〜シリーズ「北京五輪」(1)〜
2004年、日本のプロ野球のパシフィック・リーグで、旧近鉄バファローズと旧オリックスブルーウェーブの合併構想が浮上し、球界全体が「球団数削減→1リーグ化→プロ野球界縮小」の危機に瀕したとき、評論家の田原総一朗(1934年生まれ)は、自身が司会を務めるテレビ朝日の番組(『朝まで生テレビ』か『サンデープロジェクト』)に球界関係者を招いて、このプロ野球の問題を議論した(結局両球団は2004年中に合併して「オリックスバファローズ」になったが、東北楽天ゴールデンイーグルスの新規参入で球団数は維持)。
当時のプロ野球界では、読売巨人軍の試合のTV中継の(関東地区の)視聴率が低下の一途を辿っていて、視聴者の「野球離れ」がささやかれていたので、田原はゲストに「いままで日本のプロ野球界は全国区の超人気チームの巨人にぶら下がってやって来たのに、その巨人の人気が低下したら、どうやって稼げばいいんだ」と質問した。
それに回答したのが田原とほぼ同世代の球界関係者だったせいか、野球界のみを視野に入れた「地域密着」「ファン重視」などの優等生的な処方箋しか出なかったが、筆者は、田原の質問自体に耳を疑った。
なんでそんな質問をするのか。日本の(プロ野球界ではなく)スポーツビジネス界はとっくに答えを出しているではないか。
プロサッカー界、Jリーグを見よ。
周知のとおり、Jリーグだって、各チームはたった1つの超人気チームにぶら下がっている。もちろん、その超人気チームとは「日本代表」というチームである。
これは世界のスポーツビジネスの基本である。
欧州、中南米、アジアのプロスポーツでは、クラブチーム対抗の国内リーグと同時に、それ以上に重要なイベントとして、各国代表のナショナルチームが国家の威信を賭けて戦うワールドカップ(W杯)などの国際大会を重視する。たとえば、各国のサッカーファンは自国のサッカーが世界でどのくらいの水準にあるか知りたいし、高い水準になければ納得できない。自国のA代表(フル代表)や五輪代表(U23)が国際大会で不調だと、国内リーグの人気も下がる。だから、各国の国内リーグはW杯などの国際イベントにおける勝利、優勝を最優先にして、国内のスポーツビジネスを組み立てる。
だから、日本国内のプロ野球人気を盛り上げるのは簡単だ。特定のクラブチーム(巨人)に球界全体が依存するいびつな構造を捨て去って、Jリーグと同様に、「A代表の国際試合を最優先」にする経営態勢に改めればいい。
これはべつに『朝まで生テレビ』などで何時間もかけて議論するような複雑な問題ではない。
●愛国心なき世代●
ところが、日本のプロ野球界およびマスコミ界には「サッカーなんぞ知るか」とか「若い頃から毎晩巨人戦ナイターを見ながらビールを飲むのが楽しみだったんだ」とか言い募る年寄りが巣食って権力を握っており、「プロ野球を普通のスポーツビジネスとみなさない」傾向があるようだ。
たとえば、産経新聞の山根聡記者(生年月日不詳)は、2008年12月の北京五輪野球アジア地区最終予選の日本代表の韓国戦(関東地区TV視聴率23.7%)の試合展開の面白さはペナントレース中の試合と大差ない、という非常識な個人的感想を披露しつつ、TV各局は(日本代表の試合よりも)ペナントレースの中継をこそ重視すべきだ、などと愛国心薄弱な意見を述べているので、おそらく彼も「ナイターでビール」世代なのだろう(産経新聞2008年12月4日付朝刊27面「週間視聴率トップ30」)。
【産経は社説「正論」で繰り返し「愛国心」を説く新聞なのに、なんで山根はこんな暴言を吐くのか。こんな意見の野球ファンが大勢いるから、日本のプロ野球界はいつまで経っても「代表の試合のために国内リーグのシーズン(ペナントレース)を中断する」という世界のスポーツ界であたりまえのことができないのだろう(とくにひどかったのはアテネ五輪本大会の日本代表に「シーズン中なので、代表選手は1球団から2人ずつ選出」という枠を設け、ベストメンバーを組ませなかったことだ)。
ちなみに、筆者は巨人ファンでもアンチ巨人ファンでもない(巨人という一地方の単なるクラブチームの勝ち負けにはなんの関心もない)。野球でもサッカーでも、「日本代表」など、世界と戦う日本人選手の出る試合を中心に見ることにしており、「ナイターでビール」世代の感覚はまったく持ち合わせていない。】
要するに、この「ナイターでビール」世代(1950年以前生まれで、2008年現在60歳前後かそれ以上)は、日本最大の新聞社である読売新聞グループ、つまり巨人の親会社によって、自国の最大の人気スポーツの国際的地位にあまり関心を持たないようにマインドコントロールされた、世界史的に見て稀有な世代なのだ。世界スポーツ史における「失われた世代」と言っても過言ではなかろう。
●時代錯誤の野球解説●
