イラク戦争は成功

 

〜シリーズ

「究極の解決策」

(3)

 

(Dec. 04, 2008)

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■イラク戦争は成功〜シリーズ「究極の解決策」(3)■

 

ジョージ・W・ブッシュ現米大統領は、基軸通貨としての米ドルの価値を守り抜いた大統領として、遠い将来、米国民から高く評価される可能性がある。

 

 

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■イラク戦争は成功〜シリーズ「究極の解決策」(3)■

 

【お知らせ:佐々木敏の小説『中途採用捜査官』が2008年11月7日に紀伊國屋書店新宿本店で発売され、週間ベストセラー(文庫本)の総合20位前後になりしました。】

 

【前回「人権帝国主義〜シリーズ『究極の解決策』(2)」は → こちら

 

前々回、小誌は、2008年の米大統領選で、共和党は八百長をやってわざと負けたと指摘した(小誌2008年11月27日「究極の解決策〜勝手にドル防衛?」)。

 

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●米共和党の不可解●

ところで、共和党は……たとえ民主党に政権を取らせて「人権帝国主義」をやってもらうという意図があったにせよ……なんで敗北を甘受したのだろう。筆者なら、悔しくてとても我慢できない。

 

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「2000年の大統領選ではフロリダ州の開票が大接戦になり、大混乱になって、ほんとうは負けたはずの共和党のジョージ・W・ブッシュ現大統領が、民主党のアル・ゴア前副大統領に勝たせてもらったから、そのときの借りを返すため」と、筆者の知人の永田町・霞が関関係者は言っている(小誌2008年2月1日「ヒラリー大統領〜2008年米大統領選」)。

たしかに、ブッシュは2000年にはフロリダの疑問票で、2004年にはオハイオの疑問票で「当選させてもらった」、つまり「民主党に勝ちを譲ってもらった」のだ(小誌2004年11月15日「宗教票=人種票〜シリーズ『米大統領選』(2)」)。

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それなら、そもそも、なんで、2000年と2004年、民主党は共和党に二度も勝ちを譲ったのだろう。そして、勝ちを譲ってもらった共和党は、せっかくオバマ以外の民主党議員に賛成してもらってイラク戦争までさせてもらったのに、なんで戦後処理を誤ってイラクの治安を悪化させたのだろう。世界中の報道では「ドナルド・ラムズフェルド国防長官が制服組の助言を退けて、大規模な治安維持部隊を派兵しなかったから」つまり「ブッシュやラムズフェルドがバカだったから」失敗したとなっている(田中宇の国際ニュース解説2003年8月6日「イラク駐留米軍の泥沼」)。

彼らはほんとうにバカなのだろうか。

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たしかに、開戦の理由になった、イラクが核兵器などの大量破壊兵器(WMD)を開発または保有しているという「証拠」の取り扱いはおかしかった。ブッシュ政権下で米中央情報局(CIA)などの諜報機関は、イラクにWMDがあることをうかがわせるあやふやな情報を挙げて、開戦の口実作りに(不本意ながら、だったかもしれないが)協力したくせに、なぜか戦後は証拠の捏造には協力しなかった。

 

証拠を作るなど、簡単なことではないか。秋葉原から核兵器や化学兵器の製造に役立ちそうな電子機器を買って来て、捏造したアラビア語の設計図や指示書と一緒にバグダッドの大統領宮殿地下に隠し、それを米国政府のWMD兵器専門家に「発見」させれば済むことだ。もしイラクの旧政権幹部が真相を暴露しそうになったら、殺せばいい。現に2006年12月、米占領軍の影響下にあった「特別法廷」はサダム・フセイン元イラク大統領を、多くを語らせないうちに死刑にしているのだから、必要に応じて口封じはいつでもできただろう。

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ところが、ブッシュ政権では、だれもこの「必要な措置」を採らなかった。お陰で、2004年10月、米国政府が派遣した調査団が「イラクにはWMDはなかった」という最終報告書を発表し、ブッシュもそれを認める羽目に陥った(読売新聞Web版2004年10月7日「イラク大量破壊兵器、開発計画なし…米最終報告」)。

