開催国と共謀?


〜シリーズ

「アテネ五輪」

(2)

(Aug. 10, 2004)

要約
本文
はじめに戻る

 

 

 

 

--

■開催国と共謀?〜シリーズ「アテネ五輪」(2)■
04年アテネ五輪本番の、サッカー(男子)予選リーグの組分けは、日本に異常に不利に、韓国に異常に有利になっている。これには理由がある。

次へ
TOP

 

 

 

--

■開催国と共謀?〜シリーズ「アテネ五輪」(2)■

【前回「最強と一流の違い〜シリーズ『アテネ五輪』(1)」は → こちら

 

2年以上前、02年以前から小誌をお読みの方はよくご存知の通り、日本は、93年のJリーグ発足以降、W杯サッカーや五輪サッカー(男子)の、地区予選や本大会予選L(リーグ)の組分け(抽選)では、常に有利な組にはいって来た。

 

理由は簡単だ。もちろん偶然ではない。

FIFA(国際サッカー連盟)など、世界のサッカー・スポーツビジネスの幹部たちは、日本(や米国)のような経済大国でサッカーが盛んになれば、自分たちの利益が大きく増えることに気付いており、そのために日本(と米国)のサッカーチームが国際大会で活躍(有利な組分けのお陰で上位に進出)できるように、組分け抽選に手心を加えて来たからだ。

 

次へ
要約に戻る
TOP

 

 

--

【逆に、韓国でサッカーが盛んになることには、FIFAはなんの魅力も感じていない。欧州サッカー選手権(EURO 2004)の公式ホームページに日本語版はあっても、韓国語版がないことで明らかなように、韓国人は(日本人と違って)欧州など外国の一流サッカー選手に関心がなく、欧州にとってはTV放送権やキャラクターグッズ販売のメリットがほとんどないので、欧州を中心とする世界のサッカービジネスの幹部たちは、韓国を活躍(有利な組分けで上位に進出)させる必要を感じていない。韓国で開催された02年W杯の本大会予選Lですら、韓国は強豪(ポルトガル、米国)の集まる不利な組に入れられ、対ポルトガル戦の「偏向判定」のお陰でかろうじて予選Lを突破できたにすぎない。】

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

この「組分け抽選の不正」(小誌02年5月28日)は、単に特定チーム(日本)が予選Lを突破する確率を上げるだけの「間接的な操作」であり、上記(02年6月14日の)W杯本大会「韓国対ポルトガル」戦で主審に2枚のレッドカードを出させて強引に韓国を勝たせたような「直接的な操作」(小誌02年6月13日配信記事が試合前日に予言)ほど露骨な不正ではないので、比較的良心の呵責なく手軽に実行できるようだ。

 

W杯本大会予選Lや五輪本番予選Lの組分け抽選会では、「同じ大陸の国が同じ組にかたまらないように」などと理屈を付けて、くじのはいった箱の中身を頻繁に入れ替えるので、不正を行うのは容易だ。

 

日韓共催02年W杯本大会・韓国R(ラウンド)の観客動員不足に悩んでいた主催国・韓国は、この「箱の中身の入れ替え」を悪用して、韓国に近くて観戦ツアー客の動員が容易な中国を、強引に予選Lの韓国側の組に割り振った(小誌02年5月28日「●韓国の露骨な『くじ引き干渉』」。産経新聞はこの組分け抽選会の前日、01年11月30日付朝刊2面「主張」で、大手新聞として初めて、くじ引きの不正に言及し、中国が韓国側の組にはいると予言)。

 

このように、国際(男子)サッカー界では、組分け抽選の不正は頻繁に行われ、かつ、ほとんどの場合、日本(と米国)に有利に行われるため、筆者は、04年アテネ五輪本番の予選Lでも、日本は有利な組に(韓国は不利な組に)はいるだろうと予想していた。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

が、結果は逆だった。

日本は、アテネ五輪欧州地区予選を兼ねたU21(21歳以下)欧州選手権優勝のイタリア、五輪南米地区予選で強豪ブラジルを退けて出場権を得たパラグアイなどの集まる、B組にはいった。まさに「死のグループ」(産経新聞04年年6月10日付朝刊25面)である。

 

