権に対してこう思う。
「思い知らせてやる」
日米はポル・ポトの「口」を使って中国を脅迫できる態勢を整えたので、日本は最終的には中国の拒否権に邪魔されることなく、近い将来常任理事国入りを果たすと思われる。
この危機に際して、マレーシアのマハティール首相は、アメリカの投資家ジョージ・ソロスらが、投機資金(ホットマネー)を使って仕掛けたものである、と非難した。
実はこの直前の7月、ASEAN首脳会議があり、そこでミャンマーの加盟を認める決定がなされたため、ミャンマーの軍事独裁政権に反対し、ミャンマーの反体制・民主派政治家アウン・サン・チー女史を支持するジョージ・ソロスが、投機を行って、タイやマレーシアの経済を混乱させようとしたのだ、というのがマハティール首相の言い分であった(つまり、どんなに高潔にみえる民主化運動のリーダーにもスポンサー、すなわち「金づる」がいるのだ。畏れ多い話ではあるが、南アフリカの反アパルトヘイト闘争の英雄にして現大統領のネルソン・マンデラでさえ、冷戦時代にはソ連、冷戦後にはアメリカ保守本流筋の支援を受けて、イギリスの支援を受けた南アの白人政権と戦っていたのだ。まして原発反対運動のような露骨に利権にからむ問題では市民運動に「投資」する者がいないはずはない。これが国際政治の現実である)。
マハティールはかなり反米的で、イスラム諸国の経済会議に出席したり、APEC(アジア太平洋諸国経済会議)と異なるアメリカ抜き独自の経済機構の設立を試みたりしている。
また、タイは冷戦時代に社会主義国家ベトナムの脅威を受け、ベトナムに対抗するために中国に接近したいきさつがあり、フィリピンなどとは違って、必ずしもが中国に脅威を感じておらずむしろ親中国的で、この地域の中国の「橋頭堡」になる恐れもある。
ソロスらの通貨投機は、おそらくアメリカの保守本流筋の意を受けたもので、「アメリカにさからって中国に接近するような国の経済は、いつでも崩壊させてやる」という「恫喝」であろう。今回の投機で、東南アジア諸国は、マレーシアでもタイでも、アメリカの意向にさからえなくなったし、また通貨危機の収拾を日本の融資に頼ったことから、国連で日本の安保理常任理事国入りが論議される場合には、絶対に日本を支持するはずである。
日本の左翼・平和勢力はよく「日本は第二次大戦のときアジアを侵略したことがあるので、アジアで軍事的に活動すれば反感を招く」として、自衛隊の海外派兵に反対する。が、仮にそのような世論がこの地域にあったとしても、日米はマネーの力で、力ずくでそのような世論をねじ伏せることができると証明されたので、日本の第二次大戦への反省が十分であったかどうかとは無関係に、もはや日本は、政治的には東南アジア諸国に対しては、侵略の事実に関していかなる謝罪も反省も行う必要がなくなったのである(ただし、日本の左翼や韓国の世論を「手なずける」テクニックとして、みせかけの謝罪を行うというオプションは、外交ゲームの手段として否定されることはないだろう)。
この法改正は、マスコミではそれまで「コンビニで外貨の両替ができるようになる」といった程度のこととして軽く扱われてきたが、実は、そんな生易しいものではない。
日本国内でドルが通用する状況が生まれたのである。したがって、もし日本が重大な危機に見舞われれば、国民は円を見捨ててドルで預金するようになる可能性があるのである。これは、日本の通貨供給量(マネーサプライ)がアメリカの金融当局(中央銀行にあたるFRB)に左右されることをも意味する。
もし、暴徒がマラッカ海峡を封鎖すれば石油の値上がりでインフレが起きる恐れがあるが、それにこの改正外為法の施行が加わると、相場が急激に円安に振れ、インフレを加速させる恐れがある。
中南米の発展途上諸国などでは、冷戦時代に先進国の金融機関から多額の借金をしたが、それがなかなか返せなかったため、意図的に猛烈なインフレ(たとえば年率100%)を引き起こして、通貨価値を下落させ、昔の借金の「借金価値」も下落させることで、債務を解消した(年率100%のインフレは、1年で債務が実質半減することを意味する)。もちろん、国民は自国通貨を見捨てて、可能な限りドルを持とうとするうようになった。
日本もいま、国の財政のための赤字国債(1995年度末で国債残高は241兆円で、これは当時の全世界の全発展途上国の累積債務残高の合計約180兆円より大きい)や旧国鉄の借金など多額の債務を抱えている。もちろん、日本のような先進国で年率100%のインフレなど非現実的である。が、「5年で100%」なら、さほど非現実的でもない。年15%のインフレを5年続ければ、累計100%になるから、5年で日本の借金は実質半減する。世界各国は日本の財政が破綻して、その波及効果で世界の金融秩序が混乱することを何より恐れているので、日本がインドネシア石油危機などをきっかけに、インフレ政策で債務を解消しようとするなら、支持するに違いない。
