絵に描いたような「石油」対「原子力」の構図が、世界中に
アメリカに棄てられた政治家たちの「悪あがき」
〜米大統領選挙と日・韓・台・イスラエル〜

参考:「中国に拾われた政治家たち」

Originally written: Nov. 05, 2000
Second update: Nov. 06, 2000(どっちが勝っても結局同じ)
Third update: Nov. 12, 2000(混戦しても、結局同じ)
(加藤紘一はどっちだ?)
Fourth update: Nov. 20, 2000(加藤は米共和党系)
(野中・主流派が負けそう)
(公明党「非」主流派の存在)
Sixth update: Nov. 26, 2000(予想外の結果〜公明党の動きから)
(公明党から法相、文相!?)
(森首相すら造反しかねない政局)
Seventh update: Dec. 04, 2000(やっぱり「米国→加藤」だった)
Eighth update: Dec. 10, 2000(噂は本当だった〜公明党の異様な閣僚ポスト要求)
Tenth update: Feb. 25, 2001(クリントンが去り、野中自民党も終わる)
Eleventh update: March 4, 2001(トヨタの「移籍」で政局が動く)
Twelfth update: March 11, 2001トヨタの「反原発」戦略の補足説明
Thirteenh update: March 17, 2001(米国ご指名「小泉首相」)
Fourteenh update: March 24, 2001(○番外:潜水艦、実習船衝突事故)

●露骨な「石油戦争」〜米保守本流の世界戦略
●筆者は反ユダヤ主義者ではない
●「無駄な抵抗」に励む政治家たち
●「石油派」の「売国奴」たち
●石油資本の「息子」ブッシュJr.〜アラファトは「選挙後」まで待った
●どっちが勝っても結局同じ.
●イスラエル保守派の「単なる気休め」
●混戦しても、結局同じ
●加藤紘一は「反原発ノルマ」免除か
●意外なところにネベツネ登場
●カギはKSDと公明党
●加藤は米共和党
●野中・主流派が負けそう
●公明党「非」主流派の存在
●予想外の結果〜公明党の動きから
●公明党から法相、文相!?
●森首相すら造反しかねない政局
●やっぱり「米国→加藤」だった
●噂は本当だった〜公明党の異様な閣僚ポスト要求
●クリントンが去り、野中自民党も終わる
●トヨタの「移籍」で政局が動く
●トヨタの「反原発」戦略の補足(赤字で挿入)
○番外:潜水艦、実習船衝突事故
●米国ご指名「小泉首相」

「石油戦争」にかかわる政治勢力、政治家一覧
国 名 棄てられた側 えこひいきされた側
イスラエル  保守派、とくにリクード (シャロン党首、ネタニヤフ前首相) 穏健派=労働党(故ラビン元首相、ペレス元首相)(およびアラファト
日 本  自民党(とくに野中広務 小沢一郎個人、民主党共産党 
台 湾  保守派、とくに国民党反独立派 台湾独立派、とくに 民進党(陳水扁・総統) 国民党独立派(李登輝・前総統) 
韓 国  保守派、とくにハンナラ党   (旧民自党、旧民正党 民主党(金大中大統領) 諜報機関(金鐘泌・元KCIA長官) 
インドネシア ゴルカル(スハルト前大統領一族と、その関係者) 民主派  (ワヒド大統領、  メガワティ副大統領)
アメリカ 大統領候補 民主党・ゴア副大統領      (副大統領候補=リーバーマン) 共和党・ブッシュ・テキサス州知事 (副大統領候補=チェイニー)
党 派 原子力(反石油型環境保護)派、 ユダヤ派?(リベラル) 石油(反原発)派、    アラブ、第三世界重視派(保守本流
隠れ応援団? パット・ブキャナン (保守派のブッシュ票を食う) ラルフ・ネーダー (環境派のゴア票を食ってゴアの当選妨害)
党 名 民主党 共和党

[註]青字は原発推進派、赤字は反原発(石油メジャー)派。

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●露骨な「石油戦争」〜米保守本流の世界戦略
この11月6日(米国時間)は、2000年のアメリカ大統領選挙の投票日である。
拙著『西暦2000年・神が人類をリセットする日』(徳間書店、1999年刊。本体1800円)は、筆者の国際政治に関する見方がダイジェストされ、図解されているので、この選挙戦や開票速報、選挙結果の分析、組閣等の動きを見る上で「観戦ガイド」として有益であろう。御一読をおすすめしたい(この本は、新宿紀伊國屋の

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同書でも、また本誌でもことわっているとおり、筆者が前提条件なしに「アメリカ」と言うときは、保守本流グループ(主として、共和党、WASP=白人アングロサクソン・プロテスタント、非ユダヤ、親アラブ・イスラム・第三世界、石油・石炭重視、国際石油資本、反原発派)を指し、非主流のリベラル派(主として、民主党、ユダヤ、カソリック、黒人・女性解放運動、マイノリティ擁護、地球温暖化防止=反石油、原発推進派。「イギリス・ユダヤ系」勢力)を指さない。このことを踏まえて、来るべき大統領選挙と中東和平、そして日本を含むアジアの情勢を見ることをおすすめしたい。なぜなら、今回の選挙と昨今のアジア情勢は、絵に描いたように露骨な「石油戦争」になっているからだ。

●筆者は反ユダヤ主義者ではない
ただ、念のためにことわっておくが、筆者は反ユダヤ主義者でも「歴史修正主義者」でもない。人種差別は大嫌いだし、ナチのユダヤ人虐殺は事実と思っている。イスラエルの国家としての生存権は保障されるべきとも考えている。

また、ユダヤ人(イスラエル国籍)の友人も持っているし、彼らから自分のことを「ユダヤ的」と言われたときは喜んだものだ。なぜなら、筆者にとって「ユダヤ的」ということは「知的、独創的、個性的、個人主義的」という意味になるからだ。

筆者は、某出版社から出ている、非学術的な「反ユダヤ本」はまったく読まない。その内容の一部は、かつて存在した伝説の人気サイト「ヘブライの館」に引用されていたので、その部分は間接的に読んだ。が、筆者のように、一流の政治学者から政治学を学んだ、ある程度アカデミックな者は「ああいう本」は読まないのがあたりまえなのだ、と理解されたい(昔、読者の方から「ああいう本」を読んでいないとは考えられない、というメールを頂いたが、筆者の周囲では「読まないのが普通」なのだ)。

また、日本で日本人から「イスラエルはしょっちゅうアラブとモメてるから治安が悪いに決まっている」と言われると、筆者はいつもムキになって「そんなのは偏見だ」と反論してきた。じっさい(この2000年9月までは)イスラエルは(逆説的な話だが)テロを警戒して四六時中、大勢の兵士が国内を巡回しているので、強盗や殺人などの犯罪はむしろ少なく、その限りでは「治安がいい」のだ(ただし、ご承知のように、2000年9月下旬以降は、残念ながら「治安がいい」とは言い難くなってしまった)。

このことを踏まえて再度、上の表をご覧頂きたい。

●「無駄な抵抗」に励む政治家たち
1989年のベルリンの壁の崩壊で、東西冷戦が終わると、それまでアメリカから見て(しばしば「敵の敵は味方」という安易な見方に基づいて)「味方」(同盟者)とされてきた「反共防波堤」の担い手たち、日本の自民党、台湾の国民党主流派(反独立派)、韓国の保守政党(慶尚道出身者の地縁を中心にした民主正義党、民主自由党、そして現在のハンナラ党等へとつながる韓国政界の保守本流)、インドネシアのスハルト独裁体制、そして中東における「反共反ソ」の砦としてのイスラエルが、「用済み」になった。棄てられた彼らは、なんとか存在理由をひねり出して、むりやり既存の権力や権益を確保しようと「無駄な抵抗」を続けているため、その「とばっちり」で日本経済や世界の石油相場がおかしくなりかけているのだ。冒頭に掲げた表の左側の列は、そうした「往生際の悪い?」政治家たちの一覧表である。いま一度参照されたい。

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表中の、イスラエルを除く4か国では、戦後「長期安定政権」が続き、複数政党制に基づく民主的な選挙制度が(表面上)あったか否かにかかわらず、とにかく政権交代はほとんどなかった(イスラエルでは、比例代表選挙のため、国会で過半数を占める政党は、建国以来この半世紀、一度も出現しなかった。が、過半数に達しない有力2政党、すなわち労働党とリクードが、交代で首相を出し続け、アメリカの援助を受けながら反共政策を担ってきたので、その意味では、他の4か国と同様の「親米反共安定政権」であった)。

冷戦時代、アメリカ(保守本流)はこれらの国家(政権)を手駒として使って、ソ連の世界進出(侵略)の野望を封じ込めてきた。が、冷戦が終わり、ソ連が崩壊すると、アメリカは国家戦略を建て直し、新たな同盟関係の再構築と、経済のグローバル化を柱とした。そして、それまで「敵の敵は味方」だからと容認してきた、日本経済の反市場主義的な規制や巨額の財政赤字(および集団的自衛権を否定した憲法9条の解釈)、台湾の原発推進、韓国の外資規制、インドネシアの軍事的自立志向などは「もはや容認できない」こととして「解決」されることとなった。

が、日・台・韓・インドネシアには、こうしたアメリカのための解決策の担い手は容易にはみつからなかった。これらの国では、左翼・革新勢力は「万年野党」化して弱体化、堕落しており、およそ政権を担うことなど不可能なほど無能になっていた(その典型が、日本社会党、とくに土井たか子)。他方、政権(与党)内部は、すっかり既得権益に毒されていて、組織としては、もはや自律的な改革など不可能だった。

が、永年政権を担ってきた経験と責任感から、与党内の、おもに若い世代には(アメリカの要求に応えることも、さることながら)国家のために思い切った改革が必要、と気付いたものが少数ながら存在した。

そこで、アメリカ(のスパイ機関)は、各国の与党や政府機関(自民党、国民党、KCIA)に干渉して改革派の政治家(小沢一郎、李登輝、金鐘泌)を「分離独立」させ、それを反体制的なのはけっこうだが、無能な(自称)改革派(土井たか子の社会党、民主進歩党の台湾独立派とヒステリックな反原発運動、金大中)と「連立政権」という形でくっつけて「数合わせ」をし、政権交代を実現させた(その結果、細川連立内閣、陳水扁総統、金大中大統領が誕生した)。

アメリカが、日本に要求している経済改革、とくにdeleguration(規制緩和でなく、行政官僚を削減するための「規制廃止」)などは、日本国民にとっても望ましいものが多いので、改革派の活躍は望ましい。

●「石油派」の「売国奴」たち
が、アメリカ(の保守本流)の経済基盤は、不幸にして「石油」なので、どうしても知能程度の低い「反原発運動」のような無責任な大衆運動(あるいは、国際石油資本の「スパイ運動」)と結び付きやすい。

この2000年10月、台湾の陳水扁総統の「民主的な」政権は、第四号原発の建設中止を決めたため、それまで政権の「民主性」に一定の理解を示していた良識ある保守派の軽蔑を買い、国会(立法院)では四面楚歌になり、政権の危機が深刻化した(「民主的な」「反核総統」の陳政権を守るためと称する「市民運動」は、台北では立法院を取り囲んだ程度の穏健な運動を展開したが、一部の地方では暴徒化し、その品性の下劣さと、しょせん石油利権のために雇われたゴロツキにすぎない、というその正体を暴露した)。

フランスが電力の80%を原発に依存する原発大国であり、かつ一度も大事故を起こしていないことで明らかなように、本来原発は安全なものである。また、日本も台湾も国民の教育水準は高く、原発技術者は優秀である。フランスには「アラブの油より、自国の技術者のほうが信じられる」という常識が存在することで明らかなように、エネルギーの大半を中東からの輸入石油に頼る日本や台湾が原発建設をすすめ、政情の安定しない中東地域への依存度を減らしたいと思うのは当然で、そういう合理的で必要な政策を妨害する政治家は「売国奴」と呼ばれることも、当然ありうる。

昨今の台湾の政治紛争は、こうした石油資本の干渉によるものである。
(筆者はべつに、陳水扁や李登輝が民主主義のわからない、ダメな政治家と想っているわけではない。むしろ、アメリカが台湾への要求に「民主化」「改革」のほかに「石油利権」を付け加えたことが問題だと思っている)

ちなみに、日本の原発推進(脱石油)勢力の中心である自民党の野中広務は、自民党を飛び出して、青森県知事選挙では反原発派候補を応援した小沢一郎のことを「国を売るような者」「悪魔」などと語気を強めてののしったことがあるが、その真意は台湾国民党の陳への怒りと同根のものである。

●石油資本の「息子」ブッシュJr.〜アラファトは「選挙後」まで待った
さて11月6日は米大統領選挙の投票日である。共和党のブッシュ候補の父は、テキサスで石油会社を起こした実業家で、のちに政界入りしてCIA長官を務め、湾岸戦争を戦ったときは大統領だった。今回の副大統領候補のチェイニーは、湾岸戦争のときは国防長官であった。この戦争では、米軍はサウジアラビアに駐留して恒久的な基地を確保し、かつ侵略者イラクの独裁者サダム・フセインの軍隊をクウェートから追い出すにあたって、イスラエルに出番を与えなかった。むしろ、「サウジなどアラブ諸国と同盟すれば、イスラエルは必要ない」(むしろイスラエルは中東の火種で、やっかいな存在である)ことを「証明」したのが、この湾岸戦争だった。

他方、民主党の大統領候補ゴア副大統領の陣営は「環境保護派」を自称し、ブッシュを、(石油石炭の消費の結果である)二酸化炭素排出による「地球温暖化」や窒素酸化物による大気汚染に無関心な、「環境汚染派」であると批判する。そしてゴア陣営の副大統領候補は初のユダヤ系候補、リーバーマン上院議員(ミズーリ州選出)である。

なんという「露骨な」組み合わせであろうか!!

パレスチナ自治政府のアラファト議長は、9月13日に予定していた「パレスチナ国家樹立宣言」を2か月後の11月15日に遅らせたが、これは大統領選挙の「結果待ち」であろう。なぜなら、彼は、湾岸戦争以来アメリカの保守本流が、イスラエルを棄てようとしているのがわかっているからだ。

では、選挙の結果はどうなるのだろう。そして、その影響は?