反対に韓国は「ラクなグループ」にはいった。少なくとも組分け抽選会が行われた時点(04年6月9日)では、韓国の属するA組には、強豪と呼べる国はメキシコしかおらず、あとはアフリカのマリ、開催国ギリシャなのだから、韓国の予選L突破確率はかなり高いと思われた。

 

以下の表は、組分け抽選会の結果を、上から欧州、アフリカ、北中米・南米、アジア・オセアニアの地区代表順に並べ、04年6月の抽選会当時と、04年8月現在の、FIFAの国別ランキングを各々左から付記したものである。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

●A組:

ギリシャ(35位、14位)

マリ(46位、46位)

メキシコ(04位、08位)

韓国(20位、22位)

 

●B組:

イタリア(10位、09位)

ガーナ(89位、70位)

パラグアイ(25位、22位)

日本(23位、20位)

 

●C組:

セルビア・モンテネグロ (44位、44位)

チュニジア(33位、36位)

アルゼンチン(05位、04位)

豪州(49位、57位)

 

●D組:

ポルトガル(22位、12位)

モロッコ(33位、33位)

コスタリカ(26位、28位)

イラク(45位、40位)

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

一見して明らかなとおり、日本のいるB組には抽選会当時のランク30位以内の国が3か国も集中しているのに、他の組はすべて2か国以下だ。日本は30位以内の国2か国と戦う運命を与えられ、他方、韓国は30位以内の国1か国とだけ戦えばよいことになり、日本の不利、韓国の有利は、当時は明白だった。

 

C組には30位以内はアルゼンチンしかいないので、そして、上記の如くくじ引きの途中で「箱の中身」を入れ替えるのは簡単なので、B組の、強すぎる欧州勢イタリアを、C組のセルビア・モンテネグロ(旧ユーゴ)と入れ替えてバランスを取る(日本を有利にする)ことは可能だったし、また、B組の、同じく強過ぎる北中南米勢パラグアイを、D組のコスタリカと入れ替える小細工も可能だった。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

が、そうした細工をしなかったところを見ると、どうやらFIFAの対日戦略「ドーハのひいき」(小誌Web版97年12月14日)は終わったようだ。理由としては、日本がひいきの必要がないほど十分に実力を付けたこともあるが、EUROなど日本の出ない国際試合でも十分に関心を持つほど、日本人のサッカー熱が高まり、欧州人を中心とするFIFAから見て、日本が市場として十分に成熟したことが考えられる(が、実は違う。詳論後出)。

 

では、なぜ今回、韓国はひいきしてもらえたのだろう?

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

●韓国人が日程担当●

韓国は、GDP(国内総生産)が日本の1/10しかないうえ、欧州サッカーへの関心も薄く、FIFAにとって、市場として育成する価値はほとんどない。

 

ただ、韓国人の鄭夢準(チョン・モンジュン)がFIFA副会長なので、韓国はこれまで、W杯や五輪のアジア地区予選で日程や組分けを(97年のW杯アジア地区最終予選で、韓国を中東勢のほとんどいない組に入れ、かつアウェーの、中東での唯一の試合をいちばん最後の、W杯出場決定後の「消化試合」にしたこと、など)韓国に有利にすることには成功して来たし、02年W杯本大会では、審判に偏向判定をさせて韓国をベスト4にもした。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

が、元々日本に比べてサッカー競技人口が数十分の1しかないため選手層が薄く、実力のない韓国は、日本が決勝T(トーナメント)に進んだ00年シドニー五輪で予選L敗退に終わるなど、五輪では常に日本の後塵を拝して来た。

 

04年アテネ五輪本番では、鄭夢準がFIFA五輪分科委員会の副委員長として五輪の日程を担当することになったので(民団新聞Web版03年11月26日)、ようやく念願かなって(にっくき日本を「死のグループ」に押し込み?)韓国を「ラクなグループ」に入れることに成功した。組分け抽選の時点では、韓国の属するA組の、メキシコ以外の対戦相手、ギリシャとマリはいずれも韓国よりFIFAランクが低く、ラクな相手と予想された。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

