東京地検 vs. 公明党

その3

 

〜福田首相退陣は

政界大再編の

前兆?

 

(Sept. 08, 2008)

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■東京地検 vs. 公明党〜福田首相退陣は政界大再編の前兆?■

 

東京地検特捜部は2008年中にも、新銀行東京の不正融資に関与した容疑で公明党関係者多数を逮捕する可能性がある。公明党はその前に衆議院の解散・総選挙をやらせるために、給油法案に反対して福田康夫首相を退陣に追い込んだが、いま(2008年9月)から1年後の与党は「自公」ではあるまい。

 

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●逮捕Xデー●

おそらく公明党は、東京地検特捜部が公明党関係者への強制捜査、逮捕に踏み切る時期を、2009年10月のIOC総会後ではなく、2009年7月の都議選前と読んだのであろう。

 

そもそもこのスキャンダルの摘発は、都議会に巣食うけしからん政治家を断罪するために行うのだから、彼らが2009年7月の都議選で再選されたあとに逮捕してもあまり意味がない。逮捕するなら当然その前だ。

 

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公明党は2008年7月頃にすでに、次期衆議院総選挙の時期を、2009年7月の都議選からなるべく離してほしいと自民党側に強く申し入れていた。理由は「(創価学会が)本拠地・東京を『本陣』と位置づけており、都議選の必勝は『最重要課題』」であり、「(都議選には)半年前から本格準備にかかるため、衆院選が重なれば手が回らなくなってしまうからだ」と報道されているが、この説は信じ難い(産経新聞Web版2008年7月24日「公明党の狙いは年内解散? 強まる臨時国会先送り論」)。

なんで離す必要があるのだ。たとえば、都議選と衆議院総選挙が同時になれば、公明党の都議選候補者と衆院選候補者が、国政で連立政権を組んでいる自民党の有名国会議員の応援を得ながら同時に選挙運動をすることができ、公明党にとっては「集客効率」はかえっていいはずではないか。

 

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検察(および警察)は、選挙運動期間中(選挙の公示後、投票日まで)にたとえ当該選挙の候補者でなくとも、特定の政党政治家を逮捕すると、選挙に影響が出るので、それは避けるという不文律がある。万一、逮捕した政治家が選挙運動期間終了後の裁判で無罪になった場合、「検察(警察)は、選挙結果に影響を与える目的、無実の政治家を不当に逮捕した」という、民主主義の根幹にかかわる非難を免れないからだ。

 

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とすると、公明党都議らの大量逮捕を2009年6〜7月の都議選公示直前に行うのは不可能だ。逮捕する気なら検察は、遅くとも2009年5月頃までに逮捕しなければならない。

そこで、たとえば、2009年5月に公明党都議の逮捕が行われると仮定しよう。もし自民党(福田首相)が現在の衆議院議員の任期満了間際、2009年8月頃に衆議院の解散・総選挙を行うとすると、その頃には当然「口利き不正融資をしたあくどい公明党関係者」の顔や名前が連日TV画面や新聞紙面を埋め尽くしているはずだから、自民党は公明党との連立政権も選挙協力も解消しているはずだ。

そうなった場合、自民党は民主党と組んで大連立政権を作れば与党の座に踏みとどまることができるが、公明党は大幅に議席を減らして権力の座からすべり落ち、あとは徹底的に検察の餌食にされ、場合によっては解党の危機に瀕するだろう。

 

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そこで、公明党としては何がなんでも、検察が公明党関係者の逮捕に踏み切る前に、なるべく早く衆議院の解散総選挙をやってもらって、自民党の選挙協力を得て1人でも多くの公明党衆議院議員を当選させておきたいはずだ。

 

おそらく公明党は、8月下旬の読売新聞の報道を見て(読売新聞Web版2008年8月30日「新銀行東京、融資にブローカー暗躍…都議に口利き依頼も」)、2009年どころか、2008年秋にも公明党関係者への逮捕がありうると思ったのだろう。そして、それなら「その前に解散総選挙をやらせてしまえば、検察は不文律に縛られて公明党関係者を逮捕できない」と読んだのだろう。だから、公明党は自民党(福田首相)を「さっさと解散しないと、臨時国会にも次の総選挙にも協力しないぞ」と脅迫したのだろう。

 