●どっちが勝っても結局同じ.
結論を先に言うと、ゴア、ブッシュのいずれが勝とうと大差はない。その理由は、連邦議会(とくに上院)と国防総省に対する「保守本流」の支配が揺るがないからである。議会大統領選挙と同時に行われる上下両院選挙、とくに上院では、今回非改選の議席も含めて共和党の優位は(僅差ながら)動かないと予想される。

リーバーマンは見かけ上民主党員のユダヤ人なので、イスラエルびいきに見えるが、実は隠れ共和党員(共和党が、上院支配を維持するために民主党に送り込んだスパイ)ではないか、と筆者は疑っている。その理由は、彼が副大統領候補指名を民主党大会で受諾したあとも、上院議員(選挙)を辞職(辞退)しなかった「ふたまた」の態度にある。これには、民主党内部でも、非難する声が少なくない。

大統領選挙が大接戦なので、上院選挙も(下院選挙も)接戦である。仮に上院(定数100名。各州から2名ずつ)が(今回非改選区の議員も含めて)まったくの50名ずつになったと仮定して考えてみる。

大統領選挙で共和党が勝つと、副大統領のチェイニーが憲法の規定により、上院議長を兼ねるので、可否同数の場合は議長裁決で、共和党の方針が上院の意志とされることになる。

一方、大統領選挙で民主党が勝つと、今回非改選区から上院議員に選ばれているリーバーマンは憲法の規定で上院議員を辞任して副大統領のみに就任しなければならない。となると、上院には1名欠員が生じ、50対49となり、民主党は共和党におよばない(かつリーバーマンが副大統領兼上院議長として裁決に参加することはできない。尚、欠員の上院議員は、当該選挙区の州、この場合、共和党員のミズーリ州の知事に任命されるので、おそらく共和党員の、前回選挙で次点だった候補者を選んで補充するので、最終的には51対49になる)という事態になり、大統領選で民主党が負けたケースと同じことになる。

おまけに大統領には閣僚の任免権がない。議会の承認がないと、国防長官もCIA長官も任命できない(合衆国憲法に明示された、大統領の権限は「議会への勧告=教書の提出」「議会の成立させた法案への拒否権」「3軍の最高指揮権」の3つだけ。「議会への法案・予算案の提出権」「議会解散権」はなく、「宣戦布告権」は議会にある。その権限は、明らかに日本の首相より弱い)。1997年1月、クリントン民主党政権が国防長官に、共和党員のコーエンを任命せざるを得なかったことで明らかなように、昨今のペンタゴン(国防総省)では、国防長官は共和党員か保守本流の覚えのめでたい民主党員(隠れ共和党員)に限られている。となると、大統領選挙でだれが勝とうと、国防総省への共和党の支配も覆らない。

●イスラエル保守派の「単なる気休め」
では、なぜ、両陣営はあんなに激しく争うのか?
それは、両候補個人の個人的な野心と、それぞれについている企業の違い(イギリス・ユダヤ系にはコカ・コーラ、VISAカード、保守本流にはペプシ・コーラ、マスターカードなど)といった、アメリカ国民にとっても諸外国にとっても「どうでもいい」(が、当事者にとっては深刻な)問題のためであるが、もう1つ、「イスラエル保守派の悪あがき」という面も否定できまい。

湾岸戦争でジョージ・ブッシュ1世から、「必要ない」同盟国の烙印を押されたイスラエルは、仕方なく中東和平合意へと追い込まれた(これを見た、アメリカのイギリス・ユダヤ系メディア=ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ABC、CBS=が総がかりでブッシュをたたき、クリントンを持ち上げ、1992年の米大統領選挙で強引に民主党政権を作って、ブッシュを追い落とした)。イスラエル労働党のラビンは、元はタカ派の軍人だったが、和平案(占領地の放棄)を呑まなければ(そして、もし共和党の力がもっと強くなれば)占領地どころか、イスラエルの国家としての生存権すら危うくなると気付いたので、宿敵アラファトとの歴史的な和解「中東和平合意」を実現した。

が、占領地には、アラブへの「盾」として、貧しいスファラッド(肌の浅黒い中東系ユダヤ人)が多数入植させられてきた。彼らの生活や財産はすべて占領地で気付いたものだったから、占領地をアラブ側(パレスチナ国家)に返せば、彼らの人生はなくなる。たとえ命が無事で、和平が来るといっても、自分の人生の「全面否定」など呑めるはずがない(これは「成田空港反対派」とよく似た心情であろう。つまり、イスラエルの領土問題には「数千年におよぶ歴史的背景がある」というのは、無知なマスコミがタレ流す大ウソで、実はたった数十年の歴史しかない「中東版三里塚」なのである)。

イスラエルの保守派、とくにリクードの支持者にはスファラッドが多い。他方、ラビンら穏健派の政党、とくに労働党の支持者にはアシュケナージュ(欧米系ユダヤ人、要するに「白人」)が多い。アシュケナージュは人口ではわずかにスファラッドより少ないが、財力や学歴でスファラッドを圧倒している。つまり、保守派と穏健派は同じユダヤ人といっても「人種が違う」のである。

「2種類のユダヤ人」については こちら

が、イスラエルへの最大の援助国アメリカに住む、イスラエル・シンパのユダヤ人は当然みな「白人系ユダヤ人」である。彼らは、占領地の入植者のことなどほとんど知らないし、その問題には関心も利害もない。知っているのは、ラビンが歴史的な和解に乗り出してノーベル平和賞を受賞し、(領土は小さくなるとはいえ)イスラエルの生存権が宿敵だったアラブ側から認知された、という結構な話だけである。みな「ラビン首相の和平路線」を支持し、それを恨んでラビンを暗殺したユダヤ人の極右青年を憎んでいる。

リクードのシャロン党首は、2000年9月、わざわざ大勢の警備陣を連れてエルサレムのイスラム教徒地区を訪問してアラブ側を挑発し、騒動を起こした。騒動を起こして、和平が頓挫すれば、占領地は返さずに済むと思ったのだろうか。

が、これがまさに「無駄な抵抗」なのだ。騒動が起きると、世界の石油の相場が上がり、それが高じると、好調なアメリカ経済や、立ち直ったばかりの韓国などアジア諸国の経済が失速しかねない。アメリカの有権者は、ユダヤ人であろうとなかろうと、ガソリンの値段には敏感であるから「なんで、アラブとイスラエルが仲良くできないことのツケをわれわれが払うのか」と腹を立てることは必定である。つまり、アメリカ国民がイスラエルの存在をうとましく感じてしまい、かえって逆効果になる可能性が高いのだ。

イスラエルの存在は石油の値段の安定には役立たず、むしろ逆効果である…………今回の騒乱を通じて、アメリカ国民はこのことを「学習」した。そのうえ、彼らは、サウジの米軍基地は石油価格の高騰の防止に役立つことを知っている。

2000年春から夏にかけて、サウジはじめOPEC諸国は価格カルテルを結び直し、1998〜99年に「採算割れ」(1バレル=10ドル台前半)まで下がって国家財政の危機すらもたらしかねなかった石油相場を立て直した。が、立て直しすぎて高騰させてしまった(1バレル=30ドル台の後半からその上)。すると、アメリカの納税者たちは「サウジはわれわれの税金(米軍)で守ってもらってるくせに、われわれを搾取するのか」と怒り出し、国会議員はサウジへの武器輸出停止などの「制裁」を叫びはじめた。すると、OPECは圧力に屈して増産を決め、相場を下げたのである。

この「経験」がある以上、アメリカ国民は(共和党、民主党、いずれの支持者であるか、ユダヤ人であるか否かにかかわらず)サウジから軍を撤退させようとは思わない。となると(イスラエル国内には米軍基地はないので)中東におけるアメリカの最大の同盟国はサウジであってイスラエルではなく、イスラエルはいつでも「斬り捨て可能」なのである。

この現実はゆるがない。これは国際政治上の「構造的な変化」であり、後戻りは不可能だ。

だから「無駄な抵抗」はさっさとやめて、リクード支持の入植者たちはおとなしく占領地を明け渡せ……とアメリカ(保守本流)が思っていることを、アラファトは知っている。民主党政権と共和党政権とでは、多少イスラエルへの「あたり」が違っていて、アラブ側とっては、共和党のほうがより有利だから、だから彼は9月に行うはずだった「パレスチナ国家樹立宣言」を、選挙後の11月15日まで延ばしたのだ。

どっちが勝っても大差はないし、大差をもたらさないように政治工作するのがCIAや国際石油資本(メジャー)の仕事であり、メジャーの大資本家、たとえばロックフェラーなどは絶対に「かけ」をしない。必ず、どっちにころんでもいいように「保険」をかけている(ロックフェラー家の当主、J.D.ロックフェラー4世が共和党でなく民主党の上院議員になっていることなど、もっとも典型的な「保険」であろう)。

投資家とはそういうものである。

●混戦しても、結局同じ
先週(2000年11月6日)ブッシュとゴアと、どちらが勝手も(イスラエルという国の寿命や、パレスチナ国家の建国記念日や面積が少々変わるだけで)「結局同じ」と書いた。が、投票日(7日)を過ぎてみたら、予想外の接戦で(12日現在)いまだに大統領が決まらないという異常事態になっていたが、それでもなお、別の意味で「結局同じ」なのだ。

なぜなら、フロリダ州の開票が異例の接戦で長引き、両陣営が一部選挙区の投票用紙の不備や、選挙やり直しを求める訴訟を理由になかなか選挙結果(勝敗)を受け入れないために、最終的にどちらの候補が勝っても、その正統性を疑われるし、たとえ今後双方が反省して開票結果を素直に受け入れたとしても、どちらの候補も投票率約50%の選挙で約50%の得票しか得られなかった(つまり国民の4分の1の支持しか得られなかった)のだから、著しく権威の低い大統領となり、内政でも外交でも指導性を発揮するのが難しくなるからだ。

たとえば、旧ユーゴやミャンマーの「非民主的政権」が問題を起こした場合、通常アメリカを中心とする西側先進諸国は経済制裁、武力制裁(軍事介入)でその行いを是正し、最後には選挙監視団を送って「民主的な選挙」をやらせて「大人しく」なるかどうか見極める、という形を取る。が、アメリカの大統領選挙のこの混乱を見れば、もはやだれもアメリカに選挙監視団を送ってほしいとは思わなくなる。すくなくとも、すでにアメリカ国内で懸念が表明されているように、世界中の侵略主義者や独裁者がもはやアメリカの制裁など恐るるに足らずとみなして、勝手な行動を取りはじめる恐れは十分に出て来る。

とりわけ困るのは、中東和平問題におけるアメリカの仲介者としての立場だ。アラファトは新大統領とパレスチナ国家樹立のタイミングや方法を話し合うつもりで、大統領選挙(の開票)後、と思って樹立宣言を11月15日まで延期し、その直前に訪米したのだ。

が、いざ訪米してみると、新大統領がなかなか決まらないうえ、決まっても権威がなさそうとなると、どうやって中東和平問題を進めていいのか理解できまい。どっちが勝っても、パレスチナ国家建国は相当に遅れる(無期延期)可能性が高まり、この「調停者不在」を利用して、イスラエルはパレスチナ自治政府のアラファト(PLO)派の幹部の乗った自動車を、武装ヘリのミサイル攻撃で破壊して幹部を殺すなど、凄まじい「過剰防衛」に出ている(たしかに、これで、たとえブッシュと保守本流が「イスラエル切り捨て」を画策していたとしても、その日を数年先送りし、イスラエル共和国の寿命を延ばすことにはなっただろう)。

●加藤紘一は「反原発ノルマ」免除か
さて、この「調停者不在」による中東情勢の不安定化が一因となって、日本の政界で、自民党の加藤紘一元幹事長が「森・自民党内閣倒閣宣言」をする、という異様な事態になったのではないか、と筆者は疑っている。その理由はこうだ。

アメリカの保守本流は日本や台湾に、民主化、経済構造改革、財政再建、安全保障体制(同盟関係)の再編強化などを要求する「外圧」をかけてきた。外圧の内容がこれだけなら、日本でも台湾でも、良識ある保守政治家やその支持者、財界人はみんな大歓迎なのだ。

ところが、アメリカの保守本流の中核は、国際石油資本とロックフェラー一族なので、アメリカは自らえこひいきして育てあげた「民主派」や「改革勢力」(陳水扁、小沢一郎)らに決まって石油利権追求への協力、具体的には原発反対政策による石油相場の維持を要求してくる。ここまで要求されると、もはや良識ある保守派は容認しにくくなる。

日本や台湾で財界が原発建設を推進したのは利権追求だ、といった「しろうと」くさい指摘がよくなされるが、これは筋違いである。原発建設は利権のためでなく、政情不安の中東地域の原油への依存度を下げ、国際石油資本のより大きな利権追求に振り回されることを防ぐという国家安全保障の見地からの政策である。

知能の低い「原発反対屋」のなかには「原発を動かすには電気が要るから、石油の代替エネルギー源にはなれない」などと言う者があるが、ばかげた意見で、なんの反論にもなっていない。

そもそも原発推進論者は「原発で石油をすべて代替できる」などとは言っていない。ただ、特定地域(中東)の、特定のエネルギー源(石油)への依存度が異様に高くて、ちょっとした紛争一つで経済が危機に陥るというような、理不尽な事態を避けたいから、せめて国内で使う電力の、総発電量の30〜50%ぐらいを原発に任せ、 輸入石油は自動車や飛行機の燃料など、原発で代替できない(しにくい)分野に優先的に使うようにしよう、という発想でエネルギー安全保障を考えようということなのだ。

もちろん、大気汚染や地球温暖化の問題を考えれば原発のほうが石油火力発電よりクリーンなのは明白(ただし、天然ガス発電は環境への影響がより少ないので検討の余地はある)だし、そもそも東京電力の営業エリアについて言えば、総発電量の50%が原発依存という現状がある中で「原発は危険だから使うな」ということになると、某大手新聞社も赤旗も輪転機が回せなくなって発行できなくなるだろう(最近、某大手新聞の社説が「稼働中の原発はとりあえず容認し、原発依存率は30%ぐらいに抑えよ」と主張しはじめたのは、国際石油資本の日本での「営業ノルマ」(^^;) が下がったことを暗示しているようで、興味深い)。

