「福田総裁」当確
〜小沢民主党の
政局化学反応
■「福田総裁」当確〜小沢民主党の政局化学反応■
06年9月の自民党総裁選で安倍晋三官房長官が勝つと、公明党(創価学会)は自民党との連立政権を離脱して民主党と組み、次期衆議院総選挙で自民党は創価学会票を失って大敗し、民主・公明連立政権ができる。それを恐れて自民党国会議員の大半は総裁選では福田康夫元官房長官に投票する。
■「福田総裁」当確〜小沢民主党の政局化学反応■
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05年9月11日の衆議院総選挙で、自民党は議席を大幅に増やして絶対多数を得たが(選挙前212議席→選挙後296議席)、自民党と連立政権を組んでいる公明党の議席は増えなかった(34→31議席)。他方、野党第一党の民主党は大幅に議席を減らして(177→113議席)岡田克也代表が辞任し、臨時の代表選が行われて、防衛、経済、憲法改正などの重要政策で自民党の小泉純一郎首相と考え方が近いと言われる前原誠司衆議院議員が新代表に就任した。
●大連立構想●
この前原新代表(と鳩山由紀夫・民主党幹事長)が05年9月、代表就任の挨拶で自民党の小泉首相(と武部勤幹事長)を訪問すると、小泉が「あなたがたなら、小泉内閣ですぐ閣僚になれる」とTVカメラの前で発言したことが広く報道された。
どうせ社交辞令か冗談だろう、と筆者は思ったが、その数十日後、筆者のもとに確実な情報源から、実は小泉首相は民主党の前原執行部に対して真剣に、自民党と民主党との連立政権樹立を打診していた、という情報がはいった。
さらに05年12月、共同通信、読売新聞、毎日新聞の3社がこぞって、小泉が自民党(第1党)と民主党(第2党)による大連立政権樹立を民主党に打診したと報じた(共同通信05年12月8日付「首相、民主に大連立打診 9月下旬、側近が仲介」、読売新聞05年12月8日付夕刊1面「小泉首相が衆院選直後に『大連立』打診 民主・前原氏は即拒否」、毎日新聞05年12月9日付朝刊2面「小泉首相:民主に『大連立』打診が判明 前原代表は拒否 - 9月下旬」)。3社とも、小泉は武部幹事長を通じた公式ルートではなく、小泉の側近(個人的に近い人物)を通じて非公式に打診したと述べており、これは筆者が現在持っている情報と矛盾していないので(朝日新聞など他メデイアは事実として確認していないが)事実であろう。
とはいえ、この報道の直後、前原執行部は「(自民党との大)連立の可能性は99.99%ない」と否定したので(共同通信前掲記事)、筆者はこの問題を考えるのをやめた。読売も、政治学者、坪郷実早稲田大学教授による60年代西独の連立政権の分析を紹介しつつ「(大連立政権といえども)理念や目的が明確でなければ、国民の理解を得るのは難しい」から「現実味は薄い」と斬り捨てていた(読売新聞05年12月14日付朝刊13面「『大連立』打診 現実味薄い日本 理念を明確に(解説)」)。政治学的に見れば当然だろう。
●公明党の怒り●
しかし、この問題を政治学的ではなく、政局的に見ると、まったく違う側面が浮かび上がる。
実は、この問題の核心は、打診が事実であったかどうかではなく、公明党がどう思っているか、なのだ。
公明党(の支持母体の創価学会)の視点で見ると、小泉首相が民主党に「大連立」を打診した、ということは許し難い裏切り行為であり、自民党との連立政権から離脱する動機付けになりうる。
創価学会の会員は公称800万世帯(1000万人)以上と言われるが(創価学会Web「略年表」70年2月)、国政選挙では実働400万人という調査結果もあり、これを全国に300ある衆議院の小選挙区で割ると、1選挙区あたり1万数千票(〜3万票)になる。しかし、小選挙区では最多得票者(10万票前後)しか当選できないので、創価学会単独では公明党公認候補を当選させるのは不可能だ。それで、創価学会は99年以降自民党と選挙協力をし、小選挙区では創価学会員が自民党候補に投票する代わりに、比例代表では自民党支持者に公明党への投票を促す、という票のバーター取引をすることにしている。
お陰で、自民党の衆議院議員候補は(反創価学会発言をしている平沢勝栄議員などの例外を除いて)各々1万数千票(〜3万票)を創価学会からもらい、そのうえに自民党支持票や候補者個人の票を積み上げる、という民主党候補に比べて格段に有利な選挙戦略を立てることができる(ジャーナリストの鳥越俊太郎は、自民党候補がもらう1人あたり1万数千の創価学会票を「年金制度で言えば、基礎年金のようなもの」と評した)。
(^_^;)
