WBC新ルールの謎

その3

 

〜2009年WBC

 

(Feb. 23, 2009) (Feb. 27, 2009)

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■WBC新ルールの謎〜2009年WBC■

 

2009年のワールドベースボールクラシック(WBC)のシステムは、2006年のそれと違って、日米に有利なように(両国が決勝で対戦するように)できている。

 

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●日韓対決を回避?●

2006年の第1回WBCの第1R、第2Rは、4チーム総当たりのリーグ戦形式で行われた。しかし、2009年の第2回大会ではリーグ戦形式は廃止され、ダブルエリミネーション(DE)方式という摩訶不思議なルールが導入される。

 

新ルールのもとでは「2回負けたチームは敗退」となる。

たとえば、第1R A組では、一回戦として「日本対中国」「韓国対台湾」のカードが組まれているが、この初戦でそれぞれ、日本、台湾が勝ったと仮定しよう。

そうなると、次は勝った者同士、負けた者同士が戦うので、二回戦は「日本対台湾」「中国対韓国」となる。この第2戦で日本が台湾に勝つと、その瞬間に日本の第2R進出が決まる。

 

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他方、二回戦の「中国対韓国」で韓国が勝つと、その時点で中国は2敗になるので、第2Rに進めないことが確定する。

この条件で二回戦が終わると、台湾と韓国はともに1勝1敗になって並んでいるので、この両者が片方をたたき落とすために「準決勝」のようなものを戦う(五輪ソフトボール本大会の言い方で言えば、負けたほうが3位になるという意味での「3位決定戦」である)。

ここで、台湾が勝つとその時点で韓国は2敗になるので、中国に続いて韓国の敗退が決まり、逆に、台湾の第2R進出が決まる(第2R 1組は、東京からA組の、メキシコシティからB組の、それぞれ上位2チームずつを米国サンディエゴのペトコパーク球場に迎えて米国時間3月15日から開催される)。

準決勝に勝った台湾は、第1Rの最終順位を決めるため、勝ち残りの日本と対戦し、勝てば1位、負ければ2位となる(第2RもDEだが、1位通過なら、たぶん第2R一回戦の相手はB組2位のメキシコ、2位通過ならB組1位のキューバになる可能性が高い)。

 

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DE方式は要するに勝ち抜き戦なので、一回戦以外は、自分の応援したいチームがいつどの試合に出るかわからない。したがって、開催都市の野球ファンにとっては、非常に不便であり、観客動員のうえではマイナスになりかねない。

 

それにもかかわらず、2009年WBCから、第1Rのみならず第2RでもDE方式が採用されたのは、日米が決勝戦に進出するうえで邪魔なA組の韓国、B組のキューバ、C組(米国と同組)のベネズエラ、D組のドミニカ、プエルトリコなどを、文句の出ない形で「始末」するためではあるまいか。

 

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もしも第1Rがリーグ戦方式なら、日韓は必ず一度は対戦し、その勝敗が両国が第2Rに進めるか進めないかを決める恐れがある。そうなったとき、読売は、2006年WBC第2Rの「日本対米国」戦で、米国がやったように、審判に「誤審」をしてもらって日本を勝たせる、という手段を使うこともできる。

しかし、そんなことをすれば、「主催者の読売が審判を抱き込んだ!」という非難が韓国全土で燃え盛り、2006年から韓国内で高視聴率を稼いでいる巨人戦のTV中継放送に対して「ボイコット」の動きが起きるかもしれない。最悪の場合は、日韓間の外交問題にすらなりかねない。

 

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その点、DE方式を使うと、日本が手を汚さずに韓国を敗退させることが可能になる。おそらく組み合わせ抽選を操作した結果だろうが、すでに日本が一回戦で韓国と対戦しないことは決まっている。他方、韓国は、意外に台湾や中国に弱い。

韓国人は「打倒日本」となると異常な執念を燃やし、驚異的な力を発揮するが、相手が台湾だとそれほど燃えないようで、2004年アテネ五輪野球アジア地区予選、2006年ドーハ・アジア大会野球では韓国は台湾に負けているし、「A代表」ではなく各国の国内チャンピオン同士が争うアジアシリーズでも、2008年、韓国代表のSKワイバーンズは(日本代表の西武には勝ったのに)台湾代表の統一ライオンズに敗れて、決勝進出をのがしている(中央日報日本語版2006年11月30日付「アジア大会 韓国野球、台湾に2-4で敗れる」、スポーツナビ2008年11月15日「SKに突きつけられた重い課題 プロ野球アジアシリーズ・リポート」)。

 

