〜トリノ五輪スピードスケート・加藤条治の前組の謎〜
日本時間06年2月14日未明に行われたトリノ五輪スピートスケート男子500メートル(m)1回目、第16組の加藤条治(日)のスタート直前、第15組のビョルン・ナイエンハウス(蘭)がスタートしてまもなく(スケート靴の故障か何かで)レースを放棄し、前傾姿勢をとらずに惰性で走る態勢になった(但し、スケートリンクの氷を傷付けるような事故は起きなかった)。
すると、なぜか数秒後、第2コーナー付近で同じ組のホン・スンチョン(韓)がいかなる障害物とも接触することなく原因不明の転倒を起こしてリンクの氷を傷付けたため、整氷作業が必要になった。
陸上競技の短距離走(100m、200m、400m)やスケートの短距離(500m)のような「0.1秒」「0.01秒」の差を争う種目では、精神の集中は死活的に重要だ。「ほんのささいな出来事で精神の集中力がそがれ、それでタイムが0.1秒悪くなった」などということが現実にあるし、そしてその0.1秒が勝敗を大きく分けるのだ。そのうえその0.1秒を練習によって縮めるのは、死ぬほど難しい。だから陸上男子100mの選手は極端に利己的で気難しい性格の者が多い、という伝説があるくらいだ。
この「伝説」はそう低くない確率でスピードスケート500mの選手にもあてはまるはずだ。だから、加藤は、1つ前の第15組がスタートラインに付いたとき、「あと約2分で自分の出番だ」と思って精神の集中を高めたはずだし、そのあと、上記のアクシデントで想定外の待ち時間が発生したときには、精神の集中が阻害されたはずだ。
待つこと自体は問題ではない。現に第15組が滑り終わるまで長々と待っていたのだから。問題は、いつまで待てばいいか、がわからなかったことにあるのだ。「整氷に8分かかる」と事前にわかっていれば、いったんスケート靴を脱いで両足を束縛から解放して血行が悪くなるの防いでおいて、また自分の出番が数分後に迫って来てからはき直せばいい(一般に競技用スケート靴の紐は本番直前にかなりきつく締めるが、その状態を長く続けていると足がしびれて来る。06年2月14日放送のNHK『トリノ五輪』でのスケート解説者・堀井学のコメント)。
が、もしかすると、整氷作業はすぐ終わってしまうかもしれない。加藤は必死で場内放送に耳を傾けたが、作業があと何分かかるかはわからなかった、という(産経新聞06年2月15日付朝刊17面「加藤 集中力プッツン」)。加藤はスケート靴を脱ぐこともできずに待たされ、結局その不安な待ち時間は通常の2分より8分長く、約10分も続いた。
案の定、この非情な待ち時間のあとに滑った加藤の1回目のタイムは35秒59と低迷した。
この世界記録保持者(34秒30)の失速のお陰で、このあと登場した第19組のイ・ガンソク(韓)が(加藤に代わって)銅メダルを獲得することとなった。
日本は、男子500mだけで、84〜02年の五輪で6大会連続で金1つを含む7つのメダルを取っている、スピードスケート大国だ。他方、韓国は日本よりはるかに競技人口が少ないため、この競技の男女全種目を通じて五輪で取ったメダルは92年アルベールビル五輪の銅1つだけ(朝鮮日報日本語版06年2月15日「イ・ガンソク、スピードスケート男子500で銅」)。
今回転倒したホン・スンチョン(権純天)と銅メダルを取ったイ・ガンソクはともに韓国の選手であり、周知のように韓国は、W杯サッカー招致からノーベル賞受賞まで、あらゆる分野で(無駄と知りつつ?)日本に対抗しようとする偏執狂的な性癖のある国だ。結果的に、ホン・スンチョンはイ・ガンソクのメダル獲得を助けた形になっており、この「転倒」がほんとうに偶然の事故なのかどうか考える価値はある。以下、故意か偶然かで場合分けして検証してみる。