 

そのうえブッシュ政権は、終戦直後のイラクに大量の兵員を投入して治安維持をすべきだったのに、それを怠り、戦後のイラクを武装勢力の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する新たな「戦場」にしてしまった。これでは、米国民がブッシュ政権に怒るのは当然だし、2008年大統領選において、開戦前にイラク戦争に反対したバラク・オバマ候補(次期大統領)を支持するのも、イラクからの撤兵を主張するヒラリー・クリントン候補(とオバマ)を支持するのも当然ではないか。

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いったい、なぜ、なんのためにブッシュはイラク戦争をしたのか。

開戦前「ブッシュはイラクの石油(利権)のために戦争をする気だ」などと批判していた反米的、左翼的な日本のジャーナリストの多くは、戦後のイラクの治安が悪化したのを見て、「だから、この戦争はやっちゃいけないって言ったじゃないか」と得意げに言うようになった。

が、これは、算数の問題で「式は間違っていたのに、たまたま答えの数字が合っていた」にすぎない生徒が「正解だ」と言い張っているのと同じだ。現に、終戦後5年経っても、イラクの油田開発はあまり行われておらず、「米国企業がイラクの石油を売って大儲けする」などという事態は起きていない。「反米派」の戦前の予測の大半は、ほんとうははずれたのだ。

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これは、星野仙一・北京五輪野球日本代表監督への批判と同じだ。日本の多くのマスコミは五輪本大会前、「星野は上原浩治(読売巨人軍)のような2008年のプロ野球シーズン前半戦で不調な選手を多数代表チーム(星野JAPAN)に入れたので、予選(五輪本大会一次リーグ)突破もあぶない」などと批判していた(『サンデー毎日』2008年6月22日号 p.131 「『シーズン0勝』上原頼みで予選落ちもある『星野ジャパン』」)。

じっさいに、星野JAPANが五輪本大会でメダルも取れずに4位に終わると、マスコミは一斉に「ほら、言ったとおり負けたじゃないか」と星野バッシングを始めた。が、実は、マスコミの予測はぜんぜん的中していない。シーズン中不調だった上原らは五輪本大会では活躍したからだ。

星野JAPANの敗因はまったく別のところにあるのだが(小誌2008年8月31日「星野続投反対!!〜シリーズ『北京五輪』(4)」)、マスコミはいまだにまともな敗因分析をしていない(マスコミは自分のことを「予測が当たった」などと言う前に、まず上原に謝罪すべきだ)。

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これはイラク戦争についても同じだ。

米国はイラク戦争では、バグダッドを陥落させ政権を転覆するところまではすばやく、効率的にやっている(経済同友会Web 2003年4月10日 小林陽太郎代表幹事「バグダッド陥落について」)。多くのマスコミの予測に反して「戦況の泥沼化」も、「中東全体の不安定化」も「石油価格の高騰」も、もちろん「第三次世界大戦」もなかった(共同通信2003年3月5日付「緊急連載企画『なぜイラク攻撃か』(下) 第3次世界大戦のリスク 怖いフセインのわな 民主化の実現は疑問」 、同18日「泥沼化なら揺らぐ政権基盤 新軍事戦略の試金石にも 米、20日にも対イラク開戦 フセイン大統領に最後通告 48時間内の亡命迫る ブッシュ大統領が演説」、同18日「保証ない短期戦シナリオ 市民の巻き添え不可避 米、20日にも対イラク開戦 フセイン大統領に最後通告 48時間内の亡命迫る ブッシュ大統領が演説」、毎日新聞2003年3月20日付夕刊15面「イラク開戦 泥沼化も/テロ不安/現地へ思い千々」、朝日新聞2003年3月12日付朝刊1面「孤立呼ぶ『帝国の独善』 イラク きしむ世界 米国から」)。

