餃子事件の犯人

チャイナフリー作戦

 

〜シリーズ

「中朝開戦」

(12)

 

(Feb. 18, 2008)

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■チャイナフリー作戦〜シリーズ「中朝開戦」(12)■

 

2007年に日本に輸入された中国製冷凍食品の餃子に混入していた殺虫剤による食中毒事件は、「傷害」か「殺人未遂」の疑いが濃厚だが、それなら犯人(首謀者)の国籍は日本でも中国でもない可能性が高い。

 

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■チャイナフリー作戦〜シリーズ「中朝開戦」(12)■

 

【前回「ヒラリー大統領〜2008年米大統領選」は → こちら

 

一般の学者やジャーナリストと違って、永田町・霞が関の中枢を担うインサイダーは、2006年以降の中朝国境がどのような状態であるかを知っている。だから最近、筆者は、そういう人物と会うときは、ほとんど挨拶代わりに「まだですか」「そろそろ始まっておかしくないですよね」と聞く。もちろん、これらの挨拶はすべて「いったい中朝戦争はいつ始まるんでしょう」という意味である(小誌2007年3月1日「脱北者のウソ〜シリーズ『中朝開戦』(2)」、『週刊文春』2006年11月9日号 p.p 40-41「開戦前夜 『中朝国境』もの凄い修羅場」、小誌2006年10月16日「北朝鮮『偽装核実験』の深層〜最後は米朝同盟!?」)。

 

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前回登場したインサイダーの1人(Dとする)と最近話せたので、この「挨拶」をしたのだが、彼によると中朝戦争は「やろうと思えばいつでもやれる状態だが、日米両国政府がなかなか(北朝鮮政府に対して)GOサインを出さない」状態だそうだ。

 

 

 

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なんとなれば、「米国(日本)で政権や政党が、ある勢力(おもに大企業、官僚機構)の圧力を受けて、ある政策をとろうとすると、それによって不利益を受ける勢力(こちらもおもに大企業、官僚機構)がブレーキをかけて妨害するため、『たして2で割ったような政策(または情勢)』がだらだらと維持されることが多いから」という。

 

 

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たとえば、中国がこのまま経済成長を続けて国力(とくに軍事力、軍事技術)を強大化させ、石油をはじめ世界中の資源への支配権を強めることは、米国の安全保障と航空宇宙産業、エネルギー産業の既得権益を脅かす恐れがあるので、そういう業界の勢力や米国防総省は「このへんで中国の成長を止めよう」と考え、米議会上下両院で多数を占める米民主党に圧力をかけて、そのためのシナリオを実現しようと動いている。

 

そのシナリオとは「北朝鮮が中国と交戦して中国から外資を追い出し、戦争によって荒廃した北朝鮮の国土は、米国(日本)の経済援助で復興する」というものだが、その実現のため、彼らはブッシュ米共和党政権を(議会の持つ立法権を最大限駆使して)「操り人形」にして対北朝鮮宥和外交(米朝接近)を演出し、さらに、それに反対する日本の安倍晋三政権を葬って「中朝戦争賛成派」の福田康夫政権に差し替えた(小誌2007年10月6日「拉致問題依存症〜安倍晋三前首相退陣の再検証」)。

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【もちろんこれは「中朝戦争」のシナリオであって「米中戦争」でも「日中戦争」でもないので、日米両国民の血は一滴も流れない(小誌2007年5月14日「罠に落ちた中国〜シリーズ『中朝開戦』(5)」)。というか、そういう「無駄な血」を流さないために、日米が北朝鮮に頼むという筋書きだ。筆者は、中朝戦争が起きれば北朝鮮が勝つと予測するが、その根拠は次回以降の記事で整理してお伝えする予定。】

 

