究極の解決策

その3

 

〜勝手にドル防衛?

 

(Nov. 27, 2008)

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■究極の解決策〜勝手にドル防衛?■

 

米国経済の衰退によって基軸通貨としての地位が危うくなって来た米ドルを、ふたたび強固な基軸通貨に戻すことは可能か。それとも、それはまったく不可能な妄想か。

 

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●人権外交で踏み倒せ●

女性や黒人が米大統領になると、何がいいのか。

それは、米国が世界に向かって「人権と民主主義の価値」を説く上で有利なのだ。

 

ブッシュ現米大統領は2002年、アフガニスタンで「テロとの戦い」を始めるに当たって、同国を実質的に支配するイスラム原理主義過激派組織タリバンが、女性の教育や勤労の権利を奪うなど、人権を抑圧していると非難した。が、彼は白人男性であるうえ、2003年にはイラク戦争を起こして女性や子供を含む大勢のイラク国民を死なせ、戦争終結後も米軍の治安維持活動に伴う誤爆などで大勢の女子供を犠牲にし続けたため、彼の人権主張は国際的にはほとんど説得力を持たなかった。

 

ところが、ヒラリーとオバマは民主党内の予備選の段階から「イラクからの米軍撤退」を公約にしていた。だから、2人のうちどちらが当選しても、大統領になったあと、圧倒的な説得力をもって以下のように主張することができる:

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「私(の性別または肌の色)を見なさい。米国は女性や少数民族の人権を尊重する民主主義国家だ。世界各国は米国を見習って、女性や少数派の人権を尊重してほしい。私が大統領になったからには、もうイラクで米軍(の誤爆)によってイラク人の血が流されることはなくなるだろう」

 

つまり、ヒラリーかオバマが大統領になって米軍がイラクから撤兵すると、米国は世界の人権抑圧国家に対して、堂々と制裁を行うことができるようになるのだ。

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もちろん、米軍が直接手を下す「軍事制裁」ではない。そんなことをすれば、米国財政が破綻する。が、経済制裁なら、そしてその制裁が米国経済にマイナスにならない方法なら、問題なく実施できる。

 

たとえば、オバマ次期大統領の政権ができたあと、米国が新ドルを導入して一時的に二重通貨状態になるとする。

そうなると、当然、米議会では、旧ドルで発行され購入された有価証券を新ドルで償還する際の手続き条件について審議する。その際、議会では「人権派」議員が以下のように言うだろう:

 

「中国は、チベット人など少数民族の女性に中絶手術や不妊手術を強制しているし、選挙で選ばれた議会のない独裁国家だ。このような非民主的な国家に対しては、米国債の償還手続きを利用して経済制裁を加えるべきだ」

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イラク戦争で大勢の女子供を殺したブッシュのような「侵略主義的な」白人男性の大統領がこの主張に賛同してこういうメッセージを世界に向けて語っても、国際世論の反発を買うだけである。が、女性や黒人の大統領が語る場合は、そうではあるまい。

 

2008年8月現在、「旧ドル表示」の米国債の発行残高約2兆7400億ドルのうち、中国は約1/5の5410億ドルを保有している(保有高1位は日本で、5859億ドル。3位は英国で3074億ドル。サウジアラビア、ベネズエラなど石油輸出国機構OPEC加盟諸国は合計で1798億ドル。米財務省Web 2008年8月「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」)。

もしも米国政府が人権問題を口実にして中国の保有する米国債を「新ドル」で償還することに応じなければ、つまり借金を全額踏み倒せば、米国は約5400億ドル(約54兆円)の丸儲けとなって財政がかなり再建され、中国は同額の丸損となる。「踏み倒し」の対象に、米国人の目から見て人権保障や民主主義が不十分な中東産油国などを加えれば、米国の財政状態はさらに改善されることになる。他方、米国債の価値は日英などの「善良な」先進民主主義諸国に信任されたままなので、今後も米国債を発行することは可能だ。

