WBC新ルールの謎

その2

 

〜2009年WBC

 

(Feb. 23, 2009) (Feb. 27, 2009)

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■WBC新ルールの謎〜2009年WBC■

 

2009年のワールドベースボールクラシック(WBC)のシステムは、2006年のそれと違って、日米に有利なように(両国が決勝で対戦するように)できている。

 

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●めざめた米国●

「いい意味」とは、米国が国際大会の正しい戦い方を悟ったという意味だ。

2006年の失敗に懲りた米国は、2009年WBC米国代表監督には、デーブ(デービッド)・ジョンソンを選んだ。彼は、2004年アテネ五輪野球ではオランダ代表監督、2008年北京五輪野球では米国代表監督を務めており、国際大会の経験が豊富だ。五輪を知る彼なら、間違っても国際試合の最中に放送席に上がり込んだりはしない。

 

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「悪い意味」とは、「国際大会の成績は、実力だけでは決まらない」という、国際サッカービジネス関係者のあいだでは周知の事実に、ようやくMLBの米国人経営者たちも気付いた、という意味だ。

 

 

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たとえば、2002年ワールドカップ(W杯)サッカー本大会で韓国がベスト4にはいれたのは、実力によるのではなく、韓国有利の「誤審」が相次いだお陰である(最初の誤審が生まれる「韓国対ポルトガル」戦の前日、2002年6月13日に配信された小誌の予測記事「●いまこそ『奥の手』を〜審判に『期待』」を参照)。

また、W杯などの国際大会で出場チームの成績を左右する、一次(予選)リーグ(L)の組分け抽選が厳正に、公正中立に行われていないことは、過去のW杯や五輪の本大会や地区予選を見ればわかる(小誌2002年5月28日「組分け抽選の不正」を参照)。

 

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国際大会で好成績を上げるには、自国を強くするだけでは不十分だ。ライバル国を不利な状況に置き、あるいは弱くする必要があるのだ。米国は2006年WBCでは、デービッドソンに頼んで急遽「誤審」をしてもらって日本戦に勝ちはしたが、その程度の場当たり的な策では、韓国やキューバのように国家の威信を賭けて準備して来る国には到底勝てない。

 

 

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●ドミニカ潰し?●

WBCはMLBのシーズン開幕直前の3月に開催される。このため、WBCに出場するメジャーリーガーの選手は、その間、所属チームのキャンプやオープン戦に参加できなくなる。これは、シーズンに臨むうえで明らかにマイナスだ。

 

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そこで、各国の代表候補選手に選ばれてもWBCへの出場を辞退する選手が出て来る。

たとえば、2009年WBC日本代表一次登録メンバーの候補に選ばれていた斎藤隆投手がそうだ。彼は、2008年までMLBナショナル・リーグのロサンゼルス・ドジャースに所属していたが、2009年にはいってから、MLBアメリカン・リーグのボストン・レッドソックスに移籍することが決まった。

移籍すると、監督も投手コーチも捕手も変わるから、斎藤は時間をかけて彼らとコミュニケーションをとって、チームの方針を確認したほうがいい。とくに、いままでほとんど対戦したことのないア・リーグの打者の攻略法を、斎藤はコーチや捕手と一緒に時間をかけて研究しなければなるまい。

このため、斎藤は、レッドソックス球団幹部と話し合った末に日本代表を辞退することに決める(読売新聞Web版2009年1月14日「レッドソックス・斎藤隆、WBC辞退」)。

 

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これは、ある意味で当然のことだ。斎藤の所得の大部分は所属球団から支払われる年俸であって、WBCのギャラや賞金ではないからだ。だから、球団幹部も、移籍1年目の斎藤を十分活躍させてあげたいという気持ちから、WBC出場辞退をすすめだろう。

 

しかし、すべてそうなのだろうか。

WBCの各国代表候補に選ばれながら(あるいは、代表レベルの実力を持ちながら候補に選ばれる前に)出場辞退を決めたメジャーリーガーのすべてが、自分自身や所属球団のためだけに辞退して(辞退させられて)いるのだろうか。

 

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MLBには30球団あるが、そのうち29球団の本拠地は米国にある。したがって当然、球団オーナーの大半は米国人であり、彼らは米国に対して愛国心を持っている。彼らオーナー、あるいはその意を受けたゼネラルマネージャー(GM)が、WBCで米国を優勝させるため、という「悪意」に基づいて、自分の球団に所属する、米国のライバルになりそうな強豪国出身の選手に、WBCに出るべきでないという「助言」を与えることは可能だ。

 

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そういう被害を受けた疑いがもっとも濃厚な国が、ドミニカだ。

2009年1月に発表されたドミニカ代表一次候補選手のリストには、MLBで年間30本前後かそれ以上の本塁打を毎年打っている大砲がずらっと並んだ:

 

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アレックス・ロドリゲス(A・ロッド)三塁手(ヤンキース)

デービッド・オルティーズ一塁手(DH)(レッドソックス)

アルフォンソ・ソリアーノ外野手(MLBシカゴ・カブス)

ハンリー・ラミレス遊撃手(MLBフロリダ・マーリンズ)

アラミス・ラミレス三塁手(カブス)

 

ミゲル・テハダ遊撃手(MLBヒューストン・アストロズ)

ホセ・レイエス遊撃手兼二塁手(MLBニューヨーク・メッツ)

カルロス・ペーニャ一塁手(MLBタンパベイ・レイズ)

