■決勝戦は左腕2枚〜シリーズ「アテネ五輪」(3d)■

04年8月17日(日本時間18日)のアテネ五輪野球・本番予選L(リーグ)「日本対キューバ」戦で、打球を右腕に受けて負傷した日本の先発投手・松坂大輔(西武)を、中畑清・監督代行は「非情にも」続投させ、救援左腕投手の岩瀬仁紀(中日)の登板を節約。これは、来たるべきキューバとの決勝戦に、左腕を苦手とするキューバが(壮行試合も含めて)一度も実戦で対戦したことのない2人の左腕投手(先発のダイエーの和田毅と抑えの岩瀬)を投入して確実に勝ちたい、という「内野手出身の監督」ならではの、執念深い采配。

■決勝戦は左腕2枚〜シリーズ「アテネ五輪」(3d)■

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【前回「内野手出身の監督〜シリーズ『アテネ五輪(3)』」は → こちら】

04年8月17日(日本時間18日)に行われた、アテネ五輪野球の本番予選L(リーグ)「日本対キューバ」戦四回裏、好投していた先発投手・松坂大輔(西武)が右腕に打球を受け、負傷した。

それを現地で見ていたTV中継(テレビ朝日、NHK-BS1)解説者の星野仙一・前阪神監督(元投手)は、投手生命の危険もありうるから、という理由で「もう投げさせてはいけない」と断言し、岩瀬仁紀(中日)ら救援投手を登板させるべきだ、と生放送の中で主張した。

ところが、野球日本代表(長嶋JAPAN)の中畑清・監督代行(元内野手)は「非情にも」続投を命じ、九回裏一死まで約130球を投げ、結局「準完投」試合。

もし投手出身の監督なら、松坂を四回で降板させ、岩瀬ら救援投手を総動員して、継投で勝ちに行くはずだ。

が、それをやると、岩瀬の球筋をキューバの打者が実戦で体感してしまうことになる。

●左腕に弱いキューバ●

キューバは左腕投手に弱い。

ラテン系特有の文化的な理由からか、キューバ国内に左利きが少なく、国内Lに左腕投手が少ないため、キューバの打者は左腕に不慣れで、過去の日本との国際(親善)試合でも、日本の左腕に苦戦している。

長嶋JAPANは、7月にキューバと五輪壮行試合2試合を戦っているが、先発投手・和田毅(ダイエー)と岩瀬の左腕2人は登板させなかった(長嶋JAPANに3人いる左腕のうち、もう1人の、ヤクルトの石井弘寿は壮行試合で投げた)。

中畑は17日のキューバ戦の直前、長嶋茂雄・代表監督の「打倒キューバ」への思いを込めたメッセージを松坂を含む全選手に聞かせたが(夕刊フジWeb版04年8月18日「ミスター450字メッセージ『私の悲願』へ集中を!」)、これを聞いた松坂は相当に発奮した、という。

つまり、中畑(と長嶋)は、この日松坂をできるだけ長く、できれば九回まで引っ張ることで、岩瀬を使わずにキューバに勝ちたかったのだ。そうすれば、キューバは決勝T(トーナメント)の、おそらく決勝戦で再び日本と対戦するとき、先発の和田、抑えの岩瀬、というまったく未知の、苦手な左腕を2人も相手にしなければならなくなり、圧倒的に日本が優位に立てるからだ。

【もちろん、和田や岩瀬の投球は、アテネ五輪や日本のプロ野球のビデオで見られるが、ビデオで見るのと、実際に打席に立って球筋を見るのとでは、まったく違う。敵の「手の内」を知るには、やはりキューバ打線は一度、打席で和田や岩瀬の投球を見たかったはずだが、その機会はもう決勝Tの「ぶっつけ本番」まで来ない。】

中畑(と長嶋)は17日、「怪我人」の松坂を続投させて、救援投手には石井1人を登板させるだけで乗り切った。投手出身の星野などとはまったく発想の異なる、まさに「内野手出身の監督」ならではの(投手に対して冷酷非情な?)勝利への執念だ(前回「内野手出身の監督」を参照)。

【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
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