〜シリーズ「2007年夏参院選」(4)〜
選挙前後になると、有権者の声を収録した「街頭インタビュー」がTVによく登場する。そういう画面には必ず「人柄のよさそうな人に投票しました(します)」と言う有権者が映っているが、この考えは根本的に間違っている。政治家に「人柄のよい人」なんているのか。
(^^;)
最近、証言を得た。
筆者の知人に、元地方議会議員で、2005年の衆議院議員総選挙に立候補して落選した人物がいるが、彼女は地方議員時代に、議会に自治体の役人を呼び付けて地方行政上のある問題を追及したところ、役人が辛そうな顔をして深々と頭を下げたので、気の毒になって追求をやめてしまったそうだ。
彼女がそのことを中央官庁の官僚である夫に話したところ、
「ばかだなあ。役人は頭を下げるのが仕事なんだから、そこで同情して追及をやめたら、やつらの思うツボだよ」
と批判されてしまったそうな。
このように彼女は「人柄がよい」ので、なかなか国会議員にはなれないようだ。つまり「政治家なんてみんな、人柄は悪いに決まっている」のだ。
小誌既報のとおり、2006年の自民党総裁選に、安倍晋三現首相の対抗馬として、福田康夫元官房長官が出馬するのをやめ、その時点で総理総裁になることを見送ったのは、「2007年夏の参議院通常選挙で与党自民党を負けさせて、その責任を追及して安倍を退陣させれば、カネもかからないし、(安倍と福田がともに所属する)最大派閥の旧森派(現町村派。清和政策研究会)も分裂せずに済むから」であって、べつに当時の安倍の人気の高さに恐れをなしたからではない(小誌2007年6月14日「●不出馬の真相」)。
しかし、福田陣営の予想をはるかに超えて安倍の人柄は悪かったようで、選挙結果に反映された民意も、それに従って退陣した過去の自民党総裁の先例も完全に無視して、2007年夏の参議院通常選挙でどんなに負けても総理総裁の座に居座り続けることを本気で決めている、と自民党内では信じられている。
●動く勝敗ライン●
2007年4月まで、自民党内では、2007年夏の参議院通常選挙の勝敗ラインは「選挙後に非改選議席とあわせて過半数を維持するのに必要な議席数を獲得すること」であり、それは自民、公明の連立与党合計で64議席であり、公明党が改選議席の13議席(選挙直前に除名された比例代表の福本潤一議員の議席を含む)を維持すると仮定すれば、51議席のはずだった。
ところが、5月にはいって「消えた年金」問題が、朝日新聞など一部メディアの報道で急浮上し、安倍内閣の支持率が暴落すると、安倍の出身派閥である旧森派を中心に、勝敗ラインを引き下げる動きが出て来た。小渕恵三内閣など、過去に参議院で過半数を割ったまま一定期間存続した内閣があることから、過半数割れになっても退陣せず、代わりに、1998年に橋本龍太郎首相(当時)が退陣を決意した獲得議席数、44議席を「退陣ライン」とする説が浮上したのだ(毎日新聞Web版2007年6月26日「選挙:参院選 自民、首相責任論封じ躍起 町村派中心に『44議席』退陣の分水嶺」)。
筆者は最近、久しぶりに福田の側近と話す機会を得たが、彼によるとこれは世論操作だという。
たとえば、(公明党が改選議席の13を維持するという前提で)自民党の獲得議席が45〜50の場合、無所属議員や国民新党を取り込んで過半数を維持できるので、この場合は野党民主党の勝ちではない、という『読売ウイークリー』が流した説は、上記の「改訂退陣ライン」と一致しており(同誌2007年7月8日号 p.p 85-88「議席別『政界近未来図』」)、国民はこの種の週刊誌報道にだまされている、というのだ。
しかも、この「改訂済み退陣ライン」をさらに引き下げる世論操作も行われている、と上記の側近は言う。
7月中旬以降、週刊誌を中心にマスコミがしきりに流している、自民党の獲得議席は30台という「惨敗説」がそれに当たるというのだ。
一見すると「惨敗説」を報道することは「自民党は惨敗するぞ。ざまあ見ろ」と、自民党や安倍内閣の政策に怒っている有権者の怒りを代弁しているように見える。が、「30台」などという極端に悪い数字を頻繁に見聞きした国民は、いざ選挙結果が出たときに、それが「40台」だったとすると、なんとなく自民党が勝ったような錯覚に陥る可能性がある。したがって、安倍首相周辺、つまり首相官邸はそれをねらってそういう報道を促す情報を流しているという解釈はりっぱに成り立つのだ。
