FIFAが冷遇する国
〜シリーズ
「06年W杯サッカー
本大会(抽選工作)」
(3)
■FIFAが冷遇する国〜シリーズ「06年W杯サッカー本大会(抽選工作)」(3)■
05年12月9日に行われた06年W杯サッカー本大会予選リーグ(L)の組分け抽選会の結果から、「韓国とは距離を置きたいし、アフリカ勢には予選Lで敗退してほしい」というFIFAの本音が見える。
■FIFAが冷遇する国〜シリーズ「06年W杯サッカー本大会(抽選工作)」(3)■
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【前回「抽選方式の矛盾〜シリーズ『06年W杯サッカー本大会(抽選工作)』(2)」は → こちら】
05年12月9日に開催国ドイツのライプチヒで行われた、国際サッカー連盟(FIFA)主催の06年ワールドカップ(W杯)サッカー本大会予選リーグ(L)の組分け抽選会に、FIFAは「サッカーの神様」ペレ、元ドイツ代表主将ローター・マテウス、元オランダ代表主将ヨハン・クライフら往年の名選手とともに、元日本代表の中山雅史、元米国代表のコビ・ジョーンズを招待し、抽選のくじを引く大役を与えた。
厳密に言えば、中山とジョーンズの役割は組分け抽選ではなく、グループ内の対戦順を決めるくじを引くことであり、各国の運命を決する(FIFAが不正を行ってでも操作したい?)「組分け抽選」そのものではなかった。が、抽選会のスペシャルゲストが、日米、2大経済大国から招かれたことは間違いない。
「大役」はほかに元カメルーン代表のロジェ・ミラ、元フランス代表のクリスチャン・カランブー、元南アフリカ代表のルーカス・ラデベにも与えられた。
日本は前回、フランスは前々回、米国は前々々回本大会の開催国で、南アフリカは次回(10年)の開催国だから、そういう国から「くじ引きゲスト」を呼ぶのは当然かもしれない。
●韓国離れ●
他方、日本とともに前回02年本大会の開催国で、しかもベスト4に進出して歴史を作ったはずの韓国からはだれも呼ばれなかった。まるで、02年本大会が日韓共催だったことを忘れたかのような、ずいぶん冷淡な扱いだ。
国内総生産(GDP)が世界一の米国と2位の日本でサッカーが盛んになれば、FIFAの利益はもっと増える。だから、この2大経済大国を重視するのは当然だ。が、一度も開催国になったことのないオランダやカメルーンからゲストを呼ぶのに、韓国から呼ばないとは………もう二度と韓国で本大会を開催することはない、とFIFAは見限っているのだろうが、まるで掌を返したかのような冷たさだ。
韓国は(人口が日本の1/3以上の約4800万人もいて、プロ野球の球団も8つあるのに)高校野球をやっている学校が全国で約50しかない、という極端なスポーツ後進国だ(日本で硬式野球部を持つ高校は4000以上。小誌05年11月28日「日韓野球格差〜半永久的に変わらぬ構図」)。韓国ではスポーツは「恵まれた環境にある一部のエリートがたしなむ特殊なもの」であり、韓国国民はサッカーも含めて、スポーツそのものが好きなわけではない。ただ、歴史が浅く、脆弱なナショナリズムを糊塗するため、「(戦争の代わりに)自国が勝つところが見たい」「日本が負けるところが見たい」と騒いでいるだけだ。
だから、外国の一流選手への敬意などひとかけらもない。02年本大会決勝トーナメント(T)韓国ラウンド初戦「ドイツ対パラグアイ」戦の観客席はがらがらで、チケットは半分近く、約14,000枚も売れ残った(小誌02年6月17日「●断ちがたい不正判定の誘惑」)。この「がらがらの観客席」はそのまま全世界に生中継され、世界中のサッカー関係者の怒りを買った。すなわち、韓国が、サッカーそのものが好きなわけでもないのに、「日本に単独開催させたくない」という、欧州諸国から見てなんら同情するに値しない、くだらないわがままのために、W杯本大会をおもちゃにしたことが、わかったからだ。この試合に出たチームからは「韓国主催当局はW杯サッカーの魅力を韓国内に伝える努力を十分にしたのか」という非難の声が上がった(小誌02年6月23日「●次は負けるはず」)。
