70年周期説

(その3)

 

〜シリーズ

「究極の解決策」

(4)

 

(Jan. 08, 2009)

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■70年周期説〜シリーズ「究極の解決策」(4)■

 

「資本主義は元々60〜70年で破綻する『ネズミ講』であり、60〜70年毎に革命か戦争でリセットする必要がある」という説を信じている者が、日米の政財官界の有力者のなかにかなりいる。

 

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●オバマの戦争●

オバマは、イラク戦争に対する「反戦」はその開戦前から一貫して主張していたものの、大統領選挙中には「テロとの戦いの主戦場をイラクからアフガンに移す」と表明していた(産経新聞Web版2008年11月7日「オバマ氏、タリバン抑え込み狙うも 情勢悪化のアフガンは『鬼門』」)。おそらく彼は、米軍はもちろん、日仏など同盟国の軍隊もアフガンに集めて「テロとの戦い」をやるだろう。

 

 

 

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もちろん、そんな戦争をやっても景気回復にはほとんど役に立たない。アフガンは米国に輸出できるようなものを何も生産していないし、米国産品を輸入できるだけの購買力もないので、そんな国を軍事力でいくら破壊しても、米国の財政赤字が増えるだけだ。

 

 

 

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しかし、アフガンはインドの隣国パキスタンと国境を接しているし、イスラム教徒の多く住む中国領、新疆・ウイグル自治区にも近い。そして、インドと中国は、(電気)自動車、航空機、人工衛星の国産化に乗り出していて、これらの分野で米国のライバルになる可能性があるだけでなく、現在米国の数少ない基幹産業の1つであるソフトウェア産業において、米国の王座を脅かす潜在力持っている(両国における数学教育の水準が高いため、インド人と中国人には世界レベルの優秀なコンピュータ技術者が多く、シリコンバレーでは、両国出身の技術者はまとめて「IC」と呼ばれている)。

 

 

 

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インドと中国の産業は発展するより破壊されたほうが、米国にとって都合がいいだろうから、インドと中国に対して米国が戦争を仕掛ける…………かというと、そうとも限るまい。

上記の如く、資本主義がリセットされるときの生産力破壊には、米軍が直接手を下す「米日型」「米独型」のほかに、米軍が手を出さない「独英型」「独ソ型」があるのだ。後者の場合、米軍(米国防総省)の役割はおもに、諜報員を使った工作と情報収集に限定される。

 

 

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たとえば、米国は、テロとの戦いを口実に多国籍軍をアフガンに集結させておいて、そこから工作を仕掛けて、インドとパキスタンを戦わせ、パキスタンが崩壊しそうになったら、アフガンから多国籍軍を出動させてパキスタンを保障占領してインドが勝ちすぎないようにコントロールする、といったことが考えられる(この場合は、アフガンはどうでもいい、ということになり、米国主導のアフガンへの兵力集結は、アメリカンフットボールで言うところの、敵を欺くための「フェイク」となる)。

 

 

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2008年11月26日にインドのムンバイで起きた「インドの9.11」、イスラム過激派によるムンバイ同時テロ事件は、この印パ戦争への「導火線」と見ることもできる(産経新聞Web版2008年11月27日「インドで同時テロ 330人近く死傷 日本人1人重傷の情報」)。

 

 

 

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中国に対しては、たとえば北朝鮮に中国を攻撃させ「中朝戦争」をやらせて中国を大混乱に陥れ、同時に、アフガンから新疆に工作を仕掛けて、新疆のウイグル人イスラム教徒の分離独立運動を煽り、中国を国家分裂に向かわせて、外国から投資の来ない、カントリーリスクの高い三流国に転落させる、というのも有効だろう(「中朝戦争」については小誌2008年3月6日「中朝山岳国境〜シリーズ『中朝開戦』(13)」、同2007年3月1日「脱北者のウソ〜シリーズ『中朝開戦』(2)」ほかを参照)。

 

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こういう場合、米国の目的は戦争そのものではない(単なる「軍需産業の金儲け」が目的なわけでもない)。戦争によって、経済的なライバル国の生産力を破壊し、その戦後復興事業をなるべく自国企業に排他的独占的に受注させ、そこから利益を上げると同時に、ライバル国の国力が回復しすぎないように制御することだ(現に第二次大戦後、米国は日独を占領して両国の戦後復興政策を主導し、日独に対して戦後の復興援助を与えると同時に、両国が核兵器や米国並みの航空宇宙産業を持てないように去勢した)。

 

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他方、中東では、2008年12月27日から、イスラエルが、パレスチナ占領地のガザ地区にあるイスラム原理主義過激派組織ハマスに対して大規模な戦争を仕掛け、ガザ全体を占領しそうな勢いで戦っている(読売新聞Web版2009年1月4日「イスラエル軍がガザ侵攻、ハマス拠点包囲…死者500人超」)。

 

 

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中東には、インドや中国のような、米国の経済力を将来脅かすような大国はないので、そこで戦争をしてもらってもあまり意味はないだろうが、中東全域に戦火がおよぶ「中東大戦争」に発展すれば、中東原油に依存する日本や中国、インド、韓国などの工業生産を停滞させることもできるので、米国経済の回復にとってぜんぜん意味がないとは言えないだろう。

 

 