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【日本では一般に「米国の大統領の権力は日本の首相のそれよりも強い」と思われているが、法学上、政治学上、くろうとの目で見ると逆になる。米国の大統領は、日本の首相と違って、議会への予算案や法案の提出権がなく、また、自由に閣僚を任免することもできない(閣僚の任命には議会上院の同意が要る)(合衆国憲法第2条第2節第2項)。議会の解散権を持たない点で著しく日本の首相に劣る米国大統領の権限のうち、憲法上明示されているのは、軍の統帥権(同第2条第2節第1項)と、議会への勧告権(教書の提出権)(同第3節)と、議会を通過した法案や決議案に対する拒否権(但し議会側、上下両院が2/3以上の多数で再可決すると無効)(同第1条第7節第2〜3項)の、たった3つだけである。

なぜかというと、「国民の代表」である議会によって指名(事前に信任)されている日本の首相と違って、自身が議会の信任を得ていない米国の大統領は「箸の上げ下ろしまで」(?)いちいち議会に承認してもらう必要があるからだ。したがって、米国の議会は当然、大統領の外交政策をコントロールできる(合衆国憲法第1条第8節は、宣戦布告、軍規の制定から通商、郵便、著作権保護、科学振興まで「議会の権限」としているので「箸の上げ下ろし…」はあながち誇張とは言えない)。

日本のマスコミによくある「ブッシュ大統領は減税を含む景気刺激策を決定しました」式の「大統領万能主義」に基づく報道は、法学上は完全な間違いである。正しくは「ブッシュ大統領は減税を含む景気刺激策の立法化を議会(野党民主党が多数)に要請することを決定した」。】

 

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ところが、中国の低賃金労働力を使って生産した製品を大量に輸入するなどして莫大な利益を上げている日米の企業は、そんなシナリオには到底賛成できない。たった1社で米国の対中輸入総額の1割以上を占めるとも言われるウォルマートストアチェーンや、中国工場で生産した格安パソコンを売るデルコンピュータ、米中国交成立前から中国に進出しているコカコーラなど(企業の規模としては航空宇宙産業やエネルギー産業には遠くおよばないものの)枚挙にいとまがないほど無数にある(リテールWeb 2007年5月29日「ウォルマートがくしゃみをすると…」)。こういう企業がこぞって、米民主党に対して「中国の経済成長を止めるな」というロビー活動をすると、米民主党としても今年2008年は大統領選と上下両院選を控えているだけに簡単には無視できない(しかし、世界のどこの歴史を見ても「永遠に続く経済成長はない」のもまた確かである)。

 

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【中国から米国に亡命した経済学者の何清漣(He Qinglian)米プリンストン大客員研究員は、中国随一の名門大学、清華大学の経済分野のアドバイザーを務める米財界人は「中国はかわいいパンダのように世界に脅威を与えない存在」と言い募る「パンダ派エコノミスト」(中国の手先)と断定している。そのアドバイザーを送り出している米国の企業は、ゴールドマンサックス(GS)、ボーイング、コカコーラ、デルなどで、とくにGS出身のヘンリー・ポールソン現米財務長官はその代表的存在だと非難する(『SAPIO』2007年6月13日号 p.p 18-19 「今ごろ『中国経済は持続不可能』と言い出した『パンダ派』エコノミストの手のひら返し」)。

但し、筆者はボーイングを「パンダ派」に分類することには疑問を感じる。たしかにボーイングは経済成長著しい中国の航空需要の伸びに対応して旅客機を大量に売れば儲かるが、売ったあとの中国に経済成長をしてもらう必要はなく、まとまった旅客機の代金さえ受け取ってしまえば、あとは中国が戦禍に巻き込まれて経済成長を止めようが崩壊しようが関係ないはずだからだ。

むしろボーイングにとって問題なのは、2003年に有人宇宙飛行まで実現した中国の航空宇宙技術がこれ以上発達して、衛星打ち上げビジネスなどで米国の権益を脅かすことや、米国の軍事的安全保障に脅威を与えることのほうが問題なのではないか。筆者は、ボーイングはいずれ、他の航空宇宙産業の企業ととともに、中朝戦争賛成派にまわる可能性が高いと考える。】