2006年に野球のW杯とも言うべきワールドベースボールクラシック(WBC)が始まって(日本が優勝し)、他方、ペナントレースの巨人戦の関東地区TV視聴率が下降の一途を辿って1桁(10%未満)があたりまえになり、地上波TVのゴールデンタイムからほとんど消えたことで、ようやく日本のプロ野球界も、欧州サッカーなどと同じような経営態勢に移行せざるをえなくなったようだ。
現在の日本のプロ野球界、マスコミ界ではA代表(星野仙一監督率いる北京五輪野球日本代表、「星野JAPAN」)の比重がかなり高くなっている。そして星野JAPANの選手選考では、アテネ五輪本大会のときのような「1球団2人ずつ」の枠は撤廃され「正常化」されることになった(が、五輪期間中のシーズン中断は依然として実現していない)。
他方、A代表の戦力や勝敗を予測するマスコミの側は依然として正常化されていない。
A代表(星野JAPAN)の試合は、国内リーグの試合とはまったく違うということを理解していないジャーナリストや解説者が、マスコミでしきりに的外れな分析や予測を流しているのだ。おそらくその理由は、野球を分析するマスコミの現場で依然として「失われた世代」が力を持っているから、だろう。
直木賞作家の海老沢泰久の批判などはその典型だ。海老沢は一度も日本シリーズで優勝していない星野は短期決戦に弱いので、五輪のような短期決戦に向かないと指摘するが(Sports Graphic NUMBER Web 2007年2月22日『スポーツの正しい見方 星野ジャパンへの懸念。』)、星野が解説者としてアテネ五輪の日本代表(長嶋茂雄監督率いる「長嶋JAPAN」)を現地で見極め、その一員だった大野豊・投手コーチを星野JAPANに迎えたという事実を見落としている。
筆者は最近、マスコミのあからさまなウソや間違いを見ると、放っておけない気持ちになる。前回の富坂聰編『対北朝鮮・中国機密ファイル』(文藝春秋社2007年刊)の軍事的非常識も、そういう動機で指摘したのだが、今回は星野JAPANの分析報道についての誤りを正すことにしたい。
尚、あらかじめ「ナイターでビール」世代の方々に警告しておくが、シーズン中の各球団の戦い方に関する知識だけではA代表の戦力や戦術の適否は判断できないので、「オレは野球通だ」といった類の「根拠のない自信」は捨てるように。
(>_<;)
●村田<荒木●
さて、上記の「ナイターでビール」世代を生み出した元凶の読売の雑誌、『読売ウィークリー』の記事が、星野JAPANの北京五輪本大会におけるベンチ入りメンバーと先発メンバー(スタメン)を予測しているのだが、いくら「元凶」でも、アテネ五輪や第1回WBCを経た2008年になってもなお、国際試合の意味をほとんど理解していないのには驚いた(『読売ウイークリー』2008年6月22日号 p.25 「故障者続出『星野ジャパン』 昨冬と激変の“新スタメン”」)。
上記の予測記事が、スタメンに村田修一内野手(横浜ベイスターズ)を入れ、ベンチ入りメンバーから荒木雅博内野手(中日ドラゴンズ)も森野将彦内野手(同)もはずしていたからだ。
たしかに村田は強打者だ。2008年シーズンでは前半戦(7月6日現在)だけで打率.280、本塁打19本を打っている。しかし村田は、上記記事がスタメンに入れている新井貴浩内野手(阪神タイガース)と一緒で、守備は一塁と三塁しか守れない。
その守備も、村田はあまりうまくない。2007年に開催された北京五輪野球アジア地区予選(兼アジア野球選手権)の第1戦のフィリピン戦に三塁手として出た村田はエラーをし、翌日の韓国戦では指名打者(DH)にまわされている(野球日本代表公式サイト2007年12月1〜2日「アジア野球選手権2007(北京オリンピックアジア予選)試合結果」)。
ペナントレースの1軍登録枠は28人で、怪我人が出れば2軍選手と入れ替えればいい。WBCの出場選手枠も30人で、入れ替え可能だ(日本野球機構Web 2006年3月10日「2006年 WORLD BASEBALL CLASSIC 日本代表メンバー」)。日本シリーズでは入れ替えは不可能だが、出場選手枠は40人もある(ベンチ入り枠は25人。日本野球機構Web 「2007年度 日本シリーズ 開催要項」)。しかし、五輪代表の枠はたった24人で、しかも、いったん大会が始まってしまうと、いかなる理由でも入れ替えができない。
そのうえ、首脳陣は監督を入れて4人に限定されており、監督、投手コーチ、打撃コーチ、守備走塁コーチだけで定員に達してしまうので、ブルペンコーチも置けない。
もっと厳しいのは、ブルペン捕手の同行が禁じられていることだ。
星野はブルペンでは、リリーフ(救援)投手は、右投げのと左投げのと、同時に2人がウォーミングアップできる態勢が必要と考え、ベテランの矢野輝弘捕手(阪神タイガース)をブルペンコーチ兼任の第3の捕手として同行させる「捕手3人制」を決め、アジア予選で実践した(『読売ウィークリー』の上記記事はこの点を完全に失念して、北京五輪本大会の捕手を2人と予測している)。