上記の福田側近によると、現在、自民党は複数の世論調査会社を使っているのか、あるいは、調査時期の異なる調査結果をいずれも「最新の結果」と称しているからなのか、4通りほどの「最新の世論調査結果」を持っており、そのうち、自民党の獲得議席数がもっとも少なく出ている結果をマスコミにリークしているらしい(『週刊新潮』2007年7月5日号「『5勝24敗!』1人区惨敗 『自民党調査』の衝撃」)。
前回も、それ以前の小誌記事でも述べたように、1回10億円の費用をかけて綿密な世論調査を実施すれば、全国的国政選挙の結果は98%の正確さで事前に正確にわかる(小誌2007年6月21日「勝っても地獄?〜2007年夏参院選の与党」)。週刊誌やタブロイド紙にはその費用を賄うのは難しいが、さりとて選挙前に選挙予測の記事を書かないわけにはいかないので、自民党から綿密な調査結果が流れて来れば、条件反射的に飛び付いて記事にしてしまう。
全国紙は独自の調査を行う資金力はあるが、それでも10億円規模の調査をそう頻繁にやるわけにもいかないので、何回に1回か、自社独自の調査と言いながら、実は自民党の世論調査結果を借りて予測記事を書く場合があるらしい(と、上記の福田側近は言っているが、筆者は全国紙の予測記事が「借り物」という説は信じない。ただ、読売新聞が新潟県中越沖地震発生後の世論調査で、震災に取り組む安倍内閣の支持率が改善したと報道しながら、その後の参院選向けの世論調査報道では自民党の獲得議席予測を上方修正していない点に疑問が残る。読売新聞Web版2007年7月20日「『民主に投票』優勢続く、内閣支持34.8%に回復」、同7月27日「参院選継続世論調査 民主 無党派でリード」)。
ということは、自民党の獲得議席を少なめ(30台)に報道する、毎日新聞(30〜40)、東京新聞(30台)、日経新聞(40台割れも)などのメディアは(意図的かどうかはともかく)安倍政権を利しており、逆に、多め(40台)に報道する、読売新聞(40台前半)、朝日新聞(41)などのメディアは「反安倍」であるという構図が成り立つことになる(産経新聞Web2007年7月26日「安倍政権考 『敗北でも退陣なし』の根拠 花岡信昭」)。が、いずれにせよ、上記のような「親安倍報道」のお陰で、いつのまにか国民は自民党の獲得議席が30台になっても驚かないようにマインドコントロールされてしまっている、と上記の福田側近は言う。
彼によると、「参院選における自民党の獲得議席のワースト記録、1989年の宇野宗佑内閣のときの36議席を下回って、35議席以下になったら、さすがに安倍も辞めざるをえない」となるのだが、そんなことはありそうもない。
参議院通常選挙の改選議席は121で、このうち比例代表選挙で48議席が選出され、残りの73議席が選挙区選挙で選ばれる。73のうち29は、定数1の1人区で、残りの44は定数が2〜5の、18の複数区で選ばれる。複数区では、自民党が2議席以上取るのは難しいが、さりとて、民主党を中心とする野党勢力が議席を独占するのも難しいので、結局自民党は18の複数区で1議席ずつ、小計18議席はラクに取ってしまう。また、比例代表選挙では2004年の、自民党が閣僚らの年金保険料「未納」問題で窮地に陥った参議院通常選挙ですら15議席を獲得しているので、どんなに悪くても13〜14議席は取るだろう。とすると、31〜32議席は元々「保証」されているのだから、1人区であと4〜5議席取ればワースト記録は免れることになる。したがって、安倍内閣によるワースト記録の更新も、その結果としての安倍の退陣もなさそうだ。
●実は一院制●
しかし、いくら首相本人が退陣したくないと言っても、国会運営で困るではないか。このことを、上記の福田側近は、2006年の福田の総裁選不出馬表明直後からずっと「困らない」と言い張っている。