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●天罰覿面(てきめん)●

事態は公明党の思惑通りに進んでいるように見える。

2008年9月1日に福田が辞意を表明して、自民党総裁選が始まり、新総裁選出後、彼(または彼女)を次期首相に選ぶための臨時国会の冒頭、10月上旬に衆議院が解散されれ、11月に衆議院総選挙の投票という日程になれば、おそらく11月下旬まで公明党からは逮捕者は出ない。

 

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すでに自民党総裁選には、麻生太郎幹事長、与謝野馨・経済財政担当相、小池百合子元防衛相、石破茂元防衛相らが出馬を表明していて、百花繚乱のにぎやかな選挙になり、連日マスコミで大きく報道されて民主党の存在感がかすんでしまうことが予想されるため、次期総選挙は、自公連立与党が(2005年の前回総選挙に比べて議席は減らすものの)衆議院の過半数を確保し、政権を維持してしまって「何も変わらない」可能性もある。

 

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しかし、それで終わりではない。

なぜなら、その場合でも11月下旬以降は、検察は自由に公明党関係者を逮捕できるので、そうなった時点で、自民党の内部に「公明党との連立を解消する」「民主党との大連立に乗り換える」あるいは「自民党を離党して新党を作り、政界再編に打って出る」などと主張する勢力が現れると予想されるからだ。

 

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もちろん、そうなったら公明党は終わりなので、公明党は、次期首相の連立内閣では、法務大臣のポストを要求し、法務大臣の検察当局への「指揮権発動」をちらつかせて公明党関係者の逮捕を妨害しようとするだろう。が、そんなことを自民党が、世論が許すだろうか。

 

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すでに自民党内には、森喜朗元首相のように臨時国会冒頭の解散に反対し、補正予算や来年度予算案が通ったあと、つまり2009年4月以降に解散すべきだという意見がある(2008年9月8日放送のJNNニュースバード)、森の支援を得て麻生内閣ができた場合、検察は少なくとも新内閣発足後の数か月を自由に使って、公明党関係者を逮捕することができるかもしれない。

 

また、検察が、現在読売新聞と『週刊朝日』に限っている情報のリーク先を拡大し、NHKやテレビ朝日(『報道ステーション』)にまで検察捜査情報を流して報道させた場合、世論は「公明党批判」一色に染まる可能性がある。

 

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検察にとっていちばんいいのは、「ポスト福田内閣」の発足前、公明党が次期政権でどのポストを占めるかが決まる前に、公明党関係者の逮捕を始めることだ。そうしてしまえば、さすがに新内閣は(「スキャンダル隠し」と言われたくないので)法務大臣のポストを公明党に与えようなどとは考えもしないだろう。

 

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しかし、解散前に公明党関係者を逮捕してしまうと、自公連立政権は、世論の批判がこわくて解散ができない、という別の問題もある。その場合、公明党(創価学会)はもう自民党の「集票マシーン」として機能しないから、自民党は連立の相手を公明党から民主党に組み替えるかもしれない(この「大連立」が成功すれば、解散は当分なくなるが、うまく行かない場合は、何がなんだか、さっぱりわからなくなる。たぶん、ぐちゃぐちゃになる)。

(>_<;)

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今後の政局の焦点は、必ずしも、総裁選でだれが勝つか、総選挙でどの党が勝つか、ということではない。

総選挙の前かあとに行われる検察捜査のほうが、はるかに大きな意味がある。

 

結局のところ、20008年9月現在、日本政界で進行しているのは、政権交代ではなく、政界再編なのだ。

 

(水面下の)検察捜査の進展によっては、自民党総裁選直後にも、政界再編の動き、たとえば、公明党の支持がなくても当選できる自民党衆議院議員と、そうでない自民党衆議院議員との間に亀裂が生じて、解散前に自民党が分裂するなどの事態が起きる可能性もあるわけで、たとえそうなったとしても筆者はもう驚かない。

 

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【尚、2008年9月8日現在、自民党総裁選に名乗りを上げている候補者のうち、棚橋泰文元IT担当相、山本一太外務副大臣(参議院議員)、石原伸晃・前自民党政調会長(慎太郎の長男)らの、よく言えば若手候補、悪く言えば「泡沫候補」とその推薦人は、次期衆院選で落選しないために総裁選を口実にTVに映るために動いてると考えると、その行動がよく理解できる。とくに伸晃の場合は、万一司直の捜査が父親の周辺におよんだ場合、それが自身の人気の急落に直結するのを防ぐため、「改革派政治家」として自らを国民に印象付けておく切実な必要があるのであろう。