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そんな横暴な!……と思うだろう。

が、現に、米国は1971年に堂々と「借金踏み倒し」をやっているのだから、米国にとっては、どうということはない。あのときは、日欧からさんざん文句を言われたが、結局そのまま「覇権」を維持した。たとえ米国がXデーに「人権抑圧国家への米国債償還制限」を実施しても、それは1971年の再現でしかない。

 

【1971年のニクソンの「金・ドル兌換停止宣言」と、1776年のジョージ・ワシントン初代米大統領の「アメリカ独立宣言」は性格的に非常によく似ている。どちらも諸外国となんら協議することなく、米国人が米国人だけの都合で勝手に法律や契約を踏みにじり、一方的に宣言したものである。米国は本来独立革命によって生まれた革命国家である。そして、革命とは、力ずくで既存の法律や契約を破棄し、勝手に新しい(自分に都合のいい)秩序を打ち立てる営みにほかならない。

「独立宣言」(代表なくして課税なし)と言えば聞こえはいいが、実態は植民地住民による宗主国・英国に対する納税義務の一方的破棄、要するに組織的な「脱税」にすぎない(脱税も、みんなでやれば、こわくない?)。「脱税」を「独立」と言い換える国なのだから、「借金踏み倒し」を「人権外交」と言い換えるぐらい、どうということはあるまい。

だから、米国は今後も常に「堂々と違法行為をやる」可能性があると思わなければならない。】

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つまり、201x年のXデーまで、世界経済は「旧ドルとの交換(償還)に裏付けられた米国債」を中心にまわる、という第2の体制だが、Xデー以降は「新ドルとの交換(償還)に裏付けられた米国債」を中心にまわる、という第3の体制に移行する、ということだ。

 

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●「中朝戦争」も有効●

米国が中国に対して合法的に事実上の債務不履行を行う方法はもう1つある。米兵が一滴の血も流すことなく、「中朝戦争」をやらせて、中国を2つか3つの国家に分裂させてしまえばいいのだ(分裂させるまでの手順については、拙著、ロボットSF『天使の軍隊』の冒頭を、「中朝戦争」については、小誌2008年3月6日「中朝山岳国境〜シリーズ『中朝開戦』(13)」 ほかを参照)。

 

その場合は、債権者である中国政府が複数存在する状態になるので、分離独立で誕生した「中(なか)中国」「南中国」などの新政府が債権放棄をしない限り、北京の中国政府(北中国)は政府所有米国債については元本の償還を簡単には受けられない(民間所有の米国債も、政治的混乱を理由に償還されない恐れがある)。

というか、米国政府は、分離独立で誕生した新政府に工作を仕掛けて「財産分与」の問題を長引かせれば、その間ずっと債務償還義務を免れるので、まるで薩摩藩の返済繰り延べのように、事実上の「踏み倒し」が可能になる。

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【日米の映画界が出資して『三国志』が映画化され、2008年に『レッドクリフ』というタイトルで公開されたが、この映画がこの時機に公開されるのは非常にイミシンである。この映画を見た中国人を含む世界中の映画ファンは「中国は昔は3つに分裂していた」「分裂していた時代にも偉大な英雄が出た」「分裂は必ずしも悲劇ではない」と知ることになるからだ。】

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●国債を使わない方法●

実は、踏み倒す方法はさらにもう1つある。

それは米国債を利用せず、米国通貨を使って、より直接的に他国の財産権を侵害する……いや、財産を横領する方法だ。

 

通貨はそれを発行する国の政府が「価値がない」と言った瞬間にただの紙切れになる。DMの場合は、発行者であるドイツ政府が2002年1月1日以降はドイツ国内では使えないと宣言したことによって、その日以降価値がなくなった。これはドイツの国内問題である。