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【インドと中国は、地球温暖化防止のための二酸化炭素(CO2)排出削減義務を負うことに消極的である。そういう義務を負うと、石油や石炭などの化石燃料の消費が抑制され、経済成長が難しくなるからだ(産経新聞Web版2008年9月30日「中国やインドに目標設定義務づけ ポスト京都議定書で日本提案」)。逆に、日米欧の先進諸国が石油、石炭を燃やすことで発生する二酸化炭素(CO2)の排出削減に合意しているのは、この環境問題を口実に使えば、将来経済的ライバルになりうるインド、中国などの新興国の経済成長を抑制し、先進国の優位を守ることができるからだ。

つまり、インドと中国は「これ以上成長するな」という欧米先進諸国の警告を、第二次大戦前の日本のように無視したのだから、戦争を仕掛けられるのは当然だろう。】

 

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印パ戦争、中朝戦争、中東大戦争のうち、どれが実現するのか、あるいは3つとも起きるのかはわからない。しかし、オバマ次期政権にとってもっとも必要なものが戦争であることは間違いなかろう。

 

 

 

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もちろん、オバマ政権下の米国は絶対に、イラク戦争を起こしたブッシュ現政権下の米国のような「悪役」にはならない。これもまた、確実だろう。

 

 

 

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【小誌が2007年から一貫して「中朝戦争」が(2009年10月から2012年4月までに)起きる可能性を取り上げて来た理由は、まさにこれである(小誌2007年3月8日「戦時統制権の謎〜シリーズ『中朝開戦』(3)」)。小誌は2007年9月の時点で、「[米共和党員であるロバート・M・]ゲーツ[ゲイツ]現[米]国防長官を新大統領(たぶん米民主党員)がそのまま国防長官の座に留めると提案すれば、議会側にはそれに反対する理由はあまりない(から、2009年10月まで待たなくても中朝戦争はありうる)」と述べていたが(小誌2007年9月13日「開戦前倒し?〜シリーズ『中朝開戦』(9)」)、なんと大統領選当選から1か月も経たないうちに、オバマが(筆者の提案どおり?)「ゲーツ続投」を決めたので、筆者は戦慄した(読売新聞Web版2008年11月26日「ゲーツ国防長官、次期政権でも続投へ」)。

同長官留任の理由は、アフガンへの米軍増派など「テロとの戦い」についてオバマと意見が近いからだろう、と言われてはいるものの、理由はともかく、長官が留任する以上、副長官、次官、次官補などの政治任命ポストは一切替わらないはずなのだ。そういう人事や人事の議会承認手続きや事務引き継ぎの問題がないのなら、 中朝国境の河川、鴨緑江(おうりょっこう)の氷が夏、秋を経て凍結する2009年11月まで待たなくても、前年の冬の氷が溶ける前の2009年2〜3月にも早々と、米軍(米国防総省)内には中朝戦争に対処するための陣容が整うことになる。】

 

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【但し、1994年の米朝接近を実現したのは、当時のビル・クリントン米大統領の政権なので、彼に近い人物が政権の一員になって、米国政府が北朝鮮から見て安心できる陣容になるまでは、いくら米国が頼んでも北朝鮮は中国を攻撃しないだろう。オバマが次期国務長官にビル・クリントンの妻のヒラリー・クリントンを指名したのはそういう理由だと考えられる。

だから、ヒラリーが議会承認手続きを経て正式に国務長官に就任するまで(あるいは、就任後、初訪朝するまで)中朝開戦はないだろう(とはいえ、訪朝した直後に開戦すると、世界中から「密約」を疑われる可能性があるので、訪朝と開戦のタイミングを選ぶのはけっこう難しい)。

クリントン政権の国連大使を務め5回の訪朝歴のあるビル・リチャードソン・ニューメキシコ州知事を、オバマが次期商務長官に指名したのは、中朝戦争後の北朝鮮復興援助に米国企業を参加させるためだっただろうが、リチャードソンはスキャンダルを理由に指名を辞退した(日テレニュース24 Web版 2006年12月16日「北朝鮮高官、米ニューメキシコ州知事と会談」、仏AFP 2009年1月5日「オバマ氏指名の商務長官、リチャードソン氏が辞退」)。米国内の中朝戦争反対派(あるいは中国の諜報機関)の巻き返し工作も盛んなようなので、ヒラリーとて国務長官に指名されるまでは油断できまい。】

 

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●3.0から4.0へ●

「資本主義=ネズミ講」説あるいは「(60〜)70年周期説」に従うなら、「資本主義3.0」は2008年9月をもって終わったのであり、2008年9月から、「4.0」へ向けてのリセットが始まったと考えられる。

 

 

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もちろん、そんな意見は経済学的におかしい、という反論はあるだろう。だから、そういう意見を唱えて筆者と論争して勝ちたい人にはいくらでも勝たせて差し上げよう。

 

 

 

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しかし、そんな論争に勝ったところでなんの意味もない。

 

 

 

 

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重要なのは、筆者がどう思っているかではないし、エコノミストがどう思っているかでもない。日米の政財官界の有力者たちが、この説を信じているという事実なのだ。おそらくオバマ政権のブレーンたちも信じているだろう。

 

 

 

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だから、この説が経済学的に正しいかどうかはどうでもいい。重要なのは、理論ではなく、次に起こる現実だ。

 

 

【お知らせ:佐々木敏の小説『天使の軍隊』が2007年4月26日に紀伊國屋書店新宿本店で発売され、4月23〜29日の週間ベストセラー(単行本)の 総合10位(小説1位)にランクインしました。】

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 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
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