●実はギリシャに有利●
ところが、韓国にとっての大誤算が起きる。アテネ五輪開催国としてサッカーを強化して来たギリシャが、組分け抽選のあと、04年6〜7月にポルトガルで開催されたEURO 2004で強化策が結実して優勝し、一躍「欧州の強豪」になってしまったのだ。

 

もちろん、EUROに出たのはA代表、五輪に出るのはU23(23歳以下)の五輪代表、という違いはある。が、後者には五輪本番では3人のオーバーエージ(OA)枠が認められ、A代表の23歳を超える選手を入れて補強できるし、U23とOA選手のチームワークの確立も(オランダでプレーする日本のOA選手MF小野伸二が五輪直前のドイツ合宿でやっと合流する、など複雑な事情を抱える日本や欧州諸国と違って)全員を地元ギリシャに集めておくだけで簡単にできる。

 

ギリシャが韓国(鄭夢準)が期待するほど弱い、という保証はなく、韓国の予選L突破はかなり怪しくなって来た。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

反面、この組分けは、「韓国に有利」というより「ギリシャに有利」なのではあるまいか。

ギリシャは自身が欧州勢なので、他の欧州の強豪(イタリア、ポルトガル)と同じ組にはならない。韓国はこの点をとらえて「欧州の弱国」ギリシャと同じ組にはいれば有利と考え、ギリシャに「取り引き」を持ちかけたに相違ない。

 

ギリシャにとって韓国は、アジア・オセアニア勢のなかでは「こちらからお願いしたい」くらい弱い国だ。

たしかに韓国のFIFAランクは30位以内だが、これは、あの偏向判定で欧州勢(ポルトガル、イタリア、スペイン)に勝った、02年W杯本大会での「不正な勝利」の貯金によるものだ。FIFAランクは、年齢制限のないA代表同士が戦う「国際Aマッチ」の勝敗で点数を付け、それを期間を区切って累計することで決定されるが、同じAマッチの勝利でも、2国間の親善試合よりEUROやアジア杯のような大陸別カップ戦の勝利が、大陸別カップ戦より世界のカップ戦(W杯)の勝利が、それぞれ高く評価される。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

02年W杯本大会の韓国が、偏向判定がなければ予選Lで敗退していたことは、ギリシャを含む欧州のサッカー関係者はみな知っているので、韓国のFIFAランクは正しく評価すれば、30〜40位台(イラク並み?)と思われているはずだ。

 

日本でなく豪州でなく、そのような「弱い韓国」と対戦できることは、ギリシャにとって「渡りに船」だったろう。ギリシャは五輪開催国でありながら、サッカー以外にメダルの取れそうな種目があまりないので、韓国をたたいて確実に予選Lを突破できるとなれば、こんな有り難い話はない。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

●開催国と共謀?●

02年W杯本大会における韓国の切り札は、 FW安貞桓(アン・ジョンファン)ではなく、審判の判定(審判への賄賂?)だった。では、五輪でもまた、韓国が偏向判定で上位進出する、という事態があるのだろうか。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

 

--

04年アジア杯サッカーでは、開催国・中国は優勝をねらい、そのために決勝戦で日本とあたる前に日本を敗退させようとして、日本戦の審判には、決勝戦以外すべての試合で日本に不利な偏向判定をさせることに成功した(が、それらをすべてはね返して日本が優勝してしまった。小誌臨時増刊04年8月4日「また審判買収疑惑」を参照)。

 

02年W杯、04年アジア杯に共通しているのは、「開催国は審判に偏向判定をさせることができる」という事実である。したがって、アテネ五輪では、開催国ギリシャは、自国に有利な偏向判定を引き出せる。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

が、開催国でない国が、審判に偏向判定をさせて成功した例は、五輪のほかの種目を見渡しても、皆無である。

 

84年ロス五輪のボクシング・全階級と体操・男子団体における米国の、分不相応な圧勝、88年ソウル五輪のボクシングにおける「ダウンを奪われた韓国選手の勝利」はいずれも開催国有利の偏向判定だったので、成功したのだ(小誌02年6月17日「●原点はロス五輪」)。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