その結果、ブルペン捕手の問題を事前に深刻に考えていなかったため「捕手2人制」で苦労した長嶋JAPANに比べて、星野JAPANでは、内外野を守る選手の数が1人減り、たった10人になってしまった。 星野JAPANは、3試合しかないアジア予選では「投手9、捕手3、内外野12」で構成されていたが、五輪本大会は11日間で9試合戦うため投手を増やし「投手11、捕手3、内外野10」となる(長嶋JAPANは本大会では「投手11、捕手2、内外野11」)。
プロ野球の内野手は、本業が遊撃手である場合は、二塁でも三塁でも一塁でも簡単に守れる。現に宮本慎也遊撃手(東京ヤクルトスワローズ)は、2003年のアテネ五輪アジア地区予選では二塁、2006年のWBCでは三塁を守っている。しかし、本業が三塁手の場合は、一塁は守れても二塁や遊撃はこなせない場合が多い。村田と新井はともにそういうタイプの選手で、10人しか選べない内外野の枠の中にそのような使い勝手の悪い選手を2人も選ぶことは考えられない。
しかもただ「守れればいい」というレベルではだめだ。国際大会は短期決戦なので、たった1つの試合のたった1つのミスが命取りになる可能性がある。つまり試合の後半に「守備固め」の選手と交代しなければならないような選手は……たとえば、元一塁手だが肩をこわして一塁手を断念した松中信彦外野手(福岡ソフトバンクホークス)のような選手は……守備に就かせるわけにはいかない。
それならそういう選手はDHで起用すればいい、と思われるかもしれないが、それもだめだ。
なぜなら、五輪では、怪我人が出ても入れ替えが利かないからだ。24人枠の中に守備の下手な選手を入れた場合、彼が故障しなくても、不幸にして守備のうまいスタメンのほかの選手が故障すると、その下手な選手は怪我人に替わって守備に就くことはできないから、たちまちチーム全体の守備が崩壊の危機に瀕する。
したがって、ベンチ入りする野手は全員、守備固めがまったく必要のないレベルの、守備の名手でなければならない。
となると、新井(7月6日現在、打率.344、本塁打8本)が怪我でもしない限り、村田を選ぶ理由はない。いや、たとえ新井が怪我をしても、本業が遊撃手の中島裕之(埼玉西武ライオンズ)のほうが、ほかの内野手の怪我人の替わりも務まるので好都合だ(7月6日現在、中島の2008年シーズンの成績は打率.339、本塁打15本)。
ただ、その中島よりも荒木や森野のほうが貴重な存在だ。少なくとも星野はそう思っている(デイリースポーツWeb版2008年6月16日「星野監督 改めて金メダル獲得を誓う」)。なぜなら、この2人は内外野すべての守備位置を守れるからだ。
荒木はシーズン中はほとんど二塁しか守らないが、2007年11月のオーストラリア(豪州)代表との壮行試合(強化試合)では外野も守っている(日本代表公式サイト2007年11月23日「日豪親善 野球日本代表最終強化試合 試合結果」)。森野はシーズン中に三塁、外野のほか、二塁を守ることもある。
この2人は、たとえシーズン中の成績が打率.240であっても、「打率.350でも一塁しか守れない強打者」などよりはるかに価値がある(2008年6月20日に発表された日本代表最終候補選手には、星野は怪我を理由に森野は選ばなかったが、荒木は選んだ。他方、この時点では、まだ新井がどうなるかわからないからだろうが、村田も候補に残っている。野球日本代表公式サイト2008年6月20日「北京五輪 日本代表最終候補選手」)。
【尚、星野は、内外野に怪我人が予想外に多く出た場合は、2軍時代の経験に基づいて捕手の矢野に三塁、外野を守らせる可能性を示唆し、同じく捕手の里崎智也(千葉ロッテマリーンズ)も一塁、三塁の守備もするつもりでいるというから(デイリースポーツWeb版2007年6月27日「矢野“仙闘指令”に「二刀流」やる!!」)、やはり新井が怪我をしない限り、村田が選ばれることはないだろう。】
星野は内野4、外野3のあわせて7つの守備位置を10人で守る方針なので、内外野それぞれに「1人怪我して控えと交代してもまだ控え(荒木)がいる」状態にしたいはずである。
また、星野は、2007年のアジア地区予選3試合とその前の豪州戦2試合、あるいはその前の2週間にわたる長期合宿に参加した選手のなかからなるべく多く、本大会の代表選手を選びたいはずだ(予選のメンバーからはもれたが、千葉ロッテマリーンズの渡辺俊介投手や横浜の相川亮二捕手も、豪州戦やその前の合宿には出ている)。
なぜなら、星野はこの5試合と2週間を通じて代表選手たちに、「四番打者にもバントを命じる戦術」や「国際試合の審判のムラのある判定に慣れること」を徹底させたからだ(2007年の豪州戦は日本で行われたが、球審は2試合とも豪州人が務めた)。星野JAPANは、五輪本大会の直前、8月8〜9日に、パシフィック・リーグ選抜、セントラル・リーグ選抜を相手に、国際審判を招聘して壮行試合2試合を行うが、相手が日本人であるだけに「国際試合のシミュレーション」としては不十分だ。
