TVCMのURL表示制限

 

〜シリーズ

砕氷船ライブドア」

(4)

(April 18, 2005)

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■TVCMのURL表示制限〜シリーズ「砕氷船ライブドア」(4)■

ライブドアが暴露した、民放TV局による、CM中のインターネットアドレス(URL)表示の秒数制限は、独禁法違反の疑いがある。

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■TVCMのURL表示制限〜シリーズ「砕氷船ライブドア」(4)■

 

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【前々々々回「CMスキップ戦争〜シリーズ『砕氷船ライブドア』(3)」は → こちら

 

【前々々回「月面着陸を否定〜露大統領、NASAの虚構を暴露」は → こちら

 

【前々回「NASAと決別〜ESA長官、米宇宙科学を非難」はWeb版もblog版もありません。】

 

【前回「専門家もだまされた〜『アポロ疑惑』研究者がひっかかるとは!?」は → こちら

 

ライブドアの堀江貴文社長は、自身のブログ「社長日記」(05年3月20日付)の中で、TVにおけるインターネット(Webサイト)アドレスの表示制限について不満を述べている。同社が提供していたテレビ朝日の番組『指名手配』(04年10月〜05年3月、毎週水曜深夜放送)の番組本編中に同社のアドレス(www.livedoor.com)を表示しようとして断られ、TVCM中に表示する場合も1秒間のみという厳しい制限を示された、というのだ。

 

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ほんとうに、そんなナンセンスなことがあるのか?

しかし、ライブドアはともかく、松下電器(diga.jp)やマツダ(www.mazda.co.jp)のような一流企業のURLも、05年4月現在のTVCMでは1秒前後しか表示されないのだ。これに気付いて疑問を抱いた筆者は4月5日、日本民間放送連盟(民放連)とテレビ朝日に問い合わせてみたが、いずれも制限は「ない」という答えだった。たしかに民放連の放送基準を見てもそんな条文はなく、強いて挙げれば「18章 広告の時間基準」150条に「スーパーインポーズ[字幕]は、番組中においてコマーシャルとして使用しない」という規定があるぐらいだ。

 

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が、民放連では代表番号への電話をとった女性が担当者を呼び出すのに数分かかったのに、テレビ朝日ではなんと電話をとった女性がそのまま、まるでこの種の質問を予期していたかのように「ない」と言い張ったので、筆者の疑問は解消しなかった。

 

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そこでTV番組制作会社に取材した。

その結果、番組本編中で「livedoor.com」の表示を断るのは、そのサイトのブログ検索コーナーなどからリンクでアダルトサイトなどにつながる恐れがあるので、TV局として妥当な判断、とのことだった。

 

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しかし、番組本編中でなく、CM中のアドレス表示がみな1秒前後であることには合理的な理由が見当たらなかったので、筆者はさらに取材した。すると、TV広告業界関係者から、実は制限が「ある」ことを示す2通の文書を入手できた。

 

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●秘密の指針●

その文書とは、ある地域の「テレビ局CM責任者会議」なる機関が定めた「合意」と、それに運用方法を加筆した「指針」という、いずれも01年3月1日付のものだ。

 

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「合意」は第1条第1項で「表示内容がインターネットのアドレスだけのCMは、原則としてお断りします」、同条第2項で「インターネットへ誘引する表現も、同様にお断りします」、同条第3項で「インターネットのアドレスの表示秒数及び表示の大きさについては局の定める範囲内とします」とうたっている。

 

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それを踏まえて作成された「指針」は前文で「表題の申し合わせ[「合意」]を運用するにあたり……[TV]局内用の指針を作成」したと述べたうえで、第1条第1項で「内容がインターネット・アドレス(以下、URLとする)の紹介だけのCMは、テレビがURLのアドレス帳化することになり、媒体価値の低下につながるので、原則としてお断りします」とインターネットへの明白な「敵意」を示している。

 

続いて同条第2項では「インターネットへ誘引する表現とは、例えば『詳しくは...』、『この続きは...』、『この答えは...』等です」と具体的な「禁止事項」を列挙し、さらに同条第3項では「URLの表示時間はCMの1/2以内、表示の大きさは画面の1/4以内とします」と定めている。

 

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関係者によると、これは局地的な基準ではあるが、東京など他地域の民放TV局も(上記のような文書は作成していないものの)この「先進事例」に準拠して広告主(スポンサー)からのアドレス表示要求を、05年4月現在に至るまで実質的に制限しているそうだ。つまり、堀江が指摘した「制限」は、CMに関しては実在するのだ。

 