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米国政府がXデーに新ドルを発行するということは、Xデー以降は旧ドルは米国内では使えない、つまり、価値がないと宣言することと同じである。つまり、中国の個人や法人がどんなに多額の旧ドル建て預金を持っていても、Xデー以降は価値がなくなるのだ。

これも米国の国内問題である。外国である中国で、中国人同士が自国通貨の人民元よりも旧ドルに価値を見出してそれで取り引きをしたいと思うこと(みんなでむりやり価値があると思い込んで、意地になって使うこと)は理論上は可能だ。

しかし、米国政府がXデー以降米国内で旧ドルの価値を保障しないと言っている以上、米国人はもちろんのこと日本人も英国人も、それを貿易の決済には使わない。したがって、中国人の旧ドル建て預金の口座名義人は、Xデーまでに旧ドルを新ドルに両替してもらわなければ、米中貿易はもちろん、日中貿易の決済にも困ることになる(そして、貿易に使えない旧ドルの需要は小さく、逆に貿易に使える新ドルの需要は大きくなるので、旧ドルは新ドルに対して暴落し、交換レートは「1:1」ではなく、たとえば「10:1」などになるだろう)。

 

そこで、中国政府と中国人は旧ドル建て預金を全額、新旧「1:1」の交換レートで新ドルに交換してもらいたいのだが、旧ドルをどういう条件で新ドルに両替するかは、これも米国の国内問題であって、米国政府が勝手に決めることができる。

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ちゃんと先例がある。これもドイツだ。

ユーロ導入前、1990年10月3日の東西ドイツの再統一(西ドイツによる東ドイツの吸収合併)に先立って、同年7月1日、東ドイツ(ドイツ民主共和国)の通貨、東ドイツマルク建ての預金は、西ドイツ(ドイツ連邦共和国)の通貨ドイツマルク(DM)に両替(交換)されて、すべてこの世から消えた。

 

すべて両替されたのなら、だれも損しないからいいじゃないか、などと単純に思ってはいけない。このとき、当時の西ドイツ政府は、西より貧しい東の経済力や生活水準を考慮して、複雑な条件を付けたのだ。

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なぜなら、当時タテマエ上は、1東ドイツマルクは1DMの価値があることになっていたが、世界の金融市場では経済力の劣る東の通貨は安く買いたたかれており、実勢交換レートは「2:1」、つまり、1DMは2東ドイツマルクの価値があると思われていたからだ(1989年11月のベルリンの壁の崩壊以降、東ドイツ国内が混乱したので、東ドイツマルクの実勢レートはさらに低下し、「10:1」になることもあった)。

すべて実勢レートで両替すれば、西ドイツ政府は財政負担が少なくて都合がよい。しかし、それでは統一によって西ドイツ経済に組み込まれる東ドイツ国民は経済的に苦しくなる。東ドイツ国民は、経済的に西と切り離されて東で安く生産された品物を買って生活していた時代とは異なり、統一後は、西の物価水準で作られ販売される品物を買って生活しなければならないのに、それを無理なく買えるだけの預金がない、ということになるからだ。

つまり、実勢レートで東ドイツ全国民(約1600万人)の東ドイツマルクを全額両替したあと東西ドイツが統一すると、人口約6300万の西ドイツに突然、約1600万人の貧乏人が流れ込んで来たのと同じことになってしまうのだ。

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そこで、西ドイツ政府は、東ドイツ国民の生活に配慮し「原則として個人貯蓄は1:1で交換する」と決めた。

しかし、東ドイツ国民のすべての預金を1:1で交換すると、西ドイツ政府の財政負担、つまり西ドイツ国民の税負担が重くなりすぎる。そこで、西ドイツ政府は「1人あたり4000東ドイツマルクまでの個人貯蓄は1:1で交換するが、それ以上の個人貯蓄や企業債権は実勢レートに近い2:1で交換する」ことにした。

 