が、国際石油資本は、自国の影響下にある民主(改革)派勢力には、たとえ低能過激な環境ファシスト(原発反対屋)と組んででも、原発を止め、石油火力発電を追求せよと要求する。

こういう事情があるので、陳水扁総統は事前の密約に従って、原発反対政策を実行に移したが、良識ある保守派の総スカンを食い、国会(立法院)で多数派を占める野党3党から総統罷免要求を突き付けられ、就任後数か月にして早くも政治的に「死に体」になってしまった。米保守本流の他の勢力(たとえば、石油資本よりはるかに小さい「中資本」だが、東芝など組んで原発設備を東京電力などに輸出しているゼネラル・エレクトリック、GEなど)は、

「せっかく工作して民主的・改革勢力を作ったのだから、『反原発ノルマ』は暫時免除して、発足当初は構造改革や財政再建、安保体制の強化など他の重要政策に集中させよう」

という意見が出ても、不思議ではない。
そのうえ、アメリカのせいで「調停者不在」になったため、中東情勢は先行き不透明で「中東原油への依存に日本の財界が不安を感じて原発依存を強めたがるのも、無理もない」と言える状況が生まれている。

加藤紘一は日本の「保守本流」を自認する宏池会(かつての大平派、宮沢派)の会長である。7月の総選挙の前に、民主党の鳩山由紀夫党首に「自民党を離党して来たら、首班にかついでもいい」と誘われた際には、自民党からの離党は(小沢一郎の離党、新生党、新進党結党の際と同様に)保守良識派にとってもっともけがらわしい「原発反対屋」のゴロツキどもとの同調を意味したはずで、加藤が離党に踏み切らなかったのは、当然だった(ゴロツキと組めば、野中広務はまた「国を売った」と罵るだろうし、財界からも非現実主義者と嫌われたかもしれない)。

2000年11月11日の朝刊で、加藤紘一が、野党が森内閣不信任案を提出したら、同調する、と表明したことが報じられ、日本の政局はにわかに騒然となったが、この前日、加藤はマスコミ関係者らと会った、と11日付の産経新聞朝刊は報じている。では、この「マスコミ関係者」とはだれなのか? 産経新聞は具体的な個人名をあげていないが、同日付の朝日新聞朝刊は彼が会ったマスコミ関係者とは、政治評論家の屋山太郎、三宅久之のほか、読売新聞の渡辺恒雄社長(ヤクルトの古田捕手の五輪派遣を妨害して、日本野球がシドニーで金メダルを取るのを必死になって妨害した、非国民の巨人軍オーナー、通称「ナベツネ」)であったと明記されている。

●意外なところにネベツネ登場
野球というスポーツをこよなく愛する筆者は、野球ファンの天敵ナベツネは大嫌いだ。が、日本財界が、ゴロツキの環境ファシストが煽る「放射能の恐怖」を克服して原発建設を推進しえたのは、読売新聞とそのグループ(日本テレビ)が総力をあげて世論を誘導した結果であることは、NHKスペシャル等で取り上げられており、いまや公然の秘密である。

おそらくナベツネは、10日夜に、加藤に「原発反対屋とは組みませんね」と聞いたに相違ない。そして、加藤は「組みませんからその旨関係者(財界、とくに電力業界)に伝えてください」と答えたに相違ない。

●カギはKSDと公明党
加藤(宏池会)と、彼への賛同を明言した山崎拓・元政調会長(政策科学研究所=旧中曽根派から自力で派閥を旗揚げし、分離独立。日本・インドネシア友好議員連盟会長で、98年のスハルト体制崩壊の前後に頻繁にインドネシア政府関係者に接触している点が注目される)はともに現在は自民党の主流派で、とくに後者は7月の総選挙で野中執行部の「主流派えこひいき選挙」で多数の落選者を出し、小派閥に転落しているから、人数は大したことがない。そのうえ、宏池会内部にも野中執行部の「おぼえのめでたい」ベテラン議員が少なくないし、改革要求を掲げる若手議員のなかにも、不信任案採決に欠席、棄権するだけならともかく、(離党につながる恐れのある)賛成にまで踏み切れる者は多くはない(から、加藤の倒閣運動は成功しない)という予想もある。

が、連立政権を組んでいる公明党と自民党とは、もともと支持者同士が「相性」が悪く、いまだって「べつに好きでいっしょにいるわけではない」。自民党員側には公明党に縛れらて党独自の政策をうったえられないから選挙がやりくい、という不満があるし、公明党側にも先の選挙では与党を維持しても結局(自民党と組むと)議席は減ったではないか、といった敗北感が根強い。

もし、加藤が広範な自民党若手議員や野党の支持を得て(かつての日本新党の細川首相のように)政権を取りそうだ、となると、いまのところ自民党と連立している公明党、保守党でも(もともと、現在野党の小沢一郎や羽田孜らとはいっしょに細川・羽田政権を作った仲なのだから)連立を解消して、勝ち馬に乗る可能性がある。そうなれば、非自民連立政権、加藤首班の芽が出てくる。

さらに「KSD スキャンダル」というのがある。この陰湿な横領事件で富を得た、公益法人の元理事長は、自民党の某議員に献金していたと疑われており、この容疑事実が明るみに出れば、森政権や自民党への支持率は一桁台に下がり、加藤の離党、その動きへの同調者の急増、という事態へ進む可能性が高い。

この場合(とくに、このあと解散総選挙となれば)自民党は単に野党に転落するだけではなく、旧社会党(現社会民主党)や新党さきがけと同様に、事実上、その歴史的役割を終えることとなるであろう。

米保守本流が「原発反対圧力」をかけなくなる、ということの意味は、それほど大きいものなのだ。

●やはり加藤の背後に、米共和党
筆者の、石油戦争関係政治家「分類表」の正しさを傍証する情報がみつかった。2000年11月17日付、朝日新聞朝刊(2面「乱・2000年政変」)によると、この11月15日、都内のホテルで、加藤は、民主党の仙石由人・企画委員長、熊谷弘・幹事長代理、それにブッシュ大統領候補の陣営のアメリカ人経済アドバイザーと会談したという。そして、その際、民主党の熊谷は「(加藤は)次の首相。(米大統領選で、当時は優勢と思われていたブッシュ・テキサス州知事と同様に)ほとんどおめでとうと言っていい人です」と、加藤のことを、その「ブッシュの身内」に紹介したという。

これで、今回の加藤の造反劇の背後に、筆者の推測どおり、米保守本流(共和党、ロックフェラー、国際石油資本)がいることが、ほぼ確実になった。したがって当然、加藤の動きは、けっして自民党内の単なる派閥抗争などではなく、93年の小沢一郎の離党および非自民連立政権(細川内閣)の成立や、台湾の陳水扁総統や韓国の金大中大統領の誕生と同様の「政界再編」「大変革」の一環と見る必要がある(加藤の造反を「また派閥抗争かよ。うんざりか」と思った方々は、考え直してほしい。今度の造反は、後述のように、成功すれば、自民党の壊滅による政局の安定につながる可能性が高く、くだらない「コップの中の嵐」は、これで終わり、と期待できるのだ)。

(日本の「識者」や「専門家」の大半は、永田町をはじめ、日本国内だけの情勢を見て、予測を立てるだろうが、それは、ほとんど「しろうと」の言い分であり、無意味である)
1998年のインドネシア政変の際、白石隆・京大教授、佐藤百合・アジア経済研究所研究員ら東南アジア政治の「専門家」は、インドネシア国内の動きばかり見ていたため、スハルトの退陣はないとの予想を述べた。が、筆者は、インドネシアの政局を決めるのは、けっしてインドネシア国民でなく、インドネシア軍に士官の教育と武器を供給しているアメリカだと思っていたので、インドネシア国内を無視して、米国務省の「退陣勧告」のみに注目していたため、スハルトは即辞任すると判断した。
結果は、ご承知のとおり、筆者の勝ち、白石と佐藤の負けだった)

●野中・主流派が負けそう
筆者は、2000年11月19日(日)午前のフジテレビの『報道2001』、NHKの『日曜討論』における、非主流派・加藤元幹事長と、主流派・野中現幹事長の、マスコミへの受け答えを見て、明らかに野中のほうが、感情的になり、冷静さを欠いているように見受けられた。

この週末、土曜日(18日)から日曜日テレビカメラの前で、野中はしばしば激高し、造反した加藤に同調して野党提出の森内閣不信任決議案に賛成、あるいは棄権(欠席)した者は「除名だ」といきり立った。

ところが、加藤は平然と「1983年の大平内閣不信任案の採決に欠席してその可決を促した、当時の、森喜朗を含む自民党議員は除名処分を受けなかった」ことを例にあげ、「不信任案の問題で除名処分された例はない」「除名には、党総務会で全会一致の票決が必要」と述べ、野中の恫喝を一蹴した。

すると、野中ら主流派、執行部は、除名は不可能と思ったのか、一転して、加藤派(宏池会)、山崎派ら非主流派の代議士たちに(幹事長の一存で可能な措置として)「次の衆議院議員選挙での、党公認を取り消す」と脅す方向に、転換したのである。

ところが、加藤はいっこうに意に介さぬ風で「不信任案可決には100%の自信がある」「解散はない」と言い切り、余裕の笑みさえ見せる。いったい、これはどうしたことか?

かつて1993年、衆議院議員選挙に小選挙区・比例代表並立制を導入する与野党合意の「政治改革」案が、自民党の守旧派議員たちによって葬られた際、自民党の小沢一郎、羽田孜らは、野党の内閣不信任案に同調して(党執行部から除名処分を受ける前に)離党し、新生党を結成。細川政権を樹立し、自民党を野党に追い落とした。

小沢らが思い切った行動を取り得たのは、このときの選挙区がまだ自民党執行部の公認(資金、組織面での選挙での支え)なしでも当選可能な中選挙区だったうえ、離党すれば、非自民連立政権の樹立をめざす公明党(創価学会)や労働組合(連合)の支援が得られるという見通しがあったからだ。でも、今回は…………内閣不信任案可決後、加藤派、山崎派の議員たちが離党して、あるいは自民党執行部の公認なしで衆議院選挙に臨んでも、小選挙区で、創価学会の支援もなしに戦わねばならず、情勢は厳しい(から、執行部の加藤派、山崎派若手議員への恫喝は奏功しそうに思える)。

●公明党にも「主流派」がいる
が、公明党にも、自民党と同様、主流派、非主流派のせめぎ合いがあることを、日本国民は忘れていないだろうか。

1993年頃は、公明党では、市川雄一書記長(当時)らが主流派で、市川雄と小沢郎の「一・一路線」のもと、公明党では、非自民連立政権樹立への協力による党勢拡大が模索されていた。が、細川首相がスキャンダルで退陣し、後継の羽田内閣が社会党(社民党)の裏切りで崩壊して下野、その後の野党結集による新進党結党でも政権奪回のメドが立たない状況になると、「小沢との連携」を推進した市川は公明党内での発言力を失い、代わって「自民党との連携」を模索する神崎武法現代表らの一派が台頭。創価学会の支持を得て党内主流派に躍り出た。

この神崎執行部の「自公路線」の結果、2000年6月の衆議院総選挙で公明党は与党として臨んだにもかかわらず(森首相の度重なる失言の影響もあって)議席を大幅に減らした。これで、社民党、さきがけ、自由党、公明党と、自民党と連立した政党は必ず議席を減らし党勢を縮小し「骨までしゃぶられて」衰退する、という「法則」が確立してしまった。

11月13〜17日に発表されたNHKを含む大手マスコミ各社の世論調査で、自民・公明・保守3党連立の森政権の支持率は、20%以下、不支持率は70%以上であることがはっきりした。このまま、また(不信任案可決後の衆議院解散による)衆議院選挙や、2001年夏の参議院選挙を戦えば、森への不人気のあおりで公明党の議席がさらに減少することは避けがたい。

さすれば、公明党の神崎代表らの現執行部は責任を問われて失脚し、再びかつて「一・一路線」を推進した市川元書記長(現公明党常任顧問)の台頭がないとは言えない(18日付東京新聞朝刊によると、小沢一郎は市川雄一と最近「久方ぶりに」連絡を取り合っているという)。神崎らがそうした事態を避けるために、自民党執行部(野中幹事長)に、党内抗争の早期収拾と、たとえ不信任案が可決されても解散はしないこと、を求めていることは、いまや永田町では公然の秘密である(2000年11月19日付東京新聞朝刊 1面)。

自民党・野中執行部の、非主流派若手議員への「不信任案に賛成、欠席したら党公認を取り消す」という脅しが効くためには、執行部が恐れずに解散総選挙に打って出るだろう、という前提が必要である。が、公明党執行部が反対している以上、解散総選挙は不可能だし、敢えて強行すれば公明党は連立を解消し(「一・一路線」を復活させて)「加藤首班」の「非自民連立政権」樹立に乗り換える(「勝ち馬」に乗る)と思われる。

その場合、すでに社民、自由、公明の各党と連立していずれも相手を議席減に追い込んだ自民党には、もはや連立のパートナーはいない。「復権した市川雄一」と小沢、加藤、民主党、社民党、共産党のすべてを敵にまわし、自民党が今後半永久的に野党であり続けることがはっきりしてくる。

かつて、新生党、さきがけ、新進党などに参加して自民党を離れた保守系議員の相当数が自民党に入党・復党したのは、自民党がすばらしいからでも、野中や森に人望があるからでもない。ただ単に自民党が与党だからだ。したがって、逆に自民党が当分与党に戻れないことがはっきりすると、彼らはなだれを打って自民党を離党し、新党、小会派を結成したのち、「非自民」陣営に戻り、与党の一員であり続けることを望むだろう。

そのとき、自民党は、分裂するのではなく、確実に崩壊する。そして、遠からぬ将来、事実上消滅する。

公明党の反対を押し切って、低い支持率のもとで解散総選挙に打って出ることは、自殺行為であり、絶対に不可能だ。となると、自民党の非主流派若手議員は、「公認取り消し」に怯える必要はない。