この「身内」相手の2試合と、その直前の、8月2〜7日のたった6日間の合宿だけで、「代表初召集」の選手が星野の方針や国際試合独特の条件を完璧に理解できるとは思えないので、2007年の合宿参加者の「再召集」は多ければ多いほどよい。
実は、サッカーや野球では、「2日間しか合宿をしない一流選手のチーム」と「2週間かけてじっくり(外国のA代表との強化試合を含む)合宿をした二流選手のチーム」とが戦うと、二流選手のほうが勝つのだ。なぜなら、クラブチームと違って、代表チームの選手同士はお互いの特徴を(味方としては)よく知らないので、連係プレーがスムーズにできるようになるためには、長期間一緒に過ごさなければならないからだ(小誌2004年8月5日「最強と一流の違い〜シリーズ『アテネ五輪』(1)」)
野球の場合は、このほかに、国内試合と国際試合とでは、使用するボールや審判の判定基準(ストライクゾーンやボーク)が違うといった問題もあり、したがって当然、国内リーグのシーズン中の成績が国際大会の成績に比例するとは限らない。星野が、巨人の上原浩治投手を、2008年シーズンにおける彼の成績の悪さ(7月6日現在、1勝4敗1S、防御率5.97)を無視して選ぼうとしているのは、そのためだ。逆に、今シーズン絶好調の投手でも、「国際試合の公認球で投げさせたら、急に二流投手になってしまった」などという事態は当然起こりうる。2004年シーズン中前半に8連勝しながら、同年のアテネ五輪本大会でオランダにKOされた岩隈久志投手(当時近鉄。現楽天)がまさにその典型だ(詳論後出)。
つまり、アジア予選のときの「星野JAPAN 1.0」が五輪本大会に向けてバージョンアップしても、大幅に選手を入れ替えて「星野JAPAN 2.0」になることはなく、せいぜい「Version 1.1」止まりだろうと思われるのだ。
そういう発想でメンバーを予測すると、だいたい以下のようになる(▲は、投手は左投げ、打者は左打ち。△は両打ち。[]は怪我人等が出た場合の代役):
先発投手:
_ダルビッシュ有(日本ハム)
_岩隈久志(楽天)[or田中将大(楽天)]
_渡辺俊介(ロッテ)
▲和田毅(ソフトバンク)
_涌井秀章(西武)[or▲成瀬善久(ロッテ)]
先発/中継ぎ投手:
_川上憲伸(中日)[or吉見一起(中日)]
▲岩田稔(阪神)[or▲杉内俊哉(ソフトバンク)]
中継ぎ投手:
_久保田智之(阪神)[or久米勇紀(ソフトバンク)]
抑え投手:
_上原浩治(巨人)
_藤川球児(阪神)
▲岩瀬仁紀(中日)
捕手:
▲阿部慎之助(巨人)[or相川亮二(横浜)]
捕手/一塁手/三塁手:
_里崎智也(ロッテ)
捕手/三塁手/外野手/ブルペンコーチ:
_矢野輝弘(阪神)
一塁手/三塁手:
_新井貴浩(阪神)[or村田修一(横浜)]
二塁手/三塁手/遊撃手:
△西岡剛(ロッテ)
▲川崎宗則(ソフトバンク)
_井端弘和(中日)[or中島裕之(西武)]
二塁手/三塁手/遊撃手/内野守備コーチ:
_宮本慎也(ヤクルト)
二塁手/三塁手/遊撃手/外野手:
_荒木雅博(中日)
外野手:
▲青木宣親(ヤクルト)[or▲赤星憲広(阪神)]
▲稲葉篤紀(日本ハム)[or▲高橋由伸(巨人)]
_サブロー(ロッテ)
_G・G佐藤(西武)[or和田一浩(中日)]
したがって、上記のだれも怪我をしなかった場合のスタメンは以下のようになるだろう:
△二)西岡(ロ)
_三)井端(中)
▲中)青木(ヤ)
_一)新井(神)
▲右)稲葉(日)
_指)G・G佐藤(西)
▲捕)阿部(巨)
_左)サブロー(ロ)
▲遊)川崎(ソ)
●エースは第2戦に●
ついでに先発投手のローテーションも予想してみたい。星野JAPANは8月13日の一次(予選)リーグ(L)のキューバ戦を皮切りに、以下のような日程で戦う(時刻は試合開始時刻で、現地時間。日本時間は+1時間):
13日(水)19:00 キューバ vs. 日本
14日(木)19:00 台湾 vs. 日本
15日(金)19:00 日本 vs. オランダ
16日(土)19:00 日本 vs. 韓国
17日(日)全チーム休
18日(月)10:30 カナダ vs. 日本
19日(火)18:00 日本 vs. 中国
20日(水)19:00 日本 vs. 米国
21日(木)全チーム休
22日(金)準決勝10:30(一次L 1位 vs. 4位)or18:00(一次L 2位 vs. 3位)
23日(土)10:30 3位決定戦
___18:00 決勝
日本のエース、ダルビッシュ有(北海道日本ハムファイターズ)が13日のキューバ戦に投げると、中4日で18日のカナダ戦、さらに中4日で23日の決勝に投げることができるので、それでいいと思う方が少なくないであろう。