他方、02年ソルトレーク五輪の、フィギュアスケート・ペアの露チームへの(フランス人審判のえこひいきによる)高得点は、開催国(米国)有利の判定ではなく、フィギュアスケート・アイスダンスで仏チームにロシア人審判からの、「見返り」としての高得点を期待する、開催国を無視した露仏間の「裏取り引き」だった。このため、不正判定の「被害者」だったカナダ選手団や北米のマスコミによって「審判買収疑惑」を指摘され、最終的には、カナダ・チームの順位が2位から1位に変更されて「表彰式のやり直し」という異例の事態になっている(スポニチWeb版02年2月17日)。

 

つまり、アテネ五輪では、開催国でない韓国は、審判の偏向判定によって強豪メキシコに勝つのはほぼ不可能なのだ。逆に開催国ギリシャは、実力でも審判の偏向判定でも、どちらの方法でも韓国に勝てるので、結局韓国は、予選Lは1勝2敗に終わり、00年シドニー五輪に続き、またしても決勝T(トーナメント)に進めないのではないか、と思われる。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

韓国が確実に決勝Tに進むには、ギリシャに対して「ギリシャに負けてあげるから、メキシコには勝たせてくれ」という裏取り引きをもちかけるしかない。が、たとえ「韓国・ギリシャ同盟」がA組の審判を組織的に買収して「内輪」で話が付いたとしても、欧州のマスコミがメキシコの敗退に疑問を抱けば、ソルトレーク五輪のフィギュアスケートと同じことになるので、国際サッカー界で韓国はかえって苦境に立つことになろう。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

カギは、欧州がメキシコに同情するかどうか、だ。

ソルトレーク五輪の「疑惑報道」は、米国(のマスコミ)がカナダに同情した結果である。米国とカナダは同じ言語で結ばれた北米の隣国同士だった。

 

欧州にはメキシコと同じ言語で結ばれたスペインというサッカー大国があるが、メキシコ人は歴史的に欧州人に敵愾心を抱いている、という面もあり、この点はやってみないとわからない

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

ただ、シドニー五輪と違って今回は、日本が「死のグループ」にいて、予選Lを突破できない可能性が高いので、韓国は「日本の後塵を拝する」事態を恐れることはなく、敢えて偏向判定に期待する必要もないように思われる。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

--

但し、日本が8月12日のパラグアイ戦(か15日のイタリア戦)に勝って予選L突破の可能性が高まると、また例によって韓国では「日本に遅れるな!」の感情が高まるため、鄭夢準は、欧州とメキシコの不仲に期待して「危険な賭け」に出るのではないか、と懸念される。

 

ああ、メキシコ(やマリ)の選手が涙を流して審判に抗議する姿が、目に浮かぶ。

 

次へ
前へ
TOP

 

 

 

--

 (敬称略)

次へ
TOP

 

 

 

 

 

 

 

--

【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
次回メルマガ配信の予約は → こちら
尚、日本の携帯電話は200機種以上あり(PCと違って)それぞれの仕様が著しく異なるため、全機種での動作を確認し保証することができません。あしからずご了承下さいませ。】

次へ
前へ
TOP

 

 

 

 

--

追伸1:
本誌へのご意見、投書は、投稿者氏名等の個人情報を伏せたうえで、本誌上で紹介させて頂くことがございます。あらかじめご了承下さいませ。
本メールマガジンは筆者(佐々木敏)のサポートスタッフにより運営されており、本号は創刊準備号です。
ご登録やバックナンバー、内容紹介は、 こちらをご利用ください。
本メールマガジンの送信を停止するには、 こちらをご利用ください。
送信先アドレスを変更する場合もこちらでできます。お手数ですが、旧アドレスの「退会」、新アドレスの「登録」という2つの操作をお願い致します。

次へ
前へ
TOP

 

 

 

--

追伸2:
本メールマガジンにご意見等を投書されたい方は本メールマガジンに返信する形で投書を下されば、スタッフ(編集部)によるセキュリティ等のチェックを経て、数日後に筆者に転送されます。
但し、melma.comおよびegg.stのシステム上、誠に申し訳ございませんが、本メールマガジンに返信されても「退会」手続きは成立しません。

Copyright (C) 2004 by Satoshi Sasaki
All rights reserved. 不許複製、禁無断転載

次へ
前へ
TOP

 

 

 

 

 

 

 

 

--

TOP

はじめに戻る