11月20日(月)夜に予定されている、内閣不信任案の採決は、数の問題だから、僅差で加藤ら非主流派、野党側が負けることもあるかもしれない。
が、今回の騒動で「森政権では2001年の参院選は戦えない」ことがはっきりしたため、不信任案を否決しても森は(野中執行部の手で)退陣させられる、との見方が有力である。その際、だれが次の首相(候補。自民党総裁)になっても、公明党現執行部は「新総理とは意見が合わない」などと口実を設けて連立を解消する可能性があり、詰まる所、どう転んでも自民党執行部は不利なのだ。

だから、18〜19日のテレビ出演で、野中は泣き出さんばかりに顔を真っ赤にしていたのに、加藤のほうは涼しい顔で「野中さんは冷静になったほうがいい」などと言っていられたのではないか。

とりあえず、20日の「本会議決戦」では、野中が負け、加藤が勝つ、と筆者は予測しておきたい。

●予想外の結果〜公明党の動きから
あー、驚いた。結果は僅差の勝負でなく、不信任案を採決する衆議院本会議の開会直前に、今回の「反乱」を起こした加藤派(の過半数)と山崎派の議員が全員欠席を決めて、野党提出の内閣不信任案は、与党側の賛成者をまったく得られないまま否決され、形式上森内閣は「信任」されてしまった。

原因は、自民党の野中執行部が、加藤派(宏池会)内の議員に働きかけて「切り崩した」ため(とくに、加藤が自分が政権を取った場合のブレーンとまで頼みにしていた丹羽雄哉が寝返ったため)「首謀者」の加藤がショックを受けて戦意を喪失してしまった(あるいは、自分を支持してくれた若手議員が党公認を取り消されて、そろって路頭に迷う事態、派閥が瓦解する事態を恐れた)ということらしい。

(さらに、加藤の森内閣退陣要求を「ガス抜き」するために、不信任案が否決されても、森の早期退陣はありうる、という妥協案が自民党執行部・主流派から示唆されたことも、加藤派議員に「無理に不信任案に賛成しなくても当初の目的は達っせられるのか」との思いを抱かせ、戦闘意欲をくじいたようだ)

つまり「切り崩し」が成功したから、こうなった、ということなのだが、なぜ成功したのか?…………大手紙誌は、これについて、とくに自民党の連立パートナーである公明党の動きについて、おおむね次のように分析している。

公明党(の母体の創価学会)の幹部は「選挙の準備には少なくとも二カ月かかる」(週刊文春2000年11月30日号、p.191)から、いま(2000年11月)は衆議院の解散・総選挙を恐れており、そういう事態にならないように、自民党執行部・主流派(野中幹事長)に協力した、というのである。

「六月の総選挙で創価学会の支援を受けた加藤派議員は約二十人……(自民党執行部・主流派は)創価学会や業界団体を動員して『解散は困る』『除名につながるような活動は見合わせてほしい』と迫り、揺さぶる。加藤…派議員は次々に切り崩されていった」(朝日新聞2000年11月22日付朝刊3面「乱・検証2000年政変」〜首相の進退、否決後に)

が、これは奇妙な話だ。筆者は小説『ゲノムの方舟』執筆時に、善玉、悪玉あわせて十数人の登場人物をあたまの中で「演じて」みて「この人ならここでこうするはずだ」といったシミュレーションを繰り返して、セリフやストーリーの展開を選択し、あるいは「発見」しながら執筆した。このため、それ以降、好き嫌いにかかわらず、特定の人物やグループ、政権、政党などを一方的に非難する気がしなくなった。「この立場なら、この人はこうせざるをえないだろう」といったことを考え、極めて中立的な発想をするようになったのである。

この感覚で、今回の政変(未遂)劇を、たとえば公明党(創価学会)の立場で見ると、彼らが「解散阻止のために、加藤派議員の切り崩しに協力した」というのは理解できない話である。

そもそも、今回のもめごとの原因を作ったのは自民党(執行部)である。自民党内の非主流派とよく政策や政治手法について議論して合意を取り付けておかなかった自民党執行部(野中)の監督不行き届きのせいであって、べつに公明党が悪いのではない。

森派の若手議員らは「国会で国民の代表として首班指名の際に『森喜朗』と書いたのなら、支持率がどんなに下がっても森を支える義務がある」「野党の出した不信任案に同調して自分の党の内閣を倒すなど政党人として許されない」などと言う。

たしかに、これらは正論である。しかし、党外の勢力(公明党、創価学会)の力を借りないと党内のもめごとが収拾できない、というのもまた政党人としては「だらしのない」話ではないか(野党提出の不信任案への同調は「禁じ手」かもしれないが、創価学会に加藤派議員を脅させるのも、事実とすれば、またルール違反ではあるまいか)。

だいいち、ルール違反でなかったとしても、こんな方法が成功するとは、筆者は到底思えない。朝日新聞はなんの疑問もはさまずにこう書いている。

「不信任案が可決された場合はどうなるのか----。(自民党旧経世会、現平成研究会=橋本派の)青木(参議院幹事長)は神崎(公明党代表)の疑問を察知したように言った。
『まかり間違ってそうなったら、当然の対応をします』
 解散・総選挙を辞さないという意味だ。
 神崎はあわてた。(後略)」(朝日新聞2000年11月22日付朝刊3面、前掲記事)

 あわてるはずはない。公明党は自民党内の一派閥ではない。本誌既報のとおり、公明党では党内「非主流派」の市川雄一・常任顧問(元書記長)らを使って、加藤派や野党とも接触をはかる動きを見せていたのだから、不信任案否決後、解散になったら、不人気の森や自民党と別れて、加藤の支持にまわって選挙戦を戦えばよいだけのことだ。上記の朝日の記事を要約すると、青木は神崎に

「ウチの若いもんが騒いどる。黙らせるにはカネが要る。あんたもカネ出せや。出さんとあんたも困ったことになるで」

と(まるでヤクザまがいの言い方で?)言ったことになる。こんなことが通用するはずがない。国民の支持も党内(非主流派)の支持も得られない「ダメ総理」(森内閣の支持率は20% 以下なのだから、少なくとも現状ではそう言えよう)は、公明党員ではない。公明党はあわてる必要も怯える必要もない。ただ「別れれば」いいだけの話だ。

公明党の立場で考えると、自民党と連立してから、いいことはほとんどない。野党時代には賛成していなかった盗聴法に賛成させられ、いずれ近い将来、日米安保条約の新指針(ガイドライン)の改訂に伴って、創価学会婦人部が卒倒しそうな有事立法に賛同させられるに決まっている。そして、すでに衆議院での議席は自民党と組んだために大幅に減り、2001年の参議院選挙でも当然、議席減が予想される。

公明党はいつでも自民党に向かって「なら、別れるぞ」と脅せる強い立場にある。自民党が公明党を脅すことなどありえない。自公がたもとを分かって、自民党が野党に転落すると、社民、さきがけ、自由、公明とほとんどすべての党が「自民党との連立による議席減」を経験している現状からして、もはや単独過半数の確保が不可能になった自民党は全政党に連立を拒否され、一気に「万年野党」に転落してしまうから、野中執行部(現主流派)は公明党に「報復」することもできまい。

とすると、公明党(創価学会)が、自民党執行部に協力して加藤らへの「恫喝」にまわった理由はなんであろうか?

●公明党から法相、文相!?
と疑問に思っていた筆者のもとに、政界の動向に詳しい某財界人から、とんでもない情報がもたらされた。それは以下のようなものである。

1. 池田大作・創価学会名誉会長は「かつて公明党(との連立について)批判をした者(加藤)は首相にはしない」と野中に言った
2. 法務、文部(科学技術)、防衛の3省庁の大臣ポストを公明党に渡すよう要求し、うち2つ(法相、文相)を手に入れた
3. 池田と野中は、先週(11月13〜19日)頻繁に会っている

「噂は本当だった」に戻る

「3.」はともかく、筆者は「1.」も「2.」もすぐには信じなかった。まず「かつて、創価学会批判の急先鋒だった亀井静香は現自民党執行部の大幹部ではないか」と反論したが、「亀井は政調会長であって首相でない」と返された。次に「法相、文相ポストを要求した理由は?」と聞くと「国民をマインドコントロールする手段(司法、教育制度)の獲得であり、創価学会の悲願」ということだった。

これが事実かどうかは、近く(2000年12月か2001年1月初旬)行われる内閣改造の結果を見れば、わかる。真偽のほどは、そのときまで「お預け」だ。注目して、その日を待とう。

が、「2.」は、かなりおかしい気がする。文部大臣ポストが「マインドコントロール」(への遠い遠い布石)になる(と池田が思い込む)のはなんとなくわかるが、法務大臣のポストはどうだろうか。

「法相ポスト」と聞いてすぐ、筆者が連想したのは、ロッキード事件の裁判が進行中で、かつ田中角栄(被告人)が自民党の最大派閥(木曜クラブ、田中派。現在の橋本派の母体)の領袖で、事実上首相を決めるキングメーカーあるいは「闇将軍」として永田町を牛耳っていた80年代、田中が法務大臣に自分の派閥の参議院議員(秦野章・元警視総監)を「任命した」ことである。この人事を評論家の立花隆や大手新聞は「元警察官僚に検察を監視させる、異常な『ロッキード裁判シフト』」と非難し、法務大臣の「指揮権発動」で検察庁(東京地検特捜部)の田中被告への追求が鈍るのではないか、と危惧した……。

が、結局何事も起こらなかった。いくら法務大臣が法務省の長であるとはいえ、大臣が指図できるのは、実質的には(各検察庁の現場で働く検事ではなく)法務省本庁で予算獲得や人事のために働いている「司法行政官」だけである。指揮権発動(によるスキャンダル追求の中止)の例は過去に一度あるが、その際法務大臣は指揮権発動直後に辞任しており、以後慣例として、法相はクビをかけない限り指揮権は使えないとされている。

もしも(KSDスキャンダルなどが)公明党や創価学会を巻き込む形で、そしてロッキード事件以来、米保守本流の「注文」に忠実な東京地検特捜部の手で追求されるべく(CIAなどの主導で)準備されているならば、池田にとって「公明党員の法務大臣」の存在は、たしかに多少の「気休め」にはなるだろう。が、いったん検察が動いたあと、法相の指揮権を使ってそれを止めるのは、まず不可能だ(それでも、強引に指揮権を使うテはあるが、その場合公明党は世論の猛反発を買い「組織票」で選挙を乗り切ったとしても、与党になるのは、もう不可能となろう)。だから、常識的には、あまり意味のある人事とも思えない。

ただ、気になるのは、公明党の神崎代表が、検察官出身であることだ。彼自身が法相になるか、あるいは彼の腹心を法相に据えることで(神崎にとって検察内部の組織構造は、「勝手知ったる我が家」なので)、指揮権発動のはるか手前の段階、地検特捜部が捜査を開始する前に、その動きを察知して止めてしまう、という手がないとは言えない。

が、すべて仮定の話だ。公明党を巻き込むスキャンダルが、米保守本流の意を受けたCIA などの手で(財政再建や構造改革を先送りして、世界経済を危機にさらしかねない「アメリカの敵」野中自民党を潰すために)準備されているのか否か、その場合公明党関係者は白か黒か灰色か、といったことはまだわからない。

ただ、これだけは言える。たとえ、そうしたスキャンダル工作から公明党・創価学会が「身構える」にせよ、そうした類の「陰謀対策」に強くなるには、法務大臣より、国家公安委員長(兼自治大臣)のポストを取るほうがはるかに有効だ(このことをいちばんよく知っているのは、小沢一郎と、野中広務である。詳しくはこちらを参照)。

●森首相すら造反しかねない政局
加藤の反乱が「腰砕け」に終わったことの政治倫理上の是非や意味は、ほかの媒体がさんざん論じている(ほとんどの場合、非難している)ので、いまさら本誌で扱う(たたく)必要はあるまい。

筆者は、他の媒体があまり扱わない、政局の(倫理的な面でなく)戦術的、技術的な側面、とくに公明党(創価学会)の動向に注目して、内閣改造人事を待ちたいと思う。

今回明らかになったように、自民党は内部から改革するのは非常に難しい党のようだ。が、外部から変えるのは至って簡単なのだ。池田大作がひとこと「別れる」と言えば、自民党は壊滅するのだから。

だから「野党の不信任案に同調するのは政党人として……」とか「首班指名で森喜朗と書いた以上……」あるいは「(失言ばかり責めないで)少しは森にも(予算編成など)をやらせてみてはどうか」といった「正論」は、実はすべて「池田先生のお慈悲」が続くことを前提としたものであり「砂上の楼閣」なのだ。

見てるがいい。池田がちょっと気を変えれば、清和会(森派)の議員だって、もう「正論」など言わなくなるはずだ。むしろ、不信任案否決によって国会に「信任」された首相を降ろそうとする、経世会や野中執行部の意向に反発して、森派が率先垂範して「反乱」を起こし、自民党を分裂させるかもしれないのだ。現に森派会長の小泉純一郎・元厚生大臣は「(執行部から)『森おろし』の声が出たら、私の出番だ。その時は自民党をぶっこわす覚悟でやる」(朝日新聞2000年11月26日付朝刊4面「主流派内 綱引き」)と述べている。

小泉は、今回「反乱」を起こした加藤紘一、山崎拓とは「YKK」と言われた盟友関係を保ってきた。ひょっとすると、YKKが森をかついで離党して、野党と組んで野中執行部と対決……(^^;)……なんて、まるで東スポかエイプリルフールの本誌の見出しみたいな話だが、べつにそうなっても、あまり驚くに値しないのではあるまいか。いまの政局は、もう「なんでもあり」なのだから。

●やっぱり「米国→加藤」だった
11月末、国会で、与党3党提出の原発立地を推進する法案が可決された。野党のうち、民主、共産、社民各党は反対したが、自由党(小沢一郎党首)は賛成した。

