星野JAPAN 1.1
その2
〜シリーズ
「北京五輪」
(1)
■星野JAPAN 1.1〜シリーズ「北京五輪」(1)■
国内のプロ野球の試合と五輪のような国際試合とはまったく別のものであることを理解できない「自称野球通」の方々は、北京五輪野球日本代表(星野JAPAN)の戦略や選手選びを見て、見当違いの一喜一憂をしている。
実は、サッカーや野球では、「2日間しか合宿をしない一流選手のチーム」と「2週間かけてじっくり(外国のA代表との強化試合を含む)合宿をした二流選手のチーム」とが戦うと、二流選手のほうが勝つのだ。なぜなら、クラブチームと違って、代表チームの選手同士はお互いの特徴を(味方としては)よく知らないので、連係プレーがスムーズにできるようになるためには、長期間一緒に過ごさなければならないからだ(小誌2004年8月5日「最強と一流の違い〜シリーズ『アテネ五輪』(1)」)
野球の場合は、このほかに、国内試合と国際試合とでは、使用するボールや審判の判定基準(ストライクゾーンやボーク)が違うといった問題もあり、したがって当然、国内リーグのシーズン中の成績が国際大会の成績に比例するとは限らない。星野が、巨人の上原浩治投手を、2008年シーズンにおける彼の成績の悪さ(7月6日現在、1勝4敗1S、防御率5.97)を無視して選ぼうとしているのは、そのためだ。逆に、今シーズン絶好調の投手でも、「国際試合の公認球で投げさせたら、急に二流投手になってしまった」などという事態は当然起こりうる。2004年シーズン中前半に8連勝しながら、同年のアテネ五輪本大会でオランダにKOされた岩隈久志投手(当時近鉄。現楽天)がまさにその典型だ(詳論後出)。
つまり、アジア予選のときの「星野JAPAN 1.0」が五輪本大会に向けてバージョンアップしても、大幅に選手を入れ替えて「星野JAPAN 2.0」になることはなく、せいぜい「Version 1.1」止まりだろうと思われるのだ。
そういう発想でメンバーを予測すると、だいたい以下のようになる(▲は、投手は左投げ、打者は左打ち。△は両打ち。[]は怪我人等が出た場合の代役):
先発投手:
_ダルビッシュ有(日本ハム)
_岩隈久志(楽天)[or田中将大(楽天)]
_渡辺俊介(ロッテ)
▲和田毅(ソフトバンク)
_涌井秀章(西武)[or▲成瀬善久(ロッテ)]
先発/中継ぎ投手:
_川上憲伸(中日)[or吉見一起(中日)]
▲岩田稔(阪神)[or▲杉内俊哉(ソフトバンク)]
中継ぎ投手:
_久保田智之(阪神)[or久米勇紀(ソフトバンク)]
抑え投手:
_上原浩治(巨人)
_藤川球児(阪神)
▲岩瀬仁紀(中日)
捕手:
▲阿部慎之助(巨人)[or相川亮二(横浜)]
捕手/一塁手/三塁手:
_里崎智也(ロッテ)
捕手/三塁手/外野手/ブルペンコーチ:
_矢野輝弘(阪神)
一塁手/三塁手:
_新井貴浩(阪神)[or村田修一(横浜)]
二塁手/三塁手/遊撃手:
△西岡剛(ロッテ)
▲川崎宗則(ソフトバンク)
_井端弘和(中日)[or中島裕之(西武)]
二塁手/三塁手/遊撃手/内野守備コーチ:
_宮本慎也(ヤクルト)
二塁手/三塁手/遊撃手/外野手:
_荒木雅博(中日)
外野手:
▲青木宣親(ヤクルト)[or▲赤星憲広(阪神)]
▲稲葉篤紀(日本ハム)[or▲高橋由伸(巨人)]
_サブロー(ロッテ)
_G・G佐藤(西武)[or和田一浩(中日)]
したがって、上記のだれも怪我をしなかった場合のスタメンは以下のようになるだろう:
△二)西岡(ロ)
_三)井端(中)
▲中)青木(ヤ)
_一)新井(神)
▲右)稲葉(日)
_指)G・G佐藤(西)
▲捕)阿部(巨)
_左)サブロー(ロ)
▲遊)川崎(ソ)
●エースは第2戦に●
ついでに先発投手のローテーションも予想してみたい。星野JAPANは8月13日の一次(予選)リーグ(L)のキューバ戦を皮切りに、以下のような日程で戦う(時刻は試合開始時刻で、現地時間。日本時間は+1時間):
13日(水)19:00 キューバ vs. 日本
14日(木)19:00 台湾 vs. 日本
15日(金)19:00 日本 vs. オランダ
16日(土)19:00 日本 vs. 韓国
17日(日)全チーム休
18日(月)10:30 カナダ vs. 日本
19日(火)18:00 日本 vs. 中国
20日(水)19:00 日本 vs. 米国
21日(木)全チーム休
22日(金)準決勝10:30(一次L 1位 vs. 4位)or18:00(一次L 2位 vs. 3位)
23日(土)10:30 3位決定戦
___18:00 決勝
日本のエース、ダルビッシュ有(北海道日本ハムファイターズ)が13日のキューバ戦に投げると、中4日で18日のカナダ戦、さらに中4日で23日の決勝に投げることができるので、それでいいと思う方が少なくないであろう。
が、たぶんそれはない。なぜならその「中4日」方式だと、ダルビッシュがいつ投げるかが明白で、相手チームが対策を立てやすくなるからだ。
