ヒラリー大統領

 

〜2008年米大統領選

 

 

(Feb. 01, 2008)

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■ヒラリー大統領〜2008年米大統領選■

 

永田町・霞が関の中枢を担う人材のなかには、米国政界のインサイダー情報に基づいて、2005年12月の時点で早々と、2008年米大統領選の勝者は「談合によって」ヒラリー・クリントン上院議員に決まる、と断定した者がいた。

 

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■ヒラリー大統領〜2008年米大統領選■

 

【お知らせ:佐々木敏の小説『ラスコーリニコフの日・文庫版』が2007年6月1日に紀伊國屋書店新宿本店で発売され、5月28日〜6月3日の週間ベストセラー(文庫本)の総合20位前後になりしました。】

 

【前回「NHK『民営化シフト』か〜分割もスクランブル化も視野?」は → こちら

 

2005年11月頃、筆者は永田町・霞が関の中枢を担うインサイダー(Dとする)と話す機会を得た。

 

この人物、Dは、この時点ですでに、来たるべき2008年11月の米大統領選は民主党のヒラリー・クリントン・ニューヨーク州選出上院議員(ビル・クリントン前大統領夫人)が勝つと予測していた。

その理由は、2000年の米大統領選にあるという。

 

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●8年前の「借り」●

米大統領選の本選は4で割り切れる年の11月に、州ごとにほぼ人口に比例するように配分された大統領選挙人を、共和党、民主党それぞれの党全国大会で選出された候補者(各党1人ずつ)が奪い合う形で行われる。本選では州ごとに一般有権者の投票を数え、ほとんどの州では「1人でも多くの有権者の票を得た候補者」がその州に割り当てられた大統領選挙人を全員獲得する「勝者総取り」方式を実施している。

 

 

 

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このため理論上は、全米50州のうち、人口の多い25州で51%ずつの票を得てそれらの州の選挙人を「総取り」すれば、残りの25州での得票がすべてゼロでも当選できることになる。つまり、米大統領選は単純に米国民の民意を問う選挙ではなく、「民意を州単位で集計する選挙」なのだ。

 

 

 

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2000年の米大統領選では、共和党はジョージ・W・ブッシュ元テキサス州知事(現大統領)を、民主党はアル・ゴア前副大統領を、それぞれ候補者に選び、両候補は各州で互角の戦いを演じたが、大票田のフロリダ州ではとくに接戦になり、他の49州(と首都ワシントンのあるコロンビア特別区)のすべての開票がかなり進んで大勢が判明した、米東部時間2000年11月7日の投開票日当日の深夜12時(翌日午前0時)を過ぎても、まだ勝敗の行方が見えなかった。

 

49州(とコロンビア特別区)の大勢が決した時点でブッシュの獲得した選挙人は246人、ゴアの獲得した選挙人は267人と見られ、フロリダ州の選挙人は当時は25人だったので、「フロリダを取ったほうが勝ち」という状況だった。

 

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【最終的にゴア側の大統領選挙人の1人が有権者の意志に反して白票を投じたため、ゴアの獲得選挙人は公式には266人と記録されている。】

 

 

 

 

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Dによれば「ほんとうはゴアが(フロリダで勝ち、その結果として本選全体で)勝っていた」のだそうだ。

 

ゴアは自身の勝利を信じて、フロリダの票の手集計による数え直しを求める訴訟まで起こし、それが連邦最高裁の判決で退けられてもなお、多くの民主党指導者がゴアの勝利を主張していた(人権活動家の牧師ジェシー・ジャクソンは、裁判所に手集計が認められなくても情報公開法を利用して独自に集計をし「大統領就任式の(2001年)1月20日以前にゴア氏が(フロリダ)州内で最も得票したことを突き止める」とまで言っていた。読売新聞2000年12月14日付朝刊6面「米大統領選 ゴア氏、決断の一夜 苦渋の再集計要求断念 敗北宣言へ」)。

 

が、なぜかゴア本人が最高裁判決のあとあっさりブッシュに勝ちを譲り、その彼の譲歩に全米のマスコミや有力者の大半が同調して、2008年現在まで続くご存知ブッシュ共和党政権が誕生した(駐日米国大使館Web 2004年「米国の選挙手続き」)。

 

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「あれだけ発達したマスコミがあり、教育水準の高い国民がいて、(政治に関心のある)金持ちが大勢いるのに、あんなウソがまかり通って、本来大統領になれないはずのやつが大統領になってしまうのは、ウラに何か(取り引きが)あったと思わざるをえない。そして、何かあったのなら、民主党側は今後(2006年11月の中間選挙か2008年1月の大統領選挙で)、『借りを返せ』と要求するはずだ」とDは言い、2008年の米大統領選を占うのに必要なインサイダー情報の収集にはいった。

