ヒラリー大統領

その2

 

〜2008年米大統領選

 

 

(Feb. 01, 2008)

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■ヒラリー大統領〜2008年米大統領選■

 

永田町・霞が関の中枢を担う人材のなかには、米国政界のインサイダー情報に基づいて、2005年12月の時点で早々と、2008年米大統領選の勝者は「談合によって」ヒラリー・クリントン上院議員に決まる、と断定した者がいた。

 

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【2007年1〜9月の選挙資金収入総額では、オバマはヒラリーと並んで約8000万ドル(約94億円)を集めて資金力トップであり、同じ期間に私財を投入して共和党の資金力トップに立ったミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事の6200万ドル(約73億円)を大きく上回っている。が、7〜9月期の収入に限ると、民主党候補ではヒラリーが2700万ドル(約32億円)でトップであり、2位のオバマの2000万ドル(約23億円)とは大きく差が付いている。同じ7〜9月期の共和党では、トップのルドルフ(ルディ)・ジュリアーニでも1100万ドル(約13億円)に留まっており、投票日が近づくほどヒラリーの資金面での優勢が明らかになりつつある(読売新聞2007年10月6日付朝刊6面「米大統領選候補者の資金力 民主優勢、共和劣勢が鮮明に」)。】

 

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【『天使の軍隊』など拙著の多くは、小誌読者の皆さんに、発売直後に紀伊國屋書店新宿本店のみでの購入をお願いする「桶狭間の奇襲戦」)キャンペーンによって紀伊國屋本店の「週間ベストセラー」のランキング入りを狙い、大勢の皆様のご協力を得て奏効して来た(その節は有り難うございました)。

これをお願いする理由は、本店のランキングが全国の支店および紀伊國屋以外の中小書店に対して影響力があるため、本店でランク入りすれば、全国で注目を集めることができるからだ。

1984年の米大統領選の予備選では、民主党のゲーリー・ハート上院議員が、乏しい選挙資金を最初に候補者選びの行われるアイオワ州とニューハンプシャー州に集中してその2州での得票を劇的に増やし、それによって全米の注目を浴びて個人献金を集め、一時的ながら有力候補に浮上し、「ハート旋風」を巻き起こしたことがある。

つまり、米大統領選におけるアイオワとニューハンプシャーは、紀伊國屋書店チェーンにおける新宿本店なのだ。】

 

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メイフラワーファミリーの1人1人が「草の根市民」のフリをして、あるいは親戚や知人を動員して、ヒラリー候補相手に「個人」としてあらかじめ多額の献金をしておき、それと平行して各州の政党支部に働きかけて、いつもより多めに予備選(党員集会)を前倒しさせれば、ヒラリーが民主党候補に指名される確率を高めることは、現実的に可能だ。したがって、2008年におけるメガチューズデーの出現は単なる偶然とは言い切れない。

 

南部諸州は黒人人口が多いので、従来どおりの南部中心の「スーパーチューデー」なら、黒人のオバマが有利に決まっている。ところが今年2008年、これに北部のニュージャージー州や、ヒラリーが(オバマに対しては)勝つことが確実な彼女の地元、ニューヨーク州の民主党予備選が加わったことで、「オバマ、スーパー(メガ)チューズデーを制す」の見出しが新聞に載る確率は一気に低下した。

また、TVの全米3大ネットワークの本社がいずれもニューヨークにあるため、この日ヒラリーが南部でいくら負けても、ニューヨーク州で勝ちさえすれば、それは3大ネットにとって大ニュースであるため、TV報道の見出しが「ヒラリー、南部を落とす」になる確率も低くなる。

 

したがって、メガチューズデーの出現は、ヒラリーを利することはあっても、オバマを利することはありえず、だれかが仕組んだものだとすれば、それは間違いなく「ヒラリーのため」なのだ。

 

