仮病は無罪!?

その2

 

「横綱朝青龍 vs.

日本相撲協会」勝負

 

 

 

(Aug. 20, 2007)

要約
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2007年8月現在、横綱朝青龍は「仮病で巡業をサボって母国モンゴルに帰国し、サッカーをして仮病がバレたから、日本相撲協会に処分された」と日本では思われているが、協会はある事情から彼の仮病をとがめてはいないため、モンゴルでは理解が得られない。その事情とは?

 

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「民間の小組織にすぎない日本相撲協会がわがままを言っている」

 

「相撲協会は(幕の内最高優勝21回の外国人朝青龍に)さらに記録(日本人の名横綱貴乃花の優勝回数22回)が破られることを恐れて2場所出場停止を決定したのかもしれない」(サンスポ前掲記事)

 

などと思っても不思議ではない。

 

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この誤解を解くのは、韓国人に「従軍慰安婦は単なる職業売春婦にすぎない」と理解させるより、はるかに難しい(小誌2007年5月1日「非国家犯罪と謝罪〜シリーズ『米バージニア工科大銃乱射事件』(2)」)。

 

韓国政府は韓国の一般庶民をだますため、事実を歪曲した反日教育を行い、国民が常に反日的な言動をとるようマインドコントロールしているが、韓国の一般庶民は漢字が読めないので、第二次大戦前の日本の植民地時代やそれ以前の歴史資料を自分で読んで事実を確認することができない。そこで日本人が、韓国の反日教育のこの「弱点」をついて漢字の資料を示して、韓国人に直接、歴史論争を挑むと、韓国人側が「敗北」することが珍しくない(この種の「敗北」は韓国のマスコミでは報道されないが、インターネット上の日韓関係の掲示板、BBSではしばしば見受けられる。『enjoy korea』2007年3月10日「従軍慰安婦強制動員証拠資料」)。

 

これは真実の「証拠」をもってすれば、韓国政府の悪意による韓国国民の誤解は必ずしも解けないわけではないことを意味する。

 

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【韓国政府は1965年の日韓国交樹立から1991年まで、「従軍慰安婦問題」を、外交上取り上げる価値のない、くだらない問題とみなして放置していたが、1991年末に日本のマスコミがまるで狂ったようにこの問題を報道し始めると(小誌2007年6月28日「●いつか来た道」、1998年5月31日「朝日新聞『従軍慰安婦』記事数の変動」)、それを反日教育に利用し始めた。

とくに悪質なのは、韓国の青少年が日本統治終了後の国語教育で漢字が読めなくなったのをいいことに、韓国の政府やマスコミが、明らかなウソを青少年に教えている点だ。たとえば、漢字かな交じりで書かれた「高給優遇 慰安婦募集」という、応募連絡先が朝鮮人名の広告文を撮影した写真に「日本軍による慰安婦強制連行の証拠」などという韓国語のキャプションを付けて紹介した事例がある。このキャプションを鵜呑みにした漢字の読めないある韓国人がこれを日韓間の討論用の掲示板(BBS)に「強制連行の証拠」として投稿したために、大恥をかいて「敗北」したことがあるが、このように政府が若者にウソを教えるのは、相当な悪意と言わざるをえない(『enjoy korea』前掲投稿記事)。】

 

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ところが、今回の日本国民とモンゴル国民の間の意見の相違には、まったく悪意が介在していない(悪意によると言えそうな行為を強いて挙げれば、日本相撲協会が将来の横綱の「仮病スキーム」のために、朝青龍の仮病を故意に断罪しなかった点ぐらいか)。モンゴル政府は自国民に反日教育をしていないし、日本人も反モンゴル感情など持っていない。双方がそれぞれの経験に基づく「常識」に則って判断しているだけなのだ。

 

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●ミスか悪意か●

そもそもなぜこんな大騒ぎになったのか。

世の中に「悪いこと」は多々あるが、そのなかでも原因が「単なるミス」である場合は、同情の余地がある。

 

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たとえば、2007年夏の参議院通常選挙に自民党から立候補して当選した丸川珠代・元テレビ朝日アナウンサーの場合は、選挙運動中「私のミスです」と言って、TVカメラや街頭の有権者の前で何度も謝罪している。

 

彼女の言う「ミス」とは、彼女が2004年6月にニューヨーク勤務を終えて帰国し、テレビ朝日本社勤務に戻った際、転入届を居住地の東京都新宿区の区役所に提出せず、2007年4月まで住民票のない状態を放置していたことだ。選挙権は居住地の自治体に転入届を出してから3か月経たないと得られないのだが、彼女はそのことを忘れて、2007年7月に参議院選挙(東京選挙区)に立候補し、選挙運動期間中に期日前投票をしようとして、彼女を取材する大勢の報道陣と一緒に新宿区役所に行ったところ、「選挙公示前に3か月経っていないので、選挙権はない」と判明した(スポーツ報知Web版2007年7月17日「丸川珠代氏、選挙権なし…NYから帰国後3年、転入届未提出」)。

 

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本人が泣いてあやまっているのだから、元々単なる手続きミスだったのだから、許してやればいいと考えた都民有権者がかなりいたようで、結局、彼女は参議院選挙に当選してしまう(厳密に言うと、丸川は、東京選挙区から立候補したもう1人の自民党公認候補である保坂三蔵前参議院議員に本来振り分けられていた、信者数が全国で100〜150万とも言われる宗教団体「幸福の科学」の組織票を譲ってもらって、保坂を蹴落としてかろうじて当選できたにすぎない。日刊ゲンダイ2007年8月1日付5面「丸川珠代を滑り込ませた宗教パワー」)。

 

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しかし、これは「悪意のない単なるミス」だろうか。

 