ここで重要なのは、西ドイツ政府が西ドイツ国民のみの税負担に配慮して「4000東ドイツマルク以上は2:1」と決めたことだ。西ドイツは民主主義国家だが、当時の西ドイツ政府(ヘルムート・コール首相)は西ドイツ国民のみの投票によって選挙で選ばれており、東ドイツ国民に選ばれたわけではないからだ。

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当時の西ドイツと同じように、現在の米国も民主主義国家だ。オバマ次期大統領は2008年に米国民のみの投票によって選ばれており、中国国民に選ばれたわけではないので、彼が旧ドルから新ドルへの切り替えを行う際には当然、米国民の税負担軽減を第一に考え、中国国民のことは七番目か八番目にほどほどに考える。もちろん、彼の政権には外国人や外国企業が所有する旧ドル建ての預金を全額「1:1」で新ドルに交換してやる義務はないし、そんなことはしない。

 

たとえば、米国議会の人権派議員の意見を聞いて、中国のような、非民主的な国家の個人法人の預金については交換条件を厳しくし、日英のような民主主義国家のそれについては交換条件を甘くする、ということも可能だ。そして、それはけっして中国に対する債務不履行とは呼ばれない(が、実質的にはもちろん、債務不履行どころか、中国からの富の略奪である。「詐欺」と言ってもいいぐらいだ。しかし、分裂後の「旧中国」の諸国民の相当数は「報道の自由」によって、英米のマスコミ報道に接するため「非民主的な政治をしていた北京の政府が悪い」と考えるようになるはずだ)。

(>_<;)

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こんなことを書くと「おまえは正気か」と言われそうだ。

しかし、1971年8月15日以前に「いずれ米国は金とドルの交換を停止する」と言った人がいたとすれば、その人も「おまえは正気か」と言われたはずだ。なぜなら、それは当時の常識ではまったく考えられないことだったのだから。そして現実に、1971年8月15日以前にそういうことをおおやけの席で言った有力エコノミストは世界中に1人もいなかった(ニクソンは事前に外国政府はもちろんのこと、米国の議会ともまったく相談せずに兌換停止を宣言したからだ)。

 

なんでこんな横暴が可能なのかというと、国際的に大きな影響力を持つ米ドルといえども、それは国際法上のものではなくて、あくまで米国の国内法のみによって規定されているからだ。つまり、国内法に照らして合法ならば、国際的にどんなに迷惑をかけようが「すべて合法」ということになるのだ。

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1990年代以降、米国の投資銀行などの金融機関が金融工学を駆使して複雑な金融商品を編み出して世界中に売り出し、実体経済とかけ離れた膨大なマネーを国境を越えてばら撒いて、その結果リーマン・ショックに象徴されるような世界経済の混乱をもたらしたので、それはしばしば「マネーの暴走」と批判される。しかし、歴史上もっとも暴走した金融機関は、リーマン・ブラザーズではなく、実は米国政府なのだ。

(>_<;)

だから、米金融機関の暴走を米国政府に規制してくれと頼んでも、あまり意味はない。それは、大泥棒にコソ泥を捕まえてくれと頼むようなものだ。絶対に捕まらない大泥棒から自分の財産を守りたければ、大泥棒と一緒に泥棒をやるしかない。

(^^;)

米国は、世界で初めて選挙で国家元首(大統領)を選ぶ民主主義国家を建国したり、世界で初めて人類を月に送ったりする国であり、独創性やチャンレンジ精神に極めて高い価値を置く国である。だから、あの国では「独創的な踏み倒し方」を考え出した大統領は、ジョージ・ワシントンにせよニクソンにせよ国内では高く評価され、どちらも再選されている。

(^o^)/~

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●口座凍結●

実は、米国が債務不履行を行う方法は、さらにさらにもう1つある。

2003年以前に発行された古いドル札、および、それを預金して形成されたと推定される資産(預金口座)を「旧ドル」とみなし、偽札対策などの名目で、新ドル発行と同時に(一部)凍結してしまうことだ。

 