それともう1つ。18日のカナダ戦にダルビッシュが投げることは考え難い。
なぜなら、カナダは左打者が異常に多い特異なチームだからだ。
アテネ五輪本大会のカナダ代表は、スタメン9人のうちなんと8人が左打者だった。
その理由はアイスホッケーにある。カナダはアイスホッケーが国技なので、男の子はみな子供の頃から冬場はこれをやるのだが、アイスホッケーのシュートは、右利きの場合、右足を前に出して左打者のようなフォームで打つことになっている。このため、カナダの野球チームには右投げ左打ちの選手がやたらに多く、反対に、左投げ左打ちはまずいない(左投げ右打ちはいる)。
【一般的に、左打者は左投手の投球が見づらいので、「左投手対左打者」は投手が有利とされる。他方、左打者は右投手の、とくに下手投げ、横手投げの投球は見やすく、反対に右打者はどちらも見づらいので、「右下(横)手投げ対左打者」は打者が有利、「右下(横)手投げ対右打者」は投手が有利とされる。】
したがって、カナダ戦には左投手を先発させるべきである。現にアテネ五輪本大会の一次Lと3位決定戦のカナダ戦では、長嶋JAPAN(の中畑清監督代行)は2試合とも左投手の和田毅(ソフトバンク)を先発させて圧勝している(スポーツナビ2004年8月25日「アテネ五輪 野球 日程・結果(本選)」)。
そこで、18日のカナダ戦の先発を左投手と想定すると、中4日以上の休養を必要とする先発投手のローテーションから考えてダルビッシュの先発の機会は2回のみとなる。初戦のキューバ戦に先発させてから中8日で準決勝、あるいは中9日で決勝に投げさせる、という手もなくはない。が、一次Lで1位になってもあまり意味がないことは、アテネ五輪の長嶋JAPANが準決勝で苦手の豪州(一次L 4位)に当たって敗れてしまったという先例で明らかなので、ダルビッシュを一次Lのキューバ戦に使う意味はあまりない。
一次Lで4位までにはいれば決勝トーナメント(T)に進めるのだから、それを確実にするには5勝すればいい。星野は「(一次Lで)5勝するまではしっかり勝ちにこだわる」と言っているので(デイリースポーツWeb版2008年6月1日「星野監督、上原の精神面に注目」)、逆に、負けてもいいという構えで戦う「捨てゲーム」は当然作るだろう。
一次Lで対戦する7チームのうちいちばん強いのは米国、二番手はキューバとし、この2チームとの対戦を「捨てゲーム」とし、逆にいちばん弱い中国とオランダ、その次に弱いカナダとの対戦では国際経験の乏しい投手でもなんとかなると考えると、第2戦の台湾戦と第4戦の韓国戦には、それぞれ国際経験豊富なダルビッシュ、和田らを先発させるべきである。
ちなみに、アテネ五輪本大会の台湾代表のスタメンは常に全員右打者だった。北京五輪アジア予選の台湾代表の日本戦のスタメンには3人の左打者がいたが、打順は二番、六番、七番で、右投げ先発投手のダルビッシュに対して3人ともノーヒットだった(野球日本代表公式サイト2007年12月3日「アジア野球選手権2007(北京オリンピックアジア予選)試合結果」)。
【2007年12月2日のアジア予選の韓国戦で、星野が左投手の岩瀬仁紀(中日)をリリーフで2回1/3も投げさせて疲れさせ、「翌日の台湾戦に投げられないようにし、左のリリーフ陣を手薄にした」ことを批判する「自称野球通」(年齢不詳)が大勢、試合当日の夜にネット上で議論していたが(スポーツナビ編集部blog 2007年12月2日「星野ジャパン、激戦制し北京へ前進! (北京五輪アジア予選・第2日)」)、彼らは、当時の台湾代表に左の強打者がおらず、岩瀬を台湾戦に投げさせる必要がなかったことを知らなかったようだ。
DNA鑑定の実態も知らずに「横田めぐみさんの遺骨」は偽物だと騒いでいる連中と同じだ(小誌2007年7月3日「『ニセ遺骨』鑑定はニセ?〜シリーズ『日本人拉致被害者情報の隠蔽』(2)」)。】
【日本が一次Lに全勝すると、1位日本、2位米国、3位キューバ、4位韓国になる可能性が高く、この場合、日本は準決勝で韓国と対戦することになる。韓国代表選手は「五輪でメダルを取れば兵役免除」であり、準決勝で勝てばメダルが確定するので、死に物狂いで日本に向かって来るだろう。したがって、日本は一次Lで1位になるべきでない。】
おそらく星野は、中継ぎ兼任の川上憲伸(または吉見一起。ともに中日)を含めて6人以上先発可能な投手を五輪本大会のメンバーに選ぶだろうから、その人数をの多さをフルに使って、極端な話、一次L 7試合はすべて違う先発投手を起用する可能性もある。
以上のことを踏まえ、上記のリストのだれも怪我をしないと仮定すると、先発ローテーションはだいたい以下のようになるのではないか(時刻は現地時間):
【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
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