じっさい、05年4月からの、東京地区の地上波民放TVのCMを見ると、キリン(www.kirin.co.jp)、ゼット(zett.jp)、コジマ(www.kojima.net)、アコム(acom.jp)、チューリッヒ(www.zurich.co.jp)など、いずれも約1秒間しか表示されない。資生堂の「化粧惑星」のCMでは、URLの表示は1秒どころか0.5秒にも満たない、ほんの一瞬であるため、それを見て視聴者が資生堂のWebサイトにアクセスすることはありえない。東京電力の「tepcoひかり」のCMも、やはり約1秒の表示だけで、音声で読み上げてくれないので、筆者はずっと「www.tepco.co.jp」と思っていたが、実際は「www.tepco.ne.jp」だと最近気が付いた。

 

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●独禁法違反?●

つまり、民放TV局は、広告主が自社サイトに視聴者を誘引するURL表示を、けっして露骨に拒みはしないものの、表示秒数を制限し、音声で補足しないことによって、実質的に妨害しているのだ。

 

これは独占禁止法(独禁法)でいう「不公正な取引」ではないだろうか。

地上波民放TV各局が「合意」「指針」に基いて、URL表示の秒数や音声を一律に規制することは、まさに独禁法第2条第9項の4「相手方[広告主]の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引すること」と同法同条同項の5「自己の取引上の地位(地上波放送免許を得た数少ない業者)を不当に利用して相手方と取引すること」に該当し、違法ではないか。

 

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もし筆者が堀江の側近なら、堀江がフジサンケイグループ(FCG)への敵対的買収に乗り出す前に「ミネベア事件」(小誌05年2月17日「砕氷船ライブドア」)の先例を堀江に話し、「第三者から手痛い反撃を受け、ミネベアと同様にみじめな結果に終わる恐れがあるから、やめよう」と諌める。それでも堀江が「『3日天下』は覚悟のうえでイチかバチか勝負したい」と言ったら、黙って従うが、(FCG全体の親会社だった)ニッポン放送(JOLF)の乗っ取り(株式の過半数取得)が完了した05年3月末の時点で「(ソニー、ソフトバンクなどライブドアより資金力のある企業がライブドア自身への乗っ取りに動かないうちに)LF株をすべてフジテレビに高く売って(フジからの出資など受けずに)撤退しよう」とふたたび諫言する。

 

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【05年3月25日、フジがソニーなどに安定株主になってほしいと要請していたことが判明している(日経新聞Web版05年3月26日)。】

 

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もちろんそんなことをすれば、「元々キャピタルゲイン(利ざや)目当てのマネーゲームだったのか」「放送と通信(インターネット)の融合だのなんだのと、メディア革命でもやるかのような、偉そうなことを言ってたくせに」と、堀江はマスコミから激しく非難される。しかし、撤退と同時に、こんどはテレビ朝日を独禁法違反で公正取引委員会(公取委)に訴えればいい。そうすれば、民放はともかく、NHKや週刊誌は「すわ、メディア革命か」と大騒ぎするはずだ。それで堀江は「革命児」としての名誉を得られる。

 

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堀江は証券取引法には詳しいが、独禁法は念頭にないようだ。05年4月18日、ライブドアはFCGと和解し、LF株をすべてフジに売る代わりに、フジからライブドアへの出資を、十数%ながら受けることになったが(読売新聞Web版05年4月18日「フジとライブドア、提携合意を発表」)、そんな、資本関係上の「支配」を民放から受けてしまったら、メディア革命などできるわけがない。報道によると、ライブドアが熱望していたフジとの業務提携の内容に関しては「両社が合同委員会を設けてこれから協議する」というから、ライブドアはLF株を手放したあと、フジにはぐらかされる恐れがある。FCGがライブドアのスキャンダルをほじくり出して非難し「あんな問題企業とは業務提携すべきでない」という世論が形成されてしまえば、合同委員会の開催が「無期延期」されるか、業務提携の中身が骨抜きにされるに決まっている。

 

資本でフジに支配されるぐらいなら、このままLF株を持って「ラジオとインターネットの融合」などと突っ張っていたほうが(LFの収益や資産も連結決算で取り込めるので)まだマシだ。堀江には有能な側近がいないらしい。

 

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●規制強化●

広告主各社の宣伝部は、インターネットに広告を出せば日時別「クリック数」など直接的な宣伝効果を示すデータが得られるし、その広告からネット通販やアンケートのサイトに誘引すればもっと多くの顧客情報が手にはいる。ところが、TVにCMを出しても、視聴率から宣伝効果を想像するしかなく、直接的な手応えは何もない。ならば、広告主がTV視聴者を自社サイトに誘引したくなるのは当然ではないか。

 

が、それはTV(放送)がインターネット(通信)への単なる「踏み台」になることを意味し、TVの媒体価値は明らかに低下する。広告主は「踏み台」に割いていた予算を削ってインターネット広告にまわすようになるので、TV局が軸足を地上波無料放送からデジタル有料放送に移すなど、既存のビジネスモデルをよほど劇的に変えない限り、このような「放送と通信の融合」はTV局にとっては減収減益にしかならない。