そんなバカな。参議院で与党が過半数割れをすれば、議長や常任委員長のポストは比較第一党の民主党が握るから、参議院運営の主導権は民主党を中心とする野党が握る。政府提出法案は衆議院では与党の賛成多数で可決されるが、参議院に来ればそうはいかない。否決してくれれば衆議院で2/3以上の多数で再可決して成立させることができ(憲法59条2項)、現在の与党は衆議院で定数の2/3(320議席)を超える議席を持っているので再可決できるが、参議院が否決しなければ再可決できないので、野党は参議院で「審議未了→廃案」にすることができる。
ところが、上記の福田側近は、否決しなければ60日待てばいい、と反論する。たしかに憲法(59条4項)には「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる」とあるし、国会会期中にその「60日」が経過しそうにないときは、衆議院主導で国会会期を延長すればいい。国会法(13条)には、国会会期の延長について「両議院の議決が一致しないとき、又は参議院が議決しないときは、衆議院の議決したところによる」とあるので、与党は参議院対策で苦労はするものの、まったく絶望というわけでもなさそうだ。
上記の福田側近によると「自民党の衆議院議員はみんな、国会は実質一院制だと思っており、参議院の過半数割れなどあまり気にしていない。(憲法改正に必要な国民投票法案が通ったことでもあるし)こんど新憲法を制定するときは、参議院をなくしてほんとうの一院制にすればいいと言う者さえいる」そうだ。
「参議院で与党が過半数割れしたら、与党は国会運営に行き詰まり、衆議院の解散・総選挙や政界大再編になるなどという予測は、マスコミがそういうふうに面白おかしく書いたほうが売れるから書いているだけで、じっさいはそんな面白いことは起きない」と彼は断言する。
白川勝彦元自治相(元自民党衆議院議員)も、1989〜1999年の参議院では自民党は過半数を持っていなかったが、だからといって連立政権を組もうとはせず、重要法案は野党と交渉しながら成立させていたので「国政上重要な法律が(与党が過半数割れした)参議院で通らなかったために大きな支障が生じたという記憶は特にない」と述べている(白川勝彦Web 2007年5月30日「永田町徒然草No.441 自公“合体”政権批判(3 - その3)」)。ということは、上記の福田側近の意見は正しいのだろう。
●党内民主主義●
そうは言っても、参院選の結果は民意の反映である。国民が「自民党の議席大幅減」という意思表示をしたと判明したあと、それを無視して首相の座に居座り続けることなど、いくら政治家は人柄が悪いのがあたりまえとはいえ、安倍に可能なのだろうか。
実は、安倍は国民に選ばれた総理総裁ではない。2006年の総裁選で党員に選ばれたから現在の地位にあるのであって、国民に選ばれた、つまり、民意の洗礼を受けた覚えはない。このため、自民党国会議員(とくに衆議院議員)を中心とする自民党員の多数が自分を支持しているのだから総裁を辞める必要はない、と安倍は固く信じて疑わないらしいのだ。
安倍にとって国政選挙は、自民党総裁選の有権者となる自民党国会議員を選ぶための単なる予備選であり、その「総裁選有権者」の大半が、2006年総裁選の時点でも、2007年夏の現在でも、自分を支持しているのだから、総裁(首相)を辞める必要はない、というのが安倍の考えだ、と上記の福田側近は言う。
「それって民主主義じゃないんじゃないですか」と筆者が問い返すと、
「そうだよ。安倍さんは独裁者なんだよ。参議院で(「天下り規制」の公務員改革法案を通すのに、参議院内閣委員会での採決を省略して、委員会審議の「中間報告」を本会議に持ち込んで)強行採決したのを見ればわかるだろ。小泉(純一郎)前首相でもやらなかったことをやってる。小泉さんは(青木幹雄参議院議員会長を立てて)参議院や党にある程度気を遣ったが、安倍さんはそんなことはお構いなしだ。彼があと5年も政権に居座ったら(どんな非常識な)新憲法を制定するかわからんぞ」
という答えが返って来た(「中間報告」については、長谷川憲正Web 2007年6月29日「6/29国会模様 実況報告」)。
多くのマスコミは「いまの自民党内では派閥の力が落ちていて、安倍を総理総裁の座から引きずり下ろすパワーがない」などという抽象的な言い方で「安倍続投」を予測するが(『読売ウイークリー』前掲記事、産経新聞Web2007年7月26日「安倍政権考 『敗北でも退陣なし』の根拠 花岡信昭」)、これは、わざと核心をはずした言い方をしているので一般読者にはわかりづらい。だから、筆者が解説しよう。