たしかに「うっかりミス」で転入届などの手続きをし忘れることはだれにでもありうる。が、丸川がニューヨークから帰国したあと、2007年に参議院選挙への立候補を決める前に、何度か重要な選挙があった。たとえば、2005年9月には小泉純一郎首相(当時)が郵政民営化法案の是非を問うために衆議院を解散して、俗に「郵政選挙」と呼ばれる衆議院総選挙に打って出ている。将来国会議員になりたいと思うほど政治に関心のある丸川なら、当然、この総選挙で投票したいと思うはずだ。そして、投票したいと思えば、「なぜ自宅に『選挙のはがき』(投票所入場整理券)が郵送されて来ないのか」と疑問を感じ、居住地(新宿区)の選挙管理委員会に問い合わせるはずだ。そして、そのように問い合わせれば、自分が本来もっと早く提出すべきだった転入届をまだ提出していない(から選挙権がない)ことにその時点で気付いたはずだ。

 

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しかし、彼女は2007年まで気付かなかった。つまり、2007年まで選挙に投票に行こうと思ったことがなかったのだ。つまり、2007年まで、政治にほとんど関心がなかったのだ。

 

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政治に関心がないくせに、「昔から政治に関心を持っていた」とウソをついて政治家になろうとするのは、単なるミスではなく、悪意ある「詐欺」だ。自分が投票に行っていないのに、他人には行けと言うのだから。

 

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彼女は2007年夏の参議院通常選挙で辛くも当選した翌日、TBSの番組に生出演したが、その際、2007年4月の東京都知事選で石原慎太郎現知事に敗れた、その番組のゲストの浅野史郎・元宮城県知事から選挙戦を戦った気持ちを聞かれ、「選挙を戦った経験のない人にはわからないと思います」と答えた。もちろん浅野からは「私は経験があるから聞いてるんだよ」とたしなめられた。彼女が都知事選にまったく関心がなかったことが暴露されたわけで、スタジオ全体が失笑に包まれたのは言うまでもない(2007年7月30日放送のTBS『朝ズバッ!』)。

 

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【丸川は、都知事選で石原慎太郎知事に投票していないにもかかわらず、自分の選挙戦では、慎太郎を初めとする石原ファミリーの全面的な応援を得ている(筆者なら、申し訳なくてとても応援など頼めない)。前回、小誌記事の冒頭で「政治家なんてみんな、人柄は悪いに決まっている」と述べたが、この点、丸川は新人議員ながら、まさに「政治家のなかの政治家」だ。彼女は自分の政治的無関心は棚に上げて、他人(2005年の衆議院総選挙で初当選した杉村太蔵議員)のことは「政治家として自覚が足りない」と酷評しており、その人柄の悪さは、まさに天下一品と言える(MAMMO.TV 2005年9月「脱・女子アナ宣言 丸川珠代 #193 認めたくない現実 2005-01-03号」)。】

 

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【余談だが、ことほどさように政治家はみな人柄が悪いのだから、民主党国会議員の皆さんは「小沢一郎代表は人柄が悪い」などという「わがまま」は言わないように(そんなに人柄の悪い人と付き合いたくないのなら、政治家をやめるしかない)。】

 

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実は、朝青龍のケースはこの丸川のケースとは異なり、単なるミスだ。

 

日本相撲協会では仮病が罪にならないことは過去の「判例」で確定しているので、朝青龍はモンゴルに帰国したあと「十分静養している」ような振りをしていれば、それでよかったのだ。そして、それは十分可能なはずだった。なんといっても「静養先」は、日本から遠く離れたモンゴルなのだから。静養中に見物に行ったサッカーの親善試合に飛び入りで出場したとしても、「見学していただけ」としらばくれていれば、それで丸く収まるはずだった。

 

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ところが、その試合には、元サッカー日本代表のスター選手、中田英寿が出場していた。中田には常に日本のサッカーマスコミが大勢付いているので、中田の出場する試合はたとえ親善試合であっても、逐一日本国内で報道されてしまう。

 

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朝青龍はこのことを忘れていた。中田に付いているカメラマンたちの存在を忘れて、うっかりサッカーの試合に出て器用なヘディングシュートまで披露して見せて、診断書がにせものであることを証明し、日本相撲協会の「仮病スキーム」を危険にさらしてしまった。これは、丸川の参院選出馬のような「悪意による詐欺」ではなく、単なる「うっかりミス」でしかない。

 

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もちろん、朝青龍には、普段から、土俵上や稽古場での、乱暴な、あるいは伝統を無視した振る舞いなど、数々の「素行不良」がある(サンスポWeb版2007年8月2日「■朝青龍のお騒がせ」)。しかし、それらに対してはその都度日本相撲協会や高砂親方の責任で処分や指導がされて来たはずだ(処分や指導が不十分だったとしたら、それは協会や親方の責任であって、朝青龍の責任ではない)。

 

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したがって、朝青龍の、2007年7月以前の「過去の罪状」を、今回の「仮病事件」に重ねて、彼を「天下の大罪人」のようにみなして処罰するのはスジが通らない。もしも「過去の罪状」がそんなに重大なら、仮病事件の前にとっくに引退勧告を受けているはずだからだ(しかし、そんな勧告は一度も出ていない)。

 

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おそらく、日本相撲協会の幹部たちはこう思っているだろう、

 

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「中田英寿さえあの場にいなければ、こんな騒ぎ(仮病スキーム使用不能の危機)にならずに済んだものを」。

 

【お知らせ:佐々木敏の小説『天使の軍隊』が2007年4月26日に紀伊國屋書店新宿本店で発売され、4月23〜29日の週間ベストセラー(単行本)の 総合10位(小説1位)にランクインしました。】

 

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 (敬称略)

 

 

 

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【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
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