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●対オバマ敗北保険●

しかし、米国民は映画『ロッキー』のようなシンデレラストーリーを「(真の)アメリカンドリーム」と呼んでこよなく愛し、「努力する者はだれでも公平に勝つチャンスが与えられるべきだ」と信じている。各州の政党支部が全米で一斉に予備選(党員集会)をしないのは、資金力のある候補者だけが有利な制度を嫌い、大統領もシンデレラストーリーで選ばれるべきだと思っているから、にほかなるまい。

 

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だからもちろん、ヒラリーのライバルであるオバマが、「黒人初の合衆国大統領誕生」というシンデレラストーリーの実現を期待する多くの国民、党員の支持を得て、ヒラリーより多くの代議員を獲得することは十分にありうる(というか、現実に、黒人人口の少ないアイオワの党員集会でオバマが勝った直後は、全米で彼が「奇跡」を起こすことへの期待が沸騰していた。産経新聞Web版2008年1月10日「人間味演出した涙 クリントン大逆転の背景」)。

 

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その2州とは、ミシガン州とフロリダ州だ(またしてもフロリダ!?)。1月15日と29日に前倒しされたミシガン、フロリダ両州の予備選については、オバマもヒラリーもはまったく選挙運動をせずにパスしたが、両州ともにヒラリーが圧勝し、州選出代議員を獲得した……と両州内ではみなされている(産経新聞Web版2008年1月13日「米大統領選 焦点のメガ・チューズデー 選挙制度の違いが影響も」、同1月30日「ヒラリー氏、代議員“不在”のフロリダで勝利宣言」)。

 

【フロリダ州の民主党支部とヒラリーは、フロリダ州予備選の投票総数がそれまでの最高記録(1988年の127万票)を大幅に上回る史上空前の172万に達したという「民意」を背景に、党全国委員会が無効にした代議員資格の復活を要求する模様だ(毎日新聞Web版2008年1月30日「米大統領選:投票者数過去最高 候補者不在のフロリダで」)。筆者は、このフロリダ(ミシガン)の要求は通ると考える。理由は、党全国委員会がフロリダ州支部の要求を無視すると、フロリダ州の民主党支持者は11月の大統領選の本選で棄権するか、共和党支持にまわって「造反」する恐れがあるからだ。フロリダの本選における大統領選挙人は27人(ミシガンは17人)と多く、これを失えば、民主党は本選で勝つのが難しくなるので、党全国委員会はそれを考慮せざるをえまい。】

 

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となると、たとえこの2州を除く他の48州でオバマの獲得代議員数がヒラリーのそれを上回った場合でも、この2州の代議員の(党全国大会における)投票権を党全国委員会で再吟味して有効とすることでヒラリーに逆転勝ちをさせることができる、ということになる。

 

【州選出代議員の票(1人1票)で大差がつかなかった場合は、予備選結果に拘束されない特別代議員(スーパー代議員)の投票(こちらも1人1票)を加算して雌雄を決することになる。この特別代議員は上下両院議員や党幹部なので、彼らの票の獲得競争になると、夫が元大統領で党中央やワシントン政界に強い人脈を持つヒラリーが断然有利になる(これを日本語では「永田町の論理」という)。

(>_<;) 】

 

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ヒラリーが劣勢の場合、全米に何千万人もいる民主党員や民主党の支持者を動かして「負けるはずのヒラリー」を勝たせるのは容易ではない(そんな推理は取るに足らない陰謀論だ)。しかし、メガチューズデーへの予備選の集中や、ミシガン、フロリダ両州の不当な予備選前倒し、および両州の前倒しの「再有効化」は、民主党の各州支部や全国委員会の、少数の幹部に働きかけるだけで比較的容易に実現できる。

 

したがって「米民主党では、一部の、少数の幹部が予備選(党員集会)の日程を操作することによって、オバマでなくヒラリーが勝つように工作した」と推測することは、けっして「荒唐無稽な陰謀論」ではない。