昨1999年、かつて小沢一郎(新進党)の推薦で当選した青森県の木村知事(核燃料輸送船の青森県の港湾への入港を拒否した「反原発派」)が、原発容認に転向したこととあわせて考えると、ロックフェラーを中核とする米保守本流(共和党)が日本のいわゆる「改革派保守勢力」に課して来た「反原発ノルマ」は、もはや免除することに方針転換したのは、ほぼ確実で、日米の保守政財界の新しい形での連携が模索されつつあると伺える(昨今は、某大手新聞の社説も「原発全廃」は掲げず「総発電量に占める原発依存率は3割程度にとどめ……」などと、GEなど米保守本流の原発関連企業の利益にも配慮する方向に「軟化」してきている)。

今回の「加藤政局」にも、これが反映されていた、とみなせる状況証拠がかなりある。

加藤は、2000年7月の総選挙の前後から「景気」より財政再建を重視した政策を提唱していたが、小渕・森両政権と自民党の野中執行部はその声を無視して景気優先(のための公共事業バラマキ)財政を続けてきた。両政権が「バラマキ」批判を無視してきたのは、自民党の支持基盤の地方選挙区の郡・町村部建設業界や農村に雇用をもたらし、支持をつなぎとめることが主たる理由だが、もう1つアメリカが対日輸出・投資の増大(によるアメリカ企業の市場拡大)には、日本の景気回復が必要と言い続けてきた「外圧」も要因としてあった。

この外圧は、おそらくクリントン政権の日本の財政事情への無知から出たものであろう。 「景気回復」の外圧をかけると、自民党政権はそれを口実に、経済の構造改革にも新しい産業(IT、バイオなど)の育成にもまったく役に立たない、くだらない土木公共事業に予算を付け、そういう予算を多く獲得したことをもって「こんなに努力した」と言える状況を作ってしまうのだ。

国民の7割以上が第三次産業(サービス業、ソフト開発、情報処理)で雇用されている日本のような先進国では、新しい産業やベンチャー企業のほとんどは、第三次産業で生まれる。
他方、自民党の伝統的な支持層は、第一次産業(農林水産牧畜業)、第二次産業(製造業、建設業)に多く、第三次産業に少ない。1999年に当初野党4党の共同提案で出された「ハッピーマンデー法案」(体育の日などの祝日を月曜日に固定して「土・日・月」の3連休を増やして、観光、レジャー等のサービス産業の活性化を通じて景気回復をめざす法案)に、当初自民党が「不景気に苦しんでいる人の横で、遊べ遊べと促すのは不謹慎」と反対した(最終的には修正法案に賛成)ことなど、自民党が第三次産業を理解していないことをよく表している。
最近の新興企業、たとえば、Yahoo、NTTドコモ、オリックスなどは純粋なサービス業であるし、ソニーや島津製作所、宝酒造のような伝統的な製造企業(グループ)でも、雇用を増やしているのは、ネット銀行、インターネットサービスプロバイダー事業、映画、遺伝子・ゲノム解析、研究開発などの「サービス」部門である。

景気回復にはIT関連予算を野放図に付けることより、まったく税金のかからないderegulation(規制緩和でなく「規制撤廃」)により競争を促し、たとえばNTT接続料を下げることのほうが、はるかに有効である(「携帯電話サービス」という巨大産業が勃興したのは、郵政省が電波の利用を開放したからであって、とくに族議員が「産業振興予算を付けた」からではない)。

米大統領選が、共和党・ブッシュ候補の勝利で終わる見通しになった12月2日、ブッシュ陣営の経済アドバイザー、 ローレンス・リンゼーAEI(アメリカンエンタープライズ公共政策研究所)研究員(11月に来日して、加藤紘一と民主党幹部との会合に同席したのは、おそらくこの人物であろう)は「日本の非効率な公共投資は減らすべき」と発言した(2000年12月3日付朝日新聞朝刊3面。リンゼーのワシントンDCでの講演から)。景気回復の「外圧」をかけるのはやめ、むしろ逆の圧力、加藤の言う「構造改革、財政再建優先」の方向に転換したと見て間違いあるまい。

「クリントンが去り、野中自民党も終わる」に戻る

また、単なる仮説(状況証拠)と断ったうえで、元MSNニュース&ジャーナルの記者・田中宇(たなか・さかい)も、ハーバード大学など米東部の名門大学で現実政治の実証的研究(要するに、スパイ工作による多国の政局への干渉)をなりわいとする「生臭い」政治学者たちが、加藤の決起の前に「加藤支持」を打ち出していたことをリポートしている(ぜひ田中へ、感謝のメール敬意を込めたアクセスを)。

一国の政治(権力闘争)がその国内だけで完結していた「理想的な」時代はとうの昔に終わり(あるいは、人類史上もともと存在せず)、「インドネシア程度の国」であれば、圧倒的な工作能力を持つ超大国の意向次第でどうにでもなる、ことはすでに (白石隆・東大教授らを除く)多くの政治ウォッチャーには周知の事実である。

加藤政変をつぶした野中執行部を見ればわかるとおり、日本ほどの大国だとアメリカの工作はそう簡単には成功しない。これは、日本の自律性、独立性の証しと「民族主義的に」喜ぶべきなのかもしれないが、野中らは喜んでいる場合ではないだろう。

共和党の外圧を防ぐには、一・二次産業を土台とする自民党支持基盤をこわす必要があるが、それが野中にできるぐらいなら、加藤政変は起きなかったはずだ。野中自民党に任せていては、世界第二の経済大国(アメリカ国債の最大の購入者で、米財政のパトロン)である日本の財政は破綻し、世界全体の経済(およびアメリカ財政)に深刻な悪影響がもたらされるだろう、ということは、もうほとんど世界中に知れ渡っている。

また、外交面でも、野中自民党はひどい。森首相や河野外相の「売国的な」北朝鮮への意味不明な巨額コメ援助や、中国への「特別円借款」供与(いずれも、共産独裁国家の財政を過剰に助け、結果的に軍事予算の増額に貢献し、アメリカの安全保障上の国益を損う)を見ても、アメリカが野中自民党を「始末」したい理由はおおいにある。

なんとなく「他力本願」でなさけない感じはするが、日本の経済的、外交的利益のためには、米保守本流の外圧と、それを追い風にする「アメリカにひいきされた政治家たち」に期待するほかなさそうである(加藤にはもう一度出番があるだろう)。

(ロッキード、リクルート、KSD……で、もうマンネリだが)また、スキャンダル、かな?

●噂は本当だった
以前、本誌本欄で取り上げた、自民党と公明党の間の、閣僚人事をめぐる「密約」の存在を示唆する怪情報が、相当な根拠を持つものであったことが明らかになってきた。その怪情報とは、

「(2001年1月の省庁再編を控えて、2000年12月の迫る、11月頃「加藤政変」の最中)公明党(池田大作・創価学会名誉会長)が野中・自民党幹事長(当時)に、法相、文相(文部科学技術相)、防衛庁長官のポストを要求して、うち2つ、法相、文相のポストを確保した」

というものだ。
この情報を紹介した当初、筆者は「スキャンダル対策や情報収拾なら、法相より国家公安委員長のポストのほうが、はるかに役に立つのに」と思っていたし、その後の(12月5日)の内閣改造でも、公明党は大臣ポストは1つ(厚生労働大臣)しか得られなかったし、副大臣ポストでも、法務省、文部(科学技術)省に地歩を築くところまでいかなかった。

そこで、この「改造」の日以降、筆者は上記の怪情報は「間違っているか、または『森降ろし』後の新内閣でのポスト約束の密約」のどちらかだろうと思うようになっていた。

が、12月7日付の朝日新聞(朝刊)の社説を読み、上記の「怪情報」がほぼ事実であったことが判明した。「拝啓 坂口厚生労働相」と題された朝日の社説は、以下のように、 公明党から自民党(というより野中個人)に暗に「ポスト要求」が出されていたことを意味する事実を教えてくれた。朝日は、公明党の坂口力(さかぐち・つとむ)副代表が、福祉行政を管轄する厚生労働大臣のポストを得たことに「違和感がある」と異義を唱えたあと、

「自民党の野中広務前幹事長は(2000年7月の)総選挙の遊説などで、『公明党は謙虚だ。法相、国家公安委員長、文相、厚相を要求してこない』と持ち上げていました」

と、具体的に4つのポストを挙げて「野中が公明党のポスト要求を抑えていた」事実を指摘したのである。

公明党は連立与党にはいっても(宗教団体・創価学会を支持母体とする政党なので)「司法行政や宗教法人を所管する閣僚(法相、国家公安委員長、文相)は辞退する。福祉(のバラマキ)が看板の公明党だからこそ厚相も遠慮する。『我田引福』と疑われることはういさぎよしとしない、という態度に感心」していたのに、今回の内閣改造で厚生労働相ポストを取り、少子化対策(にはほとんど役に立たない)児童福祉手当ての拡大(バラマキ)の立案者(坂口)を閣内に送り込んだのは許せない、と朝日の社説は憤っているのである。

労働厚生大臣のことはともかく、筆者は、以下の点で、本誌既報の「怪情報」の正確さが判明したことに驚いている。

#1.
公明党がスキャンダル対策や、政治のウラのウラ(の真実)を把握するのに最適な国家公安委員長のポストをほしがっていたこと。

#2.
おそらくそれが(警察官僚出身で、数年前は創価学会批判の急先鋒だった)亀井静香・自民党政調会長の反対でなかなか実現せず、次善の策として法相、文相のポストを要求していたこと。

実は、筆者に上記の怪情報をもたらしてくれた某財界人は、必ずしも治安・国防問題に詳しい人ではない(そういう分野で専門的に研究したり執筆をしたことはない)ために、安全保障上の最重要ポストをめぐる人事の話を耳にして、それは(国家公安委員長ではなく)防衛庁長官であろうと誤解したため「公明党が法相、文相、防衛庁長官を要求して、2つ取った」という情報になってしまったのだと、筆者はいまは思っている。

しかし、本誌で、小沢一郎と野中広務の「中枢ポスト歴」の記事を読まれた方なら、最重要ポストを、防衛庁長官から国家公安委員長に修正することにはなんの違和感も抱かれないであろう(日本の産業・防衛政策に詳しいマサチューセッツ工科大学政治学部教授のリチャード・サミュエルズは、著書『富国強兵の遺産』の中で、日本の防衛政策の主管官庁は、実質的には、戦前の軍需省の流れを汲む通産省であって、防衛庁ではない、と断定している。そのココロは、産業上必要な新技術の開発を「国防のため」という大義名分で、日本の民間企業に行わせるため、日本の国防を脅かす冷戦時代のソ連などの「脅威の認定」は、通産省が産業政策とのからみで決めてきた、というものである)。

そして、この「修正」を施すと、上記の怪情報は、以下のような、きわめて理にかなった「暴露情報」になる。

#1.
公明党は、自民党と連立を組んで初めて迎えた2000年7月の衆議院総選挙で、自民党に選挙と政局運営の両面で前面協力をした(とくに野中の指示で、異例の、大がかりな反共ビラ撒きにまで手を貸し、米保守本流が共産党まで「たすきがけ買収」で動員して非自民連立政権を作ることがないように、公明党が共産党のいる非自民陣営にはいらないように、公明党の「手を汚した」。いかにも※※出身の野中らしい陰湿なやり方だが、公明党はこれに協力し、野中自民党と「引くに引けない関係」になった)。

#2.
が、当時の森政権が、森首相の失言や「密室で五人組が決めた首班」であることによる政治不信のため、戦前から苦戦が予測されたので「これだけ協力してやったのだから、もし総選挙で公明党の議席が減ったら、見返りに安全保障や司法にかかわる重要ポストをよこせ」と公明党は、自民党の交渉窓口であった野中幹事長に要求した。

#3.
が、野中は、亀井政調会長をはじめ自民党内に反対する者が多かったので、この要求を公明党に取り下げさせるため、総選挙の応援演説で「公明党は謙虚だ」をホメコロシを行った。

●野中「暴言」の意味
これで、今回の内閣改造をめぐる、一連のごたごたがすべて説明できる。

まず、野中の突然の、幹事長辞任。例の不信任案否決後、数日経ってから、というのは、あまりに唐突だったではないか。
自民党はもはや半永久的に衆参両院ともに単独過半数を取るのは無理な情勢だから、公明党との連立を維持するかなめの位置にいた野中が、幹事長職に留まるのは(たとえ内閣改造があろうと、また森が首相を辞めようと)当然のこと、とマスコミも自民党内も、連立相手の公明党、保守党も思っていた。

その野中の突然の辞任である。マスコミは「森降ろし」に走るために、森政権と距離を置いたというが、奇妙な話だ。それなら、なぜ、自分の派閥(竹下派・経世会を母体とする平成研究会・橋本派)から、元首相の橋本龍太郎などという超大物を送り込んで森政権を「支える」のか? また「本籍加藤派、現住所橋本派」と言われる野中の事実上の「腹心」である古賀・国対委員長を、後任の幹事長に推薦したのか?

