ソ連とアポロの裏取引?
〜「アポロ疑惑」再考
■ソ連とアポロの裏取引?〜「アポロ疑惑」再考■
ガガーリンによる人類初の有人宇宙飛行の捏造を暴露されないために米国と取引したと考えると、ソ連が「アポロ疑惑」(米国の有人月面着陸の虚構)を暴露しなかった理由が説明できる。
■ソ連とアポロの裏取引?〜「アポロ疑惑」再考■
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今年のエイプリルフール特集記事、小誌05年3月31日「月面着陸を否定」(Web版なし)で、アポロ11号など人類の月面着陸(有人月面飛行)の「歴史」はすべて虚構ではないか、という欧米に幅広く存在する疑惑を紹介した。
エイプリルフールの記事であるにもかかわらず、インターネット上の掲示板(BBS)やblogでムキになって反論する者(米航空宇宙局NASAの手先?)が出現したが、それは上記特集記事の相当部分が事実に基いていたからだ。
●NASAの捏造?●
西側自由世界のマスコミは政府機関の発表をそう簡単には鵜呑みにしない。必ず事件の現場に記者を派遣し、裏付け取材をして事実を確認してから報道しようとするものだ。
が、アポロ宇宙船の月面着陸の場合「現場」は月面なので、だれも裏付け取材には行けない。米国の政府機関であるNASAは、宇宙船と地球の間の交信を独占していたので、たとえアポロ宇宙船が地球のまわりをグルグルまわっていただけだとしても、「いま宇宙船が月面に着陸した」と発表することができ、マスコミはその真偽を検証することができないので、NASAの発表はそのままノーチェックで全世界に報道されることになる。
「アポロ疑惑」は元々、アポロ計画の「成功」後に、NASAが月面で撮影したとして発表した多数の公式写真のなかに(月面でなく)地上のスタジオで撮影したとしか思えない不自然なものが少なくなかったことから、主として写真家たちによって提起された。
ほかに、人類は、地球を取り巻くバン・アレン放射帯の外側の、有害な放射線量が不規則に急増する外宇宙に生きたまま出られるのか、とか、月面で金属の保護壁のない船外活動中、薄い繊維製の宇宙服しか着ていないNASAの宇宙飛行士は放射線で死なないのか、とか、物理学の専門家から投げかけられた疑問は多い。
いちおうNASAやNASA擁護派の専門家から、すべてに関して反論はされている。筆者は写真や物理学の専門家ではないので、詳しい議論はそれらの専門家に任せるが、少なくともアポロ計画は「世界中のマスコミが(有人月面着陸が)成功したと報道しているのだから、成功したに決まってる」と言えるほど、単純明快なものでないことだけは間違いない。
それは、世界中のマスコミが「02年ワールドカップサッカー本大会で、韓国代表は実力でベスト4になった」と報道しているにもかかわらず、欧州の何千万ものサッカーファンと、日本の小誌読者の方々が、まったくそれを信じていない(韓国代表は審判の相次ぐ「誤審」によって不正にベスト4になった、と思っている)ことを想起すれば(「韓国対ポルトガル」戦前日の予測記事、小誌02年6月13日「●いまこそ『奥の手』を〜審判に『期待』」)、容易にご納得頂けよう。
【類似の例として「01年9月11日に米国はイスラム原理主義過激派のテロ攻撃を受けた」というTV報道(9.11)に疑問を感じている者が少なくないことが挙げられる。あの日、米国防総省にはボーイング757旅客機が激突したと報道されているが、それによって建物にあいた穴の直径は旅客機の横幅よりはるかに狭く、また激突後のボーイングの残骸を見た者がいないことから、実は巡航ミサイルの攻撃ではないか、という指摘がある。市民運動自主制作のDVD『911 ボーイングを捜せ』( < http://www.wa3w.com/911/ > )を参照。】