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筆者がWBC(第1R A組)の主催者なら、「韓国対台湾」戦の主審は中国人に担当させる。中国は韓国と台湾に対して「中立国」であるうえ、審判の技術レベルが低く、相当にジャッジが不安定なので、「誤審」があってもだれも驚かないからだ。じっさい、2008年アジアシリーズでは、中国人の審判が相当にヘンな判定をし、結果的に日本が優勝したが、そのことで日本はなんの非難も受けていない。

 

韓国は中国にも弱い。北京五輪本大会の一次Lで、韓国は「格下」であるはずの中国に大苦戦し、延長十一回サヨナラの「1-0」(タイブレーク方式)で辛勝している。 だから韓国は、2009年WBC第1Rで、台湾、中国に連敗して、たった2試合で敗退してしまう可能性も十分にある。

 

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●日米で譲り合い?●

日米主催当局が同じような「陰謀」を各ラウンドの各組で行えば、経済力の乏しい強豪国は次々に敗退し、決勝戦で夢の日米対決が実現し、日米4億人以上の国民が盛り上がる、ということになろう。

 

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決勝戦が日米対決になった場合、興行的にはもうどっちが勝っても問題はない。

が、2006年の第1回大会ですでに日本が優勝しているので、今回、第2回大会では米国が優勝する(ことになっている)のではあるまいか。そのほうが丸く収まるだろう(第3回大会の決勝が日米対決になった場合は、文句なしの真剣勝負になるだろう)。

 

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前回、2006年WBCでは、日本の属する第1R A組の勝者(上位2チーム)と米国の属する第1R B組の勝者は第2R 1組で合流し、そこで日米対決が実現した。

今回、2009年WBCでは、日本の属する第1R A組の勝者と米国の属する第1R C組の勝者は第2Rでは合流せず、決勝Tまで日米対決はありえない。

これは「前回は主催者側の工作能力が十分でなく、いちばん視聴率の取れる日米対決を決勝Tで実現させる自信がなかったので、より確実に実現できる第2Rで実現させたが、今回は主催者側が工作能力に自信を持っているので、両国を決勝Tで戦わせるため、第2Rでの対決を避けた」と解釈できる。

 

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●キューバ潰し?●

WBC参加国のうち、米国にとっていちばん嫌いな国は反米革命で建国された社会主義国家のキューバであり、その次に嫌いな国はウゴ・チャベス大統領の就任以来、政府が反米的な言動を繰り返しているベネズエラだろう。

 

2006年WBCでは、第2Rが終わった時点で、準決勝の組み合わせは「日本対韓国」「キューバ対ドミニカ」に決まった。米国としては何がなんでもキューバの優勝だけは阻止したいが、もしもキューバがドミニカに勝つと、残る「歯止め」は「『日本対韓国』戦の勝者」だけになってしまう。

 

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しかし、当時の韓国は歯止めにはなりえない。各種の国際大会で韓国はキューバに勝ったことがほとんどなかったからだ。

他方、日本とキューバの、2004年アテネ五輪野球と2006年WBCにおける代表選手のリストを見比べると、WBCで日本側にイチローら2人のメジャーリーガーが加わった以外は、松坂大輔投手(当時西武、現レッドソックス)、小笠原道大(みちひろ)一塁手(当時北海道日本ハムファイターズ、現巨人)、ビチョアンドリ・オデリン投手、アリエル・ペスタノ捕手ら、主力選手の顔ぶれは両国ともあまり変わっていない。そして、アテネ五輪では日本はキューバ(先発投手はオデリン)に勝っている。

とすれば、キューバの優勝を阻止するには、決勝に韓国が出るより日本が出たほうがいいのは間違いない。

 

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米国時間2006年3月17日、「日本対韓国」の準決勝の前日、WBC主催当局は突如として、韓国代表のパク・ミョンファン(朴明桓)投手(主力選手でない右投手)がドーピング検査で陽性反応を示したと発表し、制裁措置として彼を大会から追放した(朝鮮日報日本語版2006年3月18日付「朴明桓投手、ドーピングテストで陽性」、サンスポWeb版2006年3月19日「ライバル韓国に衝撃!中国戦好投の中継ぎ・朴明桓が薬物失格」)。

 

たちまち韓国代表チームはパニック状態に陥ったに違いない。この大会ではそれまでドーピング違反者の摘発は1人もなかった(その後も1人もなかった)からだ。

が、もっとも不思議だったことは、この制裁措置を受けて、韓国代表のキム・インシク(金寅植)監督が「左のリリーフの切り札」の投入をやめてしまったことだ。

 

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この大会ではしばしば、金寅植は終盤になると元メジャーリーガーの某左投手を救援投手として登板させ、彼は「左対左」の有利を活かして相手の左打者を抑えて勝っていた。