インフレで物価が上がると、企業はその分労働者の賃金を上げるが、それは名目上の賃金上昇にすぎず、実質所得は伸びない。が、日本の所得税はかなり厳しい累進課税になっているので、名目賃金があがると税率があがり、実質増税になる(収入100万円で所得税率10%、手取り90万円の人が、年100%のインフレに遭遇して賃上げで収入が200万円になると、税率があがって、たとえば20%になり、手取りは160万円になる。これを1年前の物価水準で見ると80万円なので、手取りは実質10万円減になる)。
インドネシア石油危機後、小沢一郎政権が成立すると、この政権は繰り返し所得税の減税を実行することになる。そうすると(べつに国民の手取りが実質的に増えるわけでもないのに、そうであるかのごとく錯覚され)、この政権は国民から熱狂的に支持される可能性がある。そうすれば、所得税の大幅減税と引き換えに、消費税を大増税して日本の財政を再建するという、小沢の持論が実現しやすくなる(また、圧倒的な支持を背景に憲法改正や行政改革もやりやすくなる)のである。
太田の言動は一見反米的に見える。しかし、彼は当初から日米安保条約そのものには反対しない、と言明していた。米軍基地が必要なら日本全土が公平にその負担を分担すべきで、沖縄一県に日本の米軍基地の90%以上が集中した現状をなんとかしてほしい、と訴えたのにすぎなかった。が、寡占性メディアが彼を「反米の旗手」のごとくまつりあげたため、県民は錯覚し、基地反対派の世論は彼に期待した。
しかし、結局は太田は基地の縮小も、本土への移転もほとんど実現できず、ただ若干の経済振興策を政府に閣議決定の形で約束させたにすぎなかった。基地撤去を求める県民のあいだに「太田さんがあれだけがんばってもだめだったんだから、仕方がない」という、あきらめムードが生まれたことは想像に難くない。つまり、基地撤去を求める反米世論は、太田によって、もののみごとに「ガス抜き」され、無力化されたのである(ただ、太田が普天間基地の代替ヘリポート建設問題で渡米中、代替基地建設地の候補地になってる地元の自治体にも日本政府にもなんの相談もせずに、いきなり米政府に「受け入れ」を表明したのには、がっかりした。太田は、菅や小沢やたすきがけ買収でおなじみの日本KS党の幹部たちに比べれば、明らかに「大根役者」だ。この発言は、彼がもともと米軍基地容認派であり、「雇い主」がアメリカ人である可能性を示唆するものだ。「ギャラ」が安すぎて我慢できなくなったのかもしれないが、こんな「セリフ」の間違いをされては「演技」を楽しむことすらできないではないか)。
もちろん、太田がアメリカのスパイ機関の支持を受けたなどという証拠はない。しかし、これによって、来世紀まで、向こう十数年間、アメリカは米軍基地を使い続けることができる、と「確約」されたことは間違いない。アメリカは、太田の一連の行動に感謝状を贈りたいほど感謝しているに違いない。事実、この騒動の渦中、アメリカ議会は、沖縄県民の永年にわたる米軍基地受け入れに感謝する決議を(単なるリップサービスとはいえ)可決している(「たすきがけ買収」の中の「吉川軍と毛利軍の関係」を参照されたい)。
フォーリーは民主党員だが、正副大統領が万一のとき「核ボタン」を押す権限を持つ下院議長を20年も務めた、つまり「ユタ州・国防省人脈」がその在職を20年間も(スパイ工作でスキャンダルをでっちあげて追い落としたりせずに)容認したことを考えると、彼は、党籍は民主党でも、実際には「隠れ共和党員」の可能性が強い。
たとえば、保守本流人脈の中心であるロックフェラー家の人々はほとんど共和党員だが、現在の当主(家長)のジョン・D・ロックフェラー4世だけは、なぜか民主党の上院議員(ロックフェラー財閥の保有する炭田のあるウェストバージニア州の選出)である。ジョン・D・ロックフェラー4世はいちおう「リベラル」ということになっているが、それを額面どおり受け取る者はほとんどおらず、「玄人筋」はみな彼を「隠れ共和党員」と思っている。
しかし、その2か国が日本とインドネシアなのである。おそらく、ジョン・D・ロックフェラー4世は、インドネシア石油危機を「演出」することに人生のすべてを賭けてきたに違いない。
世界最大の財力を持つ財閥の御曹司が、「リベラル仮面」の演技までして、何十年も前から日本やインドネシアの政情、地政学等々を綿密に研究してきて、その成果をいま発揮しようとしているのだ。日本の政府や左翼や市民運動ごときが少々泣きわめいたぐらいでは、この陰謀は止められまい。彼が鋭敏な頭脳を駆使して綿密な研究を行っているこの数十年の間、日本の左翼・平和勢力はひたすら「ばかの一つ覚え」のように「平和憲法、平和憲法」と繰り返してきた(より正確には「平和憲法」の尻馬に乗って優越感に浸ってきた)。善悪はさておき、「ばか」が「りこう」に勝つのは自然の摂理に反する。