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ところが、そのあと急におかしくなる。イラクを占領した米軍は、イラクの軍、警察を早々と解体し、政権与党のバース党関係者を政府から追放する一方、治安維持のために大規模な部隊を投入することを怠り、混乱させる。これに対して世界各国のマスコミやオバマは「だから最初からだめだと言ったじゃないか」式の「星野バッシング」のような単細胞な批判しかしておらず、共和党政権が戦後処理に失敗した理由を説明できていない(「ブッシュ政権が無能だから」のひとことで片付ける者も少なくないが、そんなに無能なら、なぜバグダッド攻略まで楽勝だったか、が説明できない)。

 

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●イラク戦争の深層●

実は、前々々回の記事を書くために、公明党の太田昭宏代表の愛読書を調べていて(小誌2008年10月1日「公明党の謀叛!?〜連立政権組み替えの兆候〜『中朝戦争賛成派』が小池百合子新党に集結!?」)、面白い本(の読書感想文)をみつけた。それは、増田俊男著『またもやジャパン・アズ・ナンバー1の時代がやってくる』(徳間書店2007年12月刊)だ(太田昭宏Web 2008年1月「私の読書録」)。

 

それによると、米国がイラク戦争を起こした理由は、イラクが石油貿易の決済通貨として、米ドルに替えてユーロを使い始めたからだ、という(増田俊男Web 2006年8月4日「アメリカが先制攻撃態勢に転換したわけ」)。

 

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【実は、筆者は増田前掲書そのものは読んでない。だから、WMDの証拠の取り扱いや、ドルとユーロの関係に関する以下の推理は、筆者のオリジナルである。】

 

イラクは世界第二の石油埋蔵量を持つ大産油国だ。世界貿易に占める石油取り引きの比重は高く、イラクがその決済にドルでなくユーロを使うようになり、その動きに反米的なイラン、ベネズエラなど他の大産油国が同調すれば、産油諸国の外貨準備に占めるドルの比重は下がり、ユーロの比重が増す。

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そうなると、産油国から石油を輸入する日本や中国も、産油国との貿易でドルばかり使うわけにはいかなくなる。日本の輸出業者が産油国に品物を輸出する際、産油国側から「手持ちのドルが少ないので、一部はユーロで」と言われれば、業者はユーロも受け取らざるをえなくなるので、日本も自国の外貨準備の相当部分をドルからユーロに置き換えることになる。

そして、こうした動きはインフルエンザのように、日本の貿易相手国にも、そのまた相手国にも「感染」して行く。

そうなれば、世界の基軸通貨としてのドルの独占的な地位は危うくなる。米国債の買い手となる諸外国の手持ちのドルが減るので、米国政府はドル建て米国債の発行を縮小せざるをえなくなる(イラク戦争開戦寸前まで、独仏などユーロ圏諸国が開戦に反対していたことを想起されたい。独仏はイラクを利用してユーロをドルに替わる基軸通貨にしようとしていたと考えられる)。

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【国際通貨基金(IMF)や欧州中央銀行(ECB)によると、2006年の時点で、全世界の準備通貨(世界各国が保有する外貨準備の総額)に占める米ドルの比率は65.7%で、これはユーロ紙幣が登場した2002年の66.5%からほとんど変わっていない(ユーロが、紙幣も硬貨もない、銀行間取引限定の通貨だった2001年は70.7%)。ユーロの比率も2002年の24.2%から2006年の25.2%へと変わっただけである(2001年は19.8%)。

米ドルの準備通貨比率が圧倒的に高いので、米国では、巨額の貿易赤字を穴埋めするために大量の米ドルを発行しても、米ドルが暴落する通貨危機のような問題は起きない(逆に、米ドルの比率が低くなると、問題が起きる)。

2008年現在、日本の財務省は日本の外貨準備について「ユーロをいくら保有しているか」などの詳細は公表していない。が、大半を米ドルで保有しドル建て米国債で運用していると推定される(財務省Web 2005年4月1日「報道発表 外国為替資金特別会計が保有する外貨資産に関する運用について」、同2008年11月10日「外貨準備等の状況(平成20年10月末現在)」)。】