 

 

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Dは「2008年の大統領選では米民主党が勝って米国の外交方針が大きく『内向き』に転換する」と予測し、その大統領選の共和、民主両党の候補者がだれになるかを知りたがった。この時点で、Dは「共和党からは(黒人女性の)コンドリーザ・ライス(米国務長官)、民主党からは(前大統領夫人の)ヒラリー・クリントンが、それぞれ立候補する可能性が高いと見ていた。

 

数週間後、2005年12月、筆者がふたたびDに会うと、Dは「インサイダー情報なんて(日本の政策立案には必要不可欠なものだけど)、つかんでしまえば簡単なもんだな」と言い、「ヒラリーが大統領選に立候補するなら、ライスは出ないんだってさ。だから、2008年の勝者はヒラリーだ」と自身でつかんだ情報に基づいてあっさり断言した。

 

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これはもはやDの「予測」ではない。共和、民主両党を仲介できる立場にある米政界有力者たちの「予定」である。つまり、永田町・霞が関の中枢にあって日本の国益を守るために具体的な政策立案をしなければならない立場の者たちは、当たるか当たらないかわからないマスコミや政治学者の予測に頼って政策を準備することはできない、ということだ。Dとその「同僚」たちは、2000年の米大統領選の結果から、米政界では2大政党の間に「談合」があるのではないかと疑い、インサイダー情報を収集してそれを確かめ、それに基づいて「2008年の米大統領選の勝者は民主党員のヒラリーだから、それを前提に対米政策を準備すべし」という結論を得たのである。

 

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●メイフラワーファミリー●

そんなバカな! そんなのは単なる「陰謀論」だ!……と政治学者や評論家は言うだろう。しかし、Dは「現実の政治・行政に責任を持つわれわれは、机上の空論を言っても商売が成り立つ評論家(や政治学者)とは立場が違う」と言い切る。じっさい、官僚や与党の政治家は自分たちしか知り得ない重要情報をしばしば表に出さないため、彼らのうち、公式発表情報をもとに意見を組み立てる学者や評論家に本気で忠告を求めるのは、せいぜい入省年次や当選回数の浅い「下っ端」だけだ。

 

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たとえば、トップクラスの外務官僚は、対北朝鮮外交に関して学者や評論家の意見を参考にする気はまったくない。

 

なぜなら、北朝鮮当局が「すでに死亡した」と発表した日本人拉致被害者のほんとうの生死を、外務官僚のトップは正確に知っているが、学者や評論家は知らないので、学者や評論家の多くは「全員生きているという前提で外交交渉をすべきだ」などと、とんちんかんな「忠告」をするからだ(小誌2007年3月18日「すでに死亡〜日本人拉致被害者情報の隠蔽」、同7月3日「ニセ遺骨鑑定はニセ〜シリーズ『日本人拉致被害者情報の隠蔽』」)。

 

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【もちろん彼らは(学者と違って)2006年秋以降の中朝国境がどうなっているかも知っており(小誌2007年3月1日「脱北者のウソ〜シリーズ『中朝開戦』(2)」、『週刊文春』2006年11月9日号 p.p 40-41「開戦前夜 『中朝国境』もの凄い修羅場」)、したがって当然、北朝鮮が開発しているとされる核兵器(?)やミサイルが日本にとってなんの脅威でもないことも知っている(小誌2006年10月16日「北朝鮮『偽装核実験』の深層〜最後は米朝同盟!?」)。】

 

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ところで、ブッシュとゴア、ライスとヒラリー、つまり共和党と民主党を仲介した米政界の有力者とは何者だろうか。Dによると、それは「米国のロイヤルファミリー」だそうだ。Dはそれを、欧州から最初の移民船「メイフラワー号」に乗って(独立前の)米国に移住したとされる白人プロテスタント移民の子孫という意味で「メイフラワーファミリー」と呼ぶ。

 

 

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【1620年にメイフラワー号に乗って英国から米国に移民した者たちは米国内では「ピルグリム・ファーザーズ」と呼ばれ、その子孫や親戚の総数はいまや全米で1000万人に増えているとも言われるが、もちろんその全員が「ロイヤルファミリー」としての権威や権力を保持しているわけではない。】

 

 