 

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【堀江がFCG乗っ取りを開始した05年2月8日の記者会見で、「融合」によって両者がトクをするwin/winの関係をめざす(MBS Web 05年2月9日「ライブドア、ニッポン放送株35%取得」)と述べていたのは、明らかにウソだ。現状では「放送」側が一方的に損をすることは間違いない。】

 

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「指針」第1条第3項に準拠すれば、15秒版のCMでは1/2の7.5秒間URLを表示できるはずだ。が、クリック数などのデータを片手に「もっと融合を進めろ」と迫りかねない広告主の圧力をかわすため、各TV局は独自に(一律に?)基準を設けて事実上1秒前後にまで短縮させた。

 

そのうえ、音声による補足でも規制を強め、プライムタイム(午後7〜11時)からはURLを読み上げるCMは消えた。「サンケイシーオージェーピーリーダー♪」(www.sankei.co.jp/reader/)と女子アナが歌う産経新聞のCMも、URLの末尾(.co.jp)を「テン〜コテンジェーピー♪」と歌うツカサのウィークリーマンションのCMも、いつのまにか消えている…………これらの変化は、これ以上直接的な顧客情報を広告主に渡したくない、というTV局側の「決意」の表れではないのか。

 

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とはいえ、たとえ1秒でも「diga.jp」のURLが画面に出れば、松下電器は得意のIT技術を駆使して、それによる自社サイトへのアクセス数のわずかな変動を計測し、それと視聴率やディーガ(DIGA)の売り上げとの相関関係を研究できる。もし松下電器が「現在のCMはあまり効果がない」と判断してURLを「15秒間出しっぱなしにしろ」と要求して来たら、あるいはその「研究成果」を片手に「HDDレコーダーのDIGAを使った、TVとインターネットが連動(融合)した次世代CM(たとえば視聴者が選択可能な数分間のインフォマーシャル)を開発しよう」と提案して来たら、そしてその提案に他の広告主多数も賛同したら、いったいTV局側はどうするのだろう? 米国ではすでにそういう次世代CMの技術が実用化されている(ITmedia 04年11月22日「テレビコマーシャル時代の終焉」(3))。

 

いまや広告主、とくに松下電器のような家電メーカーは、日本の民放TV局にとって最大の「敵」になったのではないか。

 

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●視聴者は第三者●

これはTV局と広告主の戦いであり、視聴者は一切関係ない。だから、堀江のFCG乗っ取りで話題になった「ジャーナリズムのあり方」論や「放送の公共性」などの議論はまったく必要ない。

 

筆者はテレビ朝日にはなんの恨みも不満もないので、べつにライブドアにテレビ朝日と戦って勝ってほしいとは思わない(独禁法は「極悪非道」な犯人を裁くための刑法とは異なり、商取引を「適正化」するためのものにすぎない)。

 

広告主はTV局を訴えたければ訴えればいいが、筆者はべつに応援する気はない。ただ、TV局側は今後はそういうこともありうると判断して対策を用意しておくべきだろう。現在の「約1秒、音声なし」の規制は、筆者が指摘せずとも、いずれ多くの広告主から批判され、あるいは次世代CMの企画や技術を突き付けられて、近い将来破綻することが目に見えている。

 

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話は変わるが、東シナ海の日中中間線に近い大陸棚にある石油ガス資源鉱区の開発では、中国側が日本の権益を侵しかねない形で独断専行し、それを日本側が「事なかれ主義」で黙認し、何十年間も問題の先送りに終始して来た。その間中国の海軍力が増強されたので、今後日本が正当な権益確保のための開発に、遅ればせながら乗り出すと「武力衝突」すら招きかねない事態に立ち至っている。

 

平松茂雄・杏林大教授は「中国を侮り、何か問題が起きるとその場しのぎの対応をし、二言目には法整備[合法的な対抗策]がないと言い訳する手法は、もはや通用しない」と日本政府を叱っているが(産経新聞05年4月13日付朝刊15面「正論:もはや弥縫策は通じぬガス田開発〜試掘の実施は相当な政治決断で」)、「中国」を「インターネット」に置き換えれば、これはほとんどそのまま日本の民放TVへの警告となる。TV各局のトップに、自社のビジネスモデルを大転換する「政治決断」が求められる時代が、目の前まで来ているのだ。もう先送りは許されない。

 

【CDMA 1X WIN で機種がW11H/W11Kの方は、『踊る大捜査線』の作者・君塚良一氏推薦の、佐々木敏の小説『中途採用捜査官 SAT、警視庁に突入せよ!』電子版(本文のみ \1260)をお読み頂けます。ご購入は → http://ez.spacetownbooks.jp/esharp_test/Top

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 (敬称略)

 

 

 

 

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