 

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●対共和党敗北保険●

ところがヒラリーには、党全国大会でオバマに勝って民主党大統領候補に選ばれても、そのあと11月の本選で共和党の候補に勝てる保証はない。というか、ジンクスで言えば負ける可能性が高い。

 

 

 

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ヒラリーは(オバマも)上院議員だが、上院議員(経験者)は1960年のジョン・F・ケネディ以来、大統領選に勝ったことがない。理由は上院での議員としての投票記録だ。

 

下院議員は国民の代表として各州の人口に比例して定数配分がされているので大勢いるが、上院議員は州の代表として州の人口に関係なく各州2人ずつ選出されるので人数が少なく、その法案や決議案への賛否は「州の意志」として記録され、公表される。このため上院議員は、人工妊娠中絶や銃規制、同性婚など、米国民の意見が大きく割れている問題でどちらに与したかが一目瞭然であり、(それらの問題への賛否を明確に表明せずに済ますことのできる知事や市長と異なり)それぞれの賛否をこころよく思わない側の多くの国民の反感を買う恐れがある。だからこそこの47年間、大統領選を制した上院議員はいないのだ。

 

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となると、ヒラリーが共和党候補に勝つには、また何か仕掛けが要ることになる。

 

共和党の有力候補のうち、ジョン・マケインはアリゾナ州選出上院議員だが、「9.11」米中枢同時テロの際の危機管理が評価されて国民的人気のあるジュリアーニは前ニューヨーク市長だ。ヒラリーの「地元」は上院議員としての選挙区であるニューヨーク州だが、地元で負けた候補が大統領になった例はないので、ヒラリーにとって、もっとも戦いたくない相手は上院議員でないジュリアーニだっただろう。

 

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ところが、ここにも「保険」がかかっていた。

 

なんと現ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグが共和、民主両党と無関係に無所属候補として大統領選の本選にいきなり出馬するという動きがあるのだ(すでに2007年6月、ブルームバーグは共和党を離党している(時事通信2007年12月31日付「ブルームバーグNY市長、大統領選出馬模索か 米紙報道」)。彼が出馬すれば、ジュリアーニから共和党支持者の票を奪うので、間違いなくヒラリーが有利になる(はずだった)(この場合、ヒラリーはニューヨークでの一般投票の得票率が50%未満でもニューヨーク州の大統領選挙人全員を獲得できる)。

 

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【また、ジュリアーニの娘が「父親を裏切って」オバマの応援をする、という「家族ぐるみの八百長」を疑わせるような動きもあった(共同通信2007年8月7日付「父親に造反、オバマ氏支持 米共和党有力候補の娘」)。

もしかすると「ジュリアーニ一家」はブルームバーグの共和党離党を聞いた瞬間にメイフラワーファミリーの力を感じてやる気をなくし、撤退のタイミングをはかり始めたのではあるまいか。ジュリアーニが党内屈指の選挙資金を持ちながら、序盤戦のアイオワ州、ニューハンプシャー州にあまり資金を投入せず、故意に「桶狭間」を避けて「忘れられた候補者」に転落したのは、いかにも不自然である(朝日新聞Web版2008年1月26日「ジュリアーニ氏、苦境に 米大統領選 フロリダ集中裏目」、産経新聞Web版2008年1月29日「共和党・ジュリアーニ氏が選挙戦撤退も フロリダ州予備選」)。】

 

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マケイン、ジュリアーニ以外の共和党の有力候補としては、2007年11月下旬に突如浮上したマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事がいる。彼は2007年10月までは完全な泡沫候補だったが、同年11月のアイオワ州における世論調査でなぜか(「桶狭間」をやったから?)支持率が急上昇して共和党候補のなかで1位になり、一躍有力候補の仲間入りをはたした(産経新聞Web版2007年12月1日「ハッカビー株急伸 牧師、中絶反対、ロックバンド…」)。

 