 

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この結果、日米ともに「いつでも北朝鮮の中国侵攻にGOサインを出せる態勢にはあるものの、なかなかGOサインを出さない状態」が当面続くらしいのだ。

 

 

 

 

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●日米への「催促」●

しかし、そんなにじらされたら、北朝鮮はたまらないし、中国の成長を止めたい勢力(中朝鮮戦争賛成派)も困る。

 

そこで彼らは「いかに中国製品が安くても、米国(日本)の消費者がそれを買わなければ、敵(中朝戦争反対派)は中国での事業をやめるだろう」と考えたようで、2007年になると、まず米国のマスコミに働きかけて、「中国製品の安全性」の問題を針小棒大に報道させ、消費者の不安を煽った。

 

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たとえば、中国で製造された工業製品に欠格がみつかって事故や販売業者による自主回収の事態に至ったとしても、その責任が中国企業にあるとは限らないのに、つまり、たとえば、中国企業にOEM(相手先ブランド)生産を依頼した米国企業の指示や設計に問題があったかもしれないのに、2007年以降、米国マスコミの非難は異様なほど中国に集中した(CRI Web日本語版2007年9月23日「英国メディア、米国玩具企業が中国にお詫びしたことに注目」、同9月10日「玩具回収の責任は完全に中国にあるわけではない」)。現に中国産ペットフードを食べた犬や猫が死亡した事件では、米検察当局(ミズーリ州カンザスシティ連邦大陪審)は中国の製造・輸出業者だけでなく、米国の輸入販売業者をも起訴している(CNN Web日本語版2008年2月7日「ペットフード汚染問題、中国2社と米1社を起訴」)。

 

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こうした「偏向報道」の結果、米国では、中国産の原材料や部品を一切使わないことを意味する「チャイナ・フリー」と表示された商品が出現する事態になり、消費者の中国離れが始まった(産経新聞Web版2007年10月1日「食品、玩具…米で広がる『チャイナ・フリー』」)。

 

 

 

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ところが、「low price everyday」(毎日安売り)を掲げるウォルマートのような安売り企業は、中国以外の未知の商品輸入先を開拓するより、このまま中国を安価な商品の供給地として使い続けたほうがラクなので、また、ほかの輸入先を開拓するのは膨大なコストがかかるので、そう簡単には中国を諦めない。これは、デルや、その他の日米の中国製品販売業者や、それらに融資している金融機関にしても同様である。彼ら「中朝戦争反対派」のなかには、中朝戦争でどっちが勝つかには関係なく、とにかく戦争で中国の経済活動が停滞すると、たちまち経営が傾いてしまうような「自転車操業」状態の企業も少なくないので、彼らはそう簡単には譲れない。

 

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とくに日本には(潜在的な)「反対派」が多いはずだ。なぜなら、輸出入総額で見ると、2004年には日米貿易よりも日中貿易(香港を含む)のほうが金額が大きくなっており、「中国のお陰でようやく不況を脱してひといきついた」と思っている日本企業が少なくないからだ(外務省Web 2005年「参考1. 2004年の日中貿易総額」によると、対香港を含む日中貿易総額は22兆2500億円、日米貿易総額は20兆4813億円、香港を含めない日中貿易総額は18兆1933億円)。

 

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ユニクロ、味の素、すかいらーく、マルハ、生協、日本ハムといった企業の経営者たちはおそらく「無邪気な親中国派」(パンダ派)であって、中朝国境の現実を知らないだけでなく、(経学とは別の)経学のイロハも知らないので、中国の経済成長が止まって(1998年のインドネシアのように)独裁国家特有の体制危機が起きた場合のことなど考えてもいないだろうから、はなはだ始末が悪い。

 