もちろん、なんの努力もしていない。韓国のマスコミは「日本に遅れをとるな」「韓国は絶対勝つ」という「大本営発表」に終始していたのだから。当然、02年6月14日の「韓国対ポルトガル」戦で韓国が勝ったのは、ポルトガルにレッドカードが2枚出る、という異常な「誤審」のお陰であることなど(小誌02年6月13日の予測記事「●いまこそ『奥の手』を〜審判に『期待』」)韓国内ではだれも冷静に考えようとしない。
それに比べて、日本には「ベッカム様」のファンが大勢いる。日本人は、自国の出ない試合でも、たとえばブラジル対イングランドの試合でも熱狂し、客席は満員になる。欧州サッカービジネス界の幹部たちは、日本人のサッカー好きをよく知っており、04年にギリシャで開催された(日本人選手が1人も出ない、各国A代表対抗の)欧州選手権「EURO 2004」の公式サイトに、英語など欧州各国語版のほかに日本語版も設けた………が、韓国語版は作らなかった。
そのうえ韓国スポーツ界は上記のような事情で極端に選手層が薄い。テコンドーのように世界の競技人口の大半が韓国に集中している特殊な競技ならともかく、サッカーのように全世界で盛んなスポーツで、韓国ごときスポーツ貧困国が「強豪」になることなどありえない。
他方、日本はスポーツ先進国、サッカー大国になりうるだけの総人口、競技人口を十分に持っている。日本は、Jリーグ発足直後の、90年代のW杯サッカーの地区予選、本大会でこそ苦戦し、他国のA代表からなかなか点の取れない「決定力不足」だったものの、00年を過ぎると、五輪や国際Aマッチ(A代表同士の試合)で得点するのはかなり容易になり、日本代表は「点の取れるチーム」に成長した。
日本は、00年シドニー五輪サッカーでは(韓国と違って)決勝T進出をはたし、同年のアジアカップ(アジア杯)サッカー決勝では中東(開催国レバノン)で中東の強豪(サウジアラビア)を破るという「ドーハの悲劇」以来の悲願を達成し、そして02年W杯本大会予選Lでは(韓国と違って「誤審」なしで)2勝した。
たまりかねた韓国は、FIFA副会長の韓国人、鄭夢準(チョン・モンジュン)をFIFA五輪分科会副委員長に就任させ、アテネ五輪サッカー本大会の日程編成権を握った(任期は04〜06年で、その権限はW杯の日程には直接およばない。五輪サッカーの主催権は国際オリンピック委員会IOCでなくFIFAが持つ。在日大韓民国国民団Web 03年11月26日「鄭夢準氏がFIFA五輪分科会副委員長に」)。
この五輪本大会予選Lで、日本は(韓国の希望どおり?)パラグアイ、イタリア、ガーナという強豪のひしめく「死のグループ」に押し込められ、決勝T進出を邪魔された。
他方、韓国はギリシャ、メキシコ、マリと一緒の、比較的ラクな組にはいり、1勝2分で決勝Tに進出したものの、初戦でパラグアイに敗退した(スポーツナビ「アテネ五輪 サッカー」)。
韓国は「パラグアイには負けたが、(決勝Tに進出したことで)日本には勝った」と思っているかもしれないが、FIFAの欧米人幹部にとっては、そんな偏執狂的な対日感情など、考慮する価値もない。
今後、日韓を「宿命のライバル」と位置付け、韓国を日本に劣らぬアジアの強豪に見せかけるために、FIFAはいったいどれほどの虚しい努力をしなければならないのだろうか。02年本大会で、韓国が(誤審の連続で不正に)ベスト4になったあと、韓国のFIFA国別ランキングの順位は日本を上回ったが、05年11月発表の最新ランキングでは、15位の日本を大きく下回る29位にまで落ちた(FIFA公式Web 05年11月23日「ランキング」)。
