負けても居座る!?

その2

 

〜シリーズ

「2007年参院選」

(4)

 

(July 28, 2007)

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■負けても居座る!?〜シリーズ「2007年夏参院選」(4)■

 

安倍晋三首相は、2007年夏の参議院通常選挙の結果、彼の率いる与党の議席が参議院でかなり過半数を下回っても「辞める必要はない」と頑固に思い込んでおり、これを退陣させるのは難しく、結局なんの変化も起きない可能性がある。

 

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「それって民主主義じゃないんじゃないですか」と筆者が問い返すと、

「そうだよ。安倍さんは独裁者なんだよ。参議院で(「天下り規制」の公務員改革法案を通すのに、参議院内閣委員会での採決を省略して、委員会審議の「中間報告」を本会議に持ち込んで)強行採決したのを見ればわかるだろ。小泉(純一郎)前首相でもやらなかったことをやってる。小泉さんは(青木幹雄参議院議員会長を立てて)参議院や党にある程度気を遣ったが、安倍さんはそんなことはお構いなしだ。彼があと5年も政権に居座ったら(どんな非常識な)新憲法を制定するかわからんぞ」

という答えが返って来た(「中間報告」については、長谷川憲正Web 2007年6月29日「6/29国会模様 実況報告」)。

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多くのマスコミは「いまの自民党内では派閥の力が落ちていて、安倍を総理総裁の座から引きずり下ろすパワーがない」などという抽象的な言い方で「安倍続投」を予測するが(『読売ウイークリー』前掲記事、産経新聞Web2007年7月26日「安倍政権考 『敗北でも退陣なし』の根拠 花岡信昭」)、これは、わざと核心をはずした言い方をしているので一般読者にはわかりづらい。だから、筆者が解説しよう。

 

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自民党内の「パワー」が落ちたのは、小泉政権以前に事実上、国政選挙の公認候補者の選定権や大臣の任命権を握っていた都道府県連や派閥の領袖の力を、小泉が根こそぎ奪い取って総理総裁に権力を集中してしまったこともあるが、最大の理由は、安倍が官房長官時代の11か月間と首相になってからの10か月を通じて、「官房長官が領収書なしで好きなだけ遣える」官房機密費や官邸調査費を自民党の若手国会議員にばら撒いて、場合によっては、マスコミ関係者にすらばら撒いて、すっかり手なずけてしまったことにある(数年前、高名な評論家が「機密費」を受け取っていた事実が暴露されたことを想起されたい)。

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安倍はカネの力で、福田を除く党内の政敵をほぼ一蹴した。彼は民意にはほとんど関心がなく、「党内の多数が自分を支持しているのだから」と言い、自分がカネで作り上げた「党内民意」を根拠に総理総裁であり続けると決めたのだ。

まさかここまで人柄が悪いとは筆者も予測していなかったのだが、ここまで来るともう脱帽である。

(>_<;)

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「安倍という猫の首に鈴を付けられる者がいるとすれば、同じ出身派閥の小泉前首相(や森喜朗元首相)や福田前官房長官ぐらいしかいないが、安倍さんは彼らには絶対に会わない。党や派閥のパーティでも、(小泉や森や福田などの)派閥の先輩からは距離を置いていて、目を合わせないようにしている(から、当面安倍は首相を辞めないだろう)」と上記の福田側近も悲観的である。

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●捲土重来●

それにしても、「2006年の総裁選をパスして、旧森派の分裂を防ぎ、2007年参議院通常選挙で安倍を負けさせて退陣させて、政権を奪う」という福田陣営の作戦は、2007年6月までは完璧にうまく行ったのに、土壇場で安倍の「想定外」の人柄の悪さに直面して挫折しそうだ。上記の福田側近は、自民党独自の世論調査の、最新の信頼できる調査結果を見ていないので、「もしかすると、自民党の獲得議席が30台で、安倍が退陣する可能性がないとは言えない」としつつも、「まあ42議席ぐらいじゃないかな」となかば諦めていた。筆者は44か45だと思っていたので、まあ、そんなもんだろう。

 

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では、福田陣営は完全にギブアップしたのか、と思って聞いてみると、そうではないんだそうだ。筆者は、結果論ながら2006年の総裁選をパスしたのは間違いないではないかと思うのだが、拙著、SF『天使の軍隊』)を読んでいるその側近は、依然として「中朝戦争反対派」である安倍が首相のままでは好ましくないと指摘したうえで、以下のように断言した:

 