エイドリアン・ベルトレ三塁手(MLBシアトル・マリナーズ)

 

アルバート・プホルス一塁手(MLBセントルイス・カージナルス)

ヴラジミール・ゲレロ外野手(MLBロサンゼルス・エンゼルス)

 

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しかし、このうち最後の2人は故障持ち、最初の5人は守備がうまくないことで定評のある選手だ。オルティーズは、レッドソックスを2008年のプレーオフ出場に導いた「主砲」だが、近年シーズン中はDHばかりでほとんど守備をしていないので、1つしかないDHのポジションは彼が取るだろう。そうすると、どうしても守備のうまくない5人のうちのだれかが守備に就くことになる。しかし、ソリアーノは二塁手としての守備がへたくそすぎて外野手にコンバートされた選手で、元々どこを守っても守備はうまくないし、ハンリー・ラミレスは毎年30本前後の本塁打を打つものの、それと同じぐらいの数のエラー(失策)をする。

 

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国際大会は短期決戦なので、勝負どころでのエラーが大きく影響する。その重大性は、2008年北京五輪野球決勝Tで失策を繰り返したG・G佐藤外野手(埼玉西武ライオンズ)を思い出せば十分だろう。彼のエラーも一因となって、日本はメダルをのがしたのだから。

 

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それでいて、このドミニカのリストには、MLBで最多勝や最優秀防御率のタイトルを争うような好投手がほとんどはいっていない。米スポーツ専門TV局ESPNは、2009年1月時点における各国の代表候補選手を分析し、日本の投手力を最高、ドミニカの投手力を最低に近いと評価した(all about 2009年1月26日「瀬戸口仁:ドミニカ強烈…WBC一次登録メンバー徹底分析」)。

 

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どうもドミニカは(米国人オーナーたちの陰謀によって?)国際大会に必要な好投手や守備のうまい野手などを奪われ、代わりに守備の下手な大砲を集中的に押し付けられたように見えるのだ。

 

 

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【ちなみに、2008年北京五輪野球韓国代表の四番打者で、五輪本大会準決勝の日本戦で決勝本塁打を放ったイ・スンヨプ(李承ヨプ)一塁手(巨人)は、2009年WBCの出場を辞退する意向を表明している(毎日新聞Web版2008年11月10日「巨人:イ・スンヨプがWBC辞退の意向」)。この発言が、純粋の本人の意志によるものなのか、それとも、だれかの差し金なのかは不明だが、これによって2009年WBC韓国代表が弱くなったことは間違いない(中央日報日本語版2008年12月27日付「WBC 金寅植監督『李承ヨプ・朴賛浩を最後まで待つ』」)。】

 

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【李承ヨプが辞退したため、2009年WBC韓国代表チームで数少ない「海外組」の中心選手になりそうなチュ・シンス(秋信守)外野手(MLBクリーブランド・インディアンズ)にはチームリーダーとしての役割が期待されている。彼はMLBで2008年シーズン「打率.309、14本塁打、66打点」と活躍したので、当然だ。しかし、インディアンズ球団は彼のWBC出場について「韓国代表チームの合宿に参加しない(チーム合流は3月1日の東京入り後)」「外野手としてプレーできるのは(各ラウンド)1試合だけ」という条件を付けた(朝鮮日報日本語版2009年2月4日付「祖国もチームもあきらめられない(下)」)。

いくらなんでもこれはやりすぎだろう。これは、インディアンズ球団が韓国代表監督の采配に介入した、ということだ(前者の条件は最終的に秋信守が拒否し、彼は合宿に参加した)。

第1R A組は東京ドームで行われるので、外野手が堅い人工芝の上でダイビングキャッチをして怪我をしたら、球団としては困る。だから、第1Rで外野守備に制限を付けるのはわからないでもない。しかし、サンディエゴの天然芝球場で行われる第2Rでも「外野守備は1試合だけ」というのは、球団側の要求として異常だ。日本代表候補のイチロー外野手が所属するマリナーズからなんの条件も付けられていないことと比較して考えれば、秋信守の起用法に課されたこの異様な制約は「日米が結託して韓国を弱くしようとした結果」と考えても、あながち邪推とは言えまい。

 

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約1000人いるメジャーリーガーのうち、ドミニカ出身者は100人以上で、しかも一流選手が多いことは米国の野球通にはよく知られている。だから、ドミニカ代表が必要な人選と準備をして臨めば、日米を倒して優勝する可能性はおおいにある。

 

 

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しかし、ドミニカは貧しい国だ。もしそんな国が準決勝で米国を退けて決勝に進出してしまったら、どうなるか。

米国民は決勝戦に関心を失い、TV視聴率は低迷し、関連グッズや入場券の売り上げも伸びず、大会が盛り上がらないことは確実だ。

 

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米国にとってもっとも望ましいのは、日米の2大経済大国が決勝で対決することだ。そうすれば、WBCは……いきなり「W杯サッカー並み」とまでは行かないにしても……国際スポーツビジネス界の堂々たる一角を担う存在になろう。

 

 

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だからこそ、(事実上の)主催者には日米の団体や企業がはいっているのだ。これは「日米の日米による日米のための大会」であり、両国の「野望」のためには、ドミニカなど、日米以外の強豪国は早めに敗退してもらう必要がある。その日米の意図は、2009年大会から適用されるルール改正を見ると、もっとよくわかる。

 

 

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 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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