が、たぶんそれはない。なぜならその「中4日」方式だと、ダルビッシュがいつ投げるかが明白で、相手チームが対策を立てやすくなるからだ。
それともう1つ。18日のカナダ戦にダルビッシュが投げることは考え難い。
なぜなら、カナダは左打者が異常に多い特異なチームだからだ。
アテネ五輪本大会のカナダ代表は、スタメン9人のうちなんと8人が左打者だった。
その理由はアイスホッケーにある。カナダはアイスホッケーが国技なので、男の子はみな子供の頃から冬場はこれをやるのだが、アイスホッケーのシュートは、右利きの場合、右足を前に出して左打者のようなフォームで打つことになっている。このため、カナダの野球チームには右投げ左打ちの選手がやたらに多く、反対に、左投げ左打ちはまずいない(左投げ右打ちはいる)。
【一般的に、左打者は左投手の投球が見づらいので、「左投手対左打者」は投手が有利とされる。他方、左打者は右投手の、とくに下手投げ、横手投げの投球は見やすく、反対に右打者はどちらも見づらいので、「右下(横)手投げ対左打者」は打者が有利、「右下(横)手投げ対右打者」は投手が有利とされる。】
したがって、カナダ戦には左投手を先発させるべきである。現にアテネ五輪本大会の一次Lと3位決定戦のカナダ戦では、長嶋JAPAN(の中畑清監督代行)は2試合とも左投手の和田毅(ソフトバンク)を先発させて圧勝している(スポーツナビ2004年8月25日「アテネ五輪 野球 日程・結果(本選)」)。
そこで、18日のカナダ戦の先発を左投手と想定すると、中4日以上の休養を必要とする先発投手のローテーションから考えてダルビッシュの先発の機会は2回のみとなる。初戦のキューバ戦に先発させてから中8日で準決勝、あるいは中9日で決勝に投げさせる、という手もなくはない。が、一次Lで1位になってもあまり意味がないことは、アテネ五輪の長嶋JAPANが準決勝で苦手の豪州(一次L 4位)に当たって敗れてしまったという先例で明らかなので、ダルビッシュを一次Lのキューバ戦に使う意味はあまりない。
一次Lで4位までにはいれば決勝トーナメント(T)に進めるのだから、それを確実にするには5勝すればいい。星野は「(一次Lで)5勝するまではしっかり勝ちにこだわる」と言っているので(デイリースポーツWeb版2008年6月1日「星野監督、上原の精神面に注目」)、逆に、負けてもいいという構えで戦う「捨てゲーム」は当然作るだろう。
一次Lで対戦する7チームのうちいちばん強いのは米国、二番手はキューバとし、この2チームとの対戦を「捨てゲーム」とし、逆にいちばん弱い中国とオランダ、その次に弱いカナダとの対戦では国際経験の乏しい投手でもなんとかなると考えると、第2戦の台湾戦と第4戦の韓国戦には、それぞれ国際経験豊富なダルビッシュ、和田らを先発させるべきである。
ちなみに韓国もそれなりに左打者がいるが、カナダほど多くはない。逆に、キューバと台湾には左の大砲が少ない。
アテネ五輪本大会でも2006年WBCでも、キューバ代表のスタメンには左打者は3人以下で、打順は四番〜七番(野球日本代表公式サイト2004年7月14日「野球日本代表壮行試合 試合結果」、日本野球機構Web 2006年3月20日「2006年 WORLD BASEBALL CLASSIC 試合結果(決勝)キューバvs.日本」 )。
ちなみに、アテネ五輪本大会の台湾代表のスタメンは常に全員右打者だった。北京五輪アジア予選の台湾代表の日本戦のスタメンには3人の左打者がいたが、打順は二番、六番、七番で、右投げ先発投手のダルビッシュに対して3人ともノーヒットだった(野球日本代表公式サイト2007年12月3日「アジア野球選手権2007(北京オリンピックアジア予選)試合結果」)。
【2007年12月2日のアジア予選の韓国戦で、星野が左投手の岩瀬仁紀(中日)をリリーフで2回1/3も投げさせて疲れさせ、「翌日の台湾戦に投げられないようにし、左のリリーフ陣を手薄にした」ことを批判する「自称野球通」(年齢不詳)が大勢、試合当日の夜にネット上で議論していたが(スポーツナビ編集部blog 2007年12月2日「星野ジャパン、激戦制し北京へ前進! (北京五輪アジア予選・第2日)」)、彼らは、当時の台湾代表に左の強打者がおらず、岩瀬を台湾戦に投げさせる必要がなかったことを知らなかったようだ。DNA鑑定の実態も知らずに「横田めぐみさんの遺骨」は偽物だと騒いでいる連中と同じだ(小誌2007年7月3日「『ニセ遺骨』鑑定はニセ?〜シリーズ『日本人拉致被害者情報の隠蔽』(2)」)。】
【日本が一次Lに全勝すると、1位日本、2位米国、3位キューバ、4位韓国になる可能性が高く、この場合、日本は準決勝で韓国と対戦することになる。韓国代表選手は「五輪でメダルを取れば兵役免除」であり、準決勝で勝てばメダルが確定するので、死に物狂いで日本に向かって来るだろう。したがって、日本は一次Lで1位になるべきでない。】