自民党内の「パワー」が落ちたのは、小泉政権以前に事実上、国政選挙の公認候補者の選定権や大臣の任命権を握っていた都道府県連や派閥の領袖の力を、小泉が根こそぎ奪い取って総理総裁に権力を集中してしまったこともあるが、最大の理由は、安倍が官房長官時代の11か月間と首相になってからの10か月を通じて、「官房長官が領収書なしで好きなだけ遣える」官房機密費や官邸調査費を自民党の若手国会議員にばら撒いて、場合によっては、マスコミ関係者にすらばら撒いて、すっかり手なずけてしまったことにある(数年前、高名な評論家が「機密費」を受け取っていた事実が暴露されたことを想起されたい)。
安倍はカネの力で、福田を除く党内の政敵をほぼ一蹴した。彼は民意にはほとんど関心がなく、「党内の多数が自分を支持しているのだから」と言い、自分がカネで作り上げた「党内民意」を根拠に総理総裁であり続けると決めたのだ。
まさかここまで人柄が悪いとは筆者も予測していなかったのだが、ここまで来るともう脱帽である。
(>_<;)
「安倍という猫の首に鈴を付けられる者がいるとすれば、同じ出身派閥の小泉前首相(や森喜朗元首相)や福田前官房長官ぐらいしかいないが、安倍さんは彼らには絶対に会わない。党や派閥のパーティでも、(小泉や森や福田などの)派閥の先輩からは距離を置いていて、目を合わせないようにしている(から、当面安倍は首相を辞めないだろう)」と上記の福田側近も悲観的である。
●捲土重来●
それにしても、「2006年の総裁選をパスして、旧森派の分裂を防ぎ、2007年参議院通常選挙で安倍を負けさせて退陣させて、政権を奪う」という福田陣営の作戦は、2007年6月までは完璧にうまく行ったのに、土壇場で安倍の「想定外」の人柄の悪さに直面して挫折しそうだ。上記の福田側近は、自民党独自の世論調査の、最新の信頼できる調査結果を見ていないので、「もしかすると、自民党の獲得議席が30台で、安倍が退陣する可能性がないとは言えない」としつつも、「まあ42議席ぐらいじゃないかな」となかば諦めていた。筆者は44か45だと思っていたので、まあ、そんなもんだろう。
では、福田陣営は完全にギブアップしたのか、と思って聞いてみると、そうではないんだそうだ。筆者は、結果論ながら2006年の総裁選をパスしたのは間違いないではないかと思うのだが、拙著、SF『天使の軍隊』)を読んでいるその側近は、依然として「中朝戦争反対派」である安倍が首相のままでは好ましくないと指摘したうえで、以下のように断言した:
「中朝戦争は日米が連携して必ずやる」
「北部中朝国境(中国領延辺朝鮮族自治州と北朝鮮の境)は一触即発状態なので、ブッシュ現米大統領の在任中(2009年1月まで)に戦争が起きても不思議でない」
「日米連携のため、いつか(なるべく早く)安倍を下ろして福田を首相かキングメーカー(兼官房長官)にする」
「そのとき、福田が最大派閥の出身であることが意味を持つ(から、2006年の総裁選をパスしたのは正しい)」
筆者なりに現実の政治日程に即して考えてみても、現在の衆議院議員の任期はあと2年ほどなので、安倍は約2年以内に「民意」の洗礼を受けることになる。
今回、福田を支持する「中朝戦争賛成派」は、マスコミや民主党を動かして「消えた年金」などという事実無根の概念をでっちあげて、与党や安倍内閣の支持率を落とし、参院選で負けさせることにはほぼ成功した(小誌2007年6月28日「消えていない年金〜シリーズ『2007年夏参院選』(2)」)。次の衆議院総選挙でも、そうした世論操作は当然可能であり、とくに、北朝鮮による日本人拉致事件の被害者の「死亡情報」に関して安倍がウソをついていることを暴露する、という最大の切り札がまだ残っているので、安倍を次の衆議院総選挙で敗退させ退陣させることは不可能ではなかろう(小誌2007年7月3日「『ニセ遺骨』鑑定はニセ?〜シリーズ『日本人拉致被害者情報の隠蔽』(2)」)。
だから、機密費ばら撒きに依存した安倍の「スーパー独裁政権」があと5年も続くようなことはあるまい。
●慰安婦決議案の行方●