●バルセロナの先例●
まず、故意の場合。
もちろん、転倒した選手は自分のレースを台無しにしてしまう。今回転倒したホン・スンチョンも最下位になっている。いくら母国にメダルをもたらすためとはいえ、そんな「自爆テロ」みたいなことを喜んでやる選手がいるだろうか………実はいるのだ。
92年バルセロナ五輪陸上男子1万mで、ハリド・スカー(モロッコ)は、周回遅れの(どうせメダルの取れない)同僚選手ハムー・ブタイブに、2位のリチャード・チェリモ(ケニア)の走路妨害をしてもらって1位でゴールインしたため、審判団の判断が二転三転した(朝日新聞92年8月4日付夕刊11面「周回遅れ同僚、とんだ手助け 陸上1万でスカー選手 バルセロナ五輪」)。
今回の06年トリノ五輪では、スピードスケートの選手層の薄い韓国には、イ・ガンソク以外にメダリスト候補はいない。それなら、1回目の組分けが決まったあと「どうせメダルの取れないホン・スンチョンを転倒させて、世界記録保持者の加藤を失速させ、イ・ガンソクの順位を1つ上げよう」と韓国のコーチが考えてもなんら不思議ではない。
本件は、02年6月14日のW杯サッカー「韓国対ポルトガル」戦の、有名な「誤審」と異なり、「国家犯罪」の確証はまだない(小誌02年6月13日の予測記事「●いまこそ『奥の手』を〜審判に『期待』」)。しかし、ホン・スンチョンが帰国後に「報酬」を受け取るかどうか、国際スケート連合(ISU)は監視すべきだし、少なくとも日本スケート連盟(JSF)や日本のマスコミは「故意」の転倒であった可能性に注意を払い続けるべきだ。
●偶然でも問題●
とはいえ、まったくの偶然であった可能性もある。なぜなら、ナイエンハウスのレース放棄があるからだ。上記のように0.01秒を争い精神集中を競うこの種目では、ちょっとしたアクシデントが選手の調子を狂わせる。本来、自分の隣で滑っているはずの選手が突然いなくなれば、ホン・スンチョンでなくてもだれでも調子が狂うのは当然で、彼が転倒したのもそのせいだ、という解釈はりっぱに成り立つ。
なんだ、やっぱり偶然か………と安心するのはまだ早い。
たとえ故意の転倒でなかったとしても、「世界記録保持者といえども直前の組で転倒者が出るとタイムが落ちる」ということが、みごとに証明されてしまったからだ。つまり、今回は偶然でも、次は「計画的犯行」として行われる恐れがあるのだ。
まずいことに、上記のハリド・スカーは、実は失格していないのだ。
たしかに、現地時間92年8月3日のレース終了直後、チェリモとケニア選手団の抗議を受けたバルセロナ五輪の陸上競技審判団はスカーを失格にした。が、翌4日、スカーとモロッコ選手団の抗議を受けて国際陸連上訴審判団会議が開かれた結果「(いくらミエミエでも?)状況証拠だけでは失格(有罪)にできない」と判断され、スカーの失格が取り消されたのだ(日刊スポーツ92年8月5日付1面「バルセロナ・オリンピック 陸上 男子1万 成績 失格から金 混乱の裁定」)。
もちろん表彰式でスカーは観客全員の厳しいブーイングを浴びた(毎日新聞92年8月6日付夕刊3面「バルセロナ五輪 陸上 男子1万メートル スカー、ブーイングの表彰台」)。しかし、韓国という国は、国威発揚のためなら不正もブーイングもないとわない、恥知らずな国だ。
88年ソウル五輪ボクシング・ライトミドル級決勝では、ダウンを奪われて明らかに劣勢のパク・シホン(朴時憲)(韓)が、ダウンを奪ったロイ・ジョーンズ(米)に「3-2」で判定勝ちする異常事態が起き、のちに旧東独情報機関の秘密文書から、この試合の審判が韓国に買収されていたことが判明した(『SAPIO』96年7月24日号 p.p 14-15 「ソウル五輪ボクシング決勝戦の疑惑の判定」「韓国の“カネ”に転んだ3人の審判」)。