ここで思い出されるのが、「加藤政変」が内閣不信任案の否決という形で(形式上、森内閣が国会に「信任」されたという形で)決着した直後、森首相周辺が内閣改造を進めて求心力を高めようとしていた折りも折り、野中幹事長(当時)が、

「不信任案否決は、信任を意味するものではない」

と暴言を吐いたことだ。この暴言には続きがあって、さらに、組閣人事について「何も聞いていない」、つまり、首相周辺から与党幹事長(で、「陰の総理大臣」である)自分になんの相談もない、と怒りをあらわにしてもいたのだ。本来組閣は憲法で定められた首相の権限だが、そんなものは無視して自分が決めるはずなのに、と言わんばかりの、独裁者のような態度である。

が、「連立維持」という観点に立てば、この暴言には一定の合理的な理由が認められる。現状では、もし公明党が自民党を見離せば、自民党は「万年野党」になり、空中分解する恐れがある。他方、公明党は自民党と連立を組んで以来、「森失言」の7月の総選挙で衆議院の議席を大幅に減らすなど、なんのメリットも得ていない。野中の立場に立てば、国会で「信任」されたのをいいことに、森派会長の小泉元厚相らと協議しつつ、森喜朗が勝手に内閣改造を進めて「求心力の回復」をめざすなど、ばかばかしくてやってられない、であろう。

「自分の失言で、公明党の議席を大幅に減らして迷惑をかけたくせに、その公明党のポスト要求(を熟知している自分)を無視して、勝手に組閣に動くとは何事か、このバカ!!」

野中は「このバカを支えるために」幹事長職を続けていては、もはや公明党や保守党に合わせる顔がない、と判断したに相違ない。だから、与党3党の党首がそろった席で「突然の辞任」になり、保守党の扇千景党首が「いまさらやめるのはズルイ」と叫び、公明党首脳も「(ポスト獲得のためにも?)野中さん(が幹事長)でないと困る」と慰留に努めたのだ。

●「野中vs.亀井」の背後にあるもの
森が公明党や野中を無視して組閣を始めようとした背景には、もちろん宗教政党に国家中枢のポスト(国家公安委員長)を渡してはならない、と考える保守政財界の良識派、および彼らの支持を受けた警察官僚たち、そして警察官僚OBの亀井静香の「反野中クーデター」があったからに相違ない。これは、野中が、幹事長を辞任して無役になろうというのに、副大臣や政務官のポスト配分で「公明党に何人」などと森に「指示」を与えたり、政調会長の交代、つまり「亀井降ろし」を画策したり、といった対立が表面化したことで明らかではないか。

通産相(2001年から経済産業相)のポストをめぐって、江藤・亀井派から出そうとする首相周辺と、橋本派から出そうとする野中らとの対立というのは、実は、

「伝統的な日本の保守本流(財界、官僚エリート)」
           vs.
「いまだけ主流派(野中自民党、公明党)」

という対立の構図で、保守良識派が(一見良識のなさそうな)亀井静香を押し立てて、野中に反撃した結果と見て間違いあるまい。

ちなみに、国家公安委員会のメンバーには、保守系論客や経団連会長クラスの大物財界人が起用されることが多い。近年では平岩外四・東京電力会長が務めた例があることから見ても、「公明党の国家公安委員長」など、およそ常識では考えられないであろう。高学歴の親から生まれ根っからのインテリ階級の出で、超一流大学を出て超一流企業・官庁に務めてキャリアを積んだ財界首脳や高級官僚は、創価学会や池田大作を腹の中では軽蔑している、ということを忘れてはならない(べつに筆者が創価学会を軽蔑しているわけではないから、誤解されないように)。これは、政治家・小沢一郎の力量を高く評価する、東大卒の元警察官僚の中曽根康弘元首相が、小沢が公明党も巻き込んで細川連立政権を作ったことだけはほめず「小沢くんは保守政治家として『禁じ手』を使った」と非難したことにも、現われている。

今回の野中辞任劇で明らかになったことは、自民党内部を含めた保守政財界の公明党アレルギーが相当に強い、という事実だ。財界首脳は「池田大作より亀井のほうがまし」と思っていると見てよかろう。

●「橋本内閣」で、ストップ・ザ・売国奴
そして、森内閣は、保守財界の支持を取り付けるために、宮沢喜一に続いて、もう一人の元首相、橋本龍太郎を入閣させるという異例の人事を取らざるをえなかったのだ。

野中執行部と森首相が、支持率回復のために功を焦って、中国、北朝鮮、ロシアを相手に相手の要求を丸呑みするような「売国外交」に出ることに対する、保守良識派の怒りは相当なものだ(おそらく、陰ではアメリカ国務省や国防省もそう思っているであろう。だから「加藤政変」が試みられたのだ)。最近保守系論客として目立って登場頻度の高まった、中西輝政・京大教授は、そのものズバリ『北朝鮮と国交を結んではいけない』という題の本まで書いて(しかも普及しやすい新書版という形で出して)売国奴・野中らの行為に歯止めをかけようとしている。

他方、橋本龍太郎の外交に対して、保守良識派の評価は高い。「首脳の決断」「首脳外交」をフルに活かして、対米関係では、沖縄の普天間基地の返還を確約させ、対露外交では「クラスノヤルスク合意」「川名提案」で、着実で、道義的に理のかなった、北方領土問題の解決(四島一括返還)へ向け、日露関係を前進させた。日経新聞の社説は、1998年夏の参議院選挙で自民党が議席を大幅に減らしたことの責任を取って(政権を失ったわけでもないのに)橋本が首相を辞めたとき、「有能な外交官を失った」と、その外交手腕を惜しんだ。

それに比べて、森・野中はどうであろう。2000年の総選挙で大幅に自民党の議席を減らしても退陣せず、「連立政権は国民に信任された」などと居直って、橋本外交の成果を踏みにじり、対露外交では「二島返還」で妥協する「談合政治」型の決着案をほのめかしてロシア側に足元を見られ、沖縄の基地問題はなおざりにした。

加藤紘一の決起が失敗に終わったあと、日本やアメリカの保守政財界が「それなら橋本内閣を」と思っても不思議ではない。

橋本は、実は(野中や宮沢蔵相や堺屋太一経企庁長官と違って)財政再建論者であり、国鉄分割民営化の際の運輸大臣(つまり、すでに大行革を経験した政策通)であり、今回の省庁再編の方向を首相として「決めた」人物、「行革のプロ」である。もし森がスキャンダルか失言で辞任すれば、「新省庁発足のだいじな時期には、官僚に行革を妨害されないためにも、政治の側は継続が必要」との大義名分で、橋本行革担当特命大臣はそのまま「横滑り」で首相になってしまう公算が大である(行革が最重要課題の内閣だから、当然である)。

ただ、「橋本内閣」が成果を上げると、橋本と同じ派閥にいる野中の力も強まり、利権にまみれた自民党(とくに、橋本派)の地方組織も温存されてしまう、という別の問題がある(あーあ、考えると疲れるよ(>_<;)ホント)。

いまの日本国民は、まったく不幸な時代に生まれたとしか言いようがない。

●クリントンが去り、野中自民党も終わる
さる2月18日、筆者は予言(でなく科学的予測)として「まもなく自民党は野党になる」と述べた。理由は、国民の支持率の極めて低い「野中自民党」と森政権を支えていたのは、どうやら米民主党(クリントン政権、米非主流派、親ユダヤ・原子力派)の内需拡大要求という名の「外圧」であったと判明してきたからだ。アメリカの政権交代(ブッシュ共和党政権発足)にあわせて、日本も政権交代する。公明党はもはや「石油派」への復帰、つまり野中自民党との決別が「時間の問題」となってきた。

2000年11月の、いわゆる「加藤政局」(加藤紘一、山崎拓と、その同志数十名による、野党提出の森内閣不信任決議案に同調する動き)の際、加藤の「世論調査によると、国民の森内閣の支持率が低いから支持できない」という主張に際して、自民党・森派の若手議員はテレビに出演して「選挙で選ばれた国民の代表として国会で首班指名の際に『森喜朗』と書いた以上、たとえ世論調査の内閣支持率が1%になったって支えつづけるのが政党政治化の義務」と述べた。
当時、これを聞いて筆者は(立場は違うが)りっぱな正論であり、尊敬できると感じていた。

ところが、2001年2月の産経新聞などの報道によると、その同じ政治家が「国民の支持しない内閣を支持できない」と述べたという。

おいおい、これは、かつて森派や執行部を批判した、加藤の言い分とまったく同じではないか、と、上記の産経の記事を読んだとき、筆者は思わずズッコケた。たしかに、数字は違う。加藤政局のとき(2000年11月)は支持率10%台、今度(2001年2月)は一桁台だ(とくに、もともと森に批判的だった。朝日新聞グループ、テレビ朝日の数字より、どちらかというと森に甘かったフジサンケイグループ、フジテレビ、産経新聞の数字が低く、なんと5.8%、6.9%にまで下がっていることが注目される。ちなみに産経新聞は、上記森派代議士とほぼ同じ論理で、加藤の造反を「政党人として見識を疑われる」と酷評していた)。

いったい、これはなんなんだ? この間に何があったんだ。何か重大な、政治家が支持・不支持する基準を変えるような、政党人としての「正論」を引っ込めたくなるような情勢の変化があっただろうか?

あったあった。おおいにあった。アメリカの政権交代である。思い起こせば、アメリカの大統領選挙の結果として起きた、アメリカの政権交代は、アメリカ国民にとっては、どっちが勝っても大した違いはないものの、国外、とくに対日、対アジア関係では大きな転換があったのだ。

まず、日本の政権への経済政策における外圧のかけ方の変化である。2000年の米大統領選挙は、いわゆる「フロリダの混乱」で決着が遅れたが、共和党、ブッシュ陣営の勝利が決定的になった12月上旬、その経済ブレーン(リンゼー顧問)が、対日、対アジアの経済政策の重大な転換を示唆した。

曰く「クリントン民主党政権は(鉱工業生産指数などの製造業、実態経済中心の指標で景況をはかる保守本流の手法を取らず、ニューヨーク証券取引所やナスダックの株価、為替相場など金融指標に目を奪われるユダヤ・ロスチャイルド的な手法を取り)投機筋のホットマネーの横暴を許し、アジア経済危機を招き、アジアの犠牲のうえに米国内の好景気を演出した」。

曰く「民主党政権は、不況の日本に『内需拡大』を求める外圧ばかりかけたため、日本の政権与党はこれを口実に『緊急避難』的に財政再建・構造改革を先送りし、公共事業ばらまき型の財政運営を行った。その結果財政再建も民間の不良債権処理も遅れた。これこそが、実は、日本の現在の不況の原因なのだ。だから、もう無用な外圧はかけない」。

「外圧発言」を参照する。

さらに、日韓米、EUが共同出資して、北朝鮮に(核兵器開発をやめてもらう代わりに、軍事転用しにくい)軽水炉原発を2基造ってやる、というKEDO(朝鮮半島エネルギー機構)の軽水炉建設が遅れている問題でも、政権が変わるとすぐに「工事の遅れを取り戻すために、2基のうち1基は石油火力発電所に変えよう」という発言まで、ホワイトハウス周辺から流れ始めた。これは、ブッシュ新政権のブレーンの1人が「ここまで遅れてしまった以上」と現状を嘆きつつ「ならず者国家北朝鮮に無用に核技術を与えない」というメリットもあるので、と提言したもので、大手新聞各紙を通じて日本でも広く伝えられた。

が、「ならず者国家に(軽水炉とはいえ)核技術を与える」のが危険なら、1基どころか2基とも火力発電所にして脱原発にすればいいのだ。「現実的に見て、原発一部容認」というこの言い方は、日本国内の電力の原発依存度は「3割程度にとどめ」という朝日新聞の主張と同じで、日米の反原発論客の「営業ノルマ」が「一部容認」に傾いていることを示唆していて(論理的には支離滅裂だが)ほほえましい。

いずれにせよ、米共和党の新政権のブレーンやその周辺の発言から、いまや全世界で気息奄奄の原子力派にとって、日本の保守派が「最後の頼みの綱」であったことが明らかになった。つまり、野中自民党が財政再建も不良債権処理も先送りして、国民の大多数が一貫して支持しない政権を維持できたのは、野中が党人政治家として豪腕だからではなく、実は「不良債権処理なんかどうでもいいから、とにかく日本とKEDOになるべく多めに原発を造ってもらうしか生き残る道がない」と思っている原子力派(米非主流派、ロスチャイルド派)の「ばらまき容認政策」のおかげだったのだ。

たしかに、野中は2000年夏の衆議院選挙では、公明党員・創価学会の会員らに「反共ビラ撒き」のような、きたないことをさせて「手を汚させ」、小沢一郎・自由党党首と米保守本流がひそかに画策する「共産党まで参加した非自民連立政権」に公明党が参加する可能性を閉ざした。まさに日本のべリヤ、※※出身の政治家らしい、卑劣で下品でうすぎたない「予防措置」であるが、自民党の国会議員にとっては、これは野中ならではの「功績」であって、彼がその後権力を強める一因ともなったことだろう。

が、もし、アメリカの政権が民主党(原子力派)でなかったら、共和党(石油派)だったら、どうだっただろう。当然経済閣僚も、日米安保にかかわるスタッフも、そしてCIA長官も(米議会の上下両院は1994年の中間選挙以来ずっと共和党の多数支配が続いているとはいえ)民主党系の者が務めることになる。議会多数派の共和党は予算や法律や決議によって、政権の行動に枠をはめることができるが、それらの具体的な運用は現場の者、つまり民主党系の政府高官の裁量によるところが大きい(たとえば、KEDOは「現場の」民主党のクリントンの判断で発足したが、議会多数の共和党は、北朝鮮の「ならず者国家ぶり」を言い募って軽水炉建設のための財政支出を滞らせた。が、文字通りの「現場」である北朝鮮では基礎工事が進んでおり、火力発電所への転換は難しくなっていた)。

たとえば、CIAの対日スキャンダル工作チーム(筆者は仮にこう名づける)をだれが動かすか、という問題がある。このチームは従来、某大手新聞、某週刊誌を使って政権与党のスキャンダルをあばき(あるいはロッキード事件のときのようにでっちあげ)それを野党議員に国会で追及させ、そして仕上げは手足のように自由に使える、おなじみの「東京地検特捜部の強制捜査」というパターンで、日本の保守政財界をゆさぶってきた。野中自民党が、田中角栄以来の党の伝統と、財界の良識的な判断に沿って(KEDO支援を含む)原発政策を維持している中、この「チーム」は、原発推進派の自民党代議士・中村喜四郎をゼネンコン汚職などという「別件スキャンダル」で逮捕したほか、故・小渕首相をも「NTTドコモ株疑惑」なる別件で追い詰め(露見する前に本人が死去)、さらにKSDスキャンダルによる自民党執行部・主流派への攻撃まで用意した。が、

1.KSDスキャンダルの本格的な「発動」が、2001年2月までずれ込んだのはなぜだろうか?

2.この最大の作戦の発動が遅れている間、森喜朗の「神の国発言」や数十年前の「買春疑惑」など、揚げ足取りとも言うべき、「くだらない攻撃」しかできなかったのはなぜか?

