謎のウィルス感染

李忠成と遠藤保仁

その2

 

〜シリーズ

「北京五輪」

(2)

 

(July 28, 2008)

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■李忠成と遠藤保仁〜シリーズ「北京五輪」(2)■

 

日本に帰化した李忠成選手が北京五輪サッカー日本代表の一員として活躍することは、韓国にとっては悪夢だ。五輪で彼のチームメイトになるはずだった遠藤保仁選手が謎のウィルスに感染して出場辞退に追い込まれたのはなぜか。

 

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●人口流出の恐怖●

 

韓国支配層がこのように対照的な対応をする理由は明白だ。北朝鮮に移住したい韓国人は1人もいないが、日本に移住したい韓国人は大勢いるからである。

 

それでなくても、日本を上回る少子化で、韓国の若年人口はどんどん減っているのだから、このうえ韓国のマスコミが反日的でない報道をすれば、つまり「日本は経済も文化も民主主義も発達したすばらしい国」だという真実の報道ばかりしていれば、韓国中の若者は大挙して日本に移住し、韓国社会は崩壊してしまう。それは、「やっぱり両班は日本人より国造りが下手だった」という事実が最終的に証明され、主として両班を祖先とする韓国の支配層が決定的に面目を失うことを意味する。

それはすなわち、大韓民国が存在する理由がほとんどなくなる、ということでもある。

 

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【「竹島反日騒動」の直前、2008年5〜6月頃は、米国産牛肉の輸入解禁に反対する反米世論が沸騰し、首都ソウルでは、ろうそくを持った群集が連日連夜デモや集会をしていた(日経ビジネスWeb版2008年6月27日「韓国、長期化するろうそく集会のなぜ」)。

1950〜1953年の朝鮮戦争では、北朝鮮軍の侵略を撃退して韓国を守った国連軍の主力は米軍で、韓国にはまともな軍隊はなかったので、韓国の一般庶民は「両班(の子孫)と米国人と、国防の役に立ったのはどっちだ」「たぶん米国人だ」と思っているはずだ。

そのうえ、日本と同様に「バイトでも自活できる」豊かな先進国である米国も、韓国の若者にとって憧れの移住先なので、韓国の支配層は、自身のメンツを守り若者の移住を阻止するために、しばしばマスコミを用いて反米世論を煽っている。】

 

 

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いわゆる「韓国の反日感情」の原因は、日本の過去の植民地支配とはほとんど関係がない。しばしば狂信的に吹き出す反日感情の原因は「若者がこの国にいたい」と思うような国を創ることに韓国の支配層が失敗したことにある(2006年の韓国の失業率は3%台だが、15〜29歳の失業率は7.2%もある。日経ビジネス前掲記事)。

 

【1970〜1980年代の韓国では、夫が妻に「おまえみたいな女は離婚だ!」と言うと、妻が「いいわ。日本に行く(日本に行ってホステスやる)から」と言い返すような夫婦喧嘩が盛んにあった、と呉善花は自著で暴露している(呉善花前掲書)。つまり、当時からすでに、いや、当時を含めて戦後一貫して、韓国人の、とくに若い女性にとっては、日本は憧れの移住先であり続けたのだ。】

 

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とすると、若者の日本への移住を防ぐには、韓国が日本に勝つしかない。韓国が日本に勝って、日本に移住しなくても希望の持てる生活ができると思い込ませるしかない。

しかし、GDP世界第2位(4兆5340億ドル)の経済力と、自然科学分野だけで9人のノーベル賞受賞者を持つ日本に、同12位(7913億ドル)、同0人の韓国が、経済や科学技術の分野で挑んで勝つのは容易ではない(朝鮮日報日本語版2008年7月19日付「米国4029人日本258人、韓国は3人=ISI 『世界的に論文が引用されている研究者数』調査」)(GDPは2005年の名目値で、韓国銀行が集計。中央日報日本語版2007年5月16日「韓国のGDP、世界12位」)。

 

となると、手っ取り早く、韓国が日本に勝つには、スポーツの国際試合で勝つぐらいしか手がない、ということになる。

 

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●韓国サッカーの限界●

韓国はスポーツ小国である。

韓国語には草野球という言葉がなく、高校野球をやっている高校は全国で約50校しかない(日本は約4000校。小誌2005年11月28日「日韓野球格差」)。野球に限らず、実際にからだを動かしてスポーツをやっている韓国人は極めて少ない。フィギュアスケートの競技人口は100人に満たず、スキーもほぼ同様である。

 

但し、サッカーだけは例外で、男は全員、2年間の兵役期間中に軍隊で経験する。だから、韓国最大の人気スポーツはサッカーである。

 

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ところが、そのサッカーのA代表、五輪代表の実力が近年急速に低下しつつある。