おそらく星野は、中継ぎ兼任の川上憲伸(または吉見一起。ともに中日)を含めて6人以上先発可能な投手を五輪本大会のメンバーに選ぶだろうから、その人数をの多さをフルに使って、極端な話、一次L 7試合はすべて違う先発投手を起用する可能性もある。
以上のことを踏まえ、上記のリストのだれも怪我をしないと仮定すると、先発ローテーションはだいたい以下のようになるのではないか(時刻は現地時間):
13日(水)19:00 _渡辺(ロ) vs. キューバ
14日(木)19:00 _ダルビッシュ(日) vs. 台湾
15日(金)19:00 _岩隈(楽) vs. オランダ
16日(土)19:00 ▲和田(ソ) vs. 韓国
17日(日)全チーム休
18日(月)10:30 ▲岩田(神) [or▲成瀬(ロ)] vs. カナダ
19日(火)18:00 _渡辺(ロ) vs. 中国
20日(水)19:00 _岩隈(楽)[or捨てゲーム] vs. 米国
21日(木)全チーム休
22日(金)準決勝 10:30 or 18:00 _川上(中)[orダルビッシュ(日)or▲和田(ソ)or岩隈(楽)]
23日(土)10:30 3位決定戦
18:00 決勝 _ダルビッシュ(日)[or▲和田(ソ)or岩隈(楽)]
シーズン中の成績がイマイチ(7月6日現在、6勝4敗、防御率4.55)の渡辺を第1戦の先発に起用するのは、まさに国際試合の発想であって、「この試合は負けてもいいから、大崩れせずに6回ぐらいまで投げてくれれば、それでいい」という意図である。
右下手投げの渡辺は、左打者の少ないキューバに強いはずだ。2006年WBC本大会決勝では、3回4安打3失点とキューバに打ち込まれているが(日本野球機構Web 2006年3月20日「2006年 WORLD BASEBALL CLASSIC 試合結果(決勝)キューバvs.日本」)、国際経験が豊富なので(負けてもいい試合なら)「なんとかしてくれる」と期待できる。
逆に、岩隈は2008年のシーズン中の成績はよいものの(7月6日現在、12勝2敗、防御率2.07)、アテネ五輪本大会ではメンバーに選ばれながら体調不良でオランダ戦の1試合、1回2/3しか登板しなかったので(しかも3安打4四死球3失点、ボーク1。野球日本代表公式サイト2004年8月16日「オリンピックアテネ大会 試合結果 対オランダ戦」)、国際経験はほとんどなく、プレッシャーのかかる第1戦の先発も、また、第1戦のキューバ戦を日本が落とした場合の第2戦の先発も、とても任せられない。
同じオランダ相手にまた岩隈が先発することなどあるのか、と思われるかもしれないが、「国際経験豊富な味方のエースが最初の1勝をあげてくれるまで待つ」とすれば、オランダ戦に使わざるをえない。アテネ五輪のときは、まだコナミカップアジアシリーズ(日本野球機構Web 2007年「KONAMI CUP アジアシリーズ 2007」)が始まっておらず、日本球界のボークの基準が国際化されて(諸外国に合わせて変更されて)いなかったので、岩隈は国内基準の「二段モーション」の投球フォームで五輪に出てボークを取られてKOされたが、今回はそういう心配はないだろう。
●理想は高校野球!?●
上記の『読売ウィークリー』の予測記事(プロ野球ジャーナリストの務台達之)は、星野がアジア予選を、ホームランバッター(大砲)に頼らず、盗塁、バントなどの機動力を重視した「スモールベースボール」で勝ち抜いた理由を、「日本には大砲が少ないから」としている。つまり、12球団の四番打者はほとんど外国人選手で、日本人には本塁打を量産できる選手がほとんどいないので、そこで星野は仕方なく機動力野球を選んだ、というのだ。
とんでもない。たとえ各球団で四番を務める外国人選手が日本に帰化してくれたとしても、彼らが星野JAPANに選ばれることはない。なぜなら、どうせ彼らは強豪相手の国際試合ではホームランなどほとんど打てないからだ。
五輪本大会には米大リーグ(MLB)のメジャーリーガーの出場が禁止されているため、米国代表、カナダ代表の主力選手はマイナーリーグの3A、2Aクラスの選手だ。そして、日本のプロ野球で三番、四番、五番を打てる強打者であれば、3A、2Aクラスの投手なら、3試合10打席ぐらい対戦すれば、3安打(うまく行けば1本塁打)ぐらいは打てるだろう。1回目、2回目の打席で球筋を読みそこなって打てなかったとしても、3〜4打席目までには球筋を読めるようになるからだ。