ところが、この準決勝の日韓戦では「0-0」で迎えた七回表、日本の攻撃、一死二塁の場面で日本が左の代打、福留孝介(当時中日ドラゴンズ、現カブス)を打席に送ったのに、なぜか「左対左」の有利を活かせる例の切り札が登板することはなく、逆に左打者に不利とされる右サイドスロー(横手投げ)の投手、キム・ビョンヒョン(金炳賢)が続投した。

 

待ってました、とばかりに福留は金炳賢から決勝2点本塁打を放ち、その後も日本打線が韓国の投手陣をメッタ打ちにして、日本は「6-0」で韓国に大勝して決勝に進出した。

 

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決勝に進出した日本は米国時間3月20日、キューバと対戦。

一回表の日本の攻撃では、キューバの先発投手オルマリ・ロメロはまるで初めて手にする種類のボールを投げたかのようにストライクがはいらなくなり(あるいは、球審に不当にストライクを取ってもらえず)四死球を連発して日本に4点を献上し、結局「10-6」で日本が勝ち、米国がもっとも嫌うキューバの優勝は回避された。

 

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【ちなみに、この決勝では、第2Rの日米戦で日本に不利な「誤審」をしたボブ・デービッドソンが一塁塁審を務めていたが、決勝では日本に不利な誤審は一切しなかった。また、2006年WBC韓国代表監督の金寅植は、2009年WBCでも韓国代表監督を務める。】

 

 

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証拠はないが、次のような推測が成り立つ:

「2006年WBC韓国代表で救援投手として活躍した上記の左投手は、2005年かそれ以前、MLB在籍中の検査、あるいは2006年WBC期間中のドーピング検査で陽性反応が出ていた。

彼は、この大会の第1Rの台湾戦と日本戦の重要な場面で登板しているので、彼をドーピング規定違反で失格にすると、第1R全体の結果が無効になってしまう。

そこで、2006年WBC主催当局は、韓国代表チームにプレッシャーをかけるために、あまり重要な試合に登板していなかった朴明桓のみを差別的に摘発して警告を発した。そして、もしも『準決勝の日本戦で例の左投手を登板させたら、試合後にその投手にドーピング検査を受けさせるか、または、その投手の過去の検査結果を暴露する』という示唆または警告を韓国代表チームに与えた。

そのため、代打福留が登場しても、韓国ベンチは効果的な投手リレーができなかった」

 

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名誉毀損になるといけないので、断言はできない。

が、2006年3月、MLBはジョージ・ミッチェル元米上院院内総務(バラク・オバマ現米大統領の中東和平問題担当特使)に傘下選手たちの、ステロイドと成長ホルモンを使ったドーピングの実態調査を依頼しており、2007年12月に発表されたその報告書『ミッチェル・リポート』では、ロジャー・クレメンス投手(元レッドソックス)ら多数の(元)メジャーリーガーがドーピング違反者としてリストアップされている(Number Web 2008年1月17日「NUMBER EYES『ミッチェル・リポート』深すぎる薬物汚染の闇」)。

それなのに、「2006年WBC大会全体を通じて、ドーピング違反者は朴明桓1人だけ」などということがあるわけはない。

 

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国際野球連盟(IBAF)の管理下で2006年WBCのドーピング検査を実施した世界反ドーピング機関(WADA)は、競技外で選手を抜き打ち検査するためのWADAとIBAFの合意が2005年12月で失効しており、かつ、2006年WBC終了後まで更新されなかった点などを指摘し、WBC主催当局を批判した(朝日新聞Web版2006年4月5日「反ドーピング機関、WBC批判声明 『検査不十分』」)。

朴明桓に対するドーピング摘発は当時、韓国のマスメディアでは「なぜこの時機なのか」と、米国の陰謀を示唆するような論調で報じられた(サンスポ前掲記事)。

2006年WBCの韓国代表とキューバ代表は、主催当局によるドーピング摘発の仕方(と審判の人選)が一因となって日本に負けた可能性を排除できない。

 

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さて、2006年WBCでこのような主催当局の陰謀があったと仮定した場合、2009年WBCでも、主催当局は同じテを使って韓国やキューバを敗退させるか…………というと、そういうことはないだろう。

なぜなら、2009年WBCの韓国とキューバの代表選手の大半は、昨2008年の北京五輪の地区予選や本大会を経験し、その時点で国際オリンピック委員会(IOC)の定める、WBCよりはるかに厳しいドーピング検査の関門をくぐっているからだ。いまさら両国の選手にドーピング検査を行ったところで、違反者を摘発することはできまい。

したがって、2006年に陰謀があったかどうかはさておき、2009年にドーピング検査を恣意的に用いて両国の勝敗を操作するという策はそう簡単にはできないはずだ。

 

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となると、2009年WBCで主催当局が、大会開始後に、両国の試合結果を操作するために用いることのできるおもな手段は……じっさいにそれが必ず用いられると断言はしないが……審判だろう。

 

 

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 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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