ところが、コアな自民党支持者は伝統的に公明党が嫌いなので、小選挙区で自民党候補に投票した有権者の大半は結局、比例代表でも自民党に投票してしまって、バーター取引はほとんど成立しない。このため、05年9月の衆院選でも、自民党は創価学会票のお陰で議席を増やしたのに、公明党は逆に議席を減らす、という「不公平」が生じている(朝日新聞Web版「2005総選挙」)。
自民党と小泉首相は創価学会に対して、このような「借り」があるにもかかわらず、その恩をケロリと忘れて、05年衆院選から約2週間しか経っていない05年9月下旬の時点で、小泉は民主党に「大連立」を打診していたのだ。
大連立が実現すると、自民党と民主党の衆議院における議席のシェアは85%にもなるので、当然自民党は公明党と連立する必要はなくなる。つまり、大連立の打診とは、自民党が公明党を「使い捨てにする」ということにほかならない。
すくなくとも公明党はそう思った。だから、公明党の神崎武法代表は「大連立」報道に不快感を表明した(読売新聞05年12月13日付朝刊4面「小泉首相の大連立構想に神崎・公明代表が不快感」)。
この神崎代表は06年4月7日に、小沢一郎新代表が民主党代表に就任するやTVカメラの前で「強いリーダーシップを発揮されることに期待」を表明し、一切非難をしなかった(産経新聞Web版06年4月8日「小沢・民主『激突型』に転換 小泉改革の対立軸に」)。この「エール」に応えるかのように小沢は、いまや自民党の最大の支持団体となった創価学会の秋谷栄之助会長を訪問した(毎日新聞Web版06年4月18日「小沢代表:創価学会側認めても、会長とは『会っていない』」)。
さらにそれに応えるように、公明党、創価学会は、06年4月23日投開票の衆議院千葉7区補欠選挙では自民党候補の応援を(告示日の4月9日から1週間は)あまりしなかった。千葉県議会議員レベルで自民党と公明党が不仲であることを理由(口実?)に、公明党が協力を遅らせたためか(『週刊文春』06年4月27日号 p.p 26-29「テポドン小沢『千葉補選』突入」)この補選では、民主党の太田和美候補が勝ってしまった。
05年衆院選では、300小選挙区の9割以上で、自民党と民主党は議席を争っているが、そのすべてで創価学会が、自民党との「不公平なバーター取引」に怒って、自民党候補の応援をやめれば、自民党候補の得票は平均して1選挙区あたり1万数千票(〜3万票)減る。さらに、公明党が民主党との連立に乗り換えると、逆に民主党候補の得票が平均1万数千票(〜3万票)増える。したがって計算上、小選挙区の自民党候補は3万票(〜6万票)以上の大差を付けて当選していない限り、創価学会の態度如何で簡単に落選させられることになる。
つまり、自民党は、創価学会のご機嫌を損ねると、いつでも野党に転落してしまうのだ。自民党が現在衆議院で保有している巨大な議席数にだまされてはいけない。自民党自身が獲得できる票は(鳥越のいう「基礎年金」を除くと)どの小選挙区でも大した数ではないのだ(たとえば、05年衆院選の千葉7区では、当選した自民党候補と次点の民主党候補の得票差は約1万4000票にすぎず、他方、同区で公明党が獲得した比例代表の票は約3万2000票。毎日新聞Web版06年4月22日「千葉7区補選 党首クラスを投入、総力戦を展開」。 但し06年4月23日放送のNHKニュースでは「同区06年補選の出口調査の結果、公明党支持票の90%以上は自民党候補に流れた」と報道)。
●保守中道連立政権●
さらに不気味なことに、小沢新代表は「(衆議院総)選挙をやらなくても政権は取れる」と言っている(『週刊文春』前掲記事)。たとえば05年9月の総裁選で安倍晋三官房長官が選ばれ、対中国外交や首相の靖国神社参拝問題などで安倍に不満を持つ自民党国会議員の支持がある程度「次点」の候補に集まれば、元々それらの政策で安倍と相容れない公明党もろとも、小沢が「次点」を自分の側に引きずり込む、という裏ワザがあるのだ。
総裁選で安倍が当選し、かつ、上記の諸政策で公明党と近い福田康夫元官房長官が次点だった場合、民主党国会議員は総裁選後の国会での首班指名選挙で福田に投票し、「福田+民主(+公明)」の変則連立政権(福民公連立政権)を作ってしまおうというのだ(『週刊文春』前掲記事)。この「安倍が当選した場合」に、自民党の次点候補を民主党が担いで政権を取るという構想があることは、鳩山由紀夫・民主党幹事長も「保守中道政権」という表現で認めており、かなり本気と思われる(産経新聞Web版06年4月14日「鳩山氏『総裁選で敗れた自民非主流派と連携も』」)。
小沢が自民党を飛び出して新生党を結成した93年、公明党はその新生党などと組んで衆議院総選挙で自民党を過半数割れに追い込み、非自民連立政権を樹立し、初めて「与党」の味を知った。翌94年、自民党は、社会党(と新党さきがけ)と組んで過半数割れを補い、政権を奪い返した。が、98年、党勢が十分に回復した自民党は、社会党(96年に社民党に改称)との連立を解消し、99年には小沢が新たに結成した自由党と組み、さらに公明党とも組む「自自公」連立政権に切り替えた。