ところが、国際大会では、同じ投手とそんなに多くの打席で対戦するわけではない。多くて3打席、たいていは1〜2打席だ。つまり、球筋が読めるようになる前に大会は終わってしまうので、日本の強打者陣が、3A、2Aクラスの投手を次々に繰り出す継投策で完封されることはありうる。現に2004年アテネ五輪本大会準決勝で、長嶋JAPANは豪州代表の3Aクラスの投手たちに完封されている(野球日本代表公式サイト2004年8月24日「オリンピックアテネ大会 試合結果 準決勝 対オーストラリア戦」)。
【高卒後プロ入りした1年目に、1軍の先発投手としてはほとんど通用しなかった、元巨人の桑田真澄は(2年目からは先発投手のエースとして大活躍したものの)、「1年目は、(当時の阪神の四番のランディ・バースなど)各球団の主力打者は第2打席まではなんとか抑えられたが、(試合に勝つために)だいじな第3、第4打席になると必ず打たれた」と述べている(2008年6月28日放送のNHK『NHKアーカイブス』)。つまり、「まだ1軍で通用しないレベルの高卒ルーキーでも、日本の強打者を2打席ぐらいは抑えられる」のだから、ラミレス(巨人)やウッズ(中日)が星野JAPANの四番になっても、五輪の米国戦やキューバ戦でホームランを打つことは期待できない、ということになる。】
結局、A代表の参加する国際大会では、優勝のかかった重要な試合は、高校野球のような試合になる。つまり、少ないチャンスを機動力を使って確実に得点に結び付け、それを堅い守備で守り抜くような試合をせざるをえないのだ。
現に星野JAPANが五輪本大会出場を決めたアジア予選のもっとも重要な試合、韓国戦は「4-3」の1点差ゲームになり、日本と違ってエラーをした韓国が負けている。
日本が最終的に本大会を出場を決めた台湾戦でも、星野JAPANは最終的に10点取っているものの、一時はリードを許し、同点スクイズを決めたあと、台湾投手陣の混乱に乗じて、短打を連ねて大量点を取ったにすぎない(野球日本代表公式サイト2007年12月3日「アジア野球選手権2007(北京オリンピックアジア予選)試合結果」)。
「日本代表!!」と聞くと、日本を代表する強打者が大勢集まって、外国チーム相手にガンガン本塁打を打つのだろう期待する「ナイターでビール」世代が少なくないようだが、そんな試合は……相手が中国やオランダならともかく……米国、キューバ、韓国との試合ではまず期待できない。
A代表は国家の威信を背負って短期決戦を戦うので、勝つことが至上命題であり、「ファンを魅了する野球」などやっている余裕はない。
2006年のWBCの一次Lアジアラウンドを観戦した米国人記者が「米国の高校生レベル」と酷評した中国代表との試合でさえ、5回を終わって「0-0」である可能性もある(2006年WBC一次Lの中国戦は、4回を終わって「2-2」、最終的には「18-2」で日本の8回コールド勝ちだった。日本野球機構Web 2006年3月3日「2006年 WORLD BASEBALL CLASSIC 試合結果(一次リーグA組)中国vs.日本」)。
だから日本代表選手の華々しい打棒を見たい方々には、五輪本大会では、対中国戦の後半を見逃さないように、とご忠告申し上げたい。
(^_^)
●山本浩二コーチ●
尚、星野JAPAN最大のの弱点は山本浩二守備走塁コーチだという説があるので、それについてひとこと。
2006年、まだ日本プロ野球組織(日本野球機構、NPB)が北京五輪日本代表監督を決められずにいたとき、「早く代表の監督、コーチを決めないと、アジアや北中南米のライバル国の選手の情報収集が間に合わない」と焦るアマチュア球界が、代表監督に推したのは山本浩二だった、という事実がある(日本代表は、プロ野球界だけでなく、アマも含めた日本球界全体の代表なので、その監督人事には、アマ側も発言権がある。スポーツニッポン2006年5月24日付1面「北京五輪 野球日本代表『山本浩二監督』急浮上 -- 長船編成委員長打診」)。結局、代表監督は星野に決まったが、星野がアマ側が推していた山本をコーチ陣に加えたことの意味は大きい。
アテネ五輪日本代表では、巨人で優勝経験のある長嶋茂雄監督が、監督経験のない3人のコーチを選んだため、長嶋本人が五輪前に急病で倒れると同時に「監督経験のある指揮官不在」に陥り、結局五輪本番で金メダルを逃した(とくに、監督経験のない中畑監督代行が「捨てゲームを作る」という英断を下せず、「全試合勝ちに行く」という当初の方針を途中で変えられなかったのが痛い)。日本球界にはこの苦い経験があるのだから、星野は万一自分が倒れても自分に代わって監督を務められる、監督経験のある者をコーチにする必要があった。
星野は、山本のほか、福岡ダイエーホークスで監督経験のある田淵幸一も首脳陣(ヘッドコーチ兼打撃コーチ)に選んでいるが、田淵の監督としての成績は惨憺たるもので、とても監督代行は務まらない。その点、広島東洋カープで通算10年の監督経験と1回の優勝経験を持つ山本は監督代行に最適だ(とアマ側は思っているはずだ)。山本は(田淵もそうだが)大学時代からの星野の盟友で、お互いの考えがよくわかっているからコーチにもいいだろう。