このとき表彰式では、銀メダルを授与されたジョーンズが涙を流し、全世界の同情を買って国際オリンピック委員会(IOC)から優秀選手として特別表彰されたが(朝日新聞88年10月3日付朝刊24面「ボクシングで米のジョーンズを優秀選手に選ぶ ソウル五輪」)、韓国側はなんの対応もしなかった。もちろん、02年W杯サッカー本大会の韓国戦での「誤審の連続」についても(小誌02年6月23日「1-0でスペインの勝ちだったのに〜韓国の怪進撃(3)」)、韓国サッカー界も韓国国民も、全世界のファンやマスコミの批判や疑問に対して沈黙し、いまだに厚顔無恥な態度(韓国は02年W杯サッカー本大会で実力でベスト4になった、という虚偽宣伝)を続けている。それが韓国なのだ。
92年のモロッコ選手団の抗議のお陰で、いくら観客全員にミエミエの不正でも「状況証拠だけでは有罪にならない」ことが韓国の「不正行為担当コーチ」にもわかってしまったので、次の10年バンクーバー冬季五輪の男子500mの1回目で、メダルをねらえない韓国人選手が加藤の前の組にはいったときは要注意だ。
いや、注意するだけではなんの対策にもならないので、今回06年のホン・スンチョンの「疑惑の転倒」を調査すべきことをJSFが陰に陽にISUに訴え続け、それによって次の五輪の際に、抽選で加藤の前の組に非力な韓国人選手が来ないように配慮してもらう必要がある。
【尚、2回目のレースでは、1回目のときとインコーススタート/アウトコーススタートの割り振りを逆にしたうえでそれぞれ、1回目のレース結果でタイムの遅い者から順に若い番号の組に入れて行くので、加藤の前に組に「どうせメダルの取れない韓国選手」が来る確率はかなり低い。】
日韓関係に配慮して遠慮する必要はない。べつに不正の事実がなくてもかまわない。韓国だって(扶桑社の歴史教科書を読みもしないで……読まないならその内容に傷付くはずはないのだが「国民感情が傷付いた」などとウソをついて……その検定合格や採択を批判するなど)四六時中、あることないことほじくり出して日本の悪口を言い募っているのだから。
国際社会とはそういうものだ。国益のため、他国に無理難題を吹っかけ、平気でウソをつき、陥れる。スキーのジャンプ競技の板の長さと身長の関係を定めるルールが、欧米人に比べて身長の低い日本人に不利になるように、おもに欧州諸国の意向によって何度も改正(改悪)されて来た事実を見ればわかるだろう。外交とは、国益を守るためにウソをついたり居直ったりすることなのだ(日本が過去の「侵略の歴史」を素直に反省してぺこぺこ謝罪するのは、外交ではない)。
●日本中が後悔しないために●
加藤は日本の宝である。06年現在21歳の彼が世界のトップアスリートとしてベストコンディションで冬季五輪に出られるのは、せいぜいあと1回か2回しかない。その数少ない貴重な機会を、二流選手の自爆テロなんぞにつぶされてしまったら、本人も日本中のファンも泣くに泣けないではないか。ことが起きてしまってからでは遅いのだ。
対策は必要だ。加藤を「第2のチェリモ」「第2のジョーンズ」にしてはならない。
【次回もトリノ五輪関連か、ライブドアか日韓関係の予定。】
【この問題については次回以降も随時(しばしばメルマガ版の「トップ下」のコラムでも)扱う予定です(トップ下のコラムはWeb版には掲載しません)。
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