が、公明党と組んだ自民党は、00年に自民党の森喜朗が首相に就任し(同時に自由党が連立政権を離脱し)て以来、極端な不人気に陥り、衰退の一途をたどった。この森の退陣後、「自民党をぶっ壊す」と称して総裁選に出て来たのが、小泉現首相だった。01年4月の自民党総裁選では小泉は、党所属国会議員による投票に先立って行われた一般党員投票で圧勝した。当時は、自民党の各都道府県連に割り当てられた3票を、県連単位の一般党員投票で首位になった候補が「勝者総取り」ですべて取ることができたので、小泉は文字どおりほとんど総取りし、それに影響された党所属国会議員の大半も小泉支持になびき、結局小泉は圧倒的な支持で総裁に選出された。
この小泉人気に、公明党は便乗した。発足直後の小泉「自公」連立政権は、マスコミ各社の世論調査で軒並み8割前後の支持を得た。「この人気者にくっついて行けば、きっといいことがある」……公明党はそう信じたからこそ、それから5年間、小泉と組み続けた。靖国神社、憲法改正、対中国外交、外国人参政権、教育基本法改正、それに自衛隊の海外派兵……重要政策が根本的に違うにもかかわらず、公明党・創価学会はひたすら耐えに耐えて、小泉と自民党のために学会票を貢いで来た。
しかし、その報いは裏切りだった。05年9月の総選挙で自民党が296議席を獲得すると、小泉は「もう学会票は要らない」と考え始めたのだ。
公明党は、目の前で社会党(社民党)が使い捨てにされるのを見た。非自民連立政権成立後、落ち目だった自民党が、社会党(社民党)をその「生命維持装置」として利用して息を吹き返し、その精気を吸血鬼のように吸い取り、抜け殻にして捨てるのを見てしまった。
その自民党が、公明党・創価学会のお陰で選挙に大勝すると、こんどは公明党を捨て、民主党に乗り換えるという。生命維持装置の「二代目」は不要になり、「三代目」が必要になったという。
ここまでバカにされて、黙っていられる者がいるだろうか。なんの対抗策も講ずることなく、みすみす社会党の二の舞になる道を選ぶだろうか。
小泉は表向き、民主党に大連立を打診した事実は認めていない。
あたりまえだ。認めれば、その翌日から日本全国で創価学会員が怒り狂い、選挙も国会運営もままならなくなるからだ。しかし、小泉に近い「関係者」が事実関係を認めたので(毎日新聞05年12月9日付朝刊2面「小泉首相:民主に『大連立』打診が判明 前原代表は拒否 - 9月下旬」)もはや公然の秘密だ。
●自民党の「理解」●
公明党・創価学会が腹の底で怒っているだろう、ということは、05年12月(9日)以降は、自民党国会議員も全員わかっているはずだ。その「怒り」が表面化すれば、自民党は野党に転落するか、「安倍自民党」と「福田自民党」に分裂するか、のどちらかになる。
自民党は政権与党の一員であり続けたい人たちが、ただそれだけのために「野合」した政党なので、与党であり続けるためなら、なんでもする。現に「吸血鬼」になって、政策が正反対の社会党にとりついたこともあるのだから。
だから、たとえ安倍が世論調査で次期首相(総裁)候補として国民の圧倒的な支持を得ていたとしても、与党の立場を守るためなら、その安倍の総裁就任を防ぐぐらいの根回しは当然やる(現在の自民党の総裁公選規定では、県連ごとの一般党員投票による持ち票は「勝者総取り」ではなく、次点候補にも比例配分されるうえ、その開票は党所属国会議員の投開票と同時に行われるので、小泉が初当選した01年の総裁選のように、一般党員の支持で「人気者」が地すべり的勝利を収める可能性はない。『週刊文春』06年4月27日号 p.p 29-30 「総裁選緊急票読み『過半数確保』でなぜか福田優勢」)。もしかすると安倍は総裁選に立候補することすらできないかもしれない。
したがって、06年に「安倍首相」が誕生する可能性はない。たとえ「安倍総裁」が誕生する場合でも、首相は必ず福田康夫である。
小誌は昨05年2月10日配信の記事「NHK番組改変問題の深層」)ですでに「ポスト小泉の首相は、公明党の支持を得やすい福田」「06年9月以降の国政選挙は、福田(自民党) vs. 小沢(民主党)」と予言(でなくて科学的に予測)していた。05年の「郵政解散→総選挙」のせいで、いささか福田総裁登場の時機が遅れ、逆に小沢代表登場の時機が早まりはしたものの、今年06年中に、この予言(予測)は「残りの半分」も含めてすべて的中する。
【この記事は純粋な「予測」であり、筆者の個人的な「期待」は一切含まれていない。】
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