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米国債がドル建ての場合、米国政府がいい加減な経済政策を採ってドル安になり、たとえば「1ドル=100円」が「1ドル=90円」になると、米国政府は事実上10%の債務不履行になってトクをする。

が、もし米国債が「ユーロ建てでないと買ってもらえない」事態になり、米国政府が米国債の一部をユーロ建てで発行する羽目に陥ると、事態は一変する。

もしもドル安になり、たとえば「1ドル=1ユーロ」が「1ドル=0.9ユーロ」すなわち「約1.1ドル=1ユーロ」になった場合は、額面1万ユーロの米国債を償還するときに米国政府が支払う金額は1万ドル(=1万ユーロ)から約1.1万ドル(=1万ユーロ)に変わり、米国の債務は事実上約11%増加し、米国は損をする。

つまり、米国政府はユーロ建てなど外貨建てで米国債を発行せざるをえない状況に追い込まれると、いままでやって来たような自国本位の経済政策はできなくなるのだ。

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だから、ブッシュはWMDの証拠をでっち上げてイラク戦争を始めた。ドルの覇権を脅かす者は徹底的にたたきのめし、見せしめにしたのだ。その結果、世界各国の(一般庶民でなく)権力者は、ユーロを決済通貨にしようとしたサダム・フセインの悲惨な末路を見た。もうだれも、イランのマフムード・アフマディネジャド大統領もベネズエラのウゴ・チャベス大統領も(口ではどんなに反米的なことを言おうとも)もはや、ドルを基軸通貨の座から引きずり下ろすことなど、恐ろしくて考えることすらできまい。

 

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【2008年11月、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領がベネズエラを訪問した際、チャベスは「ドルは米国が勝手に印刷するただの紙切れ」などと相変わらず口汚く米国を罵ったものの、「ドルの支配から逃れるために」ロシアと合意した政策は、「両国の貿易決済に(ドルでなく)両国の通貨を使うこと」に留まった(2008年11月28日放送のNHK-BS1『きょうの世界』「ロシアと中南米 急接近の背景は」)。両国の通貨であるルーブル、ボリバルはともに、ユーロよりはるかに国際的信用が乏しく、ドルの覇権を脅かす力がまったくない。イラク戦争後のチャベスがユーロ決済の導入に対して怖気(おじけ)付いているのは明らかだ。

このドル依存を減らす政策にしても、ある日突然手持ちの古いドル札が偽札扱いされる「二重通貨制」にチャベスが怯えた結果かもしれない(小誌2008年11月27日「究極の解決策〜勝手にドル防衛?」)。】

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だからこそ、米国政府は「イラクにはWMDはなかった」と言ったのだ。

チャベスなど反米国家の権力者を脅迫するには、イラクがほんとうにWMDを開発していては困るのだ。もしほんとうにイラクがWMDを持っていたがゆえに米国に攻撃されたのなら、チャベスは「ベネズエラには、イラクと違って、WMDはないから攻撃される心配はない」と安心して、貿易の決済通貨をドルからユーロに替えることができる。

 

それではだめだ。米国のドル覇権を脅かす国は、たとえ無実であっても、犯罪の証拠をでっち上げられて「制裁」され、徹底的に破壊されるのだ、ということを、ベネズエラに、イランに、中国に、日本に思い知らせなければならないからだ。

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【おそらく、イラクを占領した米軍、すなわち米国政府は、たとえ戦後のイラクからWMD開発の証拠がみつかったとしても、それを発表せず、握り潰しただろう。】

 

 

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では、WMDの証拠がないことを全世界に公表した理由はそれでいいとして、戦後のイラクの治安悪化はどう説明すればいいのか…………もちろん、それは、米占領軍をイラクから撤退させるためだろう。

 

 

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 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
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