3.この間、保守系のS新聞の賛同が得られず、A新聞にも効果的な論説を書いてもらえないような状態が続き、雑誌の『噂の真相』(買春疑惑)や『FOCUS』(中川官房長官の覚せい剤問題の録音テープ暴露)ごときに頼らざるを得なかったのはなぜか?
(「中川長官とおぼしき人の電話盗聴テープ」は、民放テレビ各局で流され、長官を辞任に追い込んだが、「やり口がきたない」ことを理由にフジサンケイグループは賛同しなかった。筆者も、中川長官のしたことは悪いと思うが、この『FOCUS』とフジテレビ以外の民放のやり口はそれ以上に悪く、違法の疑いすらあると考えている。フジも同様だろう)

そして、4.2001年2月になって、急に某大手新聞が森首相の「ゴルフ会員権無償提供問題」を報道したのはなぜか?

さらに、そのあと、5.公明党が自民党との連立解消とも受け取られかねない「森内閣不信任案に反対しないとは限らない」と急に言い出したのはなぜか?
(宗教政党である公明党にとって「ゴルフ会員権問題」が「神の国発言」や「中川長官問題」より重大のはずはない)

そして、いま一度、森派内の動きである。支持率の低さも「失言はあるが(まだ)失政はない」状態が政権発足以来大して変わっていないにもかかわらず、6.ゴルフ会員権問題のあと、なぜ森派内や自民党内に「森退陣やむなし」の声が急に出たのか?

すべては、CIAの対日工作チームの顔ぶれが完全に「石油派」に替わったからにほかならない。

筆者は、「加藤政局」の際、米保守本流は加藤に「反原発営業ノルマ」を免除して味方に引き入れたのではないか、との推理を述べたが、どうやらはずれたようだ。やはり、ロックフェラーは永遠に石油派のようだ。ブッシュ政権は、チェイニー副大統領、ライス国家安全保障担当大統領補佐官など「石油派」で閣僚級トップをかため、さらに国務・国防両省の対日スタッフは、在日米軍基地勤務経験のある元軍人などの知日派(チーム・アーミテージ)でかためた。彼らが政権発足後最初にやったこと(厳密には政権発足前の「発言」)が、日本の政権への「ばらまき容認せず」発言で、これで野中自民党は、地方の地盤や族議員の利権を守るための糊塗的財政支出策を続ける大義名分を失った。「はしごをはずされた」のである。

彼らは、日本の保守政財界に「反原発ノルマ」の免除はしなかった。代わりに、日本の保守陣営側の最有力企業を「反原発派」に取り込んだ。

すでに、アメリカ側では保守本流ながら唯一の原発企業であったゼネラルエレクトリック(GE)が、ブッシュ政権の発足に促されるかのように、KEDOから撤退すると決めている。対する日本の原発企業、東芝、東京電力などは依然として、KEDOに、そして国内の原発建設に、巨大な利益と、中東(石油)危機再発に備えてのエネルギー安全保障確立の夢をかけている。だから、日本の財界の主流派いまでもこぞって原子力派である…………はずだった。

が、東芝、東電を向こうにまわして堂々とものが言える、財界主流派の超一流企業が「敵」になってしまった。さて、それはどこか?

●トヨタの「移籍」で政局が動く
その企業とは、トヨタ自動車である。トヨタは、次世代の「地球にやさしい」燃料電池車の開発において、メタノールなどの非石油系技術に依存する欧州の「原子力派」(ダイムラー・クライスラー、マツダら)とは組まず、石油消費量(地球温暖化につながるCO2排出量)を抑えはするもののあくまで石油を使う米保守本流派のエネルギー、自動車産業と提携することに決めた。

さらに、トヨタは子会社の金融機関等を通じて、本業である自動車の燃料の問題を越えて、来るべき電力自由化時代の家庭用、企業用発電の分野でも、投融資や燃料電池技術の応用、移植を通じて利益をあげる方針である。

すなわち原発数十基分の発電量を、家庭や企業でのソーラー発電も含めた自家発電や、一般企業が自家発電して余った電気を市場で売る「電力自由化」によってまかなう、という「脱原発戦略」の旗揚げである。かくして、もはや「反原発」は知能程度の低い環境左翼やゴロツキの絵空事ではなく、保守政財界のまじめな選択肢の1つとなったのだ)

トヨタの財務体質や金融資産が、野中自民党の「不良債権処理先送り」でかろうじて温存されている、どこかの銀行よりはるかに良好であることを考えれば、トヨタの「移籍」が日本経済界に与えるインパクトはきわめて大きい(真のdeleguration、つまり規制緩和でなく規制廃止というのは、けっして外資系金融機関を日本に進出させて、既存の国内の金融機関に外資との競争で「がんばってもらう」ことではなく、また単に日本の金融機関を外資系企業に売り飛ばすことでもない。むしろ、相当な実力を持ちながら、旧大蔵省と日系金融機関の「金融村」のお家の事情で金融分野への参入を妨害されていた、トヨタのようなりっぱな国内企業が日本の金融市場に打って出ることなのだ。もちろん、そういう事態になれば「旧大蔵官僚」は天下り先を失う。トヨタは今まで一度も大蔵官僚から金融業について便宜も行政指導も受けていないのだから、旧大蔵官僚の面倒をみる理由はないのである)。

トヨタの石油戦略とその巨大な影響力については、
コラムニストの園田義明
「燃料電池市場に動き始めたガリバー」
詳しくまとめているので
こちらを参照されたい。

筆者は、財界におけるこの企業の(米保守本流による反原発派への)取り込みは、93年の政界における小沢一郎の取り込みに匹敵する大事件と考える。93年の政界のケースでは、小沢の反原発陣営への「移籍」は、自民党最大派閥の経世会(竹下派)の分裂から自民党の(直後の衆議院選挙での)敗北、政界再編と非自民連立政権発足へと結びついた(小沢は「左翼環境ゴロ」や下劣な反原発運動と同一視され、保守良識派から軽蔑されることを恐れてか明白には反原発を口にしていないが、新進党党首時代に青森県知事選挙で、反原発を掲げる候補を応援して勝たせることで「反原発ノルマ」を果たしている)。

さて、この日本最大最強の企業の移籍は、何をもたらすであろうか? 筆者は「インドネシア石油危機」の近い将来の「体制の崩壊」の予言(でなくて科学的な予測)に関連して「米保守本流の『総大将』J.D.ロックフェラー4世上院議員が、来日しトヨタの豊田章一郎会長(当時)と接触したのだから、インドネシアへの『秘密工作』の発動は近い」と述べた(1998年1月26日、本誌「動き出した主役たち〜米共和党、対アジア政策を乗っ取る」の「●総大将動く」)
そして、その3か月後、スハルト体制は崩壊した。

しかし、筆者の予測する「インドネシア石油危機」の「本番」はなかなか到来しなかった。自民党は与党にとどまり、小沢一郎は政権を取れず、いたずらに時が経過したが、それもこれも、邪魔していたのは米民主党のクリントン政権であったのだ。

そのクリントンが政権を去れば、当然「本番」は可能になる。

筆者は、あらためて予言(でなく科学的予測)をしたい。
この2年間、トヨタの不決断(非石油系燃料電池への色目、原発への未練)と米民主党政権の「無駄な抵抗」および東京電力ら日本の財界主流派の「正論」によって遅れていたが、ようやく機は熟した。いまから1〜2年のうちに「本番」は始まる。
それに先立って、きわめて近い将来、まず森政権が退陣し、次に自民党が野党になる(方法は、公明党の離脱による「衆議院の解散総選挙」から、参議院選挙での自民党の惨敗まで、さまざまなパターンがある。又、その後できる非自民連立政権の組み合わせも予測不可能なほど多様なものがありうるが、自由党と民主党が参加することははっきりしている。共産党、社民党、公明党や、自民党の加藤派、山崎派、森派!?の参加不参加までは、ここでは細かくは述べきれない)。

そして、自民党は、今度与党から転落すれば、おそらく二度と同じ党名のままで与党に戻ることはないのではあるまい か? そもそも「野中執行部」以下多くの自民党員が、公明党と組む「禁じ手」を使ってまで、さらに※※出身の野中に強大な権力を預ける、という別の意味での禁じ手までも使って、政権与党の座に固執するのは「今度野党になったら終わり」とわかっているからにほかならない。

トヨタ以外の日本の製造業企業(とくに良識ある原発推進企業)や自民党員にとっては苦難の日々が始まるのかもしれないが、これでようやく長かった「過渡期」は終わった。森や自民党が嫌いな人々には、まもなく「すっきり」できることをお約束(でなくて予測)しておこう。

今年は国内政治のニュースが面白くなりそうだ。
(^_^;)

○番外:潜水艦、実習船衝突事故
念のために断言しておくが、米海軍原潜グリーンビルと日本の漁業実習船えひめ丸の衝突事故は、森降ろしのための、CIAの工作ではない。工作されたのはKSD疑惑とゴルフ会員権問題のほうであって、衝突事故はその逆である。

(筆者は、米非主流派が、いかに日米ガイドラインやTMD配備の利権からはずされたのが悔しいからといって、日米同盟の強化を妨害するために、なんの罪もない高校生の大勢乗った実習船をいけにえにしたことに強い怒りを覚える。そして、こうしたテロ行為を二度と招かないためにも、日米両政府はガイドラインの再定義や同盟関係の強化、有事立法の整備や、対中国をにらんだTMD配備を確実に進めるべきであると思う。それこそが、この種の「米国人による反米スパイ工作」を防ぐ唯一の手段なのだ。逆に、この「事故」によって日米同盟関係が停滞する、などといった「効果」があがると、この種の反米反日「テロ」が再びアメリカの非主流派などの黒幕によって起こされる恐れがある(だから、彼らに日米の同盟強化は「妨害してもムダだ」と思わせる必要がある)

おそらく、今回の「事故」の黒幕は、前世紀に彼らが日米シーレーン防衛協力を邪魔するために仕掛けた、海上自衛隊の潜水艦「なだしお」と釣り舟の、東京湾内における衝突事故の際に、自衛隊のイメージダウンに成功したため、「夢よもう一度」と、今回の「事故」を起こしたに相違ない。
「なだしお」と釣り舟がぶつかった際、地上で車がブレーキをかける場合と違って摩擦がないため、潜水艦は惰性で数キロメートル進んでからやっと止まり、反転して、数十分かけて衝突現場に戻り、沈没した釣り舟から海に投げ出された人々を助けようとした。が、数十分の間に救助作業は、近くにいた他の船によって終わっていた。自衛隊員たちは仕方なく浮上したままの潜水艦の船体の上に立ち尽くしていたが、朝日新聞のカメラマンがこの光景を上空のヘリから撮影し、翌日の朝刊の一面に掲載したため「自衛隊員は救助せず、おぼれる人を見殺しにした」かのような誤解が日本中に蔓延し、潜水艦の艦長が非難された。
が、この事件の真因は、衝突直前に艦長の視界をまどわすように不自然に動いたヨットと、航海の慣例を無視して衝突直前に逆方向に舵を切った釣り舟の船長にある。潜水艦は釣り舟に迫りつつも衝突直前にはすでにカーブしつつあり、同じ方向「\\」すなわち「→↓ ↑←」に曲がれば、うまくすれ違って衝突を避けられたものを、なぜか釣り舟が逆方向「\/」すなわち「→↓ ↓←」に舵を切ったため、当然のようにぶつかったのだ。
この場合、釣り舟の船長の責任は重大で、刑に服したのは当然であるが、艦長も同罪になったのは明らかに不公正である。さらにヨットを不自然に操船した船乗りが「偽善的に」おぼれた人を救助したことを理由に賞賛され、なんの捜査も受けなかった事実は、日本がとてつもない「スパイ天国」である可能性を示唆していて、恐ろしい。このとき日本の公安当局がスパイ対策を適切に講じ、かつ、新聞が誤解を招く写真を載せなければ、今回、2001年のハワイ沖での実習船沈没「工作」はなかったのではないか、と筆者には思われる)

普通、危機になると政治家は張り切る。アメリカの場合は間違いなくそうだ。危機管理こそは(重大な政治判断を求められる場合があるので、木っ端役人でなく)大統領や知事の腕の見せ所なのだから(サダム・フセインや金正日は、国民を危機に陥れ続けることで権力を維持しているではないか)。

もちろん、例外はある。阪神大震災のときの村山首相がそうだった。だから、その反省に立って、首相官邸の連絡機能や危機期管理スタッフの充実がはかれらたのである(つまり、村山並みの極端に無能な者が首相になっても危機管理ができるような態勢が整えられているのだ)。

実は、筆者は(森政権を支持していないので)事故の第一報を聞いたとき、これで森首相の求心力が高まるのではないかと心配した。どんなアホな政治家でも、自国民の生命が(同盟国の)軍隊によって大規模に損なわれた、と聞けば首相専用車をとばして官邸に駆け戻るはずだ。となると、その間、車中から最先端のITで強化された通信手段を駆使して「的確に部下に指示」を与えるだろうし、官邸に戻れば危機管理スタッフに聞いて情報収集に努めるだろうし、場合によっては(おそらく盗聴防止つきの最新鋭の)自動車電話(軍用通信)を使ってブッシュ大統領とじかに話して謝罪を引き出す「恐れ」すらあった(1996年3月の台湾海峡危機の際には当時の橋本首相は、予定していた休暇のプライベートな行事をすべてキャンセルして官邸にこもった)。

自分の車に乗って、電話をかけて、職場に戻って部下に話す……というのは、どんなバカでもできる単純な動作だが、マスコミのテレビカメラを通して見ると、いかにも「りっぱに危機管理にあたっている」ように見えてしまうものなのだ。

ところが、これは杞憂であった。なんと、森喜朗は世界中のいかなる危機管理担当者もジャーナリストも政治家も予想だにしない、途方もない行動に出たのだ。

「せっかく友達とゴルフするって決めた日なんだから、何があっても最後までプレーするんだ!!」
「うるさいな、もう。(マスコミは)休暇のときぐらいほっといてよ」

と思ったのであろう。彼はマスコミを追い払おうとしながら、その後2時間もゴルフ場に留まってプレーを続けた。
(>_<;)
いかに、日本政界の事情に精通したCIAスタッフでも、一国の首相が「だだをこねる」ことを事前に予測してスパイ工作をすることなど不可能だ。だから、衝突事故を「森降ろし作戦」の一環と思ってアメリカ(主流派)を非難しないでほしい。

やっぱり非難すべきは森だったのだ(森派のみなさんご苦労様)。
m(_ _)m

原潜衝突事故についての 「そっくり社説の怪」に進む。

●米国ご指名「小泉首相」
産経新聞の2001年2月の世論調査によると、森内閣の支持率は6%台と低いのだが、では代わってだれを首相にしたいか、と問う調査結果はなかなか興味深い。森退陣後、非自民連立政権を望む声は伝統的な保守(自民党)支持層にも広がっており「自民党自身のためにも、一度下野すべき」という意見は広まっている。

が、それなら新たな非自民政権でだれが首相になるのか、というと、これが相当に難しい。順当に行けば、野党第一党、民主党の党首、鳩山由紀夫がなるべきなのだが、なんと彼の(首相候補としての)支持率は同党の菅直人幹事長よりも低く、さらに民主党よりはるかに議席の少ない自由党の小沢一郎党首よりも低いのだ。では、いったい、「森降ろし」あるいは夏の参院選(における自民党の惨敗、下野)のあと、だれが首相になるのか?