この先、この差は、短期的には縮まることもあるかもしれないが、長期的には開く一方だろう。日本は、中田英寿も小野伸二も柳沢敦も高原直泰も使わずに(敵地中国で反日シュプレヒコールを浴びながら)04年アジア杯で優勝してしまうほどの厚い選手層を持つが、韓国にはそんなものはないのだから(韓国は、日本がとうの昔に克服した中東勢をいまだに苦手とし、いつまで経ってもアジア杯で優勝できない)。
いったいいつまで、比べても意味のないほど国情の違う2つの国を対等に比較する「宿命のライバルごっこ」に、全世界が付き合わされるのだろうか………ものには限度があるはずだ。
FIFAがどんなに努力しても、その「ごっこ」には大した見返りはない。韓国市場は日本市場よりはるかに小さいからだ。
韓国のGDPは日本の1/4(米CIA Web「World Fact Book」04年の推計値)というマーケティング上単純な問題もあり、今後FIFAは韓国を重視しなくなるだろう。
たしかに韓国には鄭夢準副会長というFIFAの重鎮がいる。が、その韓国が、今回06年本大会予選Lの組分けでスイスと同じ組にはいったのはどういうわけだ?
スイスはジョセフ・ブラッターFIFA会長の母国であり、だれが考えても会長のほうが副会長より偉いので、前回02年本大会のときのように、韓国がまた怪しげな判定で決勝Tに進出しようとすれば、スイスがその前に壁として立ちはだかることは間違いない。もう同じテは使えないのだ。
むしろ06年本大会では韓国は、スイスが決勝Tに進むための踏み台にされるのではあるまいか、02年本大会でポルトガルが韓国の踏み台にされたように(もはやFIFAにとって韓国の利用価値は、その程度しかあるまい)。
【つまり、前回推理したように、くじに目印を付けてスイスの組分け抽選結果を操作したのだとしても、韓国がスイスを選んだのではなく、スイスが韓国を(安全パイとして)選んだ、と考えるべきなのだ。】
●アフリカへの刺客●
小誌は前々回の記事で「アフリカ諸国のなかで欧米白人がもっとも嫌う国ナイジェリアが06年W杯本大会には出場しないので(同国を決勝Tに進出させないために)優勝候補クラスの強豪ばかりを集めた予選Lの組「死のグループ」を、(02年本大会のときと違って)FIFAは今回は意図的には設けないのではないか、と述べた(小誌05年12月5日「組分け抽選の『操作』を読む〜06年W杯サッカー本大会(抽選工作)」)。
が、05年12月9日に決まった予選Lの組分け抽選結果を見ると、「死のグループ」の名に値する、決勝T進出があたりまえの強豪が3か国以上集まった組がある(FIFA公認Web「Final Draw presented by Emirates Airline」を参照)。以下の3つだ。
B組: イングランド、パラグアイ、トリニダードトバゴ、スウェーデン
C組: アルゼンチン、コートジボワール(CIV)、セルビアモンテネグロ(SCG)、オランダ
E組: イタリア、ガーナ、米国、チェコ
(青字は第1シードの「優勝候補」)
06年本大会に出場するアフリカ代表は、最新のFIFAランキングの順にチュニジア(28位)CIV(41位)ガーナ(50位)トーゴ(56位)アンゴラ(62位)の5か国だが、このうち「身体能力の高い黒人」の国は4か国だけで、チュニジアはアラブ人の国だ。
チュニジアのランキングが高いのは、04年のアフリカネーションズカップ(アフリカ杯)で優勝したことによるもので、この国はアフリカ大陸内では「黒人の国」に(戦い慣れているので)強いらしい。が、02年W杯本大会では「0-2」で日本に完敗しており、アフリカ域外での戦いには強くない。
05年11月のキリンチャレンジカップで日本に敗れたアンゴラも、アンゴラ並みにFIFAランキングの低いトーゴも同様だ。