A代表は、南アフリカ・ワールドカップ(W杯)三次予選で苦戦し、「格下」であるはずの北朝鮮と、2008年3月8日と6月8日に2戦して、ともに「0-0」の引き分けに終わり、同じく格下のはずのヨルダンとは2008年5月31日のホームゲームで、後半3分までに2点リードしながら、後半28分以降に追い付かれて「2-2」の引き分けに終わっている(FIFA Web 2008年6月8日「2010 FIFA WORLD CUP SOUTH AFRICA」、中央日報日本語版2008年7月8日付「ヒディンク『私が率いても2002神話の再現は難しい』」)。

 

 

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五輪代表もかなり弱い。北京五輪アジア地区最終予選の前に行われた日韓の強化試合で、日本が「3-0」で圧勝したため、韓国内では相当な危機感が広がった(朝鮮日報日本語版2007年10月15日付「サッカー:躍進する日本、後退する韓国」、同2007年10月15日付「北京五輪サッカー:韓国、親善試合で日本に大敗」)。

 

 

 

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韓国にとって唯一の救いは、韓国人の国際サッカー連盟(FIFA)副会長、チョン・モンジュン(鄭夢準)が、2007年にFIFA五輪組織委員長に就任し(五輪サッカーの主催者はFIFA)、2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪のサッカーの予選と本選を取り仕切ることになったことだ(朝鮮日報日本語版2007年6月29日付「鄭夢準氏がFIFA五輪組織委員長に」)。

そのせいかどうか、各組の1位しか五輪出場権を得られない北京五輪アジア地区最終予選では、日本は強豪が多く不利なC組(サウジ、カタール、ベトナムと同組)に、オーストラリア(豪州)も不利なA組(北朝鮮、レバノン、2007年アジア杯優勝のイラクと同組)に、そして韓国は韓国自身以外は強豪のいないB組(バーレーン、シリア、ウズベキスタンと同組)にはいったので、韓国が五輪に出場し、日本は出場できない可能性がおおいにあった。

が、(鄭夢準の期待に反して?)日本はサウジに競り勝って五輪出場権を得てしまった(小誌2002年5月28日「組分け抽選の不正〜2002年W杯サッカーのディープスロート」、スポーツナビ2007年11月21日「北京五輪への道 サッカー アジア最終予選 日程・結果 男子」)。

 

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そのうえ、北京五輪本大会に限らず、今後の国際大会で日本が韓国を上回る成績を上げる可能性は、潜在的にかなり高い。

なぜなら、兵役時代に行うサッカーは「先輩のシュートを後輩が防ぐと、後輩がリンチにかけられる」という、スポーツの名に値しない下劣なサッカーであり、とてもサッカー競技人口の底辺拡大にはつながらないからである(チュ・チュンヨンほか『韓国陸軍、オレの912日 - いま隣にある徴兵制』彩流社2004年刊)。

 

実は、サッカーでも、日韓間には途方もない格差がある。

日本の競技人口(480万5150人)は韓国(109万4227人)の約4倍、日本のクラブチーム数(1000)は韓国(96)の約10倍だ(朝鮮日報日本語版2007年8月22日付「サッカー:日本の競技人口は韓国の4倍」)。

 

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とくに深刻なのはトッププロを支える、アマチュアやプロのユースチームにおける選手数の差だ。18歳以下のサッカー人口は、日本の62万9140人に対して韓国の1万8205人で、実に35倍もの差がある(朝鮮日報前掲記事)。

 

おそらくこれは韓国の急速な「少子高齢化」によって、ただでさえ少ない韓国の競技人口がますます減った結果だろう。

いずれにせよ、この事実は、近い将来韓国がサッカーで日本にまったく歯が立たなくなる日が来ることを意味している。

とくに、23歳以下の「若年層」だけで戦う五輪ではその「Xデー」はより早く、より劇的に到来するだろう(というか、U-23では、すでに韓国は2003年9月以降一度も日本に勝っていない。朝鮮日報前掲記事「サッカー:躍進する日本、後退する韓国」)。

たとえば、北京五輪本大会の一次(予選)リーグ(L)で、日韓は組が違うので直接対戦することはないが、普通にやれば、韓国がカメルーン、イタリア、ホンジュラスに全敗(して一次L敗退)する可能性は高いし、日本が1勝以上(あるいは一次Lを通過)する可能性はさほど低くないはずだ。

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上記の如く、鄭夢準が五輪本大会を仕切っていて、北京五輪本大会の一次Lでは、日本は米国、ナイジェリア、オランダ、という強豪揃いの「死の組」にはいっているから、そう簡単に一次Lを通過して決勝トーナメント(T)に進むことはできないだろう。

 

が、それでも、五輪代表を支える「底辺」の拡大に成功した日本は、伸び盛りの若手を次々に繰り出してどんな成果を収めるかわからない。

そうした日韓のサッカー格差、つまり、韓国のスポーツ大国としての国造りの失敗を露呈させないために、何がなんでも日本には北京五輪本大会一次Lでは全敗してもらいたい、と韓国の支配層は思っているはずである。

 

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●李忠成の帰化●

実は、韓国の支配層には、北京五輪サッカーで日本を勝たせたくない理由がもう1つある。

それは、在日韓国(朝鮮)人の李忠成が帰化して日本五輪代表の一員になっていることだ。

 