●ソ連のウソ●
NASA擁護派の反論のうち、写真や物理学の知識がなくても容易に検討できるものとして、「もしアポロ月着陸計画が虚構なら、ソ連(の諜報機関)がそれを見破れないはずがない」というものがある。当時、米ソは核軍拡競争や宇宙開発競争でライバル関係にあったので、米国が国威発揚のためのプロパガンダとしてアポロ計画を推進したのなら、ソ連はその虚構を暴いて米国の威信を失墜させればよかったではないか、というのだ。
これに対して「NASA糾弾派」は有効な反論ができていない。たとえば、副島隆彦・常葉学園大教授は「頑迷な共産主義イデオロギーに侵されて官僚統制と非効率の極みにあったソビエトの人間たちを、急にこの場で持ち上げるのはおかしい」と議論をそらしているだけだ(副島著『人類の月面着陸は無かったろう論』(徳間書店04年刊 p.100)。
この問題は有人月面飛行が可能かどうかを検証する技術的な争点にはならないが、NASA糾弾派はこの関門をクリアできないと、おそらく「文科系」の人々の賛同は得られまい。
そこで、筆者が上記特集記事で展開したのは、「(当時もいまも)西側諸国民はソ連政府の発表など信じない(から、ソ連は米国の虚構を告発できなかった)」という仮説だ。ソ連など社会主義国家には言論報道の自由がなく、ソ連の報道機関は国家権力の広報機関にすぎず、その報道は(社会主義経済政策の失敗で飢餓が発生しているときでさえ)「社会主義のもとでソ連人民は豊かに暮らしている」といった類のウソばかりだったので、ソ連はアポロ計画に関して米国批判を展開することを諦めたのだろう、と筆者は考えたのだ。
が、最近考え直した。
たしかにソ連の報道はウソだらけだが、こと宇宙開発に関しては必ずしもそうではない。たとえば、人類初の人工衛星は57年のソ連のスプートニクだが、この「ソ連政府発表」は西側の多くの科学者によって検証され、事実として認定されている。つまり、宇宙開発に関してはソ連の言い分が正しい場合もあることを、57年以降の人類は知っていたのだ。
また、アポロ月着陸計画が実施された69〜72年当時は、日本や西欧の西側諸国には相当数のソ連シンパ(左翼)がおり、彼らは反米的な傾向が強いので、ソ連政府が「アポロ月着陸は虚構」と言い出せば、それに便乗して米国批判を展開する可能性は十分にあった。
たとえば日本の場合、日教組の理科や社会科の教師が結託して「米国は宇宙開発で大ウソをついている」と教え子に吹き込み、それに日米安保条約の延長に反対の勢力(70年安保闘争)が同調すれば、「アポロ疑惑」は一定の「常識」として日本国内に定着しえたはずだ。日本国内のソ連の「手先ども」は伝統的に、日米安保反対論でも非武装中立論でも、また、70年代にソ連が先に欧州中距離核兵器(INF)を配備したのに、米国がそれに対抗してINFを配備することだけに反対する「反米反核」論でも、どんな偏向した意見でも平然と唱えていたのだから、アポロ疑惑ぐらい言えないはずがない。
が、そうならなかったのは、ソ連の諜報機関が、日本や西欧諸国の国内にいる、自分たちの手先の左翼文化人や労組幹部に「アポロ疑惑を追及せよ」という司令を出さなかったからにほかなるまい。少なくとも、「非武装中立で日本は平和だ」と証明するより「人類の有人月面着陸成功の客観的な物証はない(あるのは関係者の発表だけ)」と証明するほうがはるかに簡単なのに、アポロを米国批判の口実に使わなかったのは、そういう司令がなかったから、に相違あるまい。
では、なぜ「司令」がなかったのか?……この疑問を解くヒントになる番組があることを最近知った。
それは英オーリス社00年製作の『What happened on the Moon?』( < http://www.aulis.com/ > )で、日本語版はtandm.tvのドキュメンタリー『月面で何が起こったか?〜アポロは本当に月に行ったのか?』( < http://tandm.tv/top.html > )。
