(安倍首相 退陣

前倒しの深層)

 

開戦前倒し?

(その2)

 

〜シリーズ

「中朝開戦」

(9)

 

(Sept. 13, 2007)

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■開戦前倒し?〜シリーズ「中朝開戦」(9)■

 

小誌は中朝戦争の開戦時機を2010〜2012年頃と予測したが、中国は北京五輪前にも北朝鮮側から戦争を仕掛けて来る可能性があると見て警戒している。2007年9月12日、米国も早期開戦に備えて、別件の「テロ特措法」期限延長問題を口実に「中朝戦争反対派」の安倍晋三首相を退陣に追い込んだようだ。

 

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だから自民党内から「戦略なき暴走」という批判が出たのだ。安倍がテロ特措法と心中するのは勝手だが、自民党にも公明党にも安倍と心中する気はさらさらないので、安倍が「職を賭して」国会に提出するテロ特措法延長法案(か、それに代わる新法案)の不成立を理由に衆議院の解散・総選挙を狙ったら、自民党内で安倍を総裁の座から引きずり下ろす「リコール」の動きが起きるだろう(自民党党則4条4項によれば「総裁の任期満了前に、党所属の国会議員及び都道府県支部連合会代表各1名の総数の過半数の要求があったとき」は総裁リコールが成立し、総裁選を行うことになっている)。

 

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それぐらいのことは当然、安倍にも予測できる。したがって、安倍内閣のもとでの解散・総選挙など元々ありえなかった。2007年9月10日、すなわち、安倍が臨時国会冒頭の所信表明演説で「職責をまっとうしたい」などと、前日の「職を賭す」発言と矛盾する「続投意欲表明」をした日の正午頃(所信表明の前)、筆者は自民党大物衆議院議員の側近と電話で話して「わが陣営は総裁選の準備にはいった」と聞かされていたので、同陣営が「職を賭す」発言の時点ですでに、解散でなく、総辞職とみなしていたことは間違いない。そこで筆者は「11月頃にテロ特措法に代わる新法の成立と引き換えに安倍内閣総辞職」という前提でこの記事の執筆を開始したところ、なんと執筆中の9月12日に早々と、安倍が退陣(総辞職)を表明してしまった(んなアホな)。

(>_<;)

 

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●肩たたき●

シドニーでの安倍の記者会見をTVの生中継で見たある自民党議員(津島派関係者)は「会見映像を見ていると(首相は)精神的に不安定な感じ。辞めるつもりじゃないか」と語り(産経新聞Web版2007年9月10日「与党議員『辞めるつもりでは…』 首相“退陣”表明に」)、現役閣僚の1人も「これ以上首相を続けられないと判断して、体裁のいい辞め時を探っているのではないか」と語ったというが(2007年9月10日放送のNTVニュース「内閣総辞職発言で波紋広がる その狙いは…」)、結果的に彼らの見方は正しかった。

 

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【この津島派関係者はおそらく「中朝戦争賛成派」の防衛族の大物議員であろうと推測されるが、決定的な証拠がないので、名前は出せない。】

 

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上記のように、安倍は2007年7月の参院選大敗後にも総辞職を口にせず、8月の臨時国会召集の際にもテロ特措法延長法案の成立を最優先の政治課題にしていなかった。それが、9月になって、APEC首脳会議でシドニーに行き、ブッシュ米大統領と日米首脳会談を行って「テロ特措法に基づく海上自衛隊のインド洋上での給油活動の継続」を表面上強く求められた9月8日の翌日に急に、人が変わったように「テロ特措法延長法案は国際公約だから重要だ。それ(に代わる新法案)を成立させられなかったら、職を賭す」と言い出したのだ。

 

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日本のマスコミは(国内政局は政治部、国際政治は外信部、と縄張り分けをしているので)認めたくないだろうが、これはやはり、米国から安倍が「辞めろ」という外圧を受けた結果と見るべきではないだろうか。

 

筆者はかつて、2001年3月、のちに首相になる小泉純一郎が自民党総裁選に出馬を表明するに「小泉政権ができる」と、世界中でただ1人予言(でなくて科学的に予測)をして的中させ(小誌2001年3月17日「●米国ご指名『小泉首相』」)、逆に日本の大手マスコミはこぞって予測をはずした。このとき筆者は「米国が民主党から共和党へ政権交代したのだから、それに対応して日本の首相も代わるはず」と予測して当てたのだが、日本のマスコミはみな国内政界の動きのみに目を奪われ、米国の変化を無視して失敗した。

 

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今回、米国の大統領は2001年からずっと共和党のブッシュのままであって、7年間交代してはいないが、2006年11月の米中間選挙で米議会上下両院で米民主党が多数党になって以来、米国の外交政策は「中朝戦争賛成派」の米民主党の思惑通りに急展開し、かつて1994年に米朝間で合意された「北朝鮮が(未完成の、軍事的に無意味な)核兵器をわざわざ廃棄してみせるパフォーマンスと引き換えに、米国が中朝戦争の軍資金になるような経済援助を与える」という方式の再現に向かってひた走っている(小誌2007年6月7日「安倍晋三 vs. 米民主党〜シリーズ『中朝開戦』(7)」)。