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「中朝戦争は日米が連携して必ずやる」

「北部中朝国境(中国領延辺朝鮮族自治州と北朝鮮の境)は一触即発状態なので、ブッシュ現米大統領の在任中(2009年1月まで)に戦争が起きても不思議でない」

「日米連携のため、いつか(なるべく早く)安倍を下ろして福田を首相かキングメーカー(兼官房長官)にする」

「そのとき、福田が最大派閥の出身であることが意味を持つ(から、2006年の総裁選をパスしたのは正しい)」

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筆者なりに現実の政治日程に即して考えてみても、現在の衆議院議員の任期はあと2年ほどなので、安倍は約2年以内に「民意」の洗礼を受けることになる。

 

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今回、福田を支持する「中朝戦争賛成派」は、マスコミや民主党を動かして「消えた年金」などという事実無根の概念をでっちあげて、与党や安倍内閣の支持率を落とし、参院選で負けさせることにはほぼ成功した(小誌2007年6月28日「消えていない年金〜シリーズ『2007年夏参院選』(2)」)。次の衆議院総選挙でも、そうした世論操作は当然可能であり、とくに、北朝鮮による日本人拉致事件の被害者の「死亡情報」に関して安倍がウソをついていることを暴露する、という最大の切り札がまだ残っているので、安倍を次の衆議院総選挙で敗退させ退陣させることは不可能ではなかろう(小誌2007年7月3日「『ニセ遺骨』鑑定はニセ?〜シリーズ『日本人拉致被害者情報の隠蔽』(2)」)。

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だから、機密費ばら撒きに依存した安倍の「スーパー独裁政権」があと5年も続くようなことはあるまい。

 

 

 

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●慰安婦決議案の行方●

ただ、安倍が参院選直後に退陣しないとなると、米民主党が安倍を脅迫する目的で米下院本会議に持ち込んだ「慰安婦決議案」が可決される恐れが出て来る(小誌2007年7月20日「●慰安婦決議案は廃案か」)。

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この決議案がいわゆる「従軍慰安婦」問題とはなんの関係もなく、実態は「中朝戦争賛成派」の米民主党による「反対派」の安倍へのいやがらせであることは小誌既報のとおりだが(小誌2007年6月7日「安倍晋三 vs. 米民主党〜シリーズ『中朝開戦』(7)」)、前回述べたように、「安倍が参院選後に退陣しなければ、即本会議で可決」となるかというと……もちろんその危険性は、2007年7月28日現在も十分あるが……そうならない可能性がかすかに見えて来た。

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それは自衛隊の次期主力戦闘機(FX)選定問題だ。

 

 

 

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防衛省は、FXとして最新鋭のF22ステルス戦闘機を米国から輸入する意向で、7月17日、小池百合子防衛相も米太平洋軍司令官と会ってこの問題での協力を要請していたが(日経新聞Web版2007年7月18日「小池防衛相、米太平洋軍司令官と会談」)、米下院歳出委員会は7月下旬になって、F22の情報提供を禁止する条項が盛り込まれた国防予算を承認したため、防衛省は機種選定を2009年度まで先送りせざるをえなくなった(東京新聞Web版2007年7月27日「次期戦闘機選定先送り 防衛省09年以降に 米の情報提供禁止で」)。

 

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安倍を脅迫するなら、こっちのほうが効き目があるのではないか。

 

 

 

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慰安婦決議案の採決は「1回こっきり」であり、しかも、参院選でどんなに大敗しても民意を無視して政権に居座るつもりの厚顔無恥な安倍がそんなものに怯えて退陣したり、中朝戦争賛成に転向したりするとも思えない。

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常識的に見れば、日本政府に謝罪を求める慰安婦決議案の可決は、日米同盟の精神的な絆を傷付けるので好ましくないが、安倍は元々日米よりも中国や韓国の国益を尊重する非常識な政治家(売国奴?)なので、どうということはあるまい(小誌前掲記事)。

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それに比べて、FXの機種選定に必要な情報の提供を拒むという「制裁」は、安倍が政権の座にある限り何回でも行うことが可能で、しかも自衛隊の主力兵器の選定を遅らせるという形で、日米同盟の(精神的な部分でなく)物理的な機能に対して具体的に、ピンポイントで損害を与えることができる。

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「あなたが総理である限り、あなたが中朝戦争に賛成しない限り、自衛隊に米国製最新鋭機は持たせません」

 

という脅迫は、単純明快でわかりやすく、大勢の日米両国民の世論を巻き込むことなく、具体的に「日米同盟をうまく機能させられない安倍の無能ぶり」を印象付けることができるので、筆者が米民主党の議会指導者なら、慰安婦決議案の可決よりもこっちを選ぶ。

【お知らせ:佐々木敏の小説『天使の軍隊』が2007年4月26日に紀伊國屋書店新宿本店で発売され、4月23〜29日の週間ベストセラー(単行本)の 総合10位(小説1位)にランクインしました。】

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 (敬称略)

 

 

 

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