【筆者自身は上記URLで有料で見たが、Yahoo!BB契約者は05年11月1日まで「Yahoo!動画」コーナー(カテゴリー「趣味とくらし」 < http://streaming.yahoo.co.jp/ > )で無料で視聴できるそうだ。】
上記番組(Part 4)は、ソ連のガガーリン宇宙飛行士が行ったとされる「人類初の宇宙飛行」も捏造だったとしているのだ。 これは、よく考えてみれば、ありそうな話だ。ソ連は61年に「人類初の有人宇宙飛行をやる」と宣言して実行したが、万一宇宙飛行士が途中で事故死(または脱出)して帰って来れば、宇宙船のカプセルが無事に戻っても航空学規定上は「失敗」であり、ソ連は全人類に対して恥をかく。
そのような屈辱を避けるには(二度目以降はともかく)初めてのときはニセモノを宇宙に飛ばして帰還させ、ガガーリン本人は地上のどこかに隠しておいてカプセル帰還後に呼び出して「帰還記者会見」をさせたほうが、失敗する恐れがなく、国家的威信を守るのも簡単だ。
ソ連はスターリン時代に農業集団化政策が大失敗して飢餓が発生しても「経済は順調」つまり「人類初の社会主義国家は成功」と言い続けた。国家の威信を守るためにウソをつくのは常套手段であり、ガガーリンのときとてほかの方法はあるまい。上記番組は(ソ連が人類初の有人宇宙飛行を成功させたことは否定しないが)ソ連の報道機関(政府)が西側に流したガガーリン打ち上げ当日の「ニュース映像」を検証し、それが別々の日に撮影された複数の映像を編集して捏造したものであることを暴く(たとえば、狭いカプセル内には複数の照明やカメラを置くスペースがないのに、飛行中のガガーリンの顔や頭が複数の照明を使って不可能なアングルから撮影されている点などを指摘)。
そしてそれは当然、米国の諜報機関にはばれてしまう。しかし、米国はそれを暴露しない。
61年当時、米国の宇宙技術はソ連に大きく遅れていたから、米国にはソ連の技術を批判する資格がなかったが、米国の技術が有人宇宙飛行(地球周回)を安全にできるまでに進歩した68年になっても、米国は61年のソ連のウソを暴露しなかった。
なぜなら、自分たちがこれから行う「史上最大の捏造」についてソ連に黙っていてもらう、という裏取引を持ちかけたからだろう(米ソで取引が成立しさえすれば、2大宇宙先進国が相互承認した「事実」を、日英仏などの宇宙後進国が否定してもあまり説得力がない)。
この取引は、ソ連には「人類初の有人宇宙飛行」、米国には「人類初の有人月面着陸」という栄誉をそれぞれ保証し、自国民や同盟国に対して両国政府が恥をかくことを防げるので、双方にとって多大の利益がある。とくに米国側には、ケネディ大統領がうっかり言い出した月着陸計画の無謀さを認める必要がなくなり、米国の軍需産業にも、国庫から膨大なロケット(ミサイル)研究開発予算を引き出せるメリットがあった。
アポロ計画終了間際の72年、米ソ間にデタント(緊張緩和)が成立して戦略兵器制限交渉(SALT-I)が妥結し、さらに宇宙開発でも75年、米国のアポロとソ連のソユーズが地球周回軌道上でドッキングする米ソ共同宇宙飛行が実現し、「オモテ取引」が進行していたことを考えると、「歴史の捏造」を助け合う裏取引が行われた可能性は低くない。
●米ソ共謀説は無用●
上記番組(Part 4)は終了間際「ロシア革命(の指導者)に米ウォール街の資本家が出資していた」という説を唐突に紹介し、宇宙開発でも米ソの共謀があった、と示唆する。
が、筆者は、いくら小説『龍の仮面(ペルソナ)』の著者でも、一気にそこまでは思わない。その種の(国際政治の素人が好きそうな)軽率な陰謀論は、かえって「アポロ疑惑」論争のレベルを低下させてしまう恐れがあるからだ。