いままで、韓国の支配層は、経営コンサルタントのシン・スゴ(辛淑玉)など、日本に帰化しない在日韓国(朝鮮)人の文化人に、日本のTVなどで以下のように語ってもらっていた:

 

「われわれ在日韓国(朝鮮)人は、日本人から差別されているので、もし帰化して在日社会を裏切ったあと、日本に受け入れられない、となっても、もう在日社会には戻れないので、そう簡単には帰化できないんです」

 

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ところが、李忠成が帰化したいまとなっては、こんなデタラメはもう通用しない。

李忠成は、東京朝鮮第9初級学校を出ているので(ある程度)韓国(朝鮮)語を話せるうえ(北朝鮮系の新聞、朝鮮新報日本語版2006年5月18日付「Jリーグの舞台で活躍する民族学校出身選手」)、18歳の時、韓国サッカー界に才能を認められ、ワールドユース大会を前に韓国代表の合宿に参加したにもかかわらず、日本国籍を取得する道を選んだからだ。

 

 

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実は、この合宿が、彼に日本への帰化を決意させることになった。彼はスポーツ報知の取材にこう答えている:

 

「自分は在日として[合宿に]行った。同じ韓国人として見られてなかった。日本に帰るとき、親と『うちらは日本人でもないし、韓国人でもないし、在日人だね』みたいな話をしたのをすごく覚えている。韓国が嫌いになったとかじゃないけど、そういうふうに見られてるんだって初めて体験した。それが一番大きかった」(スポーツ報知2008年7月15日付28面「[Road to 北京五輪]サッカー・李忠成 日本の『李』が在日の見本に」)

 

 

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つまり、彼は韓国と日本と、2つの国を比較した結果、「在韓国人はホンネでは自分たち在日韓国人を同胞とは思っていない(差別している)」と感じて、日本を祖国として選んだのである。この「韓国代表合宿をきっかけに帰化を考え始めた」というエピソードは、NHKでも報道されたので、在日韓国(朝鮮)人社会にも広汎に知れ渡っているはずだ(2008年6月29日放送のNHK『サンデースポーツ』)。

 

 

 

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しかし、韓国の新聞、朝鮮日報はこのスポーツ報知の記事を以下のように「引用」して報道した:

 

「その時は在日韓国人として合宿に参加した。自分は韓国人だと思っていたが、実際は韓国人というにはあまりにも違うという事実を悟った。韓国がきらいなわけではないが、在日韓国人の限界ははっきりと感じた」(朝鮮日報日本語版2008年7月16日付「北京五輪サッカー:李忠成『在日の手本になりたい』」)

「在日韓国人である自分が日本の国籍を取得するのは簡単なことではなかった。しかし五輪を前にして自分は韓国人でも日本人でもないということを悟ったので、帰化することにした」(朝鮮日報前掲記事)

 

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「同じ韓国人として見られてなかった」つまり「差別された」という部分は削除されているし、「日本の国籍を取得するのは簡単なことではなかった」という、スポーツ報知の記事にはまったく存在しない発言が勝手に挿入されている(この記事を書いた朝鮮日報の記者は、李忠成本人に直接取材せず、スポーツ報知の記事を読んだだけだ)。これは「引用」ではなく「歪曲」である。

彼の在日韓国人社会へのメッセージの部分になると、歪曲はもっとエスカレートする。スポーツ報知では

 

 

 

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「(日本名が必要なときに使っていた)大山というのも(選択肢に)あったけど、在日で帰化した人たちで李とか金とかで出た人はたぶんすごく少ない。自分が李で五輪に出て、結果を出せば、在日の人でこれからどうするか悩んでいる人たちの一つの見本みたいな感じにもなれると思った」(スポーツ報知前掲記事)

 

となっている。これが朝鮮日報にかかるとこうなる:

 

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「五輪がなかったらこれほど注目されることもなかっただろうし、帰化することもなかっただろう。五輪出場をきっかけとして、在日韓国人として悩む人たちに1つの手本のような存在になりたいと思う」(朝鮮日報前掲記事)

 

五輪に出ることと、在日韓国人の手本になることとは、なんの関係もない。彼は、「在日韓国人が日本に帰化した場合の名前の名乗り方の手本になりたい」、すなわち、「韓(朝鮮)民族の名前(や誇り)を持ったまま日本国籍をとって日本国民になることもできますよ」と在日同胞に向かって言いたいのだ。

 

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おそらく、韓国の支配層は、また、朝鮮日報の幹部は、ほんとうは「韓国人の血を引く自分が五輪で活躍することは、韓国人の民族的優秀性の証明になりますから、在日の皆さん、さまざまな分野で頑張りましょう」などと李忠成に言ってほしかったのだろう。しかし、代表合宿に招待されながら「在韓国人」に差別されて日本への帰化を決意した者がそんなことを言うはずはない。そこで、上記のスポーツ報知の記事のような発言になったのだが、朝鮮日報は「引用」にあたって微妙に言葉を入れ替えて、なんとか自分たちの希望するニュアンスを持たせようと四苦八苦したのだ。

 

 

 

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 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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