つまり、上記のC組、E組の組分けは(国際Aマッチの経験が少ないので、その勝敗で変動するFIFAランキングは低いものの)真に強いアフリカの2強、CIVとガーナにそれぞれ、オランダ、チェコという、最新のFIFAランキングで3位、2位の優勝候補がぶつかる形になっているのだ。「2強」はこのほかにもそれぞれ、旧ユーゴスラビアが解体するまで東欧屈指の強豪だったSCG、02年本大会ベスト8でランキング8位の米国(そしてもちろん第1シードのアルゼンチン、イタリア)という「刺客」を差し向けられており、これでCIV、ガーナともに上位進出はほぼ絶望と見てよい。
なんでFIFAは(抽選会のくじに目印を付けてまで?)こんな組分けをしたのか。
近年アフリカ大陸勢は進境著しく、過去の本大会での実績に基き、06年本大会では(それぞれ4.5か国の出場枠しかない)アジア、南米を上回る、5か国の出場枠を与えられているし、上記の06年本大会組分け抽選会にも2人のアフリカ人が特別ゲストとして招待されており、FIFAはいままでアフリカに敬意を払って来たではないか(小数点以下の「0.5か国」は、他大陸の代表とのプレーオフに勝って初めて出場が決まる枠が1つあることを意味する。以下同)。
なぜ、アフリカ勢のなかで(決勝Tに進出すれば)旋風を巻き起こす可能性の高いCIVとガーナだけがこんな「意地悪」をされるのか。5年後の10年にはアフリカでW杯本大会が開催されるというのに。
実は、この10年本大会が、最大の問題なのだ。
06年本大会では各大陸別の出場枠はアジア4.5、オセアニア0.5、アフリカ5、北中米(カリブ海)3.5、南米4.5、欧州14(開催国ドイツを含む)だ。
これをそのまま10年本大会にあてはめると、開催国は南アフリカなので、それを含めてアフリカの枠は6となる。他方、もし06年本大会でブラジルなど南米勢が大活躍した場合は、FIFAは10年本大会の南米の枠を現行の4.5から5に増やさざるをえないので、代わりにどこかの大陸の枠を減らす必要がある。
オセアニアの0.5はこれ以上減らしようがない。
欧州の13も減らせない。06年本大会では開催国を含めて14もの枠があるが、それでもFIFAランキング11位のトルコやEURO 2004で優勝したギリシャが本大会出場をのがすなど、元々欧州のレベルの高さに比べて欧州の出場枠は少なすぎるのだ。
北中米とアジアも難しい。北中米の出場枠を現行の3.5から3、アジアのそれを4.5から4ないし3.5に減らした場合、FIFAが重要視する2大経済大国、米国と日本が出場しにくくなる、というマーケティング上最悪の問題が発生する。
結局、アフリカを減らすのがいちばんよい。
もし06年本大会予選Lでアフリカ勢5か国が全滅し、どこも決勝Tに進めなければ、アフリカの枠を現行の5から(開催国を除いて)4(ないし4.5)に減らすことができる。
アフリカには(南アフリカを除くと)日米欧のような豊かな先進国はない。大半は貧しい国ばかりだ。いかにアフリカで開催されるW杯本大会といえども、そんなところに、開催国を含めて6か国もの出場枠を与えるのは非生産的だ。TV放送権料も関連グッズの売り上げもないに等しい国々にそんな、余分な出場枠を与えるのは、マーケティング上「自殺行為」であって、そんな「余分」があるなら、それは北中米かアジアにまわしたほうがいいに決まっている。
だから、06年本大会予選Lの組分け抽選では、FIFAはアフリカの強豪の決勝T進出を妨害するような組分けをしたと考えられるのだ。
●やはり抽選工作?●
このように、組分け抽選結果は、各大陸の出場枠を左右し、世界サッカービジネスのマーケティング戦略を直撃する大問題なのだ。だから、くじ引きゲストに自由にくじを引いてもらって「運任せ」にしよう、などとFIFAの幹部たちが考えるはずはない。
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