しかし、彼の地元は、いまだに米国民のあいだに根強い人気のあるヒラリーの夫、ビル・クリントン前大統領が州知事をしていたアーカンソー州なので、ハッカビーは、たとえ共和党候補に選ばれたとしても、地元で前大統領の人気に押されて手痛い敗北を喫するに違いない。

 

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【そもそも共和党が、勝てそうもない選挙区で州知事をしていた人物を、にわかに「シンデレラボーイ」として浮上させたこと自体「八百長」の疑いが濃厚だ。また、ジュリアーニは1月30日にマケインへの支持を表明して結局撤退したが、それでもなおブルームバーグが無所属で大統領選に立候補するなら、それも(マケインから保守票を奪って)本選でヒラリーを利する効果を持つので、やはり八百長と考えられる。

このような「八百長候補」の例としては、2000年の大統領選に無所属で立候補して、リベラル派のゴアの票を奪って、保守派のブッシュを有利にした環境保護派の有名弁護士、ラルフ・ネーダーがいる。彼は、同じく環境保護を掲げるゴアの支持者から「環境汚染派」のブッシュを利することになるので出馬しないでくれと反対されたにもかかわらず、平然と無視した。】

 

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以上から判断すると、2008年11月(4日)の米大統領選では、2005年12月にDが得たインサイダー情報のとおり、ヒラリーが勝つだろう、という結論にならざるをえない。

 

もっとも、この場合のヒラリーの勝利は、2002年ワールドカップ(W杯)サッカー本大会「韓国対ポルトガル戦」における韓国の勝利のようなもの、つまり「当局の予定に現実を合わせるための不正工作」であって(小誌2002年6月13日の試合前日の予測記事「●いまこそ『奥の手』を〜審判に『期待』」)、とても自慢できるものではないのだが。

(>_<;)

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まぐれ当たりには軽蔑を●

すでに述べたように、「ヒラリーが勝つ」という予測は何も考えずに言ってもどうせ25%以上の確率で当たるので、それ自体は当たったところでなんの価値もない。重要なのは、ミシガンやフロリダの代議員票の扱いや、ブルームバーグやハッカビーの動きがヒラリーに有利に働くことまで見抜くことであり、それらの「トリック」を読めなければ、現実にヒラリーが勝っても、予測が当たったうちには、はいるまい。

 

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【もっとも、オバマらの有力候補が、ヒラリーに「保険」がかかっていることを悟って、早々と敗北宣言をした場合は、見かけ上トリックは「発動」されずに「民主的に」勝者が決まることになる。】

 

 

 

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上記の「韓国対ポルトガル」戦の前日に「韓国が勝つ」と予言(期待)した者は(おもに韓国国内に)何千万人もいただろうが、それは予言的中でもなんでもない。重要なのは、筆者のように「審判がヘンな判定をして韓国が勝つ」と事前にトリックを見破って予測することなのだ(小誌前掲記事「●いまこそ『奥の手』を〜審判に『期待』」)。

 

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小誌が2006年9月の安倍晋三内閣発足前後、あるいはそれ以前の段階で「近々福田康夫内閣が誕生する」という予測(でなくて、Dなど一部の人々の「予定」)を紹介した時点でそれを信じる人はほとんどいなかったが(小誌2006年9月18日「ポスト安倍〜10か月後に『2年限定政権』へ」、同4月24日「『福田総裁』当確〜小沢民主党の政局化学反応」、2005年2月10日「●ポスト小泉」)、周知の如く、2007年9月、現実に「予定どおり」の福田内閣が発足している。

 

米国でも日本でも、民主主義などというものは、しょせんその程度のものなのだ。

 

【お知らせ:佐々木敏の小説『天使の軍隊』が2007年4月26日に紀伊國屋書店新宿本店で発売され、4月23〜29日の週間ベストセラー(単行本)の 総合10位(小説1位)にランクインしました。】

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 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
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