問題は「守備走塁コーチ」という役割にある。山本は現役時代は外野手だったので、相手チームの打者に応じて内野手の守備位置の変更を指示することができない。だから、2007年のアジア予選では、代表チームの主将でもある宮本が内野手の守備位置を指示した。『夕刊フジ』の江尻良文編集委員などは、この点を指摘して山本は守備コーチにふさわしくない、と酷評する(『サンデー毎日』2008年6月22日号 p.p 130-131 「北京真夏の悪夢か 『シーズン0勝』上原頼みで予選落ちもある『星野ジャパン』」)。
しかし、星野は山本が内野手の守備位置を指示できないことは織り込み済みで、事前に「宮本は首脳陣の1人(事実上のコーチ兼任)」と公言していた。だから、江尻のように宮本がコーチ役を務めたことをもって「山本はダメだ」と鬼の首でも取ったように騒ぐのは筋違いだ。
たしかに、走塁コーチとしても経験のない山本が「守備走塁コーチ」として三塁側コーチャーズボックスにはいることを危険視する意見は、上記の直木賞作家の海老原を始め、多々あった。たとえば、監督のサインを走者に伝える際にミスが出るのではないか、といった指摘である(『日刊ゲンダイ』2007年11月26日「山本三塁ベースコーチを切れない星野の温情が命取りになる」)。
しかし、山本は、アジア予選の台湾戦では三塁コーチとしてスクイズのサインを出して成功させている。また、その後も「采配のカンを鈍らせたくない」と考える星野、田淵、大野とともにプロ野球2軍のウェスタンリーグの試合で何試合か首脳陣を務め、星野監督のもと、コーチとしてサインや指示を出す「実戦練習」を繰り返している(デイリースポーツWeb版2008年6月28日「悔しいんや! 星野監督初黒星」)。
だから、「山本浩二が(三塁)コーチだったから負けた」という事態は、たぶんない。
●最大の敵は怪我●
最大の問題はむしろ「内野守備コーチ兼任」の宮本が五輪開会前に大怪我をした場合だ。怪我を理由に宮本をはずすと、内野守備コーチがいなくなり、怪我に目をつぶって宮本をメンバーに選ぶと、二塁手・遊撃手の控えが、外野手兼任の荒木1人だけになってしまう。
宮本の所属するヤクルトの本拠地である神宮球場は人工芝なので怪我をしやすいし、現に彼は2008年シーズン中にも怪我で欠場したことがある。
『サンデー毎日』は、2008年シーズン開幕後、星野JAPANの候補選手のなかに怪我人が続出していることを指して、五輪本大会で「予選落ち(一次L敗退)もある」などと茶化したように述べているが(『サンデー毎日』2008年6月22日号 p.p 130-131 「北京真夏の悪夢か 『シーズン0勝』上原頼みで予選落ちもある『星野ジャパン』」)、茶化している場合ではない。怪我人が多いのは、ドーム球場を含め、人工芝の球場が多すぎるからだ。
【広島、阪神に在籍して連続試合フル出場の世界記録(904試合)を樹立し、その後も更新中(2008年7月6日現在)の金本知憲外野手は、在籍した2つの球団の本拠地がともに天然芝球場だったため、からだの消耗が少なかったことが幸いした、と考えられる。】
この人工芝の弊害に、MLBはいちはやく気付き、1990年代に次々に新設された、グランドが人工芝のドーム球場はいまはほとんど球団本拠地ではなくなり、天然芝の球場が主流になっている(産経新聞2005年3月31日付「メジャーリーグ:さらば人工芝野球 『本物』が戻って来た」によると、MLB30球団のうち27球団の本拠地は天然芝)。
他方、都心の一等地に「雨の日に使えないイベントスペース」「コンサートや展示会に転用できない土のグランド」を構えることを嫌がる日本の球場オーナーたちは、人工芝の球場を天然芝に戻そうとしない。このため、日本の多くの野球選手の足腰が、人工芝の下にある硬いアスファルトの影響で、すっかり傷付いて故障がちになってしまっている(報知新聞2006年9月30日付「滝鼻オーナーにインタビュー『東京ドーム 屋根外し天然芝に が巨人の理想』」)。
その典型が、老朽化した東京ドームの硬い人工芝に二度もからだを打ち付けて重傷を負って、俊足から鈍足に変わってしまった、巨人の高橋由伸外野手だ(報知新聞前掲記事)。彼が広島か阪神に在籍していれば、いまより数段偉大な選手になっていただろうに、と悔やまれる(おそらく彼はドームの人工芝に痛め付けられたせいで北京五輪本大会に出られない)。
星野JAPANの候補選手にやたらに怪我人が多いのは、必ずしも選手個人の問題ではない。これは、星野JAPAN以後も、日本球界全体にずっと付いてまわる問題なのだ。
マスコミには、茶化すより、もっとだいじな仕事があるはずだ。
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