 

他方、米国の安全保障にとって決定的に重要なこの時機に、日本の首相の座には「中朝戦争反対派」の安倍が座っている。安倍は北朝鮮による日本人拉致問題を口実に、日本が(日朝国交回復後に)北朝鮮に経済援助を与えるのをひたすら遅らせようとしており、このまま中朝開戦の時機まで安倍が首相の座に居座り続けたのでは、中朝開戦後に『核兵器廃棄のごほうび』という名目で米国が日本海経由で北朝鮮に石油を搬入するうえで(海上自衛隊などの協力が得られず)作戦に支障をきたすかもしれない(小誌2007年5月14日「罠に落ちた中国〜シリーズ『中朝開戦』(5)」)。

 

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それなら、中朝開戦前に安倍に首相を辞めてもらおう、と米国政界(米民主党)が考えて、ホワイトハウスや国務省に要請したとしても不思議ではない。米国が安倍に「そろそろ辞めたら」と促す方法は、自衛隊の次期支援戦闘機の機種選定への非協力から、2007年7月に米議会下院で可決された「従軍慰安婦問題での対日非難決議」を理由にした安倍の訪米拒否(米国内の「安倍入国反対市民運動」の嵐)まで、さまざまにあるが、いちばん簡単なのは、安倍が日本国民についている最大のウソをばらすぞ、と脅すことだ。

 

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そもそも安倍が国民的人気を得て2006年自民党総裁選の最有力候補になれたのは、拉致問題に熱心で、「北朝鮮が死亡したと発表した(8人の)拉致被害者は全員生きているという前提で北朝鮮と交渉する(最終的には経済制裁によって取り返す)」と豪語し続けて、国民的人気を得ていたからにほかならない。

 

しかし、死亡したとされる8人の拉致被害者が生存しているという証拠は、アン・ミョンジン(安明進)元北朝鮮工作員ら脱北者の証言以外にほとんどなく、他方、「8人全員が生存していることはありえない」「8人のうちほんとうに死んでいるのはだれか」という確度の高い情報が日本のマスコミ界にひそかに出回っている(が、日本のマスコミ各社は、日本政府が公式に死亡と確認しない拉致被害者の氏名は、被害者家族の感情に配慮して、報道しないように自主規制している)。

 

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その情報は、筆者でさえ知っているのだから、当然安倍は2005年の官房長官就任時かそれ以前に知ったはずであり(小誌2007年3月18日「すでに死亡〜日本人拉致被害者情報の隠蔽」、同7月3日「『ニセ遺骨』鑑定はニセ?〜シリーズ『日本人拉致被害者情報の隠蔽』(2)」)、また米国の情報機関もつかんでいるはずだ。

 

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そこで、米国政府が「拉致被害者のうち○○さんは死んでいる」と発表すれば、その瞬間に安倍の政治生命は終わるので、「発表されたくなければ辞任を」と米国が安倍に「肩たたき」をするのはさほど難しくない(米国がいままでこの「切り札」を切らなかったのは、2007年夏の参院選に負ければ安倍は退陣するはずだと読んでいたからだろう)。

 

現在の米国(議会多数派の米民主党)の最大関心事は、イラクやアフガンでの軍事行動(テロとの戦い)ではなく、北朝鮮を使って中国をたたく「中朝戦争」なので、たぶん安倍はシドニーで肩たたきに遭って急遽「体裁のいい引き際」を考える必要に迫られ、突然「テロ特措法延長法案(か、それに代わる新法案)が成立しなかったら(どうせ11月1日までには成立しないから)総辞職する」という意味のアドリブを言ってしまったのだろう。

 

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【三反園訓(みたぞの・さとし)テレビ朝日記者はこの「職を賭す」発言について、安倍の12日の退陣表明の前、「安倍は、臨時国会の会期を延長して、参議院で否決されたテロ特措法に代わる新法を、衆議院における再可決で成立させる際に、参議院で首相問責決議案が可決される異例の事態に陥って国会が動かなくなる恐れがあるので、それで『法案の可決・成立と引き換えに内閣総辞職する』という意味で『職を賭す』と言ったのだろう」と推測している(2007年9月11日放送のテレビ朝日『スーパーモーニング』)。筆者もほぼ同じ意見である。】

 

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●中朝戦争シフト●

安倍が退陣したあと、福田康夫元官房長官など「中朝戦争賛成派」の首相と交代するなら(「福田首相」でなく「福田官房長官」でも可)、その瞬間から日米ともに「中朝戦争シフト」がほぼ出来上がることになる(小誌2007年6月14日「安倍晋三 vs. 福田康夫 vs. 中国〜シリーズ『中朝開戦』(8)」)。

 

筆者は当初、中朝開戦の時機は、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだブッシュがホワイトハウスを去り、新大統領と新国防長官が決まってホワイトハウスや国防総省を十分に掌握して、中朝戦争用の情報収集態勢が出来上がる2010年以降であろうと読んでいた(小誌2007年3月8日「戦時統制権の謎〜シリーズ『中朝開戦』(3)」)。

 