いや、『龍の仮面(ペルソナ)』の著者だからこそ、筆者は大きすぎる陰謀論に軽々しく与することはできないのだ。
この小説の第6章(金門島侵攻作戦)で描いたように、敵対する2国間にも一時的な利害の一致が生まれることはある。だからこそ、軍縮交渉や和平交渉が成立するのだ。敵対する国同士に利害の一致点がまったくなければ、一度戦争を始めた国同士はどちらかが消滅するまで永遠に戦い続けることになるが、現実にはそんな事例はまれだ。
筆者はこの外交論を、国際政治学の権威と言われた故・高坂正尭京大教授から教わった。宇宙開発(疑惑)における米ソ裏取引仮説を立てることは、大学の授業で教えられている、常識的な政治学の援用で可能であり、仰々しい陰謀論は必要ない。上記のロシア革命の事例も、米国の資本家とソ連の共産主義(革命)指導者との間に利害の一致した局面があったことの証拠にはなりうるが、米ソが終始一貫して共謀していたことの証拠にはならない。
「ロシア革命にウォール街が出資していた」という説は、ロシア革命の結果経済的にまったく非効率なソ連という社会主義国家が誕生したことによって、ロシアの農工業生産力が著しく低下し、それによって米国が世界最大の工業国と食糧輸出国の地位を手に入れた、という現実を見ると、一定の説得力はある(ロシアが資本主義国家として存続していたら、米国の世界支配はたぶんなかった)。革命前のロシアは世界最大の穀物輸出国であり、株式市場からの潤沢な資金調達により、鉄鋼も石炭も数年間連続で生産高が伸びていたのに、革命後、レーニンらの共産主義者は株式市場を閉鎖してロシア工業の資金源を断って成長を止め、農業を集団化政策で破壊して、最終的にはロシア(ソ連)を食糧輸入国に転落させたのだから(ジェームズ・デール・デヴィッドソン他著『世界経済が破綻する時』草思社88年刊)。
レーニンの革命は一種の「背任罪」であり、彼が米国の資本家たちの食糧や鉄鋼の輸出を助けるために彼らに雇われていた可能性(あるいは、経済のわからぬ、ただのバカだった可能性)は大いにある。が、アポロ計画の前、62年に米ソ対立がキューバ危機によって全面核戦争寸前までエスカレートしたことを考えると、米ソ間にまったく対立がなかったとは言えないので、軽々しくアポロ疑惑論争の中で「米ソ共謀論」を持ち出すべきではあるまい。
●007は知っていた!?●
ところで上記番組(Part 3)は、71年の英国映画『007/ダイヤモンドは永遠に』(MGM)にアポロ疑惑を示唆するシーンがある、と指摘している。007ジェームズ・ボンドがNASA月面着陸シーン(?)撮影中のスタジオの「月面セット」に迷い込む場面があるほか、その前には(月面での?)放射線の危険性を不必要に印象付ける場面まであるのだ。この番組は正式な著作権処理をしてMGMの映像を引用しているので十分に楽しめるし、信用できる。
番組によれば、月面セットや放射線の場面はイアン・フレミングの原作にはないので、当時すでに英国の知識人のあいだで常識になっていた問題を一般大衆に(こっそり?)知らせようとして、真相を知る映画関係者が人気映画の中に敢えて風刺的な場面を挿入した、と考えられるのだ。
【尚、上記番組(日本語版)の中の「西洋」は「西側」の誤訳だ。】
【CDMA 1X WIN で機種がW11H/W11Kの方は、『踊る大捜査線』の作者・君塚良一氏推薦の、佐々木敏の小説『中途採用捜査官 SAT、警視庁に突入せよ!』電子版(本文のみ \1260)をお読み頂けます。ご購入は → http://ez.spacetownbooks.jp/esharp_test/Top
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