鳩山ではなさそうだ。彼は2000年夏の衆議院総選挙の前にも、加藤紘一が自民党を離党してくれれば首班指名候補にかつぐ、などと発言していた。これはその後の一連の政変(加藤と、米共和党、日本の民主党との接触や「加藤政局」)を見て明らかなとおり、アメリカ(の保守本流)の指示によるものであろう(つまり、鳩山は一種の「つなぎ」なのだ。本人もそう思っているに相違ない)。

そこで、自民、非自民を問わず、いまの日本に首相になりうる器がいるかどうかを、小渕前首相が倒れて職務遂行不能になった時点(2000年4月)に戻って、日米の財界の主流派の立場で点検してみると、ざっとこんな顔ぶれになろう:

1. 加藤 紘一(自)
2. 河野 洋平(自)
3. 宮沢 喜一(自)
4. 橋本 龍太郎(自)
5. 野中 広務(自)
6. 山崎 拓(自)
7. 小泉 純一郎(自)
8. 石原 慎太郎(無)
9. 菅 直人(民)
10. 小沢 一郎(由)

上記は閣僚経験に裏打ちされた実務能力、国民的人気、党や派閥の代表であるか否かといったことで選んだ(実務能力がが皆無なので、土井たか子、扇千景は除いた。また羽田孜元首相も、鳩山、菅に次ぐ民主党のナンバースリーなのではずした)。
このうち「1.」「2.」「3.」は小渕が倒れた直後に常識的判断として出てきたものだ。が、こうした常識を覆して、野中幹事長代理(当時)らは、総裁選に出たこともなく、したがって国民に自身の政策を訴えたこともない(もっとはっきり言えば、実現したい政策など何もない)森喜朗を首相にし、自民党(というより自分の権力基盤)の温存をはかったのだ。

が、「1.」は「6.」とともに2000年11月の「加藤政局」が野中に鎮圧されて消えた。「3.」は高齢すぎる。「8.」は国会議員でないから、憲法上、すぐには首相になれない。「9.」は、すでに述べたように鳩山を差し置いて首相になるのは難しい立場にいる。「10.」はお膝元の自由党の議席数が少なすぎる。

「2.」「3.」「4.」「5.」はいずれも、不況を脱し、諸外国の求める内需拡大を達成するには「当面の景気対策」を優先し、財政再建、構造改革、不良債権処理は先送りしようという連中である。自民党は、94年の羽田連立内閣の退陣のあと、社民党と野合して政権に復帰して以来、この6年間ずっと「当面の景気対策」と称して公共事業予算のばらまきを続け、不良債権処理を先送りしてきたが、いつまで経っても景気はよくならない。理由は、市場(東証、外為市場など)が評価せず、株価が好転しないからである。

なぜ、株価が好転しないのか…………日本の株式市場では、外国人投資家がかなり大きな比重を占めているうえ、上記のごとくトヨタのように、外国の有力な勢力と気脈を通じて行動する日本人投資家も多い。つまり、彼らは、自民党主流派(「2.」から「5.」)の「当面の景気対策」が、実は景気と無関係な族議員たちの権力基盤の温存策であると見抜き、市場で「日本売り」をして、森政権(野中自民党)に「不信任」を突きつけているのだ。

この数年間(20世紀末の数年)のなかで、株価が急回復したことがあったが、それは「10.」の小沢一郎が「自・自連立」の形で政権に復帰したときであった。外国人投資家は、みな小沢の大ファンである。理由は、彼が著者『日本改造計画』の中で自身の実現したい政策を体系的にはっきり述べているため「何をしたいかわかっていて安心感がある」からである。もちろん彼の政策の内容が、ちゃんとした「構造改革」になっていることは言うまでもない。

が、彼は(「インドネシア石油危機」開始前とは違って)いまや小党の党首にすぎない。となると、やはり自民党のなかから「当面の景気対策」を掲げる輩を選んで担ぐしかないのか? となると、やはり「小渕危篤」のときにマスコミでも取りざたされた「「2.」が国民的人気も高かったことだし…………と世論の大勢が「河野洋平首相」に傾く可能性は(2000年までは)十分にあった。

ところが、2001年になって、突然、外務省のノンキャリア官僚(をいけにえにする形で)機密費の使途の乱脈ぶりが明らかになり、「2.」の河野外相は、運悪く監督責任を問われる形になり、ポスト森の首相レースから撤退させられた。この機密費の問題は、外務省担当の記者や、防諜(スパイ対策、情報収集)問題に詳しいジャーナリストや研究者ならだれでも知っていることで、いわば公然の秘密だった。

が、よりによってこの時期に「ばらした」ところに、筆者は、米保守本流とその意を汲んだ組んだ国内勢力の「河野はずし」への強い決意を感じる。河野外相は、息子の河野太郎ら自民党の若手議員から「中国に対して弱腰すぎる」「対中国特別円借款など与えるな」と批判されながら、結局与えることを決めてしまった「売国奴的な態度」によって日本の保守良識派に酷評されている。中国は円借款を利用して、空港などの交通インフラを造るというが、中国の空港や鉄道はみな軍民共用、つまり「空軍基地」「軍用鉄道」なのであるから、これは台湾侵略やインド攻撃に使われる恐れもあり、米国防省の怒りを買っていることは想像に難くない(もちろん、アメリカから見れば、河野外相だけでなく、森首相も、自民党執行部も「同罪」である。森が3月に訪米しようとした際、ブッシュ大統領が日程の都合がつかないことを理由に拒否したのは、米保守本流が日本の首相の首をすげかえることを「決めた」からにほかならない)。

こうして、「2.」が消えたことで、俄然浮上してきたのが、「7.」の小泉純一郎である。河野なきあと、人気では彼がナンバーワンで自民党が次の参議院選挙に勝ちたいのなら、彼を総理総裁に立てる以外に勝つ方法はないはずだ。『インサイダー』誌の歳川隆男も、このように予測して記事を書いた。

が、自民党内では彼を首相に推す声は少数派である。理由は、小泉が「当面の景気対策」には興味がなく、財政再建、構造改革をめざして、その中核として持論の「郵政3事業民営化」をねらっているから、そして、自民党内の最大派閥である橋本派(旧経世会,現平成研究会)の大多数が郵政族議員で、郵政民営化に反対だからである。

朝日新聞などの報道によると、2月にはいって、某橋本派幹部は小泉に、郵政民営化を引っ込めるなら総理総裁にしてやると持ちかけたそうだが、いままでこれを国民に訴えつづけてきた小泉は「この看板をおろしてまで首相になる気はない」。結局、橋本派と自民党執行部は、小泉を首相にも閣僚にもせず、郵政民営化には手を着けられない立場、幹事長などの党の要職に配置して、その国民的人気を「ただどり」して選挙に勝つつもりらしい(2001年3月2日発売の3日付「夕刊フジ」、歳川隆男の予測記事)。

ここで、小泉の「看板」である郵政民営化について解説しておく必要がある。これを「郵便局が宅配便と対等に競争するようになり、サービスがよくなること」などと誤解している人が少ないようだが、小泉の言っているのは郵政「3事業」民営化であって「郵便事業のみ」の民営化ではない。

3事業とは、郵便、郵便貯金、簡易保険のことである。旧郵政省(現総務省)はこのほかに、テレビ局の放送免許の許認可権や、NTTをはじめとする通信事業者への監督権限をも有する、一大利権官庁であった。橋本派(の前進の田中派=木曜クラブ、竹下派=経世会)はここを利権官庁に育てあげた「育ての親」で、郵政族議員を多数輩出している。が、小泉の敵は郵政族と橋本派だけではない。

実は、すべての官僚、すべての族議員が、郵政「3事業」の民営化で痛手をこうむる。その理由は、郵貯(と簡保)の民営化にある。これらは第二の予算と言われる財政投融資(本予算とは別の、公共事業のための特別の予算)の原資として使われており、各種公共事業に投融資されるのである。実は各省庁の役人は、これをもとでに存分にムダな公共事業をやり、それを監督するための特殊法人を作ってそこに天下り、自民党を支持する各地のゼネコンや中小建設業者を潤してきたのだ。

つまり、いくら行政改革、財政再建と叫んでも、郵貯民営化を伴わない改革は改革ではないのだ。
たしかに橋本首相もそのあとの小渕首相も「行政改革」をやった。省庁再編を推進し、政府の意思決定システムもある程度変えた。が、郵貯には手を着けなかった。(だから、小泉の主張は自民党内では絶対に多数派になりえないのだ。2001年3月の自民党党大会では、党の運動方針として「郵政3事業」の一体化、国営を堅持することが採択されたが、小泉は大会前からこの方針案を指して「解党的出直しなどと言いながら、執行部には何も改革する気がない証拠だ」と酷評していた)。

その結果が、昨今の「底なし不況」である。いつまで経っても財政再建も不良再建処理も進まず、「政・官・業」の癒着は終わらないのである。自民党にとって、行政改革、財政再建および経済構造改革は「総論賛成、各論反対」のテーマであり、行革の看板を掲げても、その実行段階で「郵貯は例外」などと主張して改革案を骨抜きにする、ということをこの数年間ずっとやってきたのである。

小泉が他の自民党の政治家と違うのは、改革の看板を掲げただけでなく、その具体的な方法を、国民に公約しているところにある。つまり、小泉は、日本の政界にあっては小沢一郎に次いで政策のはっきりした政治家なのであり、おそらく外国人投資家の「二番目のお気に入り」なのだ。

幸か不幸か、小泉は2001年3月現在、森派(旧安倍派、清和会)の会長で「森首相を支える立場」である。が、森が首相を降板して派閥に戻ってくれば、その先は自由だ。そうなったら、「森派」を率いて、自民党総裁選に出るもよし、小泉新党を作って離党するのもよし。いかなる立場であろうと、彼が郵政3事業民営化を公約して「政権をめざす」と記者会見を開けば、外国人投資家も、米保守本流も、トヨタ自動車も、小沢自由党も、民主党も、マスコミも、そして「YKK」の加藤紘一も、山崎拓も(盟友だし、ともに財政再建論者なのだから)彼を支持する。もちろん、自民党執行部と主流派、とくに橋本派は反発し、自民党は分裂するはずだが、「小泉与党」は衆議院で過半数、世論調査で70%の支持は取れるだろうし、たとえ政局が混乱しても、東証の株価も上がるに違いない。

かつて、1993年、米保守本流(石油派)は「野党に人材なし」と見抜いて、自民党(経世会)の大幹部だった小沢一郎を奪い取り、自民党(というより経世会)を分裂させて非自民連立の細川内閣を作って自民党を約40年ぶりに野党に落とした。おそらく、この2001年の政局でも「野党(鳩山)は能無し」と見抜いていて、小沢と同じく自民党の有力者である小泉を奪い(さらに、郵政族の衆院議員より子分の参院議員の当落を重視する青木幹雄・参院自民党幹事長を経世会から奪い)、米非主流派(原子力派)の支える自民党と橋本派を、千尋の谷に突き落とすだろう。まもなく

小泉首相が誕生する

方法や時期、政権に参加する党派の組み合わせまでは明言しないが、おそらく2001年中だろう。自民党総裁として首班指名を受けるかもしれないし、小泉新党の党首として、民主党や自由党と連立するかもしれない。

(四半世紀前の「大福戦争」では、大平正芳、福田赳夫の2人が自民党の首班指名候補として、衆議院本会議場で指名を争ったことがある。小泉と野中がともに「われこそは自民党の首班候補なり」と正統性を主張しつつ、野党も巻き込んで国会の首班指名を争う可能性はある。ただし、参院選や、万一解散があった場合の衆院選では、自民党の族議員候補が「小泉支持」とウソをついて当選してしまう恐れもあるので、やはり小泉と野中は最終的には違う政党に属することになるだろう)

小泉首相は森首相の次かもしれないし「次の次」かもしれない。後者の場合、森首相の退陣後、小泉首相の誕生までの間の(米保守本流にとって)「つなぎ」の首相にだれがなるのか……自民党が小泉の「郵政民営化」路線をつぶすつもりなら、野中広務から、扇千景・国土交通相(保守党党首)、高村正彦法相、堀内光雄元通産相、野田聖子元郵政相まで考えられるので……まったくわからない。

(上記のうち不気味なのは、堀内である。彼は、通産相時代に、石油公団の海外油田の自主開発を抑制する動きに出て「国際石油資本」の意向に沿うような動きを見せたことがあるので「石油派」である可能性がある。が、他方で、彼は公明党と深いパイプを持っているというから、野中の「自・公・保」連立政権の意に沿って動く可能性にある。たぶん失敗しないとは思うが、万が一「小泉作戦」が失敗した場合は、米保守本流は、なんらかの形で堀内を使うことも考えていよう)

が、「2001年3月の自民党大会から約1年以内に,小泉首相が誕生する」というシナリオを、筆者の2001年度の予言(でなくて科学的予測)としたい。筆者は「国際ジャーナリスト」の肩書きを持つ歳川とは異なり、日本の国政局を決めるのは国の勢力と思っているので、米保守本流の動きから、こう判断した次第である。

(敬称略)
園田義明氏に本誌を知らせたい方は
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