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そこで、「中朝戦争賛成派」は、そういう「反対派」の経営者を説得(脅迫)して、力ずくで中国に依存しないビジネスモデルを構築させなければならない。それにはもちろん、米国で成功したように、「中国産品は危険だ」と思わせるのが最善だ。

 

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●食品テロ●

2008年1月30日、中国河北省石家荘市にある「河北省食品輸出入天洋食品工場」(天洋食品)で2007年に製造され、同年中に日本たばこ産業(JT)の子会社ジェイティーフーズ(JTF)によって日本に輸入されて販売された冷凍食品の餃子を食べた日本国内の消費者が吐き気や下痢などの症状を訴えていた事件が報道された(2007年12月に発生していたこの「食中毒事件」で、いちばん症状が重かったのは、千葉県市川市在住の5歳の女児で、彼女は意識不明の重態に陥っていたが、その後症状は改善した。読売新聞Web版2008年1月30日「中国製冷凍ギョーザで食中毒、千葉と兵庫で3家族10人」、同2月7日「被害に遭った女児に笑顔戻る…ギョーザ事件から1週間」)。いずれも原因は餃子(のパッケージの内側または餃子本体)に混入されていたメタミドホスという有機リン系殺虫剤(農薬)で、そのパッケージの製造年月日は2007年10月20日だった(同じ殺虫剤は同年10月1日製造のものでもみつかっている。読売新聞Web版2008年2月9日「『中国で混入』の見方固まる、6月・10月同一犯説も」)。

 

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その後、2月5日、別の有機リン系殺虫剤ジクロルボスがパッケージの外側や内側に混入された天洋食品製造の冷凍餃子が福島県などでみつかった(徳島県内でみつかった微量のジクロルボスが外袋に付着した餃子は、その後事件と無関係と判明した)。日生協が福島県喜多方市のコープあいづプラザ店に納入したあとクレーム製品として保管していた「CO・OP手作り餃子」を独自に検査した結果、日本の残留農薬基準を大幅に上回る110ppmものジクロルボスが検出された。その製造年月日は2007年6月3日だった(読売新聞Web版2008年2月6日「今度は殺虫剤『ジクロルボス』、日生連のギョーザから検出」、同2008年2月9日「『中国で混入』の見方固まる、6月・10月同一犯説も」)。

 

事実関係を発生順に整理してみる:

 

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2006年頃: 中国が中朝国境の山岳地帯の警備兵力を大増強

2006年秋: 中朝国境地帯の長白山(白頭山)の山麓の中国側に、軍民兼用空港(長白山空港)の建設開始

2006年11月: 米中間選挙で「中朝戦争賛成派」の米民主党が、議会上下両院で過半数獲得

2007年1月: 米中間選挙で当選した新議員の任期開始

2007年3月: 北米で中国産ペットフード汚染事件

2007年4月頃: 米国で中国産品批判報道「炎上」

2007年6月: 天洋食品が未開封のパッケージの内側(餃子本体)にジクロルボスの混入された冷凍餃子を製造

2007年6〜9月: ジクロルボス入り餃子についての報道、輸出先の日本で一切なし

2007年10月: 天洋食品が未開封のパッケージの内側(餃子本体)にメタミドホスの混入された冷凍餃子を製造

 

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2007年11月: 未完成の長白山空港で、中国軍が電子偵察機の試験飛行開始

2007年12月: 中朝国境の河川(鴨緑江、豆満江)が凍結し、北朝鮮陸軍の越境が容易に

2007年12月: 千葉県などで3家族10人がメタミドホス入り餃子を食べて負傷

2008年1月: 上記3家族10人の負傷事件発覚

2008年2月: 日本各地でジクロルボス、メタミドホス入りの天洋食品製餃子発見

2008年7月: 長白山空港開港(予定)

2008年8月: 北京五輪開幕(予定)

2008年11月: 米大統領選、上下両院選(予定)

2009年1月: 次期米大統領、上下両院議員の新任期開始(予定)

 

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 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
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