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が、よく考えてみると、ロバート・M・ゲーツ(ゲイツ)現米国防長官は、2006年11月の中間選挙後に(改選前の上院議員の残り任期中とはいえ)上院の承認を得てその職に就いているので、2009年1月の新大統領就任以降、引き続きその職に留まってもあまり問題はない(憲法上、米国の閣僚は大統領の指名を受けただけでは就任できず、議会上院の承認を必要とする)。

 

2008年11月の米大統領選と上下両院議員選挙で米民主党が勝つという保証があるわけではないが、2002〜2004年の選挙で米共和党の大票田となった「反同性愛主義」のキリスト教原理主義保守派は、2006年の米中間選挙の投票日前に、原理主義保守派の指導者や米共和党の大物政治家が実は同性愛者であったという事実が次々に暴露された結果、事実上崩壊してしまったので、2008年の米国の国政選挙では米民主党の勝利が比較的容易に見込める。

 

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とすると、ゲーツ現国防長官を新大統領(たぶん米民主党員)がそのまま国防長官の座に留めると提案すれば、議会側にはそれに反対する理由はあまりないことになる。もちろんゲーツはブッシュ米共和党政権の一員なので共和党員だが、米民主党の大統領が、国防政策に弱い米民主党の欠点を補うために共和党の政治家を国防長官に迎えた例は過去にある。クリントン米民主党政権の2期目(1997〜2001年)に国防長官を務めたウィリアム・コーエンがそうだ。

 

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以上の日米政界の分析と、冒頭に掲げた長白山空港開港の前倒しとをあわせて考えると、2007年12月に中朝戦争が始まってもおかしくないことになる。

 

本来、中朝戦争の開戦時機を決めるのは、北朝鮮側である。北京五輪を初めとして「失うもの」がやまほどある中国側から先に戦争を仕掛ける理由は当面ない。北朝鮮としては開戦時機は2008年でも2010年でもいいのだが、中国側が「2007年12月にも北朝鮮側から攻めて来るのではないか」と異常なほど警戒しているようなのだ。その理由はおそらく「北京五輪前は中国から北朝鮮に先制攻撃をかけることがありえないので、北朝鮮が奇襲攻撃に出る場合、圧倒的に有利だから」と、中国側で推測しているからだろう。

 

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2007年中に安倍を退陣に追い込んだのが米国だとすれば、米国も同じ「奇襲論」に立っていることになる。

 

もしかすると、米国(米民主党の意を受けた現米共和党政権)は「12月開戦」のために、所信表明後の安倍を再度脅迫したのではないだろうか。

 

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安倍の所信表明後、政府・自民党内はテロ特措法の延長法案でなく、それに代わる新法を9月下旬に国会に出すことでほぼ一致した(産経新聞Web版2007年9月11日「海自の給油活動 新法提出今月下旬に」)。中朝戦争さえできれば、イラクやアフガニスタンでの戦争などもうどうでもいい(?)と思っている米民主党にとって、延長法案の成立が間に合わずに海自艦隊の給油が(中断でなく)完全に終わってしまっても、べつにかまわなかったのだが、新法は延長法案と違って11月1日以降も国会審議が続くので、野党側の抵抗で国会審議が空転したりすると、安倍が「法案の成立と引き換えに退陣」する時機が、2007年12月や2008年1月にずれ込む恐れがある。そうなると、最悪、安倍の後継首相、つまり「中朝戦争賛成派」の首相がその座に就くのは2008年2月になるかもしれない。

 

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米国が北京五輪前の冬に北朝鮮に中国を攻撃させたいと思っているなら、安倍には11月半ばまでに(単に退陣を表明するだけでなく)じっさいに内閣総辞職をしてもらわなければならないが、いったん新法案の審議が始まってしまうと、それが終わるまでは安倍は退陣できない。だから、米国は所信表明後の9月10日午後から12日午前中までの間に安倍を再度脅迫し、国会審議が本格化する前に退陣させた…………こう考えると、一国の首相が国会で(新法の制定などのために)「職責をまっとうしたい」と表明した2日後に退陣を表明するという異例の事態について、辻褄の合う説明が可能になる。

 

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筆者はずっと、星野仙一監督率いる五輪野球の日本代表「星野JAPAN」が北京五輪で金メダルを取ることを期待していた。が、もし中朝戦争が2007年12月、2008年1〜3月など次の冬季に早々と始まってしまうと、当然北京五輪は中止になる。現時点で筆者は、星野監督が北京で胴上げされるシーンを見ることについては、あきらめている。

 

【この記事は純粋な予測であり、期待は一切含まれていない。】

 

【今後15年間の国際情勢については、2007年4月発売の拙著、SF『天使の軍隊』)をご覧頂きたい(『天使…』は小説であって、基本的に小誌とは関係ないが、この問題は小説でもお読み頂ける)。】

 

【お知らせ:佐々木敏の小説『天使の軍隊』が2007年4月26日に紀伊國屋書店新宿本店で発売され、4月23〜29日の週間ベストセラー(単行本)の 総合10位(小説1位)にランクインしました。】

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 (敬称略)

 

 

 

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【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
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