これは、上記のBDA北朝鮮口座凍結措置の拡大版である。

これを実施すると、東南アジアなどを中心に幅広く流通している「旧ドル札」が、たとえほんものであっても事実上すべて偽札扱いされることになり、すべて「ただの紙切れ」になるし、旧ドル札を預けて形成されたと疑われる資産(預金口座)もすべて、あるいは大部分が消滅する。

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「旧ドル札を預けて形成されたと疑われる……」といっても、もちろん「疑う」のは米国政府であって、各国政府ではないので、だれをどう疑うか、だれのどの口座をどの程度凍結するか(しないか)は、またしても米国の国内問題であり、米国の勝手である。

たとえばフィリピン人が2002年に1万米ドル(旧ドル)をBDAに預けて開設し、以後そのままになっている預金口座について、Xデー以降、米国政府が「全額偽札で形成された資産と疑われる」と言えば、BDAはおそらくその口座を凍結する。たとえBDAが米国政府にさからって口座凍結を解除し、預金者がその口座から1万ドルを引き出すとしても、もはや旧ドルは通用しないので旧ドルでは引き出せない。

他方、BDAはそれまで旧ドルで預金を集めて来たので、Xデーにはそれをすべて新ドルに両替したいが、両替の条件は例によって米国政府が勝手に決めていいので、全額が両替されるわけではない。もしも米国政府が、BDAを管轄するマカオ政庁に対して「人権抑圧国家中国の領土だから」などと理由を付けて、両替の条件を厳しくすれば、BDAの金庫にある旧ドル札は一部しか新ドル札に交換されず、BDAの行員はフィリピン人の預金者に対して、たとえば「半分しか引き出せません」などと言うことになる。

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【これに似たことはすでに「テロ資金対策」の名目で、米国政府の発案で世界的に行われている。2001年9月11日の米中枢同時テロ、「9.11」のあと、日米中露とEU加盟国、新興国、中東産油国などの金融機関では、テロリストが仮名口座や借名口座を使って活動資金を移動させるのを防ぐという名目で、一定金額を超える口座間の資金移動(送金)は、預金者(送金者)が窓口で身分証明書を提示しないとできないことにした(現在の日本では、2008年3月1日に全面施行された犯罪収益移転防止法で規定されている)。この「軽い制限措置」で各国の預金者を慣らしておけば、将来条件を厳しくして、たとえば「身分証明書を提示しても一定額以上は動かせない」という措置に切り替えても、混乱は比較的小さくて済む。

おそらく、米国政府の言う「テロとの戦い」の本質は「米ドルの価値を守る戦い」であろう。】

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もちろんBDAの金庫には旧ドル札は「潤沢に」保管されているので、預金者が「それでもいい」と言えば、行員はそれを渡すことができる。しかし、それはもはや米国内では通用しない紙幣なので、米国人はもちろん、日本人などの第三国人の貿易業者も、それを商品代金として受け取ることはない。

結局、だれも受け取らない。だから、Xデー以降、そのフィリピン人の預金は激減することになる。

もちろん引き出して紙幣にせず、預金口座に置いたままクレジットカードの引き落としに使う場合も同じだ。Xデー以降は、Xデー以前にクレジットカードで買った品物の引き落としも原則的に新ドル建てで行われるので、フィリピン人は代金引き落としに備えて、BDAの口座の旧ドルを新ドルに両替しておかなければならない。両替によって、たとえ1万旧ドルが5000新ドルに置き換わるとしても、我慢するしかない。交換しておかないと、新ドル表示の預金額は「0新ドル」のままとなり、債務不履行になるのだから。

 

ここまで説明されてもまだ納得できない、という方はおいでだろう。19世紀の薩摩藩ならともかく、21世紀の米国政府がほんとうにそんなことをするのか、と。

 

しかし、日本政界の保守勢力のなかには「ありうる」と思っている人々がいる。それについては、次回

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 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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【この問題については次回以降も随時扱う予定です。
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