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●メガチューズデー●

2008年1月の時点で米民主党の大統領候補はヒラリーか、黒人男性のバラク(バラック)・オバマ・イリノイ州選出上院議員かの2人に絞られており、民主党の候補に選ばれた者は、本選では共和党候補と事実上の「一騎打ち」をするのだから、ほとんど何も考えないしろうとブロガー(ブログの執筆者)が現時点で「2008年米大統領選の勝者はヒラリー」という予測をブログ(blog)に書いても、確率1/4以上で当たることになる(したがって、そんなことを予測しても意味はない)。

 

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しかし、ヒラリーが当選するかどうかではなく、「ヒラリーが当選する場合に予備選や本選でどんなことが起きるか」を予測して当てることができれば、それはまぐれ当たりとは言えないので、その予測方法は今後国際政治を分析するうえで重要なツールとなるだろう。

 

さて、そのような意味のある予測をするには、まず、米大統領選の、とくに予備選(党員集会)から全国大会に至る党ごとの、候補者選びの過程がどのようなものであったか(どのような不正工作が可能か)を正確に確認しておく必要がある。

 

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2008年米大統領選は、同年1月3日のアイオワ州での党員集会と、その直後、1月8日のニューハンプシャー州予備選を皮切りに、全米各州で順次、共和、民主両党がそれぞれ別々に予備選または党員集会を行って、党内の候補者を絞り込むところから始まる。この党内の予備選(党員集会)も各州ごとに、州の共和党支部、民主党支部からそれぞれ、大統領候補を決める共和党全国大会(9月)、民主党全国大会(8月)に州を代表して派遣される代議員を選ぶ戦いである。

 

各州ごとの代議員数は州ごとの人口にほぼ比例しており、党ごとに州内で最高得票を得た候補者が州の代議員を全員獲得する「勝者総取り」方式を採っている州支部が多いので、これは「本選」とかなりよく似たしくみの選挙である。但し、本選が全米50州で一斉に投票するのに対し、予備選(党員集会)は、州によって投票日がばらばらである点が異なる。

 

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州によって投票日がばらばらであるため、大統領選の年の1月、2月など早い段階で予備選(党員集会)を行う州の動向は全米の注目を集めるが、すでに大勢の代議員の投票先が決まって大勢が決したあとの3月下旬以降の予備選(党員集会)は注目されず、あまり意味がない、ということになる。

 

1861〜1865年の南北戦争の敗者である、旧南部連合政府加盟の南部諸州は、一度米国から出て行った経験があるという意味で「非主流派意識」を共有しており、現在の米政財界を牛耳る東部、北部の有力者(エスタブリッシュメント)層に対して、結束して対抗したいという意識が強いため、ロナルド・レーガン共和党政権が2期8年にわたって国防予算を膨張させ、米軍基地や軍需産業のある州の経済を他の州に比べて不均等に潤したあと、1988年の大統領選で、おもに南部民主党指導層が「南部諸州の予備選(党員集会)の日程を同じ日に集中させることによって、南部の発言力を高めよう」と考えた。その結果これ以降毎年、3月上旬の火曜日に、多数の南部の州が一斉に予備選(党員集会)を行うようになり、これはスーパーチューズデーと呼ばれ、予備選の最大の山場となっていた。

 

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ところが、なぜか今年2008年は、南部諸州をはじめさらに多くの州の共和、民主両党の予備選(党員集会)がさらに前倒しされ、北部のニューヨーク州、イリノイ州、西部のカリフォルニア州など人口(代議員)の多い「大票田」もその動きに加わって、2月5日(火曜日)に早々と山場(というより事実上の最終決戦)を迎えることになった。この日は「スーパー」の上を行くという意味で「メガチューズデー」と呼ばれる。

 

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まず、この「メガチュ−ズデー」ができたことが、「メイフラワーファミリーの陰謀」である疑いが濃厚だ。なぜなら、あまりにも多くの州で同時に予備選(党員集会)が行われると、多数の州でCM料金などの選挙費用を同時に支出しなければならないので、その時点で資金力が十分にある候補が有利に、そうでない候補が不利になるからだ(おそらくこの日までに、民主党大統領候補の「三番手」であるジョン・エドワーズ上院議員は振るい落とされるだろうと思っていたら、案の定「撤退宣言」をした。2008年1月30日放送のフジテレビ『ニュースJAPAN』)。

 

全米各地でさみだれ式にぽつりぽつりと予備選が行われれば、たった1つの州で勝つことで全米の注目を集めて草の根の支持者から献金を集めるという方法が使えるが、メガチュ−ズデーのある今年2008年には、そのようなシンデレラストーリーが成立する機会は例年より大幅に少なくなる。

 

そして、民主党の候補者のなかでもっとも資金力の豊富な候補者が(2007年7月以降は)ヒラリーなのだ。

 

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 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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