慎太郎の三男の宏高の場合は、自身が口利きをしていること、元々銀行マンであり、その知識をもとに新銀行設立について父親に助言したこととをあわせて考えると、父親が逮捕された場合は、即議員辞職に追い込まれる可能性が高い。】

 

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●給油法案の行方●

ところで、福田は、元々日米同盟を重視しテロ特措法(に代わる給油法案)を守るために首相になった。その彼が、同法案の延長案の成立のメドも立たないまま退陣するのは無責任に見える。

 

が、彼が検察情報を十分に得ていて、年内に政界再編があると判断したとすれば(もちろん「政権を放り出した」という外聞の悪さは隠しようもないが)話は少し違って来る。

 

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検察の公明党への捜査をきっかけに、年内に政界再編または連立の組み替えが起き、給油法案に賛成する勢力が衆議院に2/3以上結集するか、または、衆参両院で過半数ずつ結集すれば、海上自衛隊のインド洋での給油活動は維持されるからだ。

 

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●民主党批判の筋違い●

最後に、民主党の小沢一郎代表が、給油法案に反対していることを批判する産経新聞など保守派にひとこと。

たしかに、日米同盟を重視する立場からすると、米国政府が高く評価する給油活動を打ち切ろうとする民主党(小沢)の態度はけしからんと思えるだろう。

 

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が、民主党(小沢)をそういう立場に追い込んだのは、自民党ではないか。

自民党は、1993〜1994年に小沢が中心になって発足させた細川護煕(もりひろ)連立内閣、羽田孜(はた・つとむ)連立内閣の時代に野党に転落したことの辛さが骨身に染みて、その後小沢が発足させた新進党が、公明党(創価学会)の支持を得て巨大な集票力を示したことに恐れをなし、「宗教の政治介入」を批判した。
この罠に新進党がまんまとひっかかって解党すると、自民党は公明党(創価学会)勢力を小沢の手から奪い取って自らの支持基盤としたため、以後、小沢は反自民勢力を結集して選挙に勝つ都合上、社民党や左翼系労組、民主党内の旧社会党系左派などの手を借りるしかなくなくった。

小沢が、一見左翼的、反米的な政策を掲げるのは、そうやって左翼勢力の支持を得なければ選挙に勝てず、政権も取れないから、仕方がないことなのだ。

 

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批判されるべきはむしろ自民党のほうだ。

とっくに政権担当能力も使命感もほとんど失った「官僚依存党」のくせに、公明党を生命維持装置に使って政権与党の座にしがみ付いているからだ。自民党が自らの「賞味期限切れ」を素直に認めて公明党との連立などをせずに下野して、ごく普通に「選挙による政権交代」で民主党政権ができるなら、民主党は左翼票ほしさに反米的な政策を掲げる必要はなくなるはずだ。小沢民主党の「左傾化」の原因は元々、自民党の政権に対する「いじましさ」にある。

 

保守良識派を自認する者は、小沢の反米政策を批判する前にまず、自民党がこんにちまで、公明党と連立政権を組んで来たこと自体を、批判すべきだ。

 

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政権奪取後、あるいは政界大再編後の小沢はおそらく、給油法案には必ずしも反対するとは限らないだろう。なぜなら、政権を取ってしまえば、とくに、自民党の一部と連立する形で政権を取ってしまえば、もう左翼の支持など要らないからだ。

 

1990年に、イラクのサダム・フセイン政権がクウェートを侵略した際、小沢は与党・自民党の幹事長として、現行憲法の制約の中で、米国を中心とする多国籍軍の秩序回復活動(翌1991年の湾岸戦争)に自衛隊を派遣できないかと四苦八苦したことがある。その「派遣」は結局実現しなかったが、小沢が元々対米軍事協力に積極的な「同盟重視」の親米派であることは明らかだ。

 

【お知らせ:佐々木敏の小説『天使の軍隊』が2007年4月26日に紀伊國屋書店新宿本店で発売され、4月23〜29日の週間ベストセラー(単行本)の 総合10位(小説1位)にランクインしました。】

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 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
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