ただ、安倍が参院選直後に退陣しないとなると、米民主党が安倍を脅迫する目的で米下院本会議に持ち込んだ「慰安婦決議案」が可決される恐れが出て来る。
この決議案がいわゆる「従軍慰安婦」問題とはなんの関係もなく、実態は「中朝戦争賛成派」の米民主党による「反対派」の安倍へのいやがらせであることは小誌既報のとおりだが(小誌2007年6月7日「安倍晋三 vs. 米民主党〜シリーズ『中朝開戦』(7)」)、前回述べたように、「安倍が参院選後に退陣しなければ、即本会議で可決」となるかというと……もちろんその危険性は、2007年7月28日現在も十分あるが……そうならない可能性がかすかに見えて来た。
それは自衛隊の次期主力戦闘機(FX)選定問題だ。
防衛省は、FXとして最新鋭のF22ステルス戦闘機を米国から輸入する意向で、7月17日、小池百合子防衛相も米太平洋軍司令官と会ってこの問題での協力を要請していたが(日経新聞Web版2007年7月18日「小池防衛相、米太平洋軍司令官と会談」)、米下院歳出委員会は7月下旬になって、F22の情報提供を禁止する条項が盛り込まれた国防予算を承認したため、防衛省は機種選定を2009年度まで先送りせざるをえなくなった(東京新聞Web版2007年7月27日「次期戦闘機選定先送り 防衛省09年以降に 米の情報提供禁止で」)。
安倍を脅迫するなら、こっちのほうが効き目があるのではないか。
慰安婦決議案の採決は「1回こっきり」であり、しかも、参院選でどんなに大敗しても民意を無視して政権に居座るつもりの厚顔無恥な安倍がそんなものに怯えて退陣したり、中朝戦争賛成に転向したりするとも思えない。常識的に見れば、日本政府に謝罪を求める慰安婦決議案の可決は、日米同盟の精神的な絆を傷付けるので好ましくないが、安倍は元々日米よりも中国や韓国の国益を尊重する非常識な政治家(売国奴?)なので、どうということはあるまい(小誌前掲記事)。
それに比べて、FXの機種選定に必要な情報の提供を拒むという「制裁」は、安倍が政権の座にある限り何回でも行うことが可能で、しかも自衛隊の主力兵器の選定を遅らせるという形で、日米同盟の(精神的な部分でなく)物理的な機能に対して具体的に、ピンポイントで損害を与えることができる。
「あなたが総理である限り、あなたが中朝戦争に賛成しない限り、自衛隊に米国製最新鋭機は持たせません」という脅迫は、単純明快でわかりやすく、大勢の日米両国民の世論を巻き込むことなく、具体的に「日米同盟をうまく機能させられない安倍の無能ぶり」を印象付けることができるので、筆者が米民主党の議会指導者なら、慰安婦決議案の可決よりもこっちを選ぶ。
【『天使の軍隊』発売以降の小誌の記事はすべて、読者の皆様に『天使』をお読み頂いているという前提で執筆されている(が、『天使』は中朝戦争をメインテーマとせず、あくまで背景として描いた小説であり、小説と小誌は基本的には関係がない)。】
【今後15年間の国際情勢については、2007年4月発売の拙著、SF『天使の軍隊』)をご覧頂きたい(『天使…』は小説であって、基本的に小誌とは関係ないが、この問題は小説でもお読み頂ける)。】
【出版社名を間違えて注文された方がおいでのようですが、小誌の筆者、佐々木敏の最新作『天使の軍隊』の出版社は従来のと違いますのでご注意下さい。出版社を知りたい方は → こちらで「ここ」をクリック。】
【尚、この小説の版元(出版社)はいままでの拙著の版元と違って、初版印刷部数は少ないので、早く確実に購入なさりたい方には「桶狭間の奇襲戦」)コーナーのご利用をおすすめ申し上げます。】
【小誌をご購読の大手マスコミの方々のみに申し上げます。この記事の内容に限り「『天使の軍隊』の小説家・佐々木敏によると…」などの説明を付けさえすれば、御紙上、貴番組中で自由に引用して頂いて結構です。ただし、ブログ、その他ホームページやメールマガジンによる無断転載は一切認めません(が、リンクは自由です)。】
【この記事は純粋な予測であり、期待は一切含まれていない。】
【この問題については次回以降も随時(しばしばメルマガ版の「トップ下」のコラムでも)扱う予定です(トップ下のコラムはWeb版には掲載